「うわーーーーーん、もういやだぁああああ!家に帰るーーー!!」
半分泣きの入った魅音の悲鳴を聞きながら、圭一は溜息を付いた。
泣きたいのはこっちだ。……なんで、なんでこんな事に。
圭一の思考は少し時間を遡る。

今日の授業が終わり、放課後。俺と魅音は揃って顔色を無くして職員室に立っていた。
二人揃って呼び出された時仲間達には生活指導だと囃し立てられて、俺達は顔を見合わせて赤面していたが。
それは杞憂で。
「明日までに提出。いいですね?」
目の前に立つ二人の顔を見比べて。知恵先生は、にこやかにそう宣言した。
てっきり、節度を持ったお付き合い云々のお説教が始まるかと思ったが、実際はそれ以上のピンチ。
……何の事かと言えば知恵先生が受験対策にと、魅音に日々手渡していたプリントの提出期限である。
明日提出。それが出来なければ、魅音は即刻部活を引退。後は受験勉強一色。
そう知恵先生が告げた時、俺達は目の前が真っ暗になった。……いや、魅音はただの自業自得だが。
こいつがいない部活は面白くない。
一つ年上の魅音は来年の春には、一足早く、この学校を卒業する。
だからこそこの限りある時間を、皆揃って少しでも長く遊んでいられるように。
知恵先生もその辺の事情を分かっているからこそ、俺にも声を掛けたのだろう。
そんな事から俺は、魅音の家庭教師の真似事をするハメに至ったのだった。

学校での居残り勉強は、限界がある。
とりあえず場所を時間制限のない俺の部屋に移したが、19時を廻った辺りから魅音がそわそわとし始めた。
いい加減、集中力が途切れる頃だろう。当たり前だ。俺だってとっくに疲労困憊だ。
「あ、あのさ圭ちゃん、ばっちゃが待ってるから、後は帰ってやるよ!」 
あえて断言する。こいつは絶対にやらねえ。
「ほほう。面白い意見だな。……だが、今日お前には帰る場所がないぞ?」
魅音を一人で放って置いたらやるはずもないと踏んだ俺は、とっくに先手を打っている。
ていうか、一人でやれるなら最初からこんなに溜まるまで、プリントは積み上げられていない。
まだ手付かずの物も、ざっと見て30枚はある。
一日一枚知恵先生から渡されて。……うわ、こいつマジでこの一、二ヶ月程なにやってたんだ!?
大丈夫かよ受験生!!
そりゃ、流石にカレー以外の事象には温厚な知恵先生も、堪忍袋の緒が切れるという物だ。
俺は往生際の悪い魅音の目の前で、一階から持って上がって来た電話で、とある場所に電話をする。
「あ、もしもし。前原ですが……おう、すまん。……魅音」
訝しげな顔をする魅音に電話を突きつけると、魅音は受け取って耳を付ける。
「も、もしもし……?」
「はろろ~ん☆」
魅音は咄嗟に電話から顔を離した。思わず切りたくなったようだ。
「こらー!お姉、電話切るなー!」
俺にまで聞こえるほどの音量で、詩音が叫んだ。流石双子、読まれている。
しぶしぶ電話に耳を付けて、魅音が口を開く。
「べ、別に切ろうとなんてしてないもん。……それより、何であんたが……」
「くっくっく。圭ちゃんから話は聞いてます。アリバイは完璧ですから今晩はたっぷり楽しんで下さいね☆」
変に気を回した詩音が、さも面白そうに魅音を追い詰める。
「はぁあ!?ち、違う、違うってば!あんた何か変な事考えてない!?い、いい!帰るからいいよぉー!!」
いつもと変わらないやりとりに見えるが、今日だけははっきりと分かる。今、魅音は全力で嫌がっている。
こいつはこの期に及んでまだ、回避策を模索しているのか。
「あ、もう本家には電話しちゃいましたから。私の立場って物をよ~く考えて行動してくださいね?」
暗に、自分の顔を潰したらただじゃすまないと脅しを掛けてくる。それに魅音が逆らえる筈もない。
「し、詩音の馬鹿ぁーーーー!!鬼~~~~~~!!」
魅音の叫び声が楽しくてたまらないのか、詩音は上機嫌でまくし立てる。
「暗黒天使詩音ちゃんのご用命ありがとうございました☆ご利用は計画的に、ついでに避妊は忘れずに☆」
「ななな、何言ってんのさあんたはッ!?ほほ本当に違う、違うんだってばーーーーー!!」
「まぁまぁ、今更照れなくても。ともかくこれで貸し1ですからねー?あーっはっはっはっはっは!!」
魅音の叫び声もむなしく、詩音は受話器の向こうで高笑いをしながら、電話を切った。
つー、つー、つー……。
呆然とする魅音の肩をぽんと叩いて、圭一は。
びらり。
「ひっ」
プリントの束を、扇のように開いて、見せ付ける。
「さて。園崎魅音、……覚悟完了か?」
一応笑顔ではあるのだが、全く笑っていない、圭一の目。
「………ううう、圭ちゃんの、サディストぉ~~~……!」
今にも泣きそうな顔で、魅音は白旗を揚げた。

