海浜交通24時 -社員とお客様との仁義無き闘いー

海浜交通、その現場は平和そうだがかなり過酷な現場である。
朝の殺人ラッシュ、突然の急病人、車両故障、自殺未遂、酔っ払い、自己勝手な貴婦人・・・。
そんな日常と闘う社員達の物語である。

浜交24時[本編]

1、殺人ラッシュ「これに乗らないと遅刻」

朝8時、半田駅
海浜交通社員の闘いはここから始まる。
朝8時10分、たくさんの通勤客を乗せた帝国鉄道の211系(10両)が半田駅5番線に到着、多くの通勤客が吐き出され、その多くは海浜交通半田駅に流れて行く。
「ちっ、また始まったか」
と駅員がつぶやく、
海浜交通沿線は東部国を代表する工業地帯「東部海半田工業地帯」を抱えており、そこで働く従業員が近郊各地から帝国鉄道線に乗ってやってくる。
「この電車に乗んないと遅刻する」
と利用客の声。
「時差通勤をいくら呼びかけても直る気配はない」と駅員は語る。
海浜交通地下ホームには人があっという間に溢れかえった。

朝8時18分、海浜交通電車1320M(1500系4両)が到着、ドアが開くと席を求め急ぐ人でドア付近がつまる、社員総出で押してもなかなか車内に入ってくれない、そしてあっという間に車内は地獄絵図と化した。
だがホームには乗客が残っている、もう総出で押しても満杯な状況になってこういう人が必ずといっても現れる
「おい駅員! 俺は乗せてくれないのか、これ乗らないと遅刻になって給料減らされっちまうじゃないかよ」
とキレて駅員に文句ぶつける人、
「貴方がもっと早く駅に来ていればそんな事無かった筈ですよ。」
と駅員が説得した。
朝8時20分、発車時刻になったもののドアがなかなか閉まらない。緊急停止ボタンを押したような発車ブザーが鳴る。
「ブーーーーーーーーッ 発車致します、ドアが閉まりますから・・・」
だがドアは閉まらない、駅員が総出で全力で押し、なんとか閉めて朝8時21分、発車して行った。
「これからが心配ですね、時差通勤を心がけて、このような事にならないことが安全へとつながるんです。」と駅員が言う。
だが積み残し分の客は
「ああ、もう駄目だ・・・、部長にものすごく怒られる・・・。」
「給料、いくら減らされるのだろうか・・・。」
「もう、クビかもな・・・。」
とそこにはベンチで下を向いてつぶやく客の姿があった。

2、魔の運賃免除女

海浜交通では改札機の関係上Suitachi等の接触式カードは利用出来ず時間がかかるが有人改札にて清算させて頂く形になっている、「新改札機導入しろよ」で済む話だが一気に置き換えるとなるとかなりの出費となってしまう。
半田駅の連絡通路には「接触式ICはご利用頂けません」と堂々と書いてあるのにそれを見ず駅員に無理な要求をしている女が居た。

とある日曜日、半田駅
有人改札にとある女性と4歳位の子供が来た、入学式入園式と無縁の季節にちゃんとした服装であった。
「はい、ご用件は?」
と駅員が聞く
「ごきげんよう このICカード使えるかしら?」
(駅員の内心:何こいつ、化粧濃過ぎ)
と女性が答える
駅員:「ICカードは一応使えますけど・・・、少々お待ち下さい。」
そのとき駅員はちらっと女性の方を見た、左手にはダイヤモンドの指輪が何本もはまっており持っているバッグも超ブランド品だった。

