このごろ圭ちゃんの、詩音を見る目が変わった。

「……っく」
嵐のように巻き起こって過ぎて行った綿流しのあの日。
「……はぁ、」
悟史が見つかって詩音は毎日入江診療所に通い続けている。
「はぁ、んっ」
好きな人のところへ駆けていく詩音を圭ちゃんが熱っぽい目で見送るようになったのは、いつからだったろう。
「あぁ…んんん!」
ダメだよ、圭ちゃん。詩音は悟史が好きなんだから。
「圭ちゃ…!」
爪を剥がされても、詩音は悟史を諦めなかった。悟史が園崎家に消されたと思いこんで、双子の姉を殺そうとまでした。
「圭ちゃん、圭ちゃん、圭ちゃぁぁぁん!」
圭ちゃん、圭ちゃんに勝ち目ないよ。だから、こっちを見て。私を見てよ、圭ちゃん。
「………シーツ、また洗わなきゃ」



ミンミンミンミンミーン
ひぐらしの声はとうに消え、あちこちでセミの大合唱が聞こえるようになった。
我が部活メンバーに夏休みはない。
虫取り川遊び興宮の夏祭り。部活の企画を立てるのに部長の私も大忙しだ。
梨花ちゃんなんかはよほど夏を迎えたのが嬉しいのか、これまで以上に「みーみー☆にぱーにぱぱぱぱー☆☆☆」と大はしゃぎでここのところ負け無しだ。
羽入も梨花ちゃんとシンクロしてハイテンションだし、沙都子は先日悟史のことを監督から教えてもらってボロ泣きしていた。
本当は沙都子に教えるのは悟史がもっと回復してからという話になっていたけど、万が一このまま悟史が目覚めないことがあれば言うタイミングを逃すとあって、監督と詩音の判断で沙都子に告白する運びとなった。
詩音も沙都子も、強い。大切な人がいつ目覚めるかも分からないのに、生きていてくれて良かったと、それだけで嬉しいと笑う。
い つ 、 目 覚 め る か 分 か ら な い の に 。
「魅ぃちゃん?」
「え、な、なにっ?」
なんだろう。今、嫌な、なんだか黒いモヤみたいなのが、かかった。
「暑い?大丈夫?レナの帽子かぶる?」
ミンミンミンミンミーン
カキーン
わぁーわぁー
日差しが熱い。
興宮のグラウンドが熱気で歪んでいる。
その中で、ヒットを出した圭ちゃんが一塁に駆けた。
揺らめく風景の中で、圭ちゃんだけがハッキリと見える。
圭ちゃんだけが輝いて、圭ちゃんだけが目に飛び込んでくる。
泣きたい。なんでこんなに好きになっちゃったんだろう。
圭ちゃんが、ふとこっちのベンチではなくフェンスの向こうに目を遣った。
そして、赤くなって…顔を背けた。
ヤな予感がして、振り返ると。
そこには詩音がいて、圭ちゃんに手を振っていた。

も う ダ メ

詩音は無邪気に自分にも手を振って、雛見沢へ続く道を行った。

頭がおかしくなりそう。

「レナ。悪いけどおじさんちょーっとダウン。今日は帰るわ」
「うん。レナ送ってくよ」
「だいじょーぶ!寝不足で少し弱ってるだけだから」
「魅ぃちゃん」
「んっ?」
「一人で抱え込んじゃ、ダメだよ?」
やっぱりレナには隠し事はできないな。カラ元気なんてすぐに見抜かれてしまう。
「……うん。でも、今日は帰るよ」
「気をつけてね」
「うん、みんなによろしく言っといて」
「わかった」

圭ちゃんが好きすぎて、おかしくなりそう。
圭ちゃんが欲しい。圭ちゃんにあんな目で見られたい。圭ちゃんのモノになりたい。
こんなことを考えるのは暑いからだ。
太陽の熱が、ジリジリと追いかけてくるからだ。

「あれ、魅音は?」
惜しくもタッチアウトになった圭一は、ベンチにいたはずの魅音の不在に気付いた。
「軽い暑気あたりだって。今日は帰るって」
「一人で帰ったのか? 大丈夫かよ」
「足運びはちゃんとしてたし、寝不足だって言ってたから、少し眠ったらよくなるんじゃないかな。レナ、帰ったら魅ぃちゃんに電話してみるね」
「ああそうだな」
圭一は、頭から流れる汗をタオルでぬぐった。
「……まさか…な……?」
タオルでおさえたつぶやきは、誰にも届かなかった。



歩き慣れた道なのに、視界が歪んでよく見えない。
今戻れば退屈な日常を壊さなくて済むのに、震えた足が止まってくれない。
夜のとばりがあたりをすっぽりと包み、まあるい月が大きな白い家をぼんやりと照らしている。
二階の部屋に灯りがついてる。
インターホンを押してしまったらオシマイなのに、伸びる指はためらわない。
ピンポーン
出ないで。
会いたい。
せめぎ合う心がどちらかを決める前に、ばたばたと階段を下りる音が耳に届いた。
ガチャ
「はいはーい、って…詩音?どうしたこんな時間に。一人か?」
「ハイ☆こんばんは、圭ちゃん。おじゃましますねー♪」
「っておい!」
慌てる圭ちゃんの横をすり抜け、さくっと家に入る。
シンとしたリビング。人の気配はない。
ご両親は仕事で3日くらい帰って来ないと昨日言っていた。
つまり、圭ちゃんは一人。私たちは…今二人きりだ。
後ろで騒いでる圭ちゃんにかまわず、私は階段を上がった。
前に遊びに来たことがあるから、部屋は知っている。
「おいこら詩音!」
すぐに追いかけてきた圭ちゃんは文句を言いかけたが、何を思ったかすぐに戸惑った顔になった。
「なんて顔してんだ。ったく、どうしたんだよ一体……」
「圭ちゃんこそ。最近いつもそんな顔で私を見てるじゃないですかどうしてですか」
数秒の沈黙。
パサ。
「ちょ、待て待て待て待て!」
ブラウスを脱いで上半身下着姿になった私から、圭ちゃんは目をそらした。
「圭ちゃん」
ブラを外し、上着の上に落とす。目はそらしていても、視界には入っているのだろう。圭ちゃんの顔が赤い。それに……ズボンのファスナーのあたりが盛り上がっているように見えた。
「圭ちゃんが悪いんですよ」
くす、と笑ってひざまずくと、私は圭ちゃんのズボンの上に手を這わせた。
「私を見つめてばかりいるんですから」
布越しに圭ちゃんのがビクビク動くのが分かって、カラダの奥がじゅん、と鳴く。
圭ちゃんの、どんどん大きくなってく。
ホントにこんなの入るのかな。痛いかな。でも圭ちゃんならどんなに痛くてもいい。
挿れて欲しい。ぐちゃぐちゃに掻き回して欲しい。圭ちゃんの真っ白い精液欲しい。
奥をいっぱい突いて、熱いのたくさん射精して欲しい。
はやる気持ちでファスナーを降ろして、今度は下着の上からそっと触った。
ビクン、と圭ちゃんの腰が引いた。
「ダメだ……!」
「気持ちよくなかったですか?」
「じゃなくて!なんでいきなりこんなことするんだよ!お前には悟史が」
「やめてください!……悟史くんのことは……言わないで……っ!」
「しお…」
「ひどいことしてるの、分かってます!圭ちゃんの気持ちを利用してることも……でも私には、今、圭ちゃんしか頼る人がいないんです!だから……」
下着からはみ出た圭ちゃんのをペロリと舐めると、またびくびく動いた。
「う、わ」
胸で挟んでこすったら、透明なのが先っぽからあふれてきた。
「ちゅ、じゅる…ん……苦いんですね、ちゅ……」
舐めても舐めてもあふれてくる汁を全部吸い取るたび、圭ちゃんのカラダが跳ねる。
私が圭ちゃんを感じさせてる。そう思うと全身がゾクゾクする。
「あむ…ん……はぁ、あ…、一回、だけで……いいんです…圭ちゃん、圭ちゃんの、コレが…欲しい……」
圭ちゃんが断るはずがない。想いを寄せる娘に求められて、はねつけられるはずが
「お前は……それでいいのかよ、魅音……!」
頭から氷水をかけられたように、額のあたりが冷たくなった。
「え……」
「魅音」
やだなー圭ちゃん、こんな大事な場面でお姉と間違えないでくださいよー。
すぐにそう言うべきだ。フォローしなくっちゃ。でも。
「魅音、なんだろ?」
迷いのない目。もうどんな言い訳も通じそうにない。
どうしようどうしようどうしよう。
何か言わなくちゃ。でも何を?騙してごめんなさい?謝って済むことか。
好きな相手に化けて圭ちゃんの初めてをもらおうとしたなんて冗談じゃ通じない。
何言っても軽蔑される。嫌われる!
「ご、ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ」
今更ながら、自分のしでかしたことの重大さに気付く。
私は、好きな人を、欺いたんだ。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ」
ガクガク震えて圭ちゃんのことがろくに見られない。ちゃんと目を見て謝らなくちゃいけないのに。
侮蔑の視線が怖くて顔を上げられない。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「魅音!」
気が付いたら、圭ちゃんの胸の中にいた。
「落ち着け。怒ってるわけじゃないから」
「けぇ…ちゃ……」
「ごめんな。ほんとは最初っから魅音だって分かってたんだ。
ただなんでお前が詩音の格好なんかして思いつめた顔してるのか分からなくって」
「最初から……?」
「もう俺たち、一日で家族より一緒にいる時間が長いんだぜ?レナだって沙都子だって梨花ちゃんだって羽入だって
二人の見分けぐらい…いや詩音は化け狐並だから確率は7割ってところだが魅音はけっこーボロ出てるしな。
とