ドサッ

暗い夜道。
今の時間だと車も通らないような、寂れた山道の小脇に
私はソレを投げ捨てた。

ソレ…?

もう私にとっては、物にしか過ぎないのだろうか。

「ジロウさん…」

声をかけるが、返答はない。
…当たり前だ。
私が眠らせたから。
私の夢のために、私の身勝手な理由で、…罪もない彼を眠らせた。

恐らく、この先
彼と逢うことは…ない。

「ジロウさん。」

この期に及んで、私はまだ躊躇しているというのか。
暫くは眠りから醒めないであろうジロウさんに、先ほどより強めに呼びかける。
さらにジロウさんの横に膝をつけ、頬をつねってみる。
それでも起きないことを確認すると、…急に寂しさがこみ上げた。

二度と彼に逢えないということは
二度と彼に抱いて貰えないこと。

(最後にシたのって…、結構前よね…)

ふと下半身が疼く。
その焦れったいような疼きは、ジロウさんと交わった時の事を否が応にも思い出させた。

(くすくす。
ジロウさんたら、ナカに出していいって言ったのに
結局出してくれなかったなぁ…)

安全日だから、と催促したものの
ジロウさんが精液を出したのは、私のお腹の上だった。

その時の感覚が蘇って、ついジロウさんの大きな手を片方とり
自分のお腹に触れさせる。

「ナカに出されるのって、どんな感じなのかしらね?」

チラリと、ジロウさんを盗み見た。
ジロウさんは、…起きない。

「ね、良いでしょう?」

どうせ、私も殺される身だ。
雛見沢を狂気に沈めたのち、…役目を終えた人形は処分されるのだから。

どんな“処分”が、私を待っているだろうか
もしかしたら、ジロウさん以外の男性に抱かれてしまうかもしれない。
ナカに、出されてしまうかもしれない。

…それは『もしも』の可能性ではあるが、零ではない。
しかも山狗は殆ど男で構成されている。
東京は、用済みになった人形に
有り難くも最後まで、お仕事をくれるかもしれない。

だから…
穢されてしまうなら…

「ふー。」

色々考えていたら、知らない間に溜め息がもれた。

「ごめんね。
ジロウさん、ごめんなさい…。」

ジジジ…

ゆっくりと彼のズボンのチャックを下ろす。
こんなこと、ジロウさんの本望じゃないはず。
最後の最後まで、私は彼の尊厳を侮辱していることに
せめて心からの謝罪を口にする。

「ごめんなさ…、え?」

チャックを下まで降ろすと、下着越しにいきり立ったジロウさんが現れる。

「な、に…?これ…。」

私は暫く、ジロウさんのソコを見つめた。
…目が離せなかった。

ジロウさんのソコは、私の記憶を上回るほど大きく膨らんでいたのだ。

「クスリ、…のせいかしら。」

ジロウさんに投与した薬は、雛見沢症候群を急性発症させるだけでなく
脳内を常に興奮状態にさせる作用もある。
きっとこれは、その副作用かもしれない。

ソッと、ジロウさんの下着を下ろすと
案の定、ジロウさん自身が勢い良く顔を出した。

「!」

あまりの大きさに改めて驚く。
以前セックスした時は、これほどまで大きかっただろうか

…クチュ。

とりあえず、彼自身の先端に口付けをする。
そして根元から先端へゆっくり舐めあげ、再び先端を口に含んで
少し舌で遊んだり、吸ってみたりした。
「んん、…ちゅ。ぷふぁ、ん。」

いつしか私は夢中になり、自分の髪を掻き上げては音を立てて吸いついていた。
ジロウさんのペニスが、私の唾液でぬらぬらと光る。

「ひ、もちぃ…?ん、…ちゅ。ジロウさん?」

突如、ジロウさんの腰が一際大きな動きを見せる。

「ふっ?!、んんんんん!」

口内に出される、青臭い匂い。
懐かしい粘り気。

最初は驚いたけれど、ジロウさんの精液を私は悦んで飲んだ。
それでも飲みきれず、彼のペニスから唇を離すと
さらに顔や髪に、彼のドロッとした精液がかかる。

「きゃ!…もう、ジロウさんったら。」

そう悪態をつきながらも、私の顔は赤く染まり
身体の奥が、きゅんっと切なげに疼く

「ぁ、は…ぁ。」

ジロウさんの片手を、段々と私の腹部から下半身へズラす。
私は自分のズボンのホックを外すと、下着のなかへジロウさんの手を招き入れ
彼のゴツゴツした指に、自分の敏感な突起を押し当てた。

「あ、あっ!ジロウさん!ジロウさん!」

電流のような刺激が、私を気持ちよくさせ
思わず、愛おしい彼の名前を叫んだ。
何回も、何回も…。

ガサッ

すると、物陰から予想外な音がして
一気に現実まで引き寄せられる。

(誰かい、るの…?)

