口移し編(???×レナ)の解です。

 口移し編 解(圭一×レナ)

「レナ…すぐ助けてやるからな」
 竜宮レナが秘密基地内で逆転の一手を実行する決心を固めていた頃、前原圭一は、そこから少し離れた茂みの中から廃車内の様子を伺っていた。
 圭一がこの場所にいる理由。それは雛見沢症候群に罹りかけている疑いのあるレナを助けるためであった。
 圭一から見た最近のレナは、明らかに様子がおかしかった。
 普段はいつもの明るく優しいレナなのだが、注意深く観察していると、いつの間にか仲間との輪の外におり、誰も見ていない所では深く悩んでいるような表情を浮かべ、数回だけだが、首を掻くような動作を見せたのだ。
 そして数日前、とうとう家にも戻らなくなったことを聞き、たまたま傍に居た梨花に相談したところ、レナが雛見沢症候群を発症しかけているという結論に至り、入江から貰った特効薬を飲ませることになったのである。
 レナの居所を確認するのにそう時間は掛からなかった。
 自宅と分校以外で彼女が長時間身を置きそうな場所といえば、あの秘密基地以外なかったからだ。
 そして、先程廃車の中で明かりが点けられたのを見て、自分の予想が的中したことを確信する。
「さて、あとはどうやってこれを飲ませるかだな……」
 圭一は懐にしまってある飲み薬の瓶をぎゅっと握り締める。
「お前は病気だから、これを飲めば治る」と言ったところで、今のレナはとても信じてくれないだろう。
 やはり、ここはお得意の口先の魔術で、上手く口車に乗せて―――と思ったその時、いきなり廃車の後部座席の扉が勢いよく開き、レナが外へと出てくるのが見えた。
「やべっ……!」
 突然のことで身を隠す暇も無く、あっさりと見つかってしまった。
―――こうなったら、仕方ねぇ……。
 圭一は気を取り直すと、警戒させないよう笑顔でレナに呼びかける。
「よ、よぉ、レナ。今日も宝探しか? 俺も混ぜて―――」
 だが、レナの見せた反応は圭一の予想よりも遥かに悪いものだった。
 彼の顔を見るなり、一瞬だけ恐怖の表情を見せた後、奇声を上げて嗤いながら鉈を振りかざしてきたのだ。

「あ…あっははははは! 出たなぁ、宇宙人!!」
「レ、レナ? どうしたんだよ、俺だよ!?」
 圭一の呼びかけなど全く耳に届いていないのか、レナはさらに声を張り上げる。
「どうした、かかって来なさいよ! 私はお前達なんか怖くないんだからねぇっ!!」
「嘘だろ……。レナ……」
 ショックだった。
 あの可憐な笑顔を絶やさないレナが、まるで悪魔に乗り移られたかのように顔を歪ませていることが。
 他人を傷つけることを嫌うレナが、何の躊躇いもなく鉈をこちらに向けていることが。
 そして、何よりも、ほんの数日前まで普通に遊んで、普通に笑い合って、そして―――普通に恋をしていた相手を判別できないことが。
 悲しさで視界がぼやけてきたが、今のレナがそれを知る筈もない。
 しかも、圭一が動かないのを見て、先制攻撃を仕掛けてきた。
「あっはははははは! 来ないなら、こっちから行くよぉぉぉーーーっ!!」
「くっ!!」 
 勢いよく突進してくるレナを見て、すぐさま圭一は我に帰る。
 そして、懐から催涙スプレーを取り出すと、相手の顔目掛けて噴射する。
 使用するのは初めてだったが、煙は寸分の狂いもなくレナに浴びせられた。
「きゃあっ! ゲホッ! ゴホッ! なに、これ……?」
 至近距離で煙を吸い込んだためか、レナは苦しそうに咳き込み始め、手に持っていた鉈を地面に落とした。
―――今だっ!
 圭一はその隙を見逃さず、レナの身体を羽交い絞めにすると、そのまま地面に押し倒して圧し掛かる。
 たちまち、レナの物凄い罵声と抵抗が始まった。
「放せっ! 卑怯者! 殺してやるからっ!」
 両腕を押さえつけているにも関わらず、体格にもそれなりの差があるにも関わらず、レナの暴れ方は尋常なものではなかった。
 こちらを鋭く睨み付ける瞳と、剥き出しにして食い掛かろうとする歯は、まるで猛獣のようで、少しでも気を抜いてしまえば、本当にこちらが殺されてしまうと感じてしまうほどだった。
 それでも、やはり体力の差と位置関係がものをいったのか、レナの抵抗が次第に鈍くなり始めた。
「うっ……く……」
 相変わらずこちらを嫌悪の表情で睨み付けてはいるが、両手足の力はかなり弱々しくなっている。
「よし……」
 もう脅威はないと判断した圭一は、懐から薬を取り出すため、レナの両手首を片手で一纏めにして拘束しようとした。
 しかし、圭一は失念していた。レナがどんな時でも最後まで挫けない、強い少女であることを。

