俺は、どうしていいかわからず、とりあえずレナの両肩をつかんだ。
それと同時に、レナは目をつぶり、唇を差し出した。
少しずつ、レナの唇に近づいていく。
心音がうるさすぎて、雪解けしたばかりの雛見沢の空気の音が、聞こえなくなった。
ここは雛見沢じゃないどこかで、そこにはレナと俺しか居ない。
唇がさらに、近づいてくる。まだ化粧も知らないレナの、自然のままのピンク色の唇が。
 俺は意を決し、目をつぶった。
そして、唇を重ねようと、首を傾ける。
……唇が触れた。俺の胸は、中からの圧力で今にも破裂しそうだった。
レナのやわらかい唇が、俺の唇と触れ合っている。いつまでこうしていればいいのだろう。
一体何秒時間がたったのだろう。レナの甘い鼻息が、俺の唇をくすぐった。
「ぷはっ」
俺は思わず、口を離した。
「け、圭一くん、キスのやり方、知らないのかな? かな?」
 レナは震えていた。俺は車の床にへたりこんで、床に手をついている。
その顔を、レナは覗き込んだ。
 「ほ、本当の、キス、キスの仕方を、レ、レナが教えてあげる」
かたかたと震えたレナは、きっと恐怖で震えていた。俺だって怖かった。
さっきのキスでさえ、一体これから何が起こるんだろうと、終着点のはずのキスが、
何かの開始点のような気がして。
俺の恐怖はレナの恐怖だった。
いや、レナにはそれ以上の恐怖があった。
 知ってるだろう? 前原圭一。
関係が壊れそうで怖かったのは、俺だけじゃないんだ。
レナが俺と同じぐらい……いや、俺がレナを好きな以上に、俺を好きでいてくれたんだから。
お前は、キスしてなんていえたのか? 言えなかっただろう? 
じゃあ、お前のすることは、ただ一つなんだよ!
「レナ、怖がらないで」
俺は、レナを抱きしめた。
震えが直接伝わってくる。
その震えを、何とか俺は押し込めた。
「す、好きだから。俺、レナが、レナが誰よりも好きだから!
 だから、もう、もういいんだよ!」
「ダメだよ、ダメなんだよ、圭一くん! 私怖いの! 私しってるもん!
 幸せなんて長く続かない。続くもんか! 
幸せのほうが、長く続かないんだ。
この世は不幸に満ち溢れてるんだ……明日世界は破滅するかもしれない。
だから、幸せを精一杯今日集めてるの。今日じゃないと……ダメなの……」
 レナは、泣き出してしまった。
俺は、レナの顔を自分の胸にうずめてやる。
「レナ、幸せが長く続かないって? 不幸の方が多いって?
 レナ、俺の大好きなレナ、じゃあ教えてくれよ。
今までいくつの不幸があった? 今までいくつの幸せがあった? 
きっと知らないだろうさ。だってレナは数えてない。知ってるか?
 この世に生を受ける人は、この世から去る人より多いんだ。
俺は、幸せだぜ。だって、レナと会えた。この世界に居たから、
俺はレナと会えたんだ。だから、レナ……俺の大好きなレナ。
泣かないでくれ。震えないでくれ。
俺はレナの笑顔から、元気を貰ってるんだ」
 「だって……だって!」
俺はもっと強く、レナを抱きしめた。
震えはなくなっていた。
俺が抱きしめて消した。
 「魅ぃちゃんが……居なくなったもん」
本当は、レナも魅音が居なくなったのを、悲しく思っていた。
「私……卑怯だもん。魅ぃちゃんが、圭一くんのこと好きなの……知ってたんだもん……」
 「レナは、俺が好きか?」
「……うん」
「じゃあ、卑怯じゃない。それに……俺は居なくならない。ずっとレナのそばにいる」
 「嘘だッッ!!!」
「嘘なんかじゃないッ!!」
俺は一瞬たりとも動じなかった。もう迷わない。
「……さっきのキスじゃ満足できないっていうんなら、してくれよ。
本当のキスってやつを。いや、頼む。してくれ。」
 「うん……私も、本で見ただけなのに、笑っちゃうよね、こんな偉そうに」
ふふっと、レナは少し笑った。
泣き顔を体操服のすそで払って、レナは再び目をつぶった。
俺も、目をつぶる。
今度のキスは、唇まで一瞬だった。
俺は、レナに押し倒される格好で、レナの唇を受け止める。
と、突然レナの舌が、俺の唇にふれた。
こじ開けるように動く舌に俺は意味を理解した。
俺は唇をあけ、舌を受け入れる。
レナはその舌で器用に俺の舌を探り当て、絡めとった。
くちゅくちゅと淫靡な音が響き渡る。
うるさい心音は遠くなって、先ほどまでと違って妙に落ち着いていた。
「ん、ぷは」
レナは、唇を離した。
息は荒く、とろけそうな顔をしていた。
俺もきっと、そういう顔をしている。
思いっきり運動して、最後の最後にぶっ倒れたみたいで……
さっきまでの舌の感触がまだ残っていて、心地よかった。
 「あっ……」
レナの足が、俺の充血して起立したものに当たった。
