口接し編(圭一×レナ)の続きです。

 肌合し編(圭一×レナ)

 月明かりだけが幻想的に世界を照らし、蜩の鳴き声のみが不思議と響き渡る夜。
 工事現場にある秘密基地の中で、竜宮レナはぼんやりと目を覚ました。
 未だ辺りが真っ暗のため、電灯を点けようと寝返りを打つが、その瞬間、眠気が一気に吹き飛んでしまった。
 目の前に前原圭一の寝顔があったのと、つい先程まで彼にされていた事を思い出したからだ。
 何度も重ねられ、声も喘ぎも完全に封じてしまった唇。肌を這い回り、衣服も理性も全部剥ぎ取っていった腕。すっぽりと、レナの全身を包み込んでいった広い胸。頬から首筋へ、さらに胸へと何もかも舐め取っていった舌。そして、最後に彼から与えられた痛み……。
『服脱し編(圭一×レナ)』を読む。

 次々と脳裏に浮かんでくる映像を必死に払いのけようとするが、却って身体が火照ってしまう。
「はう……」
 羞恥のあまり毛布の中に潜り込むが、もぞもぞ動いたせいか、隣で眠る圭一が目を覚ましてしまった。
「ん……レナ?」
「あ……。ごめんね、圭一くん……」
 寝ぼけ眼の圭一だったが、彼もまたレナのあられもない姿を見て、昨夜の出来事を思い出す。
 サクランボのような可愛い唇。マシュマロのような柔らかな肌。蜜のような甘い匂い。ショートケーキのような純白の布地。そして、それを取り除くと現れたプリンのように揺れる胸。
 それらをスイーツと同じように味わい尽くしたはずなのに、何故かまだまだ物足りなさを感じていた。
 それは食事に喩えるなら、空腹を満たすのに夢中で、味を楽しむ余裕がなかったといったところかもしれない。
 できることなら、もう一度最初からやり直したい……とも思うが、圭一はばつが悪そうな顔でかぶりを振る。
 少し彼女の身体に負担をかけ過ぎてしまったこともあるが、薬を飲ませるだけのつもりが、まさかここまでやってしまうとは我ながら思いもしなかったからだ。
 鉈を振りかざして襲い掛かってきたレナを逆に押し倒し、抵抗して暴れるのを押さえつけて身動きを封じ、泣き喚いて怯えきっているところを無理やり……。
 その後も、寝込みを襲ったり、まぁいろいろと……。
 おかげで彼女の心も身体も征服する喜びを味わえたが、正直、これはかなりやばいかもしれない。
 うちの両親は例によって東京出張中だし、レナの親父さんにも、レナはうちに泊まりに来ていることにしているから、とりあえず何とか誤魔化せるとは思うが……。


 そんな圭一の悩みなど露ほども知らないレナは、そっと彼に擦り寄ると頬に手を添えてくる。
「レナ?」
「……夢じゃないよね?」
「ん?」
「いま、レナが触れている圭一くんは夢じゃないよね、ないよね?」
 そう囁いてくるレナは何故か涙目で、圭一がここに存在していることに感謝しているようだった。
 おそらく、眠っている時に何か恐ろしい夢でも見たのかもしれない。
 頬を撫でてくるレナの手と、押し付けられた胸の感触が何とも心地よく、圭一の脳内が再び活性化されていく。
「……夢でも幻でもないさ、ほら…」
 これが証拠だと言わんばかりに、圭一はレナの額に静かに口付けた。
 そして、冗談っぽく耳元で囁く。
「なんだったら、夢じゃないってことを解らせてやってもいいんだぜ?」
 それが何を意味するか、レナにはもう解っているはずだ。
 恥ずかしさで今度こそムキになって文句を言ってくるか、拳が飛んでくるかと思ったのだが、圭一の予想に反して彼女の反応は意外なものだった。
 少しの間を置いた後、何も言わずに圭一の胸に顔を埋めると、そのまま肩の力を抜いたのである。
 それが彼女の答えだった。
―――マジかよ……。
 あの薬の副作用なのだろうか、レナがここまで大胆になっていることに圭一は驚きを隠せなかった。
 思わず欲望の赴くままに、もう一度我を忘れてむしゃぶりついてしまいたい衝動に駆られるが、今度こそじっくり味を堪能しようと何とか自制する。
 何となく、先程からレナのペースに乗せられているのが気に入らないが……。
 ともあれ、圭一はゆっくりと片腕を回し、彼女の細い身体をあっさりと抱き寄せると、まずはそっと唇を重ねあう。
「ん…うんっ……」
 同時に他のところも攻略したいところだが、そこは我慢して、両腕はレナを抱き締めるような形で腰に回したままにしておく。
 スイーツを食す時の原則は、上から焦らずじっくりとだ。
 どんなに硬く冷たいアイスでも、熱を伝えれば次第に溶け出し、自分から相手に味わってもらおうとしてくれる。
 その証拠に、レナの身体も圭一から与えられた熱を帯び始めたことで、閉じられていた唇や、胸を隠していた両腕が徐々に開かれていった。
 こうなれば、あとは食べる側の好き放題だ。
 とはいえ、このまま完全に溶けきってしまっては面白くない。多少は歯応えを残すことも重要だ。
 圭一は、自分の背中に回されようとするレナの両腕をわざと掴むと、それぞれを床に押し付けて彼女を仰向けの状態にさせる。
「はうっ……?」
これで上半身が全て圭一の眼前に曝される形となり、レナは羞恥で全身が真っ赤となる。
「な、何のつもりなのかな、かな?」
 両腕を動かそうと僅かにもがき始めるが、それは曝された胸を隠したいからなのか、それとも圭一を抱き締めたくて堪らないからなのか……。
 どちらにせよ、レナはそのままの体勢で上体を起こそうとするため、自然と胸が突き出る格好となり、たわわに実った二つの果実が彼の目の前で微妙に震える。
 それを至福の表情で眺める圭一。
「だ、だめぇ…見ないでぇ……」
 訳が解らず、レナの瞳に僅かながら怯えの色が宿る。
 その反応に、圭一は心から満足する。
 これでいい。スイーツの分際で食べる側と対等になろうとは笑止千万。
 自分は所詮食べられる側、征服される側、蹂躙される側であることを自覚するがいい。
それじゃあ、そろそろいただくとするか。
 そして、身動きの取れないレナに上体を近づけると、再び唇を重ねて今度は隅々まで貪り始める。
―――んっ、むぅ……。
 レナは素直に圭一のされるままになっているが、彼女の全身に宿る熱は、徐々に温度を上げ始めていた。
―――や…手を…放してぇ………。
 やがて、圭一の頭が唇を離れ、頬を辿り、首筋をなぞって、胸へと到達する。
 自分からも圭一を求めたいのだろう、場所が移るたびに押さえつけられたレナの両腕に力が込められるが、それ以上はどうにもできなかった。
「あ…ふぅ……、う…ん…圭一…くん…だけ…ずるいんだ…よぅ……」
 今の圭一にレナの抗議など届くわけがなかった。
 一度目の時のお返しとして、今度はレナも圭一に甘えることで自分のペースに乗せるつもりだった。
 ところが、今度は両腕を押さえつけられており身動きが取れず、完全に圭一の攻める一方となっている。
 これでは、レナにはもうどうにもならず、大人しく彼専用のスイーツとなるしかなかった。
 その圭一は、程よく実った二つの果実をいよいよ味わい始めていた。
 一度目の時は夢中でよく憶えていなかったが、今度こそはと五感を研ぎ澄ませ、その形、色、艶、香り、感触、弾力、舌触りをじっくりと堪能する。
 掌に包み込むだけでなく、口に含むにも丁度良い大きさであることを、彼はこの時初めて知るのだった。
 そして、圭一に触れられ、舐められ、吸われる度に、レナの全身には痺れるような快感が押し寄せてくる。
 反撃に回りたくても回れないのが堪らなく悔しかった。
「……ぅ……あっ…けい…いち……くんの…いじわるぅ……ふぁ…う……」
「なに…いってんだよ……っ。本当は、こうして…ほしいん…だろ?」
「…はぁ…う……ぁ…そんな…こと…ない…もん……」
 そして、今にも意識が飛んでしまいそうなレナに、圭一はさらに追い討ちをかける。
「これ…くらいで…参るんじゃ……ねぇぞ。お楽しみは…まだ…これから…なんだからな?」
「ん…あぁっ……うそ…だぁっ……」
 それが今宵二人の間で交わされた最後の会話だった。
 次第にレナの声が意味を成さない喘ぎへと変わり始め、それとともに圭一の攻めもエスカレートしていったからだ。
 その頃にようやく押さえつけられていたレナの両腕が解放されるが、もはや力なく床に横たわるのみで、一方の圭一の関心は彼女の胸よりも下のほうへと移り、無防備な両脚、そして太ももの間へじわりと入り込み始める。
 やがて、彼はまたしても本能に支配された獣と化していき、レナの意識が果てるまで彼女を味わい尽くすのであった。




 END

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最終更新:2010年03月20日 16:39