 改めてそれを思い知らされたのは、腹部に鈍い痛みが走った時だった。
 渾身の力で両腕の拘束を振りほどいたレナが、圭一の鳩尾に鋭い一撃を与えたのである。
「ぐ…あっ!!」
 堪らず呻き声を上げながら横に倒れこむ。
 見ればすでにレナは立ち上がっており、きょろきょろと辺りを見回していた。
 おそらく、先程落とした鉈を探しているのだろう。
 もう周囲は薄暗くなっているが、このままでは見つけるのは時間の問題だ。
 圭一は痛みを堪えつつ何とか立ち上がると、傍の茂みに隠していた金属バット―――万一に備えて持ってきていたのだ―――を拾い上げる。
 丁度レナの方も鉈を拾い上げ、こちらを振り返るところだった。
 それを見た圭一は、咄嗟に彼女の鉈目掛け、勢いよく金属バットを振り回す。
「うおりゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」
 ガキィンッ!! という金属音と共に、鉈はクルクルと輪を描きながら弾き飛んでいく。
 そして間を置かず、武器を失って呆然と立ち尽くしているレナに再び掴みかかる。
 我に返ったレナは手を振り払って逃げ出そうとするが、すでに圭一の腕は、彼女の身体を力強く捕らえており決して離そうとしなかった。
「あっ……! いやっ! 放して、汚らわしいっ!」
「誰が…放すかよっ……!」
 そして、手間取りながらも何とかレナを押し倒すと、今度こそ全身の力と体重を込めて彼女の身体を押さえつける。
「うぅ……」
 同じ手段は通用しないだろうと観念したのか、今度はレナも殆ど暴れたりせず、瞳に涙を滲ませ、恐怖で肩を震わせていた。
 それでも圭一は油断せず、細心の注意を払って懐から薬の瓶を取り出すと、口で挟んで蓋を開ける。
「レナ、いま楽にしてやるからな」
 しかしながら、この状態ではとても素直に飲んではくれないだろう。
 となると、方法はたった一つしかない。
「頼むから、そのまま大人しくしててくれよ」
 圭一は薬を口に含むと、そのままレナの口元へと顔を近づけていく。
 口移しで直接彼女に飲ませるためだ。
 だが、途端にレナの顔が強張ったかと思うと、先程よりも更に激しい抵抗を始めた。
「い、いや…いやぁぁぁぁぁっ! 放して、放してぇぇぇぇぇっ!!」
 レナは何とか自由になろうと身を捩じらせ、両脚をばたつかせて暴れに暴れる。
 無理もない、と圭一は思った。
 おそらく、今のレナには俺の顔が宇宙人に見えている筈だから……。
「圭一くんっ! 圭一くぅぅぅんっ! 助けてぇぇぇぇぇっ!!」
―――レナ、すまん……。
 悲痛な叫び声を耳にしながら、圭一は心の中で謝罪するほかなかった。
 彼としても、レナとのファーストキスがこんな形になるのは避けたかったのだ。

