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くしゃみツインズ

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匿名ユーザー

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「主様、おかえ……くしゅんっ!」
 早く授業の終わった今日。帰ってみると、小さなくしゃみが僕を出迎えてくれた。
「殺生石、風邪?」
「わ、妾は風邪など引きませ……くしゅんっ!!」
 言葉を無理矢理遮られる。
 確かに、殺生石は風邪を引かないって前言っていたけど……。
「へくしっ!」
 と、今度は僕がくしゃみ。
 寒いとか風邪とか、そういうのとは違う。なんだか鼻の中に異物が入ったような。
「なんか鼻がむずむず……くしっ!!」
 くすぐったい。とにかく鼻の中がくすぐったい。
「も、申し訳ございません……くしゅんっ!」
「なんで……せ、せっしょ……へくしっ!」
 どうして、くしゃみをすると殺生石が謝るのだろう。
「ご主人様っ、マスクをどうぞー」
「え、あぁありがとう……へくしっ!」
 横からマスクを付けて現れた蛋白石。
 鼻に何か入った後では遅い気もするけど、無いともっと酷いことになりそうだ。

「あー、生え替わりのシーズンだったんだね」
 みんながマスクを付けて落ち着いたところで、くしゃみの原因を殺生石から告げられる。
 簡単に言えば、冬毛から夏毛への生え替わり時期。尻尾の毛が抜け、一人での手入れに
手こずったが為に、毛があちこちに漂うこととなったらしい。
「蛋白石に手伝ってもらったのですが、この子ったら力加減がなっていなくて……」
「うぅ、だからそれはさっきから謝ってるのに」
 マスク越しのくぐもった声。
「やはり殿方にして櫛の扱いに長けた主様が一番ですね」
「むー、でもご主人様ブリトニーなんだよー。殺生石の毛で目が真っ赤に」
 自信満々といった様子の蛋白石……でも。
「……アレルギーね」
 無理矢理過ぎる間違い方に、小声でツッコミを入れておく。
 でも、そこまで酷いアレルギーではないんだけどなぁ。
 でも、今日は目もかゆくなりそうかも。目薬用意しないと……。
「とりあえず、尻尾の手入れぐらいなら平気だから大丈夫だよ。でも外でやらないとね」
「そうですね……あの、今からお願い出来ますでしょうか、どうしても抜け毛が
気になってしまって」
 どこか申し訳なさそうな目線を送ってくる殺生石。
 学校帰りだというのを、気にしているのかな。
「うん、いいよ。今日は天気もいいから、ひなたぼっこついでにね」

 ちょっと強めの日差しに、さわやかな風。
 少しだけ、殺生石の毛並みが揺れる。
「すっかり梅雨も明けたねぇ」
 殺生石の尻尾にブラシをかけながら、空を眺める。
「もうすぐ夏ですよー。スイカたくさん食べたいですね」
 横から僕の手を覗き込んでいた蛋白石の、明るい声。
「相変わらず蛋白石は食べ物ですか。妾はどうも夏は苦手で……」
「この着物じゃあね。殺生石もたまには別の服着てみたら?」
「そ、それは……あまり人前で素肌を晒すのは好ましくありませんから」
 頬を赤くして、僕から目をそらす。
「えー、殺生石のワンピース姿とか見たいなぁ。ねっ、ご主人様!」
 マスクを付けていても分かるぐらいの、蛋白石の笑顔。
 ……殺生石の、ワンピース姿。
「……うん、見たい」
「あ、主様ったら……でも、主様が言うのなら、洋服も…………」
 どこか照れた様子の殺生石。
 今年の夏は、洋服を着た殺生石が見られる……かな?
「くしゅんっ!」
 どこかわざとらしいくしゃみ。
 真っ赤な顔でこっちを睨む殺生石を、僕はどんな顔で見ていただろうか。

「ところで、電気石はどうしたの?」
「え、お、お姉様……お姉様なら部屋にいますよ、一応」
 どこかぎこちない蛋白石の反応。
 まぁいいや。とにかく電気石におやつを買ってきたことを伝えないと。
「電気石ー、入る……よ?」
 その光景に、僕は固まる。
 殺生石の毛にまみれて、それを払うかのように床を転がる電気石の姿に……。

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