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パパになるのも悪くない」(2006/09/14 (木) 20:50:28) の最新版変更点

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主「はぁ~……」   一人暮らしの頃は、家でこうしてぼんやりするのは至福の時だった。でも今は……。 蛋「ご主人様ーっ、一緒におやつ食べましょうよぉー」 電「んにぃ~……」 殺「主様、お茶を」   ……こんな調子なんです、はい。ちなみに電気石は充電中です。ぼんやりする暇なんでないし、静かなひとときはほとんど残されてない日常。でもそれなのに、楽しかったり生きてる実感を感じたり……不思議なものだよねぇ。   ふと、3人の方に顔を向ける。アップルパイ片手にこちらへ笑顔を向ける蛋白石。相変わらず顔を真っ赤にして三輪車のペダルを踏む電気石。そしてちっちゃな女の子を抱っこしながらあやしている殺生石……んっ!? 主「一人多いよっ……って、なんだソーダちゃんかぁ」 ソ「パパー♪」 殺「ふふ、呼ばれてますよ?」 主「だからそれはやめてってばぁ……」   この前遊びに来たときに、殺生石が余計なことをこの子に吹き込んでしまった。それ以来僕はパパ確定らしい。ご主人様も恥ずかしい呼ばれ方だがパパはそれを軽く上回る。 蛋「えーっ! ご主人様はソーダちゃんのお父さんだったんですか!?」 電「……ぱぱ?」 主「い、いや、だから違うってばぁ」 ソ「……パパじゃ、ないの……ぐすっ」   え……泣くの? そこで泣くの!? って、殺生石が睨んでるよぉ……。 殺「主様、いくら嫌でも泣かせるのはよろしくないかと」 主「違うよっ、嫌じゃなくて恥ずかしいだけで……あーもぉ、分かったから!」   黒曜石ちゃんに聞いていたソーダちゃんを泣きやませる方法(ソーダあげるだけなんだけど)を実践し、何とか泣きやませた僕。で、今はみんなで3時のおやつ。可愛い泣き虫さんは僕の膝の上でじゃれています。殺生石の微笑みがすごく恥ずかしい……。 ソ「パパ、あーん」 主「あ、あーん……」   フォークに刺した小さなアップルパイを僕の口に入れる。アップルパイは好きだけど、その時口に入れたそれの味は覚えてません、恥ずかしさが頭の中を巡っているので。 ソ「おいしぃ?」 主「はい……美味しいです」 ソ「じゃあもーいっかい。あーん」   これはどういう罰ゲームなんだろう。 主「あ、ありがと……ところでソーダちゃん、今日はどうしてうちに来たの?」 ソ「パパのとこ来たかったからー」 主「さよですか……」   ねぇ、なんでさっきから誰も話しかけてくれないの? こっちを微笑ましく見てるだけって、いじめですか? 電「ぱぱ?」 主「電気石、それはもういいから」 電「んー……」 ソ「パパー、遊んで?」   ……来ると思ったよ。大丈夫、覚悟はできてた。 主「はは……いいよ、何する?」 ソ「電ちゃんのにのりたーい」   乗りたいって……電気石の充電用三輪車? 主「だって。どうする、電気石?」 電「んー……電ちゃん?」   いや、そこじゃなくてね……。 主「……ソーダちゃんが、電気石の三輪車に乗りたいって」 電「……うん」   頷く電気石。どうやらOKのようだ、自信ないけど。しかしあれは電気石の生活必需品。というか何かあったら死活問題になる品だ。それを壊すかも分からない小さな女の子に……電気石って太っ腹なのかも。 ソ「ありがとー、電ちゃん」 電「電ちゃん?」 主「はいはい。それじゃあ、家の中だとアレだし外に行こうか」   電気石も来るかと思えば、家の中で待っていると言う。結局僕はソーダちゃんと二人で遊ぶこととなった。 殺「穏やかですね」 主「そう言って傍観する暇があるなら少しは手伝ってよ……」   殺生石は見物を決め込んでいる始末。 ソ「パパー、おしておしてー」 主「はいはい」   まぁ、文句を言ってても仕方がない。