体が、重い。
腕も動かなくて少し痛い。
何かが、胸の辺りを這い回る。
時に強く時に弱く、それでも決して単調ではない刺激に自然と、息が上がる。
身体に熱が篭り始め、身を捩ろうにも動かせず、ただ、熱い息を吐く。
……体が、重い。

再び巡ろうとした、モヤの掛かった思考は、唐突に降って来たその声で中断させられた。
「お~ね~え~。そろそろ起きませんかぁ~?」
あまりにも聞きなれた声に、意識がゆっくりと覚醒する……なんて、悠長な事を言っている暇もなく。
「むぅ。可愛い妹の声にも起きないとはいい度胸ですね。では、お望み通りにご開帳~☆」
……望んでない。望んでないってば。
魅音はぼんやりとしたまま、心の中でツッコミを入れる。
正気であれば、なんとも恐ろしいと分かる言葉と同時に襲う肌寒さに、急に体温が奪われた気がして身を震わせた。
「ふぇ、ぇ、ぇええっ?」
夏も間近なこの時期に、寒いわけではないが。肌が晒され、外気に触れたような感じ。
っていうか、……脱がされてる!?
「ふゃ…っな、なに~~!?」
寝ぼけまなこで、魅音が叫んだ。そして自分の上に跨る双子の片割れの姿を認め。
視線が合うと、こちらを見下ろす自分と同じ顔が、にっこりと笑った。
「おはようございます、魅音姉様。正月ぶりですね」
ぞわり。
その表情の奥の何かを感じ取り、まどろみに堕ちていた意識が一気に引き上げられた。
「ま、毎日会ってるっつーの!!あんた、一体なにを……っ!?」
魅音は嫌な予感に身を起こす。
ぎし。
いや、起こそうとしたが。
「げ」
背後で一つに縛られた動かない腕。既に剥かれた上半身。
驚きと羞恥に顔を真っ赤にし、動揺に身を捩ると、それに併せてたゆんたゆんと揺れる豊かな胸。
「あ、あ、ああああああ!」
あんたは一体何やってんだぁあああああ!!
そんな魅音の言葉にならない心の叫びを双子ゆえか容易く理解して、詩音が神妙な顔をする。
「それがですね。私としても非常に不本意なんですが」
とつとつと、詩音が語り始める。

つい数日前。親族の会合が開かれた。
「え~!?、おじさんそんなの知らないよー!?」
と、早速空気を読まず体の下でじたばた暴れて話の腰を折る魅音を無視して、詩音は話を続ける。
なんでも園崎家現頭首が、跡取りを非常に心配していると。
だがそんな頭首の悩みも他所に、次期頭首は年頃といわれる年齢になっても一向に、色気付いては来ない。
未だに子供の頃と変わらず、まるで男の子のように外を走り回っては、暴れまわっているらしい。
先日など、親しい友人と遊びまわった挙句、この歳になってもドロだらけで帰ってくる始末。
その体たらくに流石の頭首も頭を抱えた。どこでどう、教育を間違ったのだろうか。
そもそも夜の作法、子供の作り方など、きちんと理解しているのだろうか?このままでは、園崎の血筋が絶えてしまう。
憂慮した頭首に、気を利かせるべく親族一同が白羽の矢を立てたのが、双子の妹である詩音という事だ。
だから、正月ぶり。
普段の個人的な姉妹としての付き合いはともかく、正式に、親族として会いに来るのは半年振りなのである。
女子高に通い、真っ当に女の子として育った詩音に、女の子としての知識が著しく欠如している魅音の性教育を任せるという、
当人達にとってはこれ以上ない程にありがた迷惑な方針を打ち立てて。親族の会合(非公開)は幕を下ろした。


