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「ねぇ圭ちゃん。今日はどっちがいい?」
休日前の昼下がり。さーさーと降る雨音が圭一の部屋の外から聞こえていた。彼は目の前にいる二人の少女に見詰められていた。園崎詩音と魅音は圭一とは一歳年上の双子である。彼女らは恵まれた家庭の令嬢だから、育ちが良い。成長の著しい膨らみを追ってしまうのを圭一は自覚した。
「駄目です。お姉! この前は圭ちゃんとべったりだったじゃないですか」
制服の詩音は言そう言って圭一に視線を戻すと、四つん這いなって近づいた。上目遣いで迫ってくる詩音を見るとまるで牝猫のようだなと圭一は感じる。大きな目と整った顔立ちよりもぶらんと重力に負けたブラウスの膨らみのほうに目が行った。
「そりゃ……この前は私が、そのアレだったけど」
女の子座りの姉を尻目に詩音はきゅうっと圭一の腕を抱いた。膨らみを腕にめり込ませているのに気づいて
「ずるい、詩音! またそうやって出し抜けてっ」
ふふんと一瞥する詩音を見て
「ねえ圭ちゃん……詩音、選んじゃうの?……」
くいくいと圭一の小指を引っ張りながら魅音は言った。詩音とは違った弱々しいしぐさが圭一の心を打つ。守ってやらねばという男特有の性をかき立てるもので不安そうに八の字に曲がった彼女の眉がそれに拍車をかけた。
「私選んでくれますよね」
「圭ちゃん、どっち……?」
交互に迫る催促の声に
「はは……参ったな」
圭一はそう声を出した。


彼女たちが圭一のそばに寄るようになって日は浅い。都会からやってくる同年代の少年の表裏のない振る舞いや顔立ちに惚れたのか。最初は魅音のほうが寄るだけだったが、妹の詩音と面識を持ってすぐに詩音の方からも言い寄られた。
「圭ちゃんお弁当作ってきました」
「私が代わりに罰ゲームを受ける……圭ちゃんは黙っててね……」

気味が悪いくらいの積極さに疑問を持ったことはある。村の名士の娘に好意を持たれ、毎日を浮かれて過ごしていたわけではなかった。同時に自分はこんなにも求められる存在なんだなと自惚れを抱いた。しかしそんな思いや疑問もすぐに消えた。言えば何でもしてくれて二人にも求められたから。

増長した圭一が二人に猥談を持ち掛けたことがあった。その日の真夜中に圭一は童貞を奪われた。
「詩音に越されちゃ嫌なの……」
真夜中に瞳を濡らして布団から這うように上ってくる魅音に下半身を許した。彼女の薄い襦袢と布団が擦れる音が耳に刻まれた。妹に比べると大人しそうな感じだが魅音は激しく腰を打ちつけて、喉を鳴らして精飲した。普段の魅音との格差に圭一の心も体も焦げ付いた。夜這いなんて本当にあるんだなと片隅で思いながらその日は一緒に魅音と朝を迎えた。

魅音の中の感触が残っていた時、言うなら魅音に犯されて数日もたたないうちに次は詩音が迫ってきた。
「どうしてお姉なんかと!」
血相を変えた詩音にまくし立てられた。学校からの帰り道に一方的に口から泡を飛ばされて強引に手首を掴まれた。半ば無理やり詩音のマンションに連れ込まれると
「忘れさせちゃいますから」
そう言って詩音は制服を脱いだのだ。
初めは饒舌になり、笑みを浮かべていた詩音だが時間がたつにつれて
「駄目ぇえええ圭ちゃんっ! そんなに突いたら壊れちゃううぅうっ!!」
と自分から連れ込んだくせにしおらしくなっていった。
勝気な詩音を下にしてペニスをぶつけてやったのは今でも忘れられないと圭一は思う。行為を終え指を銜えて意識を手放した、荒い呼吸の詩音を見て途方もない征服感に見舞われた。詩音の普段とのギャップに体も心も毒された。

あとは転がるだけだった。若い体の情欲に抗うことなどできずにエスカレートした。
「耳かきしてもらいたいな」
と二人の前で話した。魅音と詩音はしばらく顔を見合わせていたのだが
「圭ちゃんの言うことなら聞く……」
「楽しみにしててくださいね」
魅音は真顔で言った。詩音は笑みをこぼしながら快諾した。

