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強敵の名は」(2006/09/23 (土) 08:03:21) の最新版変更点

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  イライラ……。 「マスタぁー?」   イライライライラ……。 「ねぇねぇー」   イライライライライライラ……。 「マースータァーッ」 「あぁー? なんだよ、天河石」 「う……ごめんなさい」 「え? あぁ、すまん。天河石を怒ってるわけじゃないんだ」 「そうなの?」   そうか、天河石に嫌な思いさせるような顔をしていたのか……反省。 「今日で4匹目なんだよ……」 「4匹目? 何がぁ?」   俺はカーテンを指差す。そこには小さな黒い点……それがもぞもぞと動いている。 「カメムシ……捕まえようとすると臭いし、飛ばれると鬱陶しいし、なんかもぉいろんな意味で強敵だ」 「きょうてきー? なら宝石乙女の名にかけてぇ、天河石がやっつけてあげるー」   珊瑚の真似か? 天河石はどこから取り出したものか、小さな虫取り網を片手にカメムシに接近していく。   俺は止めない。その代わり惨劇回避のため、口元にタオルを当てておく。 「とりゃーっ……あれ、あれれ……あうっ!」   ……天河石、南無。 「マスタぁー……臭い取れた?」 「諦めろ、しばらく残るから」 「あうぅ……」   結局、捕らえ損ねた者の洗礼を受けた天河石。かわいそうだが運命だ。俺は天河石と距離を取っておく。 「な、強敵だろ?」 「うぅ、手が滑ったんだもん」 「自らのミスに言い訳するな!」 「は、はいっ……マスタぁー、なんだかいつもと違うよぉ?」 「気のせいだ。さて、あの昆虫野郎はどこいっだぁ!?」   突然目の前に飛んできたカメムシが額を直撃。痛い……硬い外骨格であの勢いはけっこう痛い……。 「こんのやろぉ~……捕まえてミンチにしてやる!」 「ミンチは無理だと思うよ?」   もう勘弁ならない。俺は殺虫剤を片手に強敵を捜す。くそっ、人にぶつかったはずなのにもう姿をくらましてやがる……家具と家具の隙間……ゴミ箱の中……天河石の頭……。 「そんなところにいないよぉ」 「それもそうか……あ、いた!」   いたも何も、最初にいたカーテンにまた止まっていた。 「馬鹿にしやがって……覚悟しろよぉ」 「マスタぁーがんばれー」   殺生ごとにがんばれという応援はどうかと思うが、この際気にしない。ゆっくりカーテンとの間合いを詰めて……よし、ここなら殺虫剤の射程範囲だ。 「ふははは! くたばれカメムシーいぃぃ!?」   なんということだ……最後の一歩を踏み出した俺は、こともあろうに天河石が放置したままだった虫取り網につまづいてしまった。そしてとっさにカーテンに掴まってしまい……。 「昆虫風情を相手にして、なぜこのような惨劇にならなければならないのだ……」 「面目ない」 「ごめんなさい……」   結局、修行から帰宅した珊瑚がカメムシを除去してくれた。 「まったく、これではカーテンも買い換えなければならないのではないか」 「そうだな……」 「大体あのような小さな虫、いくらでも追い出す方法があるではないか。それをわざわざ怒りに任せて……主とはいえ、情けない」   言い返せない……言い返したくもないけど、言い返せない。実際自分が情けないし……くそぉ、カメムシなんて嫌いだ。 「珊瑚ちゃん、こっちに来ないの?」 「臭いがきつい。いくら主と天河石とはいえ、今回は近寄りがたい」 「ごもっとも……」 「くそ、斧にも臭いがついてしまったか……恐ろしい虫だ」

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