「な、なにそれぇえええええ!?」
真っ赤になった魅音の上で、詩音がむくれる。
「だ~から、それは私のセリフですってば。ああもう、なんで私がこんな事を……」
ぶつぶつ言いながらも、詩音の手は話の途中からずっと魅音の胸をぷにぷにと弄っている。
「ちょ、やめてよ詩音っ!そ、そんな事しなくても、ちゃんと分かってるってば!!」
少しずつ熱を持ち始めた身体を冷ますように肺に溜まった熱い息を吐きながら、詩音を押しのける為に身体を起こそうと暴れる。
そんな魅音を見下ろしながら、詩音は指の動きを止めずに問い掛けた。
「そうですか。じゃあ聞きますけど、どうやって子供作るんです?」
「……っ!ぅ、あ、そ、それは、その……っ」
顔を赤らめ言葉に詰まる魅音を見て、詩音はわざとらしく溜息を付いた。
「ほら、やっぱり知らないじゃないですか。しょうがないですね~今日はたっぷりじっくりと、お勉強しましょうね☆」
詩音のどこか楽しげな言葉尻に、魅音は息を呑む。
「……ち、違うッ!しし、知ってるもん!ちゃんと知ってるもん!!あんた絶対分かってて言ってるでしょ~~!?」
唯一自由に動く足をじたばたさせる魅音の腰に座り、詩音はむにむにと、その反動に揺れる胸を揉みしだく。
「しっかし、揉みごたえのある胸ですねー。こう客観的に見ると、同性ながらも確かにすごいわ、こりゃ」
ぐさ。
気にしている事を言われ、魅音は涙目で真上にいる片割れを睨んだ。
「しッしおん~~!あんたって奴はぁあああ!」
魅音の抗議はあっさり無視して、詩音の細い指が、華奢な手が。巧みに魅音の大きな胸を揉み、潰し、撫でる。
少し指先に力を込めれば柔らかく沈み、掌で押し上げると溢れるその膨らみに顔を寄せ。
「ひゃぅ……っ!」
つつつ、とその滑らかな線に沿って唇を滑らせて、そっと、敏感な先端にキスをする。
びく。
その柔らかい刺激に、思わず身体が跳ねる。
「ちょ、っと、待って、待てこら、詩音っ!!」
雰囲気がなんだかそれらしくなって来て、魅音は慌てた。
ちゅ、ちゅ。
手は変わらず胸を弄りながら、唇は何度も先端に軽くキスをして、詩音が片手間に答える。
「まださわり程度なのにそんなキャンキャン吼えないで下さいよ、うるさいですから」
そう言って、震えるそこを口に含む。
「ぃっ、…ん…あ、ああんたがやめれば済む事でしょうが!?離せ~~~!!」
ぴんっ。
詩音の指が、もう一方の魅音の立ち上がり掛けの先端を爪弾く。
「く……、ぅっ」
突然の鋭い痛みに身を竦め言葉を詰まらせる魅音に、詩音が楽しそうに微笑む。
「そうそう。そうやって発情してキューンキューンって可愛く鳴いてれば、優しくしてあげますから☆」
そのあまりにも屈辱感を煽る挑発的な言葉に、視線だけで射殺せそうな鷹の眼で、魅音は詩音を睨む。
「ふざけんなッ!!誰が発情し……ッ!」
きゅうっ。
「っ!」
指先で少し強く摘まれて、魅音の言葉が止まる。そんな視線程度で、臆する詩音ではない。
更にはこの圧倒的有利な体勢。詩音は一抹の快感を覚え、嬉々として手を進める。
「こんなに硬くして、感じてないって言うつもりですか?くっくっく!」
顔を離して、ぐりぐりと詩音の親指が魅音の唾液に濡れて光を反射する先端をなじる。
「ふ、ぅ……っ」
悔しさと恥ずかしさに唇を噛み締める魅音に、詩音は優しく微笑んだ。
一応断っておくが、私は別にナルシストと言う訳ではない。
自分と同じ顔に興奮するなんて、と思われるかもしれないが。
確かに私達は一卵性の双子で魅音は自分と同じ顔、同じ声、同じ素材で出来てるんだけど。
やっぱり二人に分かれてしまったせいで、どこか根本的な部分が足りなかったり多かったりするのか、
どうしようもなく求めたり、どうしようもなく嫌悪したり。その時々の感情の振り幅が激しい。
……なんて。一体何が言いたいかと言えば。
悪戯心と言えば聞こえはいいが、魅音の姿にどうしても、意地悪がしたくなってしまう時がある。
……おっと。重ねて一応断っておくが、お姉はMだけど、私は別にSと言う訳でもない。
………。
ないってば。