「んぅ」
変な声を上げてしまう。
「け、圭一くん? どうだった?」
「……キモチ……良かった」
「そう……良かったぁ、私も気持ちよかったよ……圭一くんよりよっぽど、レナのほうがえっちだね」
「はは、俺のほうがえろいよ」
 俺は、なんとかして充血を納めようとする。
バレたら大変……というか、さっき足が当たった時に確実にばれている気がするが、
そんなことを言ったらムードぶちこわしだ。
「ごめんね……レナのわがまま、聞いてくれて」
「はは、これからもっと聞かないとダメだからな。
金かかるのは勘弁してくれよ。俺の国の国家予算知ってるだろ?」
「あははは、圭一くんにそんなの期待しないよ」
 一通り笑った後、俺は何とか落ち着きを取り戻しつつあった。
「な、なぁ、レナ、ちょっと、そろそろ動いてくれないか?」
肩に手をあて、押そうと思ったときに、レナはのけぞり、俺の上から動こうとした。
タイミングが悪かった。レナの胸に、俺の手のひらが当たる。
「ひゃっ」
「ごめっ」
「けぃ、いちくん、ちょ、手……」
なぜか俺は、思いっきりレナの胸を握り締めていた。
慌てて手をどける。
 「はっ、はぁ、はっあ……ご、ごめんね、圭一くん、私が早くどかないから……」
「いや、お、俺もちょっとラッキーだったかなー? って、はは」
「もう、圭一くん……」
レナが後ろに手を付き、立ち上がろう……としたのだろう。
その手は、俺の股間の上だった。
すぐにずれて、俺のふとももを触る。
「ふぅっ!」
また、ヘンな声を上げてしまう。
 「きゃ、ご、ごめん……さっきから、変だよね? あはは」
「うん、変だよな、はは」
沈黙が、あたりを支配した。もう日が傾きはじめて、夏だったらひぐらしが鳴いているころだろう。
 「……あの、あのね、圭一くん。あの、レナ、その……お詫びに……
なんて言ったらいいのかな、その……す、すっきり、すっきりさせてあげようか?
 その、け、圭一くんの、その、あのー……こ、ここ、ここを」
また、レナは震えた。さっき俺が感じた、キスの先の何かを、レナも感じていた。
ずっとさっきから、感じていた。
「あ、え、お、俺……その、すっきり、したい……です」
なぜか敬語になってしまう。
 「ふふ、じゃ、じゃあ、すっきりさせてあげるね、うんしょ」
じじ、とズボンのファスナーが下ろされる音がした。
俺の血液は、めまいを感じるほどに急激な移動を開始していた。
また俺は、レナのことを思って充血させてしまう。
「あは、あはは、その、はじめて、かな、レナ、見るの、はじめて……」
俺の起立したものは、パンツの穴から出ようと、必死に入り口に張り付いていた。
ボタンがひとつかけてあって、それが出るのを邪魔していた。
「ボタン、外すね」
レナがボタンに手をかける。
それだけで、レナの手の感触が伝わってきて、俺は気が狂いそうなほどの感覚を覚える。
 「はぅ……圭一くんの……でてきたよ。高いウィンナーみたい」
高いウィンナー……レナらしい例えだ。
「肌色なんだね……圭一くんの、ここ」
ちょんと、レナは指先で触れた。
今まで味わったことのない感覚が、再度襲い掛かってくる。
 「本に書いてたのと、ちょっと違うかな」
「そ、そうなのか?」
「うん、なんか先がピンク色っていうか……そんな感じだったから」
「あ、な、中身はそんな感じかも」
「中身?」
 レナは、俺のに手をかけた。
「はぁっっぅ……」
触られただけでこんなことになるのに、これでこすられたりしたら、俺は一体どうなってしまうのだろう。
 「ど、どうすればいいのかな?」
「その、掴んだまま、上下に……」
「こ、こうかな?」
レナは言われたとおり、掴んだまま上下にしようと、とりあえず下に下ろした……
勝手がわからないから、俺が今まで下ろしたことも無いぐらい下に……下に。
突然、皮が突っ張る。
それでもレナは関係なく、とりあえず下に下ろすもんだと、強引に下ろしていった。
 「あぅっ、レ、レナ……レナァッ!」
俺のものが、はじけた。
皮が下にずり落ちて、今まで空気の触れたことの無かった俺の中身が、外に顔を出した。
「はぅっ!」
俺のものが、驚いたように何度も何度もはねる。
最初の跳ねたときには何も出なかったのに、二度、三度はねると、白い液が勢い良く飛び出した。
本当の射精というものを、俺は初めて味わう。
 「ひゃうぅ、これ、男の人の?」
レナがそういってても、手を離さないからか、鼓動の度に俺のものは精を吐き続けた。
 それがようやく収まったころに、また二度三度、小さく震えるように跳ねる。
「なんだか、圭一くんの……かぁいいよ」
「ご、ごめん、汚しちまった……」
