前編




ONE STEP×STEP TWO




 レナは今日欠席だった。

 なんか朝から違和感を感じると思ったら、既に遅刻しそうな時間になっても、レナが迎えに来なかったのだ。

「あれ?レナはどしたの?……ふぇ?迎えに来ない?ん~……圭ちゃん、何も聞いてない?……最近のレナ……」
「ああ。何か悩み事はあるんだろうと思う。んで、昨日帰りに聞いたんだよ。そしたら本人は無いって。でも、明らかにおかしかった。」

 だって、レナがあんな発言をするとは到底思えない。絶対に辛いはずなんだ……なのにどうしてそれを教えてくれないんだよ!?
 学校に着くと、沙都子はレナの不在に驚き、「風邪でもひいたんではございませんの?」などと心配そうではあるが気楽な様子で、梨花ちゃんは「みー……レナはかあいそかあいそなのです。」と、よくわからない表情で小首を傾げていた。
 そうしている内に先生が来た。まぁ、先生に休みの理由を聞けばいい、と思っていた矢先に、

「あら?竜宮さんは、お休みですか?」
「……学校に連絡はなかったんですか?」
「ええ。ありませんよ。風邪で寝込んでいて忘れているだけかもしれませんね。後でお家の方に電話してみます。」

言いようのない不安。

 それからレナのいない一日を、ぼーっと過ごした。そして最後に聞いた言葉は、

「お家に電話してみたんですが……誰も出なくて……」

  ………………。

 その日は結局部活も流れ、レナは風邪で電話に気付かなかった、ということで明日まで様子を見ることになった。
 魅音と帰路につく。昨日はレナと二人だったんだな……

「レナ、どうしちまったんだよ……」
「……わかんない。おじさんの知る限りでは不審な情報はないけど……」

ぼそりと、「まだ綿流し前だし……」と呟いたのは気付かないフリをする。

「……実は風邪なんかじゃなくて、家に居ないんじゃないか?ていうか居ないと思う。レナなら電話を忘れたり、かかってきたのに気付かないなんて……あるか?」
「うん、あたしもそう思う。だとしても、どこにいるんだろうね」

  ………………。

魅音が不意に空を見上げる。昼過ぎから灰色の雲が青空を侵食し始めていた。

「こりゃ、雨、降るかな……。」



 夕飯を食べ終えてから、レナの行きそうな所を考え、頭の中でしらみ潰す。

外は土砂降り。しばらくは止まないだろう。
――――あのね、見つけたの!ケンタ君!
「……あ」
そういえば、ゴミ山はどうだろう?しょっちゅう行ってるじゃないか。何でもっと早く気付かなかったんだ!
 居るんじゃないか?いや、居る!きっと雨の中で震えてる。なぜかはわからないけど……
 見たことのないはずの、ぼろぼろになったレナが思い浮かぶ。

  行かないと!

いても立ってもいられず、裏口から出て、懐中電灯をひっかけ、傘をさし、走った。両親は仕事の話し合い中。ちょうど良かった。

「はぁ、はぁ……はぁ!」

暗い湿った砂利道。雨の音がうるさいはずなのに、自分の上がった息はよく聞こえた。
 たとえ行っても、レナは居ないかもしれない。それでも「居ない」とわかるまでは足を止めるつもりなんてなかった。
 思えば今日は、いや、昨日の帰り、レナが走り去ってからずっとレナの事ばかり考えてる。今までずっと一緒にいたから気付かなかった。レナがいなかった今日一日、どうだった?一日いないだけで、もう全く何も手につかない。

「レナぁ!いるか――!いるなら返事しろぉ!」

自分の息はよく聞こえるのに雨の音は俺の声を掻き消して、まるで届いちゃいない。
でもここは広い。今出した声が届いてなくても次は届くかもしれない。そう思って叫び続けた。すると明かりの灯った廃車が。

人影!あれはもしかして……レナか!?

「圭一……くん?」
「レナ……!はぁ!はあ!」

廃車の中から傘をささずに制服姿のレナが出てきた。
 間髪入れずに雨はレナを叩く。それでもレナは気にする様子もなく、ぼうっと俺を見つめるだけ。

「お前……何やってんだよ、こんなトコで。風邪ひ――――」
「来ないで」

一歩足を出した状態から動けない。レナはそのまま続けた。

「レナはね、汚されちゃったの。もう幸せな日常に戻れない……だから、圭一くんはそれ以上こっちに来ないで?」
「な……何言って……るんだよ……」

何があったんだ。昨日別れてから今までの約一日の間に何があったんだ!?