思わず脱線しそうなとりとめのない思考を振り払って、詩音が柔らかい声で魅音に囁き掛ける。
「ほら、そんなに構えないで。もっと楽にして下さいよ。私だって、やるからには楽しくしたいですし。ね?」
「たっ楽しくなんか出来るかぁああああ!!」
反射的に出た魅音の叫びに詩音は口を尖らせて、不思議そうに呟く。
「あるぇ~?お姉は楽しくないですか?私はすっごく楽しいですけど」
「楽しくない!あんたさっきは嫌そうに言ってたじゃん!!ね、本当にやめよう!?こんなの、ちゃんと分かってたって伝えるだけで済む話でしょぉお!?」
詩音は胸元をいじる手を静かに降ろして魅音の腰を撫で、下着の端に指を絡めた。
「いや~。実はそこが、私も疑問なんですよね~?本当にお姉、分かってます?どこをどうして、どうすれば、子供が出来るのかを」
その先を連想して、びくりと、魅音が怯える。
「ば、ばかぁあああああ!!いくらなんでも、この歳になって知らないワケないでしょ~~~!?」
そんな一瞬の心情を誤魔化すように、魅音が声を荒げ詩音に食って掛かる。
「それこそどこでそんな勘違いが生まれるか知りたいよッ!!こっちはずっと大人に囲まれてたんだからね!?周りは下世話な話ばっかりだし!」
魅音の言葉を軽く笑い飛ばして、詩音が目を細める。……興奮しているのか、少し頬が赤い。
「くっくっく。自業自得ですよ、お姉。これに懲りて、明日からはちょっとは女らしくなる事ですね」
その表情にいつものような冗談では済まない本気を感じ、魅音は気圧される。
「あ、明日からって……ッ!?」
詩音は身体をずらして下着の中に差し入れた指で、魅音に触れた。
「……ッ!!」
魅音が怯えたように、びくりと身体を跳ねさせる。それを上から愉快そうに眺め。
「私にも都合って物がありますから。今日の所は大人しく、気持ちよく。流されて下さいって事です」
そのままゆっくりと蠢かせて、少し熱を持った身体に、指を擦り付ける。
「ぃ、ぃいやぁぁああああああああああああああああああああ!?」
詩音の妖しげな笑みを前に、たまらず出た魅音の絶叫が、無人の園崎家に響き渡った。
すりすり、しゅる、しゅっ。
指で魅音の形を辿り、擦り、くすぐって。
「ぅ……く、……ん!」
魅音の足が、何かを堪えるように強く閉じられる。
それでも、悪戯を繰り返す詩音のしなやかな指先を妨げる事など、出来はしない。
熱く熱を持っているそこに指を強く弱く押し付けて、反応を見る。
感じてない訳ではなさそうなんだけど。詩音は首を傾げた。
「……んー……なかなか濡れて来ないなぁ。……よし」
詩音は呟くと、魅音に触れていた指を抜いて、口に咥える。
「ゃ、ええ……!?あ、あんた、何……っ!!」
その予想外の行動に、魅音は真っ赤になって言葉を詰まらせる。
汚い、とか言いたいんだろう、どうせ。
魅音の言いたい事を察して尚、詩音は挑発するように口元を持ち上げてにぃっと笑い、
自らの指に唾液をたっぷりと絡め、口から引き抜く。
とろっ。
口から指へと伝う光の筋に、そのいやらしい光景に。魅音はめまいを覚えた。
「ぁ、あ……っちょ、待って……し、おん、詩音……ッ!?」
こちらも詩音の行動に予測が付いて、身を強張らせる。
ぬるっ。
「ふぁ……っ」
予測していたのに、その感触に思わず、声が漏れた。
あらあら。お姉ってば可愛い声出しちゃって。