恐る恐る、物陰に目を凝らすと
一匹の猫が視界を横切っていった。

胸を下ろし、ふと自分の痴態に赤面する。

…いま、私は東京の監視下にあるのだ。
もしかしたら、山狗の一人や二人に尾行されてても不思議じゃない。

だとしたら、この行為が…

(見られてる?)

そう思うと、身体の奥底が熱くなった。

「…!、ひぁんっ!!」

無意識にジロウさんの手が動いたらしく
突然、ジロウさんの指と、私のクリトリスが擦れあう。

「もう、だめ、ぇ…。」

理性なんて、暴力的な欲求の前には無意味なことを理解する。
自分のズボンと下着を脱ぎ捨て、いきり立ったジロウさんのソレと
濡れてはいるものの、ほぐれていない私の膣口を重ね合わせた。

「くぅ、…っああぁあん!!」

やはり、ジロウさんのソコは大きかった。
以前、ジロウさんとセックスした時は
挿入する際、私に負担がかからないようにしてくれてたのを思い出す。

いまは、…その配慮がない。
更に過度の興奮状態が、彼自身を更に大きくさせているのだ。

「いや、ぁ…。痛っ!壊れちゃ、う…。んうぅ!!」

それでも私は止めない。
少しずつでも、ジロウさんがナカへ入ってきてくれるのが嬉しかった。

「ん。ぁ…、ふふふっ。」

…そして、全てが収まる。
痛みはあるものの、脈立つ彼が気持ち良いと感じられるようになった。

久しぶりの感覚に酔う…

気持ちが良すぎて、どうにかなってしまいそう。
ジロウさんと繋がる度に、身体の相性が良いことを思い知らされた。
『なるほど、これは嵌るわけね…』等と世の中の性行為に対する、ある種の納得まで感じるほどに。

「ん!んんっ。あ、ジロウさんのえっち…、はぁっ、ん!」

生理現象、だろうか。
ふいにジロウさんに膣壁や奥を突かれることがあって
その度に強い快楽が私を襲った。

パチュ、グチュッ…

静寂な森の中、厭らしい音が響く。

気持ち良すぎて、腰が止まらない。
私の口元からは、飲みきれなかった精液が零れ落ちる。

(…もう誰に見られたって良い。)

瞬間ー…

「え、え?あんっ、激し、ひぃ!な、あっあっ!痛っ…!やあああ!」

富竹のペニスが激しく、乱暴に鷹野の膣を攻め立てた。

「ジロ、さ…、ジロウさん!そ、んな、ふっ、あああぁん!!」

あまりの快楽に恐くなって腰を引く。
が、ジロウさんが一際大きく反応したのに気づく。

もしかして…

「おねが、い…。先にイっちゃ…や、…ぁ…」

意識のないジロウさんに懇願することは無意味だと解っていてもお願いしてしまう。
イくなら、一緒がいい…

「はぁ、は、…ぁ!お願いっ、ん…。っ?!」

ードクンッ!!

「あっああああん!!あつ。ナカに、ナカに、き…てる、ぅっ、あああっ!」

熱い熱い彼の種が、私のナカへ注ぎ込まれた。

「はぁっ、は、あ…!…あ。」

途切れ途切れに射精が続く。
その射精さえも貪るかのように、私の膣は中へ中へと蠢くのを感じた。

(これが、中だ、し…?)

とてつもない快楽。
おかしくなってしまいそうな、感覚。

(…私はジロウさんのものになったんだ。)

すると、突然涙が溢れた。

私が望んだことなのに、…なぜか言いようのない虚しさに襲われる。

…だって、もう彼とはお別れなんだもの。

持っていたティッシュで体液を拭き、身なりを整える。

まだ…、ジロウさんに出された精液が熱い。
その熱は下腹部に再び疼きを、心には寂しさを与える。

(赤ちゃん、できたかしら…)

半端自暴自棄になって行った性行為だが
今日は私にとって、…危険日。

もしかしたら、ジロウさんの子供が宿ったかもしれない。

自分に残された時間は知ってるはずなのに
来るはずのない未来を描いては消し
描いては、…消す。

そうしていく内に、段々と心の中が冷たくなっていく。
人間だった鷹野三四が亡んでいく。

最後に、狂気が私をのみ込む前に
ジロウさんの唇に静かにキスをした。

「ジロウさん、あのね…」

そっと、耳元で囁く。

「私も好き、…でした。」

─完─

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最終更新:2009年01月06日 00:01