女性「私(わたくし)達には少々でも待ってられる余裕など無いの、この際だから私達は運賃免除でよろしくて?」
(駅員の内心:どうせ遊びに行くんだろうがw この糞金持ち)
駅員「電車に乗る人は全員平等なんです、運賃免除は出来ません。」ときっぱり断った。
女性「私達を庶民扱いするつもり!? あらやだ。 まぁ、IC使える改札機に変えてくれるなら許しますけど」
(駅員の内心:お前らの全財産で全駅の改札機替えるなら運賃免除してくれたっていいけどな、俺らと違って金持ちなんだからさぁw)
駅員「申し訳ございません、現在の所新改札機に替える予定は今の所御座いません。」
すると女が突然怒り出した
女性「まぁっ! 全く駄目な鉄道会社だこと、もういいわ、坊やママについて来なさい。」
坊や「マ~マ~」
と有人改札を離れ出口へ向かっていった、ハイヒールの音が響いていた。
・・・・・・・・・・・ 
駅員「金持ちは自家用ジェットか運転手さん付きのリムジンにでも乗ってろやこの馬鹿貴婦人、浜交使うんじゃねぇよ。 一般客に迷惑だ。」
駅員は女が去った後、こうぶちまけた。
駅員と女性の対話中、通りかかった人の目は白かったような気がしたのは駅で騒ぐ金持ち女のせいだと駅員は思う、さらに金持ちも意外とICカード使う事が分かった。
「公共の乗り物である電車は自家用車とは違い自分勝手に使う物ではない」と女性は今日の出来事でいっそう思った事だろう。

3、帰らぬ旅の切符は売ってません

朝のラッシュが落ち着いた昼、谷田部町の清ノ浜駅には平和な雰囲気だった、海も近くウミネコの鳴き声がかすかに聞こえていた。
だがそんな雰囲気は一気に闘いの舞台になる、一人の女が改札を通った、駅員が「あの女の人、暗いな・・・。 なんかあったのだろうか・・・。」と思った。
しばらくすると
「ピンポーン~ まもなく1番線を快速列車が通過いたします、黄色い線までお下がり下さい」とアナウンスが流れた。
白い服を着た女は下がるどころかホームすれすれまでに近づいた、駅員は「自殺だな」と悟った。

駅員「お客さん! 危ないですよ、下がって下さい!」
と取り押さえ自殺を止めようとしたが女は
「駅員さん離して! 私は負け組の人間なの、世の中でも不要な人間なの!  離して」
と叫んでいた
すると駅員は
「貴方は負け組では無いですよ、母さん父さんお友達が悲しみますよ、あと両親に賠償請求しますよ、皆さん悲しみますよ。」
と語りかける、女は
「いいから離して! 離してぇっ!」
と大声で叫んでいる。
快速電車はかなりのスピードを出して近づいている、しかも運用開始したばかりの新型車の運用だった、前面に取り付けられているヘッドマークが見えた、周りの人々は視線をこちらに向けている。
快速電車が駅に入線、警笛が大きく響いた。
駅員は今命を絶とうとしている女性、両親や友人、そしてこれから活躍するであろう新型車両の為に全力を出して自殺を止めた、快速電車は通過していった。

女性は無事だった、駅員が救ったのである。
女性は泣いている。
周りの人々は拍手していた。
「もう全て終わりにしようと思ったのに・・・。」
すると駅員がこう語った
「私、実は今日誕生日なんです、生んで育てて下さった家族や友人にとても感謝しています、亡くなってしまった母の分まで生きようと思ってます、だから貴方も命を今度から大切にしてくださいね。」
と言った。
女性は
「ごめんなさい、もうしません。」
と泣きながら言った。

新型車の運用デビュー日に人身事故を起こしてはいけないと思い一人の女性を救った駅員は人々の話によりいつしか「清ノ浜駅のヒーロー」という愛称も付き、翌日の新聞の記事になり、駅員の名は中野県中に広まった。
きっと天国にいる駅員の母も喜んだ事だろう。

4、バス停という名の駐車場

ある日、浜交バスのとある運転士は半田市内でバス運転をしていた、車輌は運転士のお気に入りである富士重工車体のバスであった。
「あ~ぁ、今日もこいつか、まぁ乗りやすいからいいなぁ」
(ピロロロ♪~)
「つぎ、とまります。」
バス停が見える位置まで近づいていた、その時運転士はあるまじき光景を目にした。
なんと車がバス停のど真ん中に止まった、違法駐車である。
バス停の手前に乗客を多く乗せたバスを停め、警笛を数回鳴らした。
運転士:「おい、バス停に車止めるんじゃねぇっ」
すると車からタバコを吸った一人の男が現れた。

男「運ちゃんが言うなよ、ここ駐車場だろぉ?」
タバコを道路に投げて言った。

運転士:「違う、ここはバス停だ、このバスには多くの人が乗っているんだ、バス停を空けろ」

男:「俺も用があるんだよ、空けネェよ。」
運転士:「空けないなら警察に違法駐車として通報しますよ。」
その時車内の人々は騒ぎ始めた。
「一体何があったんだ?」
「遅れちゃうよ・・・。」
「まったく、最近の若者は道徳心がないのう・・・」

運転士:「だから早く空けてください」
男:「運賃箱に入ってる金全部くれたら空けてやるよ」
と論争は続いた、論争を止めたのはバス停にいた人であった。
「違法駐車やめろよ、俺たちの時間が無駄じゃねぇかよ」
すると男が
男:「ちっ、仕方ねぇな、空けてやるよ、運ちゃん覚えてろよ」



3分の論争は終わったのであった。

運転士「ったく、ここはどう考えてもバス停じゃないかよ。親の顔が見てみてぇ。」
運転士はそう思った。
当時半田市の違法駐車禁止規定は免許の減点、3万円以下の罰金と少し緩い規定であった。
その後海浜交通は市に「バス停の違法駐車には厳しい罰則を定めるべき」と要望した、さらにその意見に市営バスも賛同、晴れて可決となった。

たった3分の論争で市の規定を変えてしまった話である。

5、忘れ物の行方

どこの鉄道会社もそうだが、車内の忘れ物は絶えない。
昨年度の忘れ物として1位は傘などの雨具、2位は衣類、3位は雑誌などの書籍であった。
車内で忘れ物があった場合、3ヶ月間本社忘れ物センターに預けられるが3ヶ月超えると半田市内のデパートで行われる「忘れ物大市」にて格安で売られたり、社員が勝手に持ち帰って行く。

だがしかし「3ヶ月」という期限を知らずに文句を言いつける者もいる。
ある日、本社忘れ物センターに電話がかかってきた。

中田さん:「もしもし、海浜交通忘れ物センターでしょうか?中田と申します。あの・・・4ヶ月前、千牧行き半田8:18発の快速電車の中に週刊文化を忘れた者ですけど、あちらで預かってますか?」
社員:「場所はどこですか、何号車ですか?」
中田さん:「4号車の網戸に置いたんです、預かってますか?」
社員:「基本的に3ヶ月経過しましたら処分致しております、ご了承くださいませ」
中田さんはいきなりキレ始めた。
中田さん:「え? 処分しただと!? はぁ3ヶ月なんて聞いてネェよ、俺の4ヶ月前の500円返せよ、まだ3ページくらいしか読んでいなかったんだよ、グラビアアイドルのワイド写真じっくり見たかったのによッ!」
社員:「すみません…」
中田さん「一体どういう事なんだよっ! あのときの週刊文化返せよっ、ったく、もう二度と浜交使わねぇよ!」
(ブチッ プープープー)
という事で電話を切らされた


社員「もう二度と浜交使わネェって言い過ぎでしょ…、ったく会社の状況知ってほしいわね、クレーマーさん。」
社員2「なら早く忘れ物に気づけって話ですよね、電話代の無駄だし迷惑ったらありゃしない」
今回の一連の忘れ物トラブルについては早めに気づき、早めに引き取りに行くことが大切である。

その後社員は「忘れ物の内容」よりも「中田さんの記憶力」の方が気になったそうだ。

浜交キャラクターに関する話[浜交24時特別編]

「闘い」ではないがここ浜交キャラ誕生についての話をします。

エピソード1「社員の考え」

2009年暮、海浜交通鉄道営業部は2年連続の部門赤字を抱えていた。
そこで一人の社員は考えていた
「乗合バス営業部は黒字だというのに、バスの乗客全員に『浜交電車乗れやゴルァ』って言うわけに行かないしなぁ…。」
そう思い込みながら半田市郊外の自宅へ帰った。
自宅に戻り、夕食が作り置きしてあった、時刻は午前0時を回っていた、暇だったのかテレビをつけた。
その時写ったのは深夜アニメ「弾丸教室!」だった。
「まあ何も見てないよりはマシか」と思ってしばらく見ていたら主人公「美香」が通学の時に使うバス「青空交通」のバスの色に社員は驚いた。

社員「青空交通バス… あれ浜交のバスじゃないか?」
そう思ってるうちに番組が終わってしまった。
社員「浜交なんて知名度の低い会社のバスいちいちアニメに出したんだろう…?」