赤くなって慌てて口を噤む魅音を声に出さずに笑いながら、詩音の指は容赦なく魅音を責める。
「こ、んなの……やだっ……やめ、てよ…ぅ……!」
先程の強気な視線はもう、影も形もない。弾む息を堪えながら、魅音が泣きそうな瞳で詩音を見上げ。
その声と、視線の前に否応なしに嗜虐心を煽られ、内心ぞくぞくしながら、詩音はにっこりと微笑み返した。
「えー?だめですよ。ちゃんと準備しておかないと痛いですって。本番ではここに男の子のが入るんですよ~?しっかり慣らさないと☆」
「……ッ!」
魅音の足が震える。それは詩音の指にか、はたまたその言葉にかは分からない。
先程とは違った濡れた感触が、再び魅音の表面をなぞり、くすぐり。
そのまま、敏感な部分をも掠めるように上下に滑らせて、魅音を煽った。
「ふ……は、ぁ、……んっ」
押し殺した声が、詩音の手の動きに合わせて、魅音の口から零れる。
「へ~…中々感度いいですねぇ?こりゃちょおっと意外」
いやどうして、なかなか。そんな事を心の中で呟きながら、ぬるぬると撫で付け、指を立てて引っかく。
「……な、にを……っんん……っ」
ぬぷ…っ。
魅音が口を開いた隙に指が進み、抵抗を掻き分けながら、中をゆるゆると擦る。
「ふっ、ふー……んー……!」
その圧迫感にたまらず噛み締めた魅音の唇に。詩音は誘われるように顔を寄せ、軽く口付ける。
「!?」
驚いた顔をして目を見開く魅音。
その瞳に自分が映っているのを見ながら、詩音は更に唇を重ねる。
「……っ、……~~~~!!」
その自分の物と瓜二つの唇に軽く何度も触れ、啄ばみながら、中を探って指を蠢かせる。
ぬる、ぬぬ、ぬる。
「ん、はっ、……詩音、止めっんん!?」
本格的に熱が入ってきた詩音の責めに、切迫した魅音の静止の声が上がり。
それを逆手に取って、その開いた口に舌を割りいれた。
ちゅ、る、ちゅっ。
「ん、ぅ……むー……!!」
指は唾液以外のぬめりに助けられ、スムーズに抜き差しを繰り返す。
そして詩音の舌は魅音に絡み、吸い付き。その生々しさにぶるっと、魅音の身体が震えた。
あ、やば……こっちまで、少し……。
魅音の中が自ら詩音を受け入れ始めた事によって、詩音の身体にも熱が篭る。
自分は魅音に引きずられたのか、それとも自分が魅音を引きずったのか。そんな事は詩音には分からないし、大した事でもない。
真っ赤になって、詩音の責めから逃れようとするその表情に、否応なしに詩音の手が速度を上げさせられてゆく。
ちゅ、ちゅうっ、くちゅ。
弄っていた舌を解放して、零れた唾液を舌なめずりして舐め取りながら、詩音が楽しそうに魅音に囁く。
「……あは、お姉ってば。すっごいやらしー顔してますよ」
そう言って、一度顔を離してから互いの額をくっつける。
「ぁ、ああ、ふぁ、……ち、がうぅ~!し、詩音、詩音が…っ」
魅音は上気した顔のままとろんと潤む瞳に詩音だけを映して荒く息を付き、酸素を求め口をパクパクさせた。
ぐちゅ、ちゅ、ぬちゅ。
その言葉に誘われるように、一層指の動きを激しくして、詩音が口元を緩ませる。
「ひぁ……っ、ふ、ぁぅう……っ!」
開いたままの口からは、嬌声が零れる。
「私?私がこうしてお姉の中をぐっちゃぐちゃに掻き回すから、気持ちよくてやらしい顔しちゃったんですか?」
耳を打つ水音に、魅音の乱れた姿に。詩音は興奮し息も荒く、片割れの赤く染まった耳元でそんな事を囁く。
