Lomo Sokolの分解(2011.8)


サンクトペテルブルクからロモソコールというカメラが届いた。このカメラ、フジカ35オートMとよく似ているらしい。
ソコールは英語版Wikipediaによれば、1966〜1986年に40万台以上が生産されたとある。
外観はもとより、オートMに搭載されたコパルマジックという複雑なシャッターまで搭載されているらしい。
(このあたりの顛末は「フジカ35オートMの分解」追記3をご参照ください)

コパルマジックはシャッター速度優先式のシャッターだが、露出が絞り値の調整だけで適正とならない場合は、
さらにシャッター速度を自動調整して適正露出を得る。五速のシャッター速度にそれぞれプログラムラインを持つので、
計五組の複式プログラムを機械のみで制御する複雑なシャッターである。
当時のソビエトにコパルマジックを生産できる技術があったのか、興味深々でeBayで$3の不動品を購入した。

今回の個体は1975年製で、露出計死亡、シャッターは切れるが速度が変化せず、巻き上げなくても
シャッターと絞りの設定ができてしまう故障品。
(コパルマジックは巻き上げ前にシャッターと絞りの設定はロックされる)
円高のおかげで送料込み2000円以下で購入できた。まずは分解の前にオートMと見比べてみる。

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上がソコール、下がオートMである。

ソコールとフジカオートMとの外見上の相違点は、

1.露出計がセレン式からCdS式に変更された 
2.巻き上げレバーとシャッターボタンの位置が変更された

が主な点である。

また、ファインダーを覗くと、ソコールではフレーム枠の右側にシャッタースピードと絞りの表示が出る。
(オート露出設定時)
この点もオートMから改良されている。

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しかし、距離計の窓(AUTOのOの上)の位置はオートMと同じだ。外形寸法もほとんど変わらない。
左側面に巻き戻しノブが付いているのも同じである。
カメラの底を見ると、三脚穴と巻き上げ(ソコールでは閉じられているが)、枚数計の位置が同じで、
構造が共通していることを示唆している。


ひととおり観察が済んだら早速分解。まずはコパルマジックの存在を確かめるべく、レンズ部分を分解する。
レンズの一番前に押さえリングがあるのでこれを外してCdS窓/GOST設定板を上に引き抜く。
窓は三つあるが、CdSは一個しか入っていない(笑)。

フォーカスはオートMと同様の前玉回転式。無限遠位置をチェックして外す。フォーカスリングに三つネジがあるので
それを外して、このねじ穴からドライバを入れて扇型の前玉固定リングのロックネジを緩めると前玉が外せる。



CdSを外して、フォーカスリング、距離環を外し、前玉と中玉を外すとどこかで見た覚えのあるシャッター蓋が現れる。
この蓋は開けてはいけない…けれども性懲りもなくまた開けちゃった…するとやはりコパルマジックが入っていた。

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前板を外してシャッターを裏からも見る。裏側には絞りとシャッタースピードを決める差動歯車群がある。
シャッター両面にある歯車等の形状や配置は、オートMに搭載されたコパルマジックとまったく同じと判明した。

しかしなぜ、日本のシャッターがソビエトのカメラに使われていたのだろうか?

コパルの社史には「1963年にソ連カメラ使節団が来社、翌年に対ソ連シャッター技術輸出契約調印」
と記されており、60年代後半にはKMZ製の「ゼニット」シリーズにコパル型シャッターが搭載された。
(http://ammo.jp/weekly/nak/0311/nak031126.html より引用)

という事実があったのだ。契約の二年後にソコールが製造開始されたので、ソコールのシャッターも
コパルからライセンスを得てソビエトで作られた製品である可能性が高い。
ソビエトのカメラはコピー品が多いことで有名だが、このシャッターは違うと思われる。

ソコールの内部をオートMと比較しながらもう少し分解してみよう。

ソコールとオートMの前板の裏側と胴体を見てみる。ダイキャストは異なっているが、構造、部品配置はそっくりである。

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巻き上げ部に至っては、歯車や枚数計の構成までまったく同一といってよい。

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なお、底板を外すときは、巻き上げ軸の下でバネがチャージされているので注意すること。

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ソコールのボディも基本構造がオートMとほぼ同一であった。ただし、カメラ本体については富士写真フィルムから
何らかの技術提供があったかどうかは現在のところ判明していない。
現時点ではソコールをオートMの直系の子孫と言うことはできないが、オートMの改良版とは言ってよいと思う。

何かこの件について情報をお持ちでしたら、Twitterアカウントまでご一報くださると幸いである。

改良点の一つに、オート時にファインダーにシャッター速度と絞り値を表示する機能がある。ここを見てみよう。

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数値板にはコパルマジックのオート時の五組のプログラムラインに対応する五列の数列が水平に並んでいる。
シャッタースピードを速い方に変更すると、五個の穴のあいたマスクが中央方向に移動し、シャッタースピードに応じて
ファインダーの視野内に窓が表示される(上から下に向かってシャッター速度が速くなる)。
リレーズレバーを押すと数値板が外側方向に移動し、穴を通してシャッター速度と絞り値が表示される。

レンズはインダスター70と表記されているが、これもオートMと構成が異なる。オートMは前から1枚,1枚,2枚の三群四枚の
テッサー型だが、ソコールは前から2枚,1枚,1枚の三群四枚構成となっている。写りも機械が直れば確認したいところだ。



「夢のマジックシャッター」と呼ばれたコパルマジックを搭載したオートMは、電子式シャッターの開発により
時代の徒花と消えたが、海を越え、鉄のカーテンの向こうで改良されロモソコールとなり、20年にわたり生産されていたのだ。
これはどこかロマンのある話ではないだろうか。

追記(20011.8)

再組立をして写真を撮ってみた。露出計が実は生きていたのでオートで撮影。DNP200使用。
フィルムスキャナが不機嫌なのでプリントをスキャン。



生データはこちらこちら

曇で撮ったので色が悪いが、特に歪もなくそこそこ写っている。ボケはイマイチかな。

追記(2011.9)

ロモソコールの試作型として、オリオンKMというカメラがあったらしい。



このカメラにはコパルと富士の技術が導入されているとする掲示板の書き込みがあった。




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最終更新:2011年08月30日 21:44