「私ね、もう駄目なの。戦ったけど、全然叶わなかった。」

少しづつレナは自分に起きた事を話し出す。父親と付き合っていた女が美人局だったこと、父親には信じてもらえず、一人でこの場所で問い詰めたが、失敗し、明日にも家の全財産は無くなってもおかしくない状態だということ……
 突然聞かされる事実に俺はただ呆然とするしかなかった。まさか、そんなことが……いや、最近のレナの思い詰めた様子を思い出せば、それも納得できた。
 でも、それで幸せな日常は消えた?なんでだよ?
俺は一歩踏み出す。レナは一歩後ずさった。

「こ、来ないで……」

 今までずっと毎日楽しくしてたんじゃないかよ?そんな突然消えてたまるか。これからも部活メンバー一同笑いあって幸せに過ごすんだよ!レナ込みで!
さらにもう一歩。傘はもう邪魔だ。

「聞いてたでしょ?レナはもう戻れないんだよッ!来ないで!」
「じゃあレナは俺から逃げればいいだろ?何で逃げない?」
「ッ!…………ぁ……」
「レナは誰かが気付いて助けてくれるのをここで待ってたんだろ?そうだろ?まだ幸せは消えてない!そんな簡単に人間不幸になったりしねぇよ!」

レナは後退りも出来ず、固まった。

  汚れた?どこが?お前は逃げずに戦ったんだろ?
  何でそんな顔をするんだよ?胸を張れよ。
  見てられないんだよ、そんなお前は!

 がばっと、手を回す。レナはびくりと震えて逃げようとする。そんなレナの弱気ごと潰すように、ぎゅっと抱き寄せる。

「もし、それでもレナが幸せじゃないって言うならな、俺が幸せにする!」
「なんで……?どうしてそんなにレナのこと心配してくれるのかな?」

なぜって?なんでだろうな?自分にもわからない。なんでレナがいないだけでこんなに焦って、雨に打たれてまでレナに会いに行くんだろうか?
    わからない?わかってるだろ、前原圭一!

「……俺はレナがいないとダメなんだ。俺の幸せな日常には隣にレナがいるんだよ。そう決まってる。」

レナの目を見る。顔を手の平で挟んで俺を見させる。虚ろだったが、逸らさず、俺を見ていた。

「…………でもそれはレナじゃなくても、魅ぃちゃんでも、沙都子ちゃんや梨花ちゃんでも……」
「違う!違う違う!そんな簡単にすげ替え出来るもんじゃないだろ!俺はな……」

頭が真っ白になる。自分で次に何を言うのかわかっていないのに、わかってる。あえて止めなかった。
多分、足は震えてる。胸が熱くて、心臓が飛び出しそうだ。

「俺は……お前がッ…………!……ぅ……」
「圭一くん?」
「だから……だああぁぁ!だからっ!俺は!」
「…………だから?圭一くんは?」

ああぁぁあ!なんてこった!なんで俺はこんな時にまで!ここ一番でヘマを!
 こ こ は 男 ら し く 言 い 切 る 場 面 だ ろ !
一度失敗したその言葉はもう口から出そうになかった……はぁ……
 その時、くすっ、とレナが笑った。

「あは、あはははは!圭一くん、変だよ、変!」
「言うなぁ!……うぅ……ははは、あははははは!」
「あははははは!圭一くん、落ち込んだり笑ったり!あははは!」

雨の中ずぶ濡れで二人で笑いあう。
ぼとぼとになったレナの頭を撫でると、レナは俺にしがみつき、俺も抱きしめ、冷えた体を温めあう。お互いの体温を感じあい、しばらくそのままだった。



 廃車の中は雨の音の反響で、すごい音だったが、雨を凌げるならと、レナと二人で車のシートに座っていた。
 少しだけだがタオルもあって、濡れた頭だけ簡単に拭いたが、服はどうしようもなく、少しずつ冷えてきた。俺はまだしも、レナはずっとこんな所にいて、指先から冷たくなって震えている。
 明かりもあるとはいえ、暗かった廃車の中にも目が慣れてきて、ふとレナを見ると、ぎょっとする。レナが朦朧としている!