至近距離で現実を突きつけられ、魅音は恥ずかしさのあまり泣きそうな顔をして、肩を竦めて震えた。
その姿がまた、詩音の鼓動と手の動き、そして何より嗜虐心を駆り立てる。
あは。可愛い顔してもう。どうしてこう、お姉ってばいちいち、いじめて下さいって顔するんでしょうねー。
「ああ、そりゃごめんなさい。確かに私のせいですねー?お姉がやらしー顔するのも、エッチな声上げるのも、トロトロになってるのもねえ!」
詩音が愉しくてたまらないと言った感じで笑いながら、言葉で魅音をなじる。
その言葉が鼓膜を揺らし、熱い息が耳に掛かる度に魅音は身体を強張らせて、逐一詩音の指を締め付けた。
詩音は唇で赤く染まった魅音の耳を軽く咥えて軽く噛み、口の中で、その縁に舌を這わせる。
「ひゃ……っし、詩音んんっ!」
魅音の声にはもう、余裕がなくなっている。
「お姉、気持ちいいですか?もう、イキそう?」
ずちゅ、ちゅ、ぐりゅ、ぬちゅっ。
詩音の手が乱暴に、それでも的確に魅音の中を擦りつけてかき回す。
「ひ、ぅあぁ、あぅ、あああ……ッ!」
それに翻弄され、もう声を堪えることすら出来なくなった魅音に、詩音は魅入っていた。
「魅音、可愛いよ。ふふふ。こんな姿見たら、誰も魅音が女の子らしくないなんて言えないのにね。……ねえ。今度は、みんなの前でしようか?」
「!!」
詩音の言葉に怯え、魅音の身体が跳ねる。中が一層、キツくなる。
「皆にね、見てもらおうよ。私の自慢のお姉。見せたいなぁ。可愛くてエッチで」
「や、やだ、いやだ!ぁ、あぅ、そん、な事っ言わないでよぉ……っ」
魅音の太股が震えている。もう、限界かな。
「いやなの?でも、さっきからすごく気持ち良さそうだよ。指をね、きゅうきゅう締め付けて離さないし、ほら。私の手も、あんたのでベタベタ」
わざとぐちゅりと音を立てて、指を突き上げる。
「ー…っ、あ、あああ、や、やあ、も、もう……やぁ……っ嫌い、詩音きらいぃいい!!」
言葉とは逆に、一際強く、魅音の中が締め付ける。
魅音の言葉に満足して詩音は微笑むと、手の動きを止め額に軽くキスをする。
「ふふ。冗談ですよ。こんな可愛いお姉、他の人間には見せたくないですからね。まだまだ、当面は私だけのモノです」
その詩音の表情の優しさにしばし呆けてから、魅音の顔も緩んだ。
よほど怖かったのか、緊張が解けた途端ぼろぼろと涙が零れしゃくりあげる。
「…ひっ、ひっく、…ふ、ぅううっ、し、詩音のいじわるっ、ばかぁ~~~~!!しおんきらい~~~!」
ああ、そうか。私はこの子のこういう顔が見たくて、やっているんだ。泣き出した魅音に、詩音は心が満たされるのを感じていた。
昔はよく見た泣き顔。いっつも私の後をついてきて、泣き虫で、可愛かった……妹。
「やっぱりあんた、可愛いよ、…………詩音」
口の中で魅音には聞こえない程度でぽつりと呟いて、指を再び使い出す。今度はもう、容赦なく。
ぴくん。
「……ひっく……ふぇ……っ……はふ……っ」
詩音の手に、すぐ泣き声は鳴き声に変わり、切羽詰った物になる。
「ひぁあっ、ふ、はふ、ぁ、ああ……ぅぁあああ……!」
中の収縮が激しくなり、指が痛いほどに締め付けられる。
それに併せて、詩音は親指で魅音の敏感な突起を、そして中指で中をぐりっと抉った。
ぶるっ。
「ぁ、ああ……っ!!ゃ、……ぉ、ねえ……ちゃぁ……ん……っ!!」