三輪車にまたがり、ハンドルをしっかりと握っているソーダちゃん。その背中を軽く押してあげる。一体何が楽しいのかは分からないけど、どうやらそれが楽しいらしい。さっきからにこにこ笑っている。   しかし、なんだか間が持たなくなってきたな……何か適当な話題でも振ってみよう。 主「ねぇソーダちゃん、ソーダちゃんたちのお父さんって、どんな人なの?」 ソ「? パパはパパだよ?」 主「そうじゃなくて……ソーダちゃんたちを作った人のことだよ」 ソ「よく、分かんないよ?」 主「ははは……じゃあ、みんなのお父さんってどんな人?」   こう聞いた方がいいのかな……。 ソ「んぅ~……みんなのパパ?」 主「うん」 ソ「……わかんない。おぼえてないの」   覚えてない、か。じゃあ、この子たちを作った人は、すぐに僕たちの元へこの子たちを送っているのかな。でもそれってどういう目的があるんだろう……。 主「ソーダちゃんは、どうして僕たちのところに来たの?」 ソ「呼ばれたからー」 主「ははは……」   やっぱりこの子にこういうこと聞くのは間違いだったかな。 ソ「でもねー、ほーせきおとめはほーせきのなまえがつけられるから、それにまけないきれーなおんなのひとになりなさいって」 主「ん、お父さんが言ってたの?」 ソ「パパはパパだよー。でも、覚えてない方のパパがいってた……とおもう」   宝石の名前に負けない、綺麗な乙女になれ……か。なんか宝石じゃない名前の子もいるけど、要は成長のためにこの世界に来た……ってことなのかな。 ソ「パパー? おしてー」 主「ん……あぁ、ごめんね」 主「すっかり遊び疲れちゃったかぁ」 殺「小さな子は、体力の続限り遊びますからね」   僕の背中には、完全に夢の中に向かってしまったソーダちゃんがいる。あれから鬼ごっこ、かくれんぼなどなどをしているうちに、こうして眠ってしまった次第だ。 殺「この子の家へ送っていくのですか?」 主「うん、場所は知ってるから」 殺「そうですか、それでは気をつけて。夕飯はわたくしたちで用意しております」 主「ありがと。それじゃ行ってきます」   殺生石の見送りを受け、この子のマスターの元へと向かう。   ……背中に伝わる温もりは人と同じ。だけど、重さは人より軽いと思う。一人暮らしでは、感じることのなかった感触だった。 主「宝石乙女……か」   ――宝石の名前に負けない、輝くような美しい乙女に育って欲しい。   じゃあ、いつかそういう乙女になったとき、蛋白石達ともお別れするときが来るのかな……寂しいな、それは。 ソ「んぅ……パパ?」 主「ん、起きちゃった?」   背中でソーダちゃんが動く感触。そのまま、僕の服を掴む。 ソ「おうちかえるの?」 主「うん。ソーダちゃんのマスターも待ってるよ」 ソ「んぅ……もっとパパといっしょがいい」 主「はは……ソーダちゃんは、みんなのお父さんのことは好き?」   何故だろう、唐突にそんな質問を投げかけてしまう。きっとちゃんと答えられないのは分かっているのに……安心したかったのかな。自分の寂しさを紛らわすために。 ソ「……パパのほうがいい」   そう、こう言ってもらいたかったから。そうすれば、いつか来る別れの寂しさも少しは紛らわすことができるから。 主「ありがとう。でも、本当のお父さんがなんか可愛そうだね」   こんな小さな子に安心させてもらうなんて、僕はとんだ臆病者だよ、まったく。 ソ「えへへ、パパー♪」   ……そう、僕は臆病者だ。だから彼女たちに傍にいてもらいたい。今はそう思う。だから……僕はこの子のパパになってもいいかな。   心から、そう思った。 殺「すっかりパパが板についてきましたね、だんな様」 主「は、恥ずかしい事言わないでよっ!!」 殺「ふふふ……では、わたくしはママになるためにだんな様と契りを」 主「え、ちょっ! ストップ、ストーップ!!」

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