 なおも唇を引き結び、顔を背けて抵抗の意思を示すレナの細い顎を掴んで真正面を向かせると、やっと彼女は身動き一つしなくなった。
 先程までの強気な態度はすでに失せたようで、涙目で怯えるその姿は、喩えるなら肉食獣に食べられる寸前の小動物のようだった。
 その様子に、圭一の心の奥底にある嗜虐心に僅かな火が灯り始める。
 窮地に陥っても決して怯まない彼女を屈服させたい。あの瞳の輝きを絶望の色に変えてしまいたい―――そんな気持ちが沸き起こっていた。
―――って、どうしたんだ、俺……。
 一瞬、本来の目的を忘れそうになってしまった自分を戒めると、覚悟を決めてレナの唇に自分のそれを重ね合わせる。
「んっ…! む…うぅぅぅん!!」
 レナの口元から、叫びとも呻きとも取れる苦しそうな悲鳴が漏れ始めるが、圭一は全く動じることなく、彼女の唇を塞ぐことに専念し続ける。
 そして、息苦しくなったレナが呼吸のために口を僅かに開けると、すかさず薬を流し込み、さらに舌を駆使しながら嚥下させた。
「んぐっ! うっ! うあ…ぁ……!」
 薬がレナの口内から喉を通っていくのを、圭一は耳と目で確認する。
 これでとりあえずは大丈夫だろう。
 ところが、目的を達成した後も、圭一は何故かレナの唇から離れようとしなかった。
 というより、離れたくなかったというのが正しかった。
 予想以上にふわりとした柔らかい唇の感触に、すっかり虜となってしまっていたのである。
―――やわらけぇ……。
 全ての女の子の唇はこんな感触なのか、それともレナだけが特別なのか―――
 無抵抗なのを良いことに、そのまま舌まで吸い上げてしまいたくなるが、万が一にでも噛まれてしまっては堪らないため、それ以上の行為は何とか自制する。
「ふう……」
 圭一が名残惜しみながらもレナを解放したのは、それから更にしばらく経ってからだった。
 しばらくは放心状態で動かないレナだったが、やがて横たわる身体を反転させてうつ伏せになると、腹ばいになって動き始めた。
 どうやら、先程飛ばされた鉈を拾おうとしているらしい。
「本当に、どこまでも諦めないんだな……」
 彼女のこういった強さに自分は惹かれていることを改めて自覚する。
 その後、レナはやっとのことで鉈の傍まで辿り着くが、その時には全ての力を使い果たしたらしく、今にも気を失いそうな有様だった。
「けい…い…ち…く……ん」
 助けを求めるかのように、手を伸ばしながらそう呟いたのを最後に、レナは完全に意識を失い動かなくなった。
 それが演技ではないことを注意深く確認すると、圭一は彼女の身体を両腕でそっと抱き上げる。
「う…ん」
 レナは僅かに呻き声を上げるが、意識を取り戻すことはなかった。
 あれだけ激しく暴れるほどの体力があったにも関わらず、その身体はまるで羽毛のように軽かった。
 そして、いま圭一の手が触れているのは、彼女の細い背中と、スリットから剥き出しになっている生足なわけで……。
「や、やっぱり、レナも女の子なんだよな……」
 当り前のことを呟きつつも、圭一は自分の動悸が激しくなるのを感じていた。
 先程まで俺を殺そうとしていたレナが、結果として、今は逆に俺の腕の中で囚われの身となっている状態なのだ。
 つまり、これからレナをどうしようと俺の自由となるわけで―――
「な、何を考えてんだ、俺は!?」
 かぶりを振って雑念を追い払うと、とりあえずレナを休ませるため、彼女の秘密基地の中に運び込み、奥のシーツの上に横たえる。
「これでよし、と……」
 思いもしない出来事もあったが、何とか上手く薬を飲ませることができた。
 気を抜いたのと同時に、どっと疲れが押し寄せてくるのを感じ、レナの傍に腰掛ける。
 しかしながら、まだ油断はできない。
 薬を飲ませたとはいえ、症候群から全快している保証は無いのだ。
 レナが目覚めるまで、こうして見張っている必要があった。