それから先の展開は、苛烈を極めた。
何かと理由を付けて逃げようとする魅音の首根っこをひっつかまえて机に向かわせる。
魅音を見ていると勉強嫌いの子供に勉強させようという、世のお母さん方の悩みも分かるという物だ。
……あれ?なんで俺がお母さん?
ああ、お母さんと言えば。おなかすいたとか言い出した瞬間に、豚骨しょうが味のカップラーメンを目の前に
ドンと置いた時の魅音の情けない顔は、俺的にここ最近の中でも一番のヒットだったりする。
そんなこんなを繰り広げながら、途中から魅音はハイになったのか、黙々と問題を解き始めた。
プリントの消費速度が格段に速くなる。
ヤケになって適当に書いているのかと心配したが、その認識は改められた。
おお、合ってる。やれば出来るじゃないか。
そう言おうとしたが、集中を途切れさせないように、声は掛けなかった。

時計を見れば、23時を少し廻った所。
「……………………………………………………」
プリントの束を完遂させて、魅音は机に突っ伏して、眠ってしまったようだ。
……見ようによっては目を廻して気を失っているようにも、見えなくもない。
ぷしゅー……。
あ。頭から煙。
「まさか……今日中になんとかなるとは思ってなかったぜ……」
圭一自身、魅音の頑張りに素直に感心していた。
魅音の頭の回転は悪くない。
むしろ速いのだが、いかんせん、勉強と言う物の最初で躓いてしまっている口なのだ。
勉強=面白くない。
その図式の元、基礎の時点で放り出してしまっているのだから、手に負えない。
ここら辺の応用になると、魅音の中では既にこれらは日本語ですらないのだろう。
そこまで考えて、圭一は溜息を吐いた。
……いや、俺もかな~~り頑張ったよな。
そう、言葉の通じない魅音にまず通訳から始めているのだから。
出来た今だから思うが、魅音はともかく俺は完全な巻き添えじゃないか。……そう思うと面白くない。
まあ、例え勉強であれ、二人っきりって言葉に魅力がなかったかと言えば、嘘になるが。
ご褒美くらいあっても良さそうな物だ。
………ごく。
思わず喉がなる。目の前には、美味しそうなご褒美。
改めて今の状況を考えてみると。

俺の部屋に、二人きり。
魅音は寝ている。
親は帰ってこない。
魅音は詩音の家に泊まりに行っている事になっている。

………はぁ。
なんだこの、最高かつ最悪なシチュエーションは。
思わず溜息が出た。何が起こっても不思議でない状況で、何も起こらないどころか魅音は起きてこない。
圭一は小さい机の上で顔を付き合わせるようにして、机に肘を突いて魅音の寝顔を見ている。
………。
そういえば、魅音の寝顔なんて見た事がない。
意識した途端、静かに、心臓が速度を上げ始める。
なんていうのか、こう……こいつも女の子なんだよな……。
魅音が聞いたら怒りそうな感想だが、普段の萌え語りはどこへやら、圭一にはそれしか言葉が浮かばなかった。
勿論褒めてるつもりだ。
手を伸ばして前髪を軽く梳くと、さらりと指の合間を滑って逃げる。
その感触が少し指に気持ちよくて、何度も繰り返してしまう。
頭を撫でた事は何度もあるが、髪を意識して触れる事はなかった気がする。
起きねえかな、起きろよ、……起こしちまうか?