「おい、レナ!大丈夫か!?……熱出てるんじゃないか!?」
「…………寒い……」
「家に一旦帰らないか?こんなトコじゃ悪化するぞ!?」
「……家は……いや、いやなの……帰りたくない……」
「……う。」

ここには暖房器具などない。火を起こすにも土砂降りだ。くそ……どうすりゃ……。とりあえずタオルやブランケットで包むが、あまり効果は期待できない。
  こうなりゃ……これしかない……!

「圭一くん……?……ぁ……」
「ちょっとガマンしててくれよ?」

俺は上半身を脱ぎ、ちょっと躊躇してからレナを背中から抱いた。これで少しはマシだろうか。
 冷え切った柔らかな身体に纏わり付く濡れた生地。って、うあぁ……白い下着が透けて……あんまり見えないけど、上品そうなレースが未発達な膨らみを柔らかく包んでいる。
  ……………………。

「なぁ、レナ、この服も脱いだ方がいいと思う。びしょ濡れだし。」
「……?……ん……」

意識が飛びかけのレナの耳には入っていない。俺は半ば強引に服を脱がせる。あぁ、くそ!脱がしにくい!

    どくん、どくん、どくん、どくん……

頭が脈打つ。身体は冷えてるはずなのに何故か熱い……なのに指先は不安定にガタつく。
 制服を腕から引っこ抜いて、一息つく。
……って。あ……。俺はぐったりとしてびしょ濡れのレナを膝立ちで跨いで見下ろす体勢だった。

  レナの苦しそうな火照り顔
  レナが譫言を漏らす唇。
  レナのなまめかしい首筋、胸、肢体、そして……

    どくん、どくん、ドクン、ドクン……!

「……ん……ッ!」

 本能に任せるまま俺はレナの唇に自分の唇を重ねていた。
 レナはそれに気付くと、驚いて顔を赤らめて離れようとしたが、俺はそう簡単には離さない。さらに抱き寄せ、貧るように舌を入れる。

    ぴちゅ……くちゅ……っちゅ……

レナは抵抗できず、俺のものが混じった蜜が滴る顎をわなわなと震わせながら、俺の侵略を赦した。
 首筋に指を這わせると、レナは一気に鳥肌を立たせ、腕が頼りなく虚空を探る。やがて行き着いた場所は、俺の頭と背中。髪を掻き交ぜられ、背中を冷たい指が走る。
  ……軽い酸欠。一度唇を離す。
銀糸が俺達を名残惜しそうに繋ぐが、俺はそれすら浅ましく舌で掬いとる。

「……ッはァ!は……はあッ!」
「ケホ……はぁ、はぁ……ゲホ……」

お互いの息を吸いあうような至近距離。レナの瞳が潤む。
 息が整う前にもう一度強引に唇を奪う。レナはふらつき、そのまま後ろへ倒れる。俺はレナをシートに押さえ付け、足を絡ませると、何度も角度を変えながら、レナの味をむしゃぶり尽くす。今度はレナも俺の動きに合わせ、舌を絡ませてくる。

    ずちゅ……ぬちゅ、ぴちゃ、ちゅ……ぐちゅ……

夢中になればなるほど雨の音は消え、頭の中には淫靡な水音が刻み込まれる。

  俺は一体何してんだ……。

少しだけ沸き上がる罪悪感。だが、誰もいないという安心感と、淫らな感触、音、視覚。罪悪感など最早問題にならない。

  レナと結ばれたい欲望でいっぱいだった。
    いや、違う。そんな綺麗な欲じゃない。
    普段はぽーっとしつつ、実はしっかりしてるレナ。
    そんな彼女が弱り切っているのをいいことに、好きなだけ汚して、自分の匂いを擦り付けたいだけだった。

 俺は、自分の中にこんな乱れた感情があったことに今更驚く。

乱暴な愛撫を止め、レナを見る。レナは俺の考えてることがどれ位分かったのか分からないが、懇願するような目で俺を見て、

「……は……はぁ……圭一くん……私達、まだ子供……なんだよ?」
「レナは嫌……なのか?」
「だってッ……!だって……怖いよ……。」
「俺だってすげえ怖いよ。でもな、それよりも……」