ふと考えパソコンを起動し、そのアニメについて調べたら作者である小林さんは半田市出身で「地元の風景を描きたかった」という思いで「弾丸教室!」は作られたという。
その後も社員はこのアニメを見続けた。

エピソード2「社員の発言」

数日たったある日、この社員は海浜交通広報部に転部した、広報部会議でその社員は前からずっと考えていた事を発言した。
社員「二次元キャラクター、作ってみませんか?」
広報部一同「えっ!?」
皆は驚いたし一瞬にして凍りついた、
広報部長「アニメと現実は違うだろ、二次元なんてあるか」
最初は皆その話については黙っていた、だがある出来事で意見は一変する。

矢田部町内の中華レストランにて広報部の宴会があった、そこにはテレビがありニュース番組が流れていた、その時、こんなニュースが流れた
「最近、萌えキャラを使用し、知名度が上がった企業が・・・」
皆は手を止め、テレビを見た。
広報部長「やっぱ、あいつの言う事は正解だったのかもしれんな。」
その後広報部にて「キャラクター」を作る動きが高まった。

エピソード3「キャラ設定の苦悩」

早速キャラクターを作る事が具体化し、社長の許可も得た…が問題が発生した。
「萌えキャラって女だけだろ、どうせ同じ絵になるからくだらなくなる。」
そういう意見も多かった。
「だったら『萌』を消しましょうよ、女性ばかりなら男性でやってみたらどうです?」
企業のキャラクターに「男性」という概念は無かった、その逆を言えば「珍しい試みで注目度を集める」という事も出来た。



考え出した社員はその後キャラ全体の設定を任せられ、いつもと違い考えながら歩いて帰った。

「キャラなら若い方がいいなぁ、中学生か、身長は…」

エピソード4「ある人の申し出」

そのキャラ検討は新聞の片端に「浜交、キャラ導入へ」という名の記事が載った、だが社内にはアニメもとより漫画自体描けない者もいる、そこで本社正門前の掲示板に「キャラ描いてくれる人募集します」と言う旨の張り紙を貼った、すると一人の者が電話をかけて来た。
「私小林と申す者です、キャラクターに関してですが私が描きましょうか?、私、漫画をアニメ化したことがあるので自信があります。」
社員「ならば是非お願いしたいのですが・・・。」



「わかりました、今晩徹夜で描いてきます。」
それから3日後、小林本人が絵の原稿を持って来た、
「失礼で何なのですが実はあの『弾丸教室!』(人気だったらしく二期放送中)の中羽拓真を少しアレンジし考えながら徹夜で描いて来ました、名前も考えて来ましたよ。」
社員「ああ、中羽君ですね、いつも見ていますよそのアニメ…ってその名前とは・・・?」
小林「見て下さって有難うございます。名前は半田拓海です、半田というのは私の一番好きな街である半田市からです、拓海というのは中羽君の名前を海浜交通らしく『海』にしました。」
社員「我社にはぴったりですね!、採用させて頂きます。」
あっさり決定した、社長も文句なしで許可した。
社長「おお、これはいける予感がするぞ」
2010年秋の事だった。

エピソード5「登場」

2010年冬、半田駅の連絡通路に一枚のポスターが貼られた。
「新キャラクター、半田拓海君登場!」
と書かれており内容としては自己紹介であった。
社員はそのポスターを見て感動し、こう語った
「僕の意見でこうなるとは思いもしませんでした、半田君には海浜交通を変えてくれる能力があると思います」

2010年度最終決算では鉄道部門は赤字であったが利益が僅かであったが上がっていた。
キャラクターを設定し、「完全な成功」とは行かなかったものの「成功」と付くのは間違いなかった、2011年、その社員は広報部長に昇格し、現在も働いている。

ご意見、ご感想はこちらへどうぞ

  • ・・・・・なんか自分でも書きたくなってきたので、リスペクトさせていただきます。 -- 田中電鉄 (2011-04-17 12:28:25)
  • すばらしいです。これがあれば社員の教育にもなりますね! -- H2 (2011-08-02 21:50:10)
  • 海浜交通のキャラにこんな経緯があったとは…ちなみに荻鉄キャラにも、こんな経緯があったり無かったり。 -- 亀山茂則 (2011-08-03 23:49:08)
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最終更新:2011年08月03日 23:49
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