魅音と付き合いだして、二月程。
……こいつと、その。……そういう事をしたのは、つい最近で。更に言えば回数だって、片手程もない。
だから、……勿論今日だって、間に合わない量だと思いつつも心の片隅では、期待していた。
し、しょうがねえだろ!?こっちは健全な男子なんだ。
好きな子と二人っきり、ましてや自分の部屋にお持ち帰りしてたら誰だって期待するってもんだろ!?

淡い期待を抱きならが髪を梳き続けていると、ゆっくりと、魅音が瞼を上げた。

机に突っ伏したまま俺を見て、魅音は暫くぼうっとしていたが。
我に返るなり、俺の顔から逃げるように慌てて起き上がって仰け反った。……おい、コラ。
「ね、寝てない、寝てないよ!?」
目がぐるぐるのまま寝ぼけた魅音が、慌てて起きているフリをしてシャーペンを握る。
「……ぶっ!」
あたふたと手を動かすその姿がおかしくて面白くて、笑ってしまった。
「くっくっく、もう終わってるって。大丈夫だ、お疲れさん!」
圭一の手が頭を撫でると、寝ぼけ魅音が大人しくなる。
「…………?」
ぼんやりと状況に思考を巡らしているようだ。少ししてから本当に目が覚めたのか、魅音がきょとんとした顔をした。
「起きたか?」
「う、うん?えっと、圭ちゃんがなんで……」
だめだ、まだ呆けてる。頭に?マークが浮いているぞ、こいつ。
「寝ぼけてるみたいだから言うが、ここは俺の家で、お前は宿題を終わらせて、今日はお泊りだ。以上」
「あ、……そうだ、終わった……って、ええ!?お泊り!?なんでっ!?」
「お前、今日は家には帰れねえだろうが」
言いながら距離を詰める圭一に、魅音は顔が熱くなっていくのを自覚しながら、じりじりと後ずさりする。
「で、でも、詩音の所に泊めてもらうから……っ」
「じゃあ魅音、お前はこんな時間に一人で興宮まで走る気か?それとも、わざわざその為だけに
迎えを呼ぶのか?何より、詩音が素直に泊めると思っているのか?」
圭一の手が、魅音の肩を掴む。
「な、ならレナの所に転がり込んで……っ」
「普通寝てるだろ。こんな時間から行ったら迷惑だと思うぜ?」
ゆっくりと押し倒されて、魅音は硬直した。そのまま圭一は魅音の上に覆い被さって、体重を掛ける。
「わ、ま、待った待った!け、圭ちゃん重い……っ」
ハッと我に返ったのか、魅音が俺の下でジタバタと暴れだす。
「魅音……ご褒美」
「へ!?な、何、何がっ!?」
押し倒されながらもまだ逃げようとする魅音の顔の横に手を付いて、圭一は至近距離からおねだりしてみる。
「俺、頑張ったぞ。ご褒美は?」
魅音が言葉の意味を理解して、赤い顔のまま大人しくなる。どうも魅音は圭一に甘えられると、弱い。
「あぅ……ご、ご褒美って言われても、あ、あげられる物なんて……、んっ」
ちゅ。
頬を赤くして、困惑した表情で口を開く、魅音のその言葉を遮る。
「……け、けいちゃぁああん!」
不意に降ってきたキスに、魅音が情けない声を上げるが、もう一回キス。
「ちょっ」
もう一回。
「ふぇ」
もう一回……今度は簡単には終わらせない。
「ふ、……んん」
諦めて瞼を閉じた魅音の頭を片手でいい子いい子しながら、舌で閉じられた唇を割り広げて進入する。
魅音と触れ合うと、ちゅ、と濡れた音がする。
そのまま、逃げようとする魅音を追いかけて深くまで入り込む。
「む、むぅ、ん~~っ」
息すら盗むように口を犯しながら、圭一の手は首筋から静かに魅音の大きな胸へと滑る。
魅音が緊張に身体を硬くするのを感じ、服の上からでも分かる程のその質量を、ゆっくりと押し上げ揉みほぐす。
ちゅ、ちゅぅ。
絡めて引き込んで。恥ずかしがって嫌がるのを知っていたが、魅音の舌を少し意地悪に音を立てて吸い上げる。
「ふ、ん、んんっ……むぅ……っ!」
そのくぐもった声すら、興奮を煽る。
その間も手は絶え間なく溢れるほどの胸を弄っていたが、服の上からではそろそろ物足りなくなってきた。
顔を上げて、魅音のネクタイを解き襟元を緩めると、ボタンを外してゆく。