  さっき言えなかった言葉が蘇る。

 これは大人の行為だ。まだ一人前にもなれない子供がやすやすと「する」事じゃない。
 キスでさえ、取り返せないんだ。これ以上進むと、きっとこれまでとは別のモノになってしまうんだろう。それは今までの時間との決別。しかも普通ならレナの言う通り、一人前になって初めて「して」もいいことだ。
 膝はがくがくと震え、奥歯はかちかちかち……と脳に響く。その脳はじぃんと痛み、良心と愛欲の間で揺れ動く。
  怖い……怖い怖い怖いこわいコワイ……
「……それでも……それでも俺はレナが好きだッ!」
「…………え……?あっ……」

    最後の理性も吹き飛ぶ。

 欲望のままに獣と化した俺は、再度唇を吸い、レナの下着を引き剥がす。片手で双丘を同時に弄り、もう片手でガチャガチャと騒々しくズボンを下ろす。
 レナは胸の刺激に腰をよじらせ、甘い声をあげた。そのレナの右手を引っつかみ、俺の手を上から被せて、肉棒を握らせる。その間多分、一分にも満たない。
 レナの指先の冷たい感触。それに対する熱い肉棒は自分でも驚くほどガチガチに硬い。

「くッ……は!レナぁ!あっ……冷て……も、もっと……キツく……握ってくれ……」
「うあぁ……圭一く……いや……こんなの……」

俺は無理矢理に強弱をつけて握らせ、胸の先端を思い切り吸う。空いた片手はレナの叢を撫で、その中に咲いた花をなぞる。

「んッ……け、圭一……く……ん。そこは……ッ……」
「はぁ、はあ……ぃい……うぁ…………来るッ……来たッ来た来た……あ、ぁぁああ……」

ぼたぼたと俺の涎がレナの胸元を汚す。凄まじい快感で口が閉じられない。
 レナは俺に恥部を刺激される度に相手を探すようにギュッと俺を握る。俺はその度にレナにあてた手を申し訳なさそうにびくびくと動かす。
 つまり、俺が声を出す度にレナが声を出し、レナが声を出す度に俺が声を出す。そしてその感覚は段々短くなってきた。俺もレナさえも次へ次へと快感を求めるからだ。

 喘ぎ声がほぼ同時になった頃、レナのそこはぐちょぐちょに濡れていて、俺ももう激しいトランス状態から抜け出したい一心だった。

「レナッ……俺……うッ……もう……」
「私も……ああああッ!……ダメ……あッ……」
「いいか?いいかレナ?いくぞ?イくぞ?……ッが……ぁあぁぁああああッ!」

耐え切れず、獣のように絶叫する。

 熱く濃い白濁がレナの腹から顔までをびしゃあッと叩く。
 レナは口をぱくぱくとさせながら全身を痙攣させていた。静かにイっているらしい。
 幼い好奇心からすかさず、重い身体に鞭打ち、レナの濡れた中を指で開き、遠慮もなく覗き込み、視姦する。

    びゅくっ、びゅくっ……びゅくっ……

    ………………。
 俺はまだ治まらないレナを引き寄せると、酸素を求める唇を無理矢理塞ぎ、たっぷりとお互いの唇を潤わせてから離れる。

「レナ……………………入れたい。」
「は……はぁッ……けい……いちくん?」
「嫌か?」
「………………痛くしないで……レナにやさしくして……ね?」
「ん。わかってるよ」

レナはついに俺との行為を許した。きゅっと目をつむり、俺を迎える体勢。
 慎重にレナのそこを探る。でも、イマイチわからない。あれ?えーと、俺も初めてな訳で……

「そこじゃないよ。…………ここ。」
「うぁ……」

レナのひんやりとした手が俺を優しく掴み、誘導した。ここは大人しくレナに任せるべきだろう。先端が温かいものに触れた。

「……このままで行くのか?」
「ん、ゆっくり……ね」

言われた通り、少しずつ腰を下ろす。速くなりそうな自分をセーブするのはなかなか難しかった。
 どこまで入れられるんだ?この辺か?いや、もうちょい?