 それから、一時間ほどが過ぎた。
 圭一は疲労しているにも関わらず、目を離すことなくレナの状態を見守っていた。
 いや…今のレナの様子を見る限り、視線を逸らしたくはなかったのである。
「レナって、寝相が悪かったんだな……」
 少しばかり息を荒げながら、圭一は呟く。
 仰向けで横たわるレナの姿勢が何とも艶かしく、しかも時折身動ぎするためにスリットが徐々に捲くれあがって太ももが露わとなり、更にそれが危険すぎるほどの絶対領域を形成してしまっているのだ。
 ここから少しでも移動すれば、確実に中身まで拝めてしまえるのだが、何とか自制心で押さえ込んでいた。
 とはいえ、とてもじゃないが目を逸らすことまではできそうにない。
 こうして見ると、レナがますます蠱惑的な体に育ってきたことがよく分かった。
 園崎姉妹にはやや劣るものの、同年代の女子と比較すれば充分すぎるほどに豊かに膨らんだ胸。
 それとは対照的に肩から腰にかけて描かれた、美しくほっそりとした身体つき。
 白く滑らかでむっちりとした太もも。
 何度でも吸い付きたくなるほどの、可憐で可愛らしい唇。
 レナに対して特別な感情を抱いている、抱いていないに関係なく、これで欲情しない男などいる筈がないと断言できる。
 圭一もその例外ではなく、やがて煩悩が理性を押し切るのにそう時間は掛からなかった。
「べ、別に変なことするわけじゃないからな! まだ武器とか隠し持ってるとやばいし……。うんっ!」
 理由としては全く説得力に欠けるのだが、彼にとってはそれでも充分だった。
 ゴクリと固唾を呑み込むと、音を立てないようにレナに近づき、そうっと剥き出しになっている太ももに触れる。
―――うわ…堪んねぇ……。
 今まで女の子の身体に触ったことが無いわけではないが、こんな場所を服越しではなく直に触れるのは、勿論これが初めてだった。
 心臓の鼓動が早鐘を打ち、体温も急激に上昇していくのが自分でも分かる。
 更にそこから奥へと手を滑り込ませたかったが、いきなり本丸を攻めることはせず、今度は胸へと手を伸ばす。
 いつ、レナの目が覚めるのではないかと内心冷や汗だったが、欲望がそれに勝っていた。
 そして、細心の注意を払いつつ、その形の良い二つの膨らみを掌でそっと包み込む。
「は…ぅ……」
 触れた瞬間、レナが僅かに声を上げたので一瞬焦ったが、どうやらまだ意識は闇の中らしく胸を撫で下ろす。
 こうして改めて大きさを確かめてみると、以前、冗談で言ったジャストフィットという表現が、まさに的を射ていた。
 いや、自分の手も成長したことを考えると、当時よりも間違いなく育っているだろう。
 いつしか圭一は屈み込んでおり、レナの双丘に顔を埋めると、愛おしそうに頬ずりを始めていた。
 形の良い二つの膨らみが、彼の頭の動きに合わせて柔軟に形を変えていく。
―――なんて、やわらかくて、いい匂いなんだ……。
 女性の胸というものが、服越しでもこんなに柔らかいものだとは今まで思いもしなかった。
 それ以上に、意識の無い少女の身体を人形のように弄ぶことが、こんなにも気持ちが良いものだったとは……。
「んっ……」
 眠っていても触られていることを感じているのだろうか、レナの頬が赤みを帯び、口からは微かな喘ぎ声が漏れ始めるが、もはや圭一の行為は止まらない。
 それどころか、余裕ができたのか段々と大胆な行為を取り始めていた。
 起こさないように、そっと腕を回して抱き締めながら柔らかな唇を舐め取ると、更には背中からお尻へと彼女の身体を隅々まで撫で回す。
「ほらぁ、どうしたんだよ? 俺を殺すんじゃなかったのかよ……」
「あ…ふぅ……」
 耳元での囁きに反応したのか、レナは圭一から逃れるかのように微妙に身体をくねらせるが、そんな反応は彼を更に喜ばせるだけだった。
 まさか殺そうとしていた相手に好きなように可愛がられているとは、文字通り夢にも思わないだろう。
―――いま目を覚ましたら、レナはどんな反応をするだろう? ……間違いなく、殺されるな……。それならいっそのこと、最後まで……。
 そんなことを自問自答しながら、圭一は三度無防備な彼女の唇を奪うのだった。

 やがて、彼の片方の腕が再びレナの下半身へと移動を始め、内股へと潜り込む。
 今度は遠慮なく奥まで攻め込むつもりだった。
 しかし、いきなり全ての行為を中止すると、近づいた時と同じくらい静かに彼女から身体を離す。
 レナが、か細く切ない声で「圭一くん、いやだ……」と呟いたのが耳に届き、燃え上がっていた気持ちが一気に治まったからだ。
「ごめん、レナ……」
 圭一は眠っているレナに静かに謝罪する。
 意識が無いのに乗じて寝込みを襲うような真似は、彼女に対する裏切り行為以外の何物でもないことに気が付いたのだ。
 諦めきれない気持ちはあったが、レナに毛布を掛けてやると、圭一は再び傍に腰掛けた。
―――なぁに、この先いくらでもチャンスはあるさ。
 そのチャンスが、僅か数十分後に訪れることになろうとは、さすがの圭一も知る由もなかった。





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最終更新:2010年03月20日 16:25