「……け、圭ちゃん……」
乱れた息を整えながら、魅音は圭一を見上げた。素肌が露になり、思わず身体を強張らせる。
「……どうした?」
「あ、あの、お風呂入りたいんだけど……っ」
胸を覆うブラジャーをたくし上げて、ぷるんと震える胸に手を添えた。
「……ああ、後でな。一緒に入ろう」
魅音の言葉の意味を理解しながらも、軽くかわす俺の冗談に、ボンっと、魅音は一瞬で茹で上がってしまった。
「ち、違うよぉ~~!!後じゃなくて今っていうか、なななんで一緒なの~~~~~!?」
ウブなヤツめ。この際だから、後で本当に一緒に入るのもいいかもしれない。
と、いうか、是非とも一度はやってみたい。よし、決定!
「諦めろ。もう止まらん。風呂は後で……一緒に、な」
圭一の表情とその声に本気を見て、ひっ、と魅音が喉の奥で悲鳴を上げる。
「け、圭ちゃぁああん……!」
楽しみが一つ増えて、俄然ヤル気になった圭一は……いや勿論最初から思いっきりヤル気満々だったが。
魅音のキメの細かい肌の滑らかな質感に夢中になって、その丸い不思議な形を堪能するように掌を滑らせる。
少し力を込めると、指は容易く沈み込み、合間から豊かな胸が零れそうになる。
「や、ぁっ……ふぅ、……ぅぅ……」
魅音は少し感じているのか熱い息を零す。押し返してくる弾力がまた絶妙で、指が気持ちいい。
硬くなり始めている先端に指を添え、爪の先で痛くない程度に気をつけながら軽く掻いて、その手助けをしてやる。
「や、ゃぁ……ぁ、ぁ……っ」
先程までの優しい責めとは質の違う少し強い刺激から逃れようと、魅音が肩を竦めた。
圭一はぬるりと舌を這わせて、もう一方でさびしそうに揺れる先端も舐め上げる。
「ひゃぅ……っや、やだ、やだぁ!な、舐めないでよぉ……!」
風呂に入ってない事が気になるのか、魅音が泣きそうな声を上げる。
それにいたく興奮しつつ、舌でくにくにと潰すようにいじめた。
口の中で硬くなってゆくのを感じながら、唇で咥えて軽く噛む。
はぁ、はぁ……。
すっかりと硬く立ち上がったそこに満足して顔を離し身体を起こすと、片手で変わらず胸を責めながら、
空いた手を静かにスカートに滑り込ませ、太ももをそっと撫でた。
びくん。
「け、圭ちゃん!ま、待って、待って……っ」
捲し上げられた朱色のロングスカートから覗く眩しいほどの白くて長い足が、圭一の手を更に奥へとさそう。
掌全体で、足の内側を撫でさすりながら這い上がって行くと、途中で魅音の足に挟みこまれてしまった。
「魅音……力、抜いてくれ……」
くすぐったさと恥ずかしさに魅音は思わず足を閉じてしまう。
「……ぅ、ぅぅ……」
圭一の声に震えながら、軽く力を抜いて手を解放するが、恥ずかしさで我慢出来なくなってしまったのか、
再び閉じてしまう。
「……魅音……?」
呼びかける声にも真っ赤になって俯いたまま、小さく首を横に振る。
圭一は仕方なく、今度は谷間に合わせて指をつつつ、と滑らせる。そのままでも、行き着く先は一つ。
びくん。
突き当たりで指先を少し強く押し込みながら、下着の上から更に先に進もうという意思を見せる。
ぐりぐりと力を込め、指に弾力のある魅音の柔らかさと熱さを感じ、尚も押し付け、擦る。
「はぁ……はぁ……はぁ……っ」
期待に息が荒くなって。下着のふちを何度もなぞりながら、圭一は魅音の胸を揉みしだく。
「ぁっ……はぁ、……ぁあ……ぅ」
魅音もまた、息を荒げながら身悶える。自分と同じように、期待に震えているのだろうか。
圭一はそっと下着の脇から指を差し込んで見て、直接撫でると、魅音の膝がびくりと揺れた。
「……あ………」
そこはもう、少し濡れ始めているようで、ぬるりとした感触が指にまとわり付く。
「……ふ、ぁ…………」
圭一の上げた声に、魅音は耳まで赤くして泣きそうな顔をした。

-[[ホームワーク2]]

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最終更新:2007年08月28日 11:05