「圭一くんの、出したり無いんじゃないかな? かな? 
さっきだって、最後何も出ないのに跳ねてたし……いまも、勃起してる」
 レナの、勃起という言葉に、俺は反応してしまった。
それに、レナの顔にかかった精液と、体操服にかかった精液が、俺の変態的な感覚を刺激した。
「こ、こういうの、どうかな?」
レナは、俺の上に跨った。そして、レナは体操服を着たまま、自分の股間と俺の股間を刷り合わせる。
ブルマの感触が、俺のさっきまで子供のものだったものに、すりつけられる。
「レ、レナ……俺、狂っちまうよ……レナ、レナ……」
 「あはは、圭一くん、かぁいい。女の子みたい……レ、レナに犯されて……感じてるのかな?」
まさに、そういう感じだった。
レナが腰をゆするごとに、俺もつられて腰を動かす。
まるで別の生き物かのように、まったく言うことを聞いてくれない。
「あうぅ、レ、レナ……俺、また、また出そう……」
「ダメだよ、圭一くん、圭一くんがまた出しちゃっても、レナ、止めないから」
 レナのふとももが、俺のものに当たった。
その柔らかい感触が伝わったその瞬間、俺のものはまた爆ぜた。
「あ、あ、ああ……あ……」
レナがこすりつけるたび、俺は声を上げた。
でも、その声はレナに届かない。
 「け、圭一くん、さっき出したのに、また出すの? 圭一くん、変態だなぁ」
そういいながら、レナは腰の動きを止めてくれなかった。
次第にその動きが加速していく。
また、俺のものからにじみ始めた液が、レナのブルマを汚していく。
もう染みだらけで、一回洗濯したぐらいじゃ落ちそうにも無い。
「レ、レナ、止めて、止めてくれ、これ以上やったら、
俺、どうなるかわからない……レ、レナぁ、な、やめてください……」
「圭一く、んのに、り、リボンつけちゃおうかな、
もう、出ないように、縛っちゃうの、かぁいいだろうな、あはは」
レナの動きが変わる。
俺のものをふとももで挟んで、こすりあげる形になった。
俺のものはもう皮が自由に動くようになっていて、一つの苦痛も与えてはくれなかった。
ただ快感の波だけが俺に襲い掛かってきた。
真空中のように密着したレナのやわらかい太ももは、俺の四度目の射精を受け止めて、
なおすべりを良くしただけで止まってくれない。
「ふぅんん……レナ、レナ……はぁん、止めて、止めてください」
もう俺に恥なんてものは無かった。
丁寧に謝罪する自分からにも、快楽を得られるようになってしまった。
「も、もうちょっとだから、レナ、もうちょっとで……はうぅッ!」
レナが大きく震えて、俺の上に倒れ掛かってくる。
ずるんと外れた俺のものが跳ねて、レナのお尻を何度か叩いた。
お互い息を切らし、落ち着いたあと、俺はやっと下半身の寒さを感じた。
ああ、ズボンがすごい汚れてる。母さんに見つかったら、一体なんていわれるだろうか。
「ちょっと……待ってね……ティッシュ、持ってくるから……」
レナは這ったまま、車の後部からティッシュの箱を持ってきた。
倒れたままの俺の、汚れた下半身を、そのティッシュでふき取ってくれる。
また、そのときぴくぴくと跳ねてしまう自分のものを、ちょっと不気味に感じた。
「はぅ、かぁいいよ」
「も、勘弁、してくれ……」
「冗談だよ? だよ?」
俺とレナは、力なく笑った。
 日没の赤が、ゴミの山を染める。その頂上に、俺たちは居た。
「ねぇ、圭一くん?」
「なんだ?」
「圭一くん、何歳まで生きるかな?」
「さぁ……それは分からないな」
「もし、レナが八十歳まで生きたら、圭一くん何歳まで生きたい?」
「んー、八十と一日かな」
「あっはっは、なんで?」
 レナが、いつもと違って大口を開けてわらった。よほどおかしかったらしい。
「なんでって……そりゃあ、レナ、寂しいだろ? 俺が、七十で死んじまったらよ?」
「寂しいよ」
「だったら、俺はレナより後に死ぬのがいい。
レナが死ぬときに、今までの人生幸せだったって、誰が言うんだよ? 俺だろ?」
「そうだよね、そうだよね……だったら、レナも八十と一日まで生きる!」
「何だって、じゃあ俺は二日だ!」
「じゃあレナは三日!」
「四日!」
「五日!」
「うぉお、俺は那由他(なゆた)日だ!」
「甘いよ、圭一くん、レナなんか不可思議日なんだから」

「じゃあ」

「「永遠」」

俺たちは二人同時に言って、笑った。
 俺たちは手をつないで、家の道を歩いていく。
ずっと、ずっと、これからも。
俺とレナは決意した。

夏だったら……そう、ひぐらしのなく頃に


―完―

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最終更新:2007年08月23日 11:33