一際大きく身体を震わせて魅音が最後に、そして無意識に漏らした言葉に、詩音もまた静かに身体を震わせていた。


翌朝。
いつものレナ達との待ち合わせ場所で、魅音は早めに家を出て、一人ぼんやりとしていた。
寝不足だ。抜けきらない疲労感に、身体がだるい。
……だからただの寝不足だってば。他意はない。断じてない。
はぁ~……。
そんな事を言ってみてもやはり自分は騙しきれず、胸の底から深いふかーい溜息が出た。
「おーねーえっ!」
ぎゅうっ。
聞きなれた声を聞いたと思った途端、背後から抱きつかれ、魅音がびくりと飛び上がる。
こんな事する相手は、何より自分をお姉と呼ぶ人間は一人しかいない。
「な……ッ!?し、詩音ッ!?」
我知らず、魅音の顔が赤くなってゆく。
「もう、今日は早いですね~?待ってくれてもよさそうな物なのにぃ」
やけに甘えた声でそんな事をいいながら、しなだれかかって来る詩音に、魅音は完全に油断していて言葉も出ない。
結局あの後泊り込んだ詩音の寝ている隙に、簀巻きにしてふんじばって置いたのに、一体どうやって。
動揺を隠せない魅音に、詩音は背後でにっこりと笑う。
「お姉はああいうのが好きなんですか?遠慮せずに言ってくれれば良かったのに。ふふふ、次は考慮しますね☆」
ぞわり。
なんともいえない悪寒が魅音の背筋を走る。怒ってる。これはかなり怒っている。
「お姉に似合うのは荒縄かなぁ、それとも鎖かなぁ?首輪も付けて犬っていうのもいいなぁ」
そんなそら恐ろしい事をいいながら、恐怖に硬直した魅音の腰に廻した手を胸に滑らせて、揉む。
びくん。
「あああ、あんた、こんなトコでなにすんのよぉおおおお!?」
それにようやく我に返って腕の中でじたばたと暴れる魅音に、詩音は耳元でそっと囁く。
「何って……そりゃナニですよ。だって私、『次期頭首女の子化計画☆7日間超速成プログラム』で前金貰っちゃってますし?」
しれっとそんな事を言いながら、魅音の耳に軽くキス。
「な!?なにそれえ!?あんた昨日だけって言ったじゃん!!ってか、お金って何!?」
むにむにと、手から溢れる胸を掴んで転がして、押しつぶしては形を変えさせながら。
「えー?バイトですよ、バイト。それに考えてみたら後6日間、何もしないでお母さんを誤魔化せるとは思えないし」
真の黒幕の名が上がり、魅音が表情を強張らせる。
「お姉の反応も面白いから、この際たっぷり遊んでおこうかな~と」
「ひ……ッ!?」
魅音は喉の奥で悲鳴を上げる。
「まあ、とりあえず話はそこの人気のなさそうな雑木林ででも……」
「い、いやああああああっ!?」


ぐりっ。

「……何してるのかな、かな?」
にっこりと笑顔を浮かべたレナは、詩音の背中を、鉈の頭で突く。
「あら、おはようございます、レナさん」
ちっ、早かったな。詩音は心の中で舌打ちをする。レナ達が現れる前に拉致るつもりだったのに。
「おはよう詩ぃちゃん、魅ぃちゃん。……で、二人は何をしてるのかな、かな?」
レナがもう一度同じ事を問いながら、ぐりぐりと、鉈を詩音に押し付ける。
それを軽く笑って。
「仲良し姉妹の朝のご挨拶ですよ。気にしないで下さい。ね、お姉?」
詩音の声に、魅音は弾かれたように叫ぶ。
「レナ!た、たすけてッ!」
詩音は笑顔はそのままに、心の中で呟いた。
……後でお仕置きですね。このお馬鹿は。
そしてこちら。レナもまた笑顔は、その表情はそのままなのに。先程よりもずっと、かもし出す雰囲気が黒い。
「……魅ぃちゃん、嫌がってるみたいだけど?離してくれないかな、かな?」
「お姉は素直じゃありませんからねー。いやだいやだといいながら感じちゃうんです、ねー?」
「あ、あああああ!?変な事言わないでよ詩音のばかぁああああ!!」
詩音の言葉に顔を真っ赤にして叫ぶ魅音の声も、本物の咆哮の前には、一瞬。

「  嘘  だ  ッ  !  !  」



幸か不幸か、寝坊して遅れて来た圭一は、一人隅で恐怖に震える魅音と、2大怪獣大乱闘を目撃することになる。

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最終更新:2007年05月02日 22:21