「詩音を選んでくれますよね? 今日のために練習してきたんですから」
「練習って……」
「葛西に頼んで」
「葛西さん使ったの? それずるいよ詩音」
「最高だって言ってくれました。それでお姉はなにか?」
「私は……何も……」
魅音の無策ぶりに満足げな笑みを送ると
「ほら、圭ちゃん。私には実績があるんです。……もしかしたらお姉は圭ちゃんの耳傷付けちゃうかも」
「し、詩音! そんなことないよ。圭ちゃん。私だって一生懸命する……」
やはり算段になると魅音は負けてしまうらしい。
「うん……じゃあ今日は詩音に頼もうかな」
「そうこなくっちゃ!」
「圭ちゃん……」
頭を垂れて落胆する魅音。圭一は彼女を見てすっと頭に手をやった。頼りなく身を震わす魅音の頭を優しく撫でた。魅音は本当に落ち込んでいるのだろうか、もしかしたら魅音なりの気の引き方を自覚して実践しているのでは? と圭一は思った。事実なら魅音も詩音に劣らないくらいの才媛なのかもしれない。
「ごめんな魅音。でもこの前はお前と相手をしただろ?」
泣いてしまいそうな彼女を圭一はフォローした。しだいに顔を上げていき
「わかった、今日は詩音に譲る……圭ちゃんがそう言うなら」
「はいはい、そこまでそこまで」
詩音は二人の間に割り込む。
「さあ圭ちゃん楽しみましょう」

「柔らかい」
圭一は息を吐いた。
制服の短いスカートから突き出ている長い脚に頬ずりをする。生温かくて弾力があった。制服というのがうまく彼のツボを突いていた。
───だから詩音は制服だったんだ
魅音はここで確信した。男心を刺すために詩音は制服を着たのだと。太ももを圭一に触って楽しんでもらうように短い制服のスカートをチョイスしたのだ。魅音は自分の長いスカートをぐっと握りしめながら詩音の計算高さを感じた。
「私も圭ちゃんの体温感じれてうれしい」
耳かきを握る。綿棒ではないところに彼女の気遣いが見えた。
「じゃあいきますね」
軽く息を浴びせると圭一の耳の入り口から始めた。
「ううぅぁいいよ……詩音」
弱々しくもなく力を調整して突き立てていく硬い木の感触に声を漏らした。かりりと詩音が耳の一点を努めているのを感じてそこに耳垢がこびりついているのを想像した。自分の汚物を見られこそぎ落とされているのを考えると背に粟が立ち、圭一のペニスは温かみを増していった。

「圭ちゃん気持ちよさそう」
魅音がつぶやく。彼の盛り上がっていくズボンの股間を魅音は見逃してはいなかった。
「ちょっと中に入っていきますよ」
詩音は耳かきを深く差しこんでいく。差し込むごとに漏れる圭一の吐息を自分のももに感じて詩音は満足げに微笑んだ。木の反り返りが垢を削っていく。
「痛くないですか? 大丈夫?」
と逐一、詩音は圭一を気遣う。婚約し新妻になったら詩音は尽くすタイプだろうと圭一は思いを巡らせた。毎日、彼女の手料理を味わってみたいなと思っていた時に
「ほらぁ、いっぱい」
耳かきを堪能する詩音の満悦そうな声が届く。耳の粘膜のこすられる心地よさは下半身にも達した。ペニスの体積は限界以上に増して、きんきんと痛み、ズボンを膨らます。
「し、詩音……マジで半端無いな。すごい良いよ」
「ふふ、ありがとうございます。それじゃあ今度は逆の方を……」


「圭ちゃんの顔やっと見れた、ふふ、圭ちゃんのほっぺ熱い」
正対するから今度は詩音と目が合う。整った顔立ちの詩音も気になるが圭一の目線の先には。詩音のスカートの端が見える。隙間から奥が覗けそうで心臓が高鳴った。
「ねえ、詩音まだやるの?」
女の子座りで静観していた魅音が絶えられず声を出す。詩音と圭一がまるで夫婦(めおと)のように見えてさっきから気持ちを持て余していたのだ。好意を持った異性と妹の触れ合いに少なからずは嫉妬の情を持ち続けていた。
「お姉ったら。人に耳は二つあるんですよ~、。もしかしてお姉には無い? くすくす」
茶化して魅音の介入をかわす。魅音は押し黙ってしまった。
「詩音……はやく頼む……」
圭一からの催促を受けうなずき、勝ち誇った笑みを魅音に送り込んだ。
「圭ちゃんもこう言ってますし、ふふ、ごめんなさいお姉」
言い返せない魅音を無視し詩音は目下の圭一に向かって言った。
「ねえ……私の恋人になってくれたら毎日圭ちゃんの思うことしてあげますよ……例えば」
詩音は圭一の目前にあるスカートの裾に手を掛けゆっくりと摘み上げ始めた。
圭一は喉を鳴らした。隙間が広がって奥の詩音の下着が薄く暗闇の中で見えた。
「詩音……今日は白?」
「……圭ちゃんのエッチ」
自ら下着をさらしてほほ笑む詩音がいた。恥を感じるのではなく見てもらっている。詩音の心の中は喜びで溢れていた。同時に姉の魅音を一瞥する。唇を噛んで見返された。魅音とはこの際はっきりと差をつけて圭ちゃんの意を得たい。詩音はそう去来し再び圭一の耳の中に棒を差し入れる。
「逆の方も気持ちいいよ……本当……詩音……あう」
耳の中を美少女にほじくられ、目の前には彼女の下着が揺り動くのが見える。しかも自分の意思で下着をさらしているのだ。甘い声でうわぁ、すごいとか少し力込めますねとか常に自分に気を回して掃除してくれる。圭一は夢心地だった。

「詩音……耳かき終わったら……」
圭一は魅音に聞こえないような小声で話す。それにつられ詩音は圭一の口に耳を近づける。
「……はい……お口でも何でも、圭ちゃんが言うのなら……圭ちゃんのアソコも苦しそうですし。私もその……圭ちゃんの顔を見てると結構……」
チラッと詩音は圭一の股間に目をやる。彼女にも圭一が耳だけでなくて下半身にも快感が寄せているのが理解できた。彼のズボンがぱんぱんと張っていたからだ。
「じゃあ仕上げに入っちゃいましょう」

もう終わってしまうのか。圭一は惜しく思った。しかしながら終わったら詩音に下半身の処理をしてもらえる。今見ている詩音の白い下着を脱がしてペニスをそこに押し付けることができると思うと、どうしようもなく高揚した。

「気持ちいい…………うあああ!」
突如圭一が声を荒げて詩音の手が止まった。驚いて耳かきを持つ手ががくっと震える。
「け、圭ちゃん? ど、どうしました?」
息を吐き、くぐもった声を出している圭一を見て耳の粘膜を傷つけてしまったのかと思った。おろおろとうろたえながら圭一の名前を呼ぶ。すると
「み、魅音~~! うぐっ!」
魅音? そう聞こえた詩音は魅音へと目線をやる。詩音は目をむいた。

魅音が圭一のペニスを口に入れていた。口に入れるというよりくわえ込んでいたのだ。じゅっぷじゅっぷと粘膜のすれ合う音が耳に入る。唇で上下に激しくしごきあげて一直線に吐精に導こうとしている。
「こ、こらぁ! 魅音!」
詩音が声を荒げる。圭一に夢中で魅音を見る余裕がなかった。圭一も耳掃除に傾注して魅音にジッパーを下されたのに気が付かなかった。
ちゅうちゅうと亀頭を吸い上げた後にペニスから口を離した。
「ごめん詩音。圭ちゃんが……苦しそうだったから」
顔色を変えずに魅音はつぶやくと再び音を立て始めた。詩音の膝の上で唸る圭一を見て詩音は思った。せっかく圭一と二人で夢見心地だったのにと。最後で姉にまくられてしまった。嫉妬の感情が出てくるのを詩音は感じた。大好きな圭一が自分の膝の上に頭を乗せて姉にヤられているのだから。
「~~っ!」
と困惑する詩音に圭一は
「し、詩音も」
つぶやいた。
「耳かきをつ、続けてくれ……うおぅ。頼む……」
魅音をとがめようと考えていた時にねだられた。圭一は詩音に耳かきをさせながら魅音の口内に射精したいのだ。詩音は自分が射精に導くのではなくて、姉をサブ的な立場で手伝うのは嫌だと詩音は考えた。
「し、しおん……お願い……」
しかし圭一に甘い声で呼ばれると拒否はできない。魅音に圭一を独り占めさせてしまうし、第一、圭一をないがしろにしてしまうからだ。
「もうっ、圭ちゃんたら……仕方ないなぁ」
ため息をついて、詩音は再び耳かきを握った。魅音はペニスを含みながら詩音の様子をまじまじと見ていた。

艶めかしい粘膜の擦れ合う音の中詩音は再び耳掃除に始める。圭一のあえぎと顔を目前で見れるのは良かった。が、魅音が躊躇なく口をグラインドさせているのを見るのは、正直癪だった。
「ううっっくうう!」
もはや耳での快感はなく魅音によるペニスの刺激で感じていると分かる。詩音の心境は正直穏やかではなかった。
「ひもひいい? へいひゃん?」
ペニスを離さずに話す魅音が疎ましく感じる。
「ちょっとお姉、そんなにがっつかないでください!」
と詩音。圭一がびくびくと動いて耳掃除どころではなくなっているのだ。急に動かすものだから、下手すれば圭一の耳の穴を傷つけてしまう。
「ごめん詩音」
と魅音が言った。口を離して詩音に謝罪したが懲りもせず再びペニスをくわえ込むと
じゅうじゅうと吸って激しいピストンを始めだした。圭一もがくがく動き出す。
耳かきもできないが、それ以上に圭一を魅音に取られた感じがして仕様がない。
「ほんっとに節操がないですよね、お姉って」
姉に向かって言い放った。魅音は圭一のペニスの味を吸うのに夢中なのか何も言い返さなかった。ふんっと鼻を鳴らして魅音から目を切ると
「ごめんなさい圭ちゃん、お姉が変態のせいで……せめてこれで我慢してください……ごめんなさい」
詩音は耳かきを放り投げた。
「し、詩音?」
圭一からくすぐったい耳の感触が消えた。せっかく耳掃除しながら射精できそうなのにと思っていた。怒ってしまったのかと感じたが
「!?」
圭一のほおの辺りに柔らかい感触が降りてきた。暖かくて弾力のある、そしてブラウスの衣摺れも感じる。詩音の両の大きな胸が彼のほおに覆いかぶさってきたのだ。
「おぁあああっつ!」
「こうするしか……んん、ないんです……お姉のせいで、んむん」
詩音は耳かきを続けていた。自分の舌を使って。圭一を気遣い知恵を絞り考えたのだ。
「これなら圭ちゃんが動いても傷は付かないですよね?」
舌先をすぼませ、耳腔に突っ込む。かがまないと圭一の奥まで届かないから必然的に大きな胸を彼に押し付けないといけなかった。
「し、おん……それヤバっ」
圭一の返事が聞けて詩音の唇が緩む。再び圭一をモノにできたと思うと詩音の心は興奮した。圭一の感覚は下半身から再び耳に移った。ただ耳を舐めまわしているのではなくて舌先を一点に集中させているのがわかる。律儀に圭一に従って耳掃除をしているのだ。
「んーん、圭ちゃんの耳苦~い」
と言いながら詩音は自分の舌で垢を落としていく。自分の出した汚物を味わわせている。その非常識な行為が圭一の射精欲を押し出す。
「っつあああ……」
魅音の方も変わらずに唇でしごき続けて圭一の体液を外に出そうとしている。
「み、魅音、もう出る……!」
それを聞いて魅音はぴくりと顔を震わせた。口を離す様子はなくそのまま速度だけを上げた。

「ほら」
ほおから詩音の乳房の感触がなくなった。上体を浮かせた詩音は
「こんはひ、ほれちゃいまひた。へいちゃん、ひえまふ?」
舌を突き出したまま圭一に言った。詩音の舌の上には白っぽく毛羽立った彼の耳垢が乗っていた。何と言ったのか理解ができなかったが、詩音の舌の汚い耳糞を見て何を言ったのか悟った。

───こんなに取れちゃいました。圭ちゃん、見えます?
と。
圭一のそれを乗せたまま詩音は口内に舌をたたみ込んだ。くちゃと咀嚼するのが聞こえた。
音が聞こえて少したった後に圭一が天を仰ぎ背筋を反らしだす。
「いっぱい、いっぱい、お姉の口に出してくださいね」
そう言って詩音がごくんと喉を震わせた瞬間に一気に陰茎の中の圧が上がった。
「お、おうううふっっ!!」
そのまま熱い魅音の粘膜に吐き出した。魅音は脈動に合わせて小刻みに顔を震わせた。一滴たりともこぼさない魅音を見て詩音は
「お姉は欲張りですね」
と言った。尿道をストローにして魅音は残りの液を吸い出す。しばしの逡巡の後に
「圭ちゃん……やっぱりおいしい」
と舌なめずりをしながら言った。涙を浮かべているが普通に話しているのを見ると魅音は精液を飲み干してしまったようだ。
「はふぅ、はぁ、はあ」
目をつぶりながら荒い呼吸を繰り返す圭一。膝の上で頬を熱くしながら息をする圭一を見て詩音は熱っぽい視線を送る。

「詩音」
唐突に名前を呼ばれて詩音は顔を上げる。魅音が目の前にいた。
「ずるいよ詩音、圭ちゃんの耳独り占めして」
えっ、と聞き返す間もなく魅音は詩音の唇を奪っていた。目を見開く詩音。逃れられないように魅音は手を回し込んで詩音の後頭部を抱き込んだ。
「……んん。本当に苦いね、詩音」
魅音は詩音の口内に残った残りカスを彼女から奪い取ろうとしたのだ。同時に詩音にも自分の唾液と一体化した圭一の精液を送り込んだ。初めは驚いていた詩音だが次第に姉の思惑を理解し
「……でしょ? お姉も精液の味がします」
詩音もまた圭一の残った精液をこそぎ取るべく魅音の口の中に舌を入れた。双子の美少女が耳あかと精液と唾液を飲み合っている。頭上で行われている二人の痴態のせいで圭一の気は段々と遠くなっていった。

「それじゃあね、圭ちゃん」
玄関先で二人を見送った。詩音の肩を借りながら魅音は靴を履く。けんけんとつま先を押しつけていた。
「私も……まあ、お姉に横取りされちゃいましたけど」
不満そうな言葉を並べたが詩音もまんざらではなさそうに言う。
二人が傘を手にした時に詩音が
「ねえ圭ちゃん、今度お祭りがあるの知ってます? うん、そうです、綿流しの」
言われて圭一は思い返す。そうだったと圭一は思った。雛見沢で毎年、祭りが開催されていると聞いたことがある。
「私と一緒に回りましょうよ! 案内してあげます。初めてですよね? 綿流しのお祭りは。圭ちゃんのために浴衣おろしてきますから」
詩音の浴衣というのがずいぶん頭に残った。詩音に腕を組まれて縁日を歩く。花火をやって金魚をすくって……
「……もちろん夜は……ね。どうです? ぐちゃぐちゃに浴衣着崩して私のうなじに歯を立てたいって思いません? 私と一緒にお祭り行ってくれたら……何でも」
詩音は熱のこもった吐息を耳に感じた。詩音に耳元でぬっと話し込まれていた。気が付かなかった。圭一の指先がかくかくと震え出す。浴衣の帯を剥ぎ取り後ろから犯す。汗ばんだ肌に髪を張り付けてよがる詩音を想像するとさらに指先が震えた。
「ちょっと詩音!」
魅音の大きな声で意識を戻す。魅音はあざとく聞いていた。詩音と逆の方の耳元で姉の魅音はつぶやいた。

「ねえ圭ちゃん、詩音より私と行こ。……もしそうしてくれたら」
魅音は言った。
「中に出していいよ」
頭を殴られたかとを圭一は思った。
「ちょうどね、安全日なの。うん、ちゃんと毎朝計ってるからわかる。圭ちゃんまだ生でしたことないでしょ? させてあげる。そしてさ、そのまま中に……熱いのを……うん」
彼女の舌なめずりの音が聞こえてきた。その音から遅れて
「詩音なんかじゃできないよ……私じゃないと……ね」
生唾が溢れてきて仕方がなかった。待ってると魅音は後に付け加えたが圭一は惚けて聞いていなかった。
「…………………………本当に安全日なんだか」
半笑いの詩音が聞こえないように皮肉った。

雨はより一層降っていた。二人の持っている傘の端同士が時折当たってしずくが散る。
「ねえ、詩音」
「……」
「圭ちゃんはいなくなったりしないよね……悟」
「やめてください」
言葉をさえぎって詩音は抑揚のなく答えた。
「圭ちゃんは外の人間ですから」
「……そう」
ぬかるんだ地面を踏んで泥が詩音のハイソックスに跳ねる。
「今日泊まってく?」
「……そうします」


fin

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最終更新:2010年03月05日 22:34