「あ、あぁぁ…………圭一くん……あつい……あ……」
「え……おい、レナ、まだ入る……のか?」
「んッ…………もうちょっとッ……かな……」

深く入るほどに増すレナの生きた温かさと、引っ掛かるように絡み付く生々しい肉襞の感触。……これが挿入感ってヤツなのか……。
 最初で最後の「初めて」の緊張感、異常なまでの熱さ。限界まで入れ終わる頃には、レナも俺も脂汗でべとべとだった。

「大丈夫か?痛くない……か?」
「う……圭一くんは……痛くないよ……」

  え……?俺「は」?………………?

理解する。「汚された」の意味を。

    レナ……お前……まさか……

それ以上は想像したくなかった。必死に抵抗しても、為す術なく汚されるレナなど。
 顔も知らない、俺よりも先に自分の肉欲の為にレナを汚した男。許せない。もしこの場にいたなら即、殺す。

「圭一くんと……今、ひとつ……レナの中に圭一くん……感じるよ。」
「ああ、俺もレナの、感じる。」
「圭一くん…………来て。」

 粘つく音を立てながら身体を気持ちいいほうへ動かす。温かく、吸い付くような襞に自身を擦りつける。強く擦るほどレナは生めかしい喘ぎ声をあげて、自分から動き、俺を強く締め付ける。
 ずっと夢中でお互い言葉も出ない。うなじに軽く唇を触れさせると、レナは足を絡め、抱き合いながら深いキスをする。快感に支配された脳がそうさせたのか、とろりとした蜜は、恐ろしいほどに甘い。
 上と下の結合はお互いの露に濡れ、さらに奥へ、奥へと……

    ずちゅッ……ぴちゃ、ちゅく……じゅぷッ……ぐちゅ、ぐちゅ……

レナが喉の奥から酸素を求めて喘ぎ、んく……んく……と悶えるが、俺はそれでも唇を離さない。離したくない。

    雨の中、廃車の中は濃密な愛欲の空間になっていた。

絶えず獣と化していた下腹部が……熱い。
 レナがふは、と口を離す。甘い吐息が顔をくすぐる。快楽に溺れて乱れた目で見つめてくる。

  欲しい、もっと欲しい。まだまだ足りない。と、そう語りかけてくるんだよ……

後はもう何も示す必要などない。俺は最奥のカベを引っ掻く。レナに自身を刻み付けるために、自身にレナを刻み付けるため。
 込み上げてくるような熱さと、登り詰めるぎりぎりの焦燥感。本能を剥き出して悶え、発情期の猫のように必死に求めるレナの姿が、一層俺を燃え上がらせた。

あ……もう……来る。

登り詰めたい。欲望をブチ撒けて。

「あっ……ッ……ぁんッ……けぃ……いちく……!……激し……ぁ……」
「……はッ……はぁっ……はあ!……」

    パン!パン!パン!パチュ!パチュ!

「お、奥にね、ぶつかって……うああッ!押してる!……そんな……深いッ……!」
「レナッ……レナぁ!は……はぁッ……」
「圭一くん……*****ッ!」

…………え?今、なんて……?

  びゅくッ……びゅく!びゅく……びゅくッ

ぎうぅ……と互いを砕かんばかりにしがみつく。結合部からは、納まりきらなかった俺の愛液が、だくだくと流れ出す。

「はぁッ……はあッ……はあっ……はあッ……」

ザアアァァ……と雨の音が鳴り出した。いや、ずっと鳴っていたのに、聞こえていなかった。

目下には雨水や汗や体液か、区別がつかないほどにぐちゃぐちゃに濡れ、ぐったりとしたレナ。

「レナ……大丈夫か?」
「…………もだよ……」
「え?」
「レナも圭一くんのこと、大好きだよ」

ちゅ……

レナが半身を起こし、俺の唇に触れた。



 レナの現実は暗い。何も解決していない。でも、それでも天の神様、俺達は幸せだと思う。

俺は裸のままでレナをきゅっ、と抱きしめた。レナが頭を髪ごと甘えるように擦りつける。

    ずっとこうしていられたなら、どんなに良かっただろうか。

            でも子供の俺達にとって、現実は、そう甘くはなかった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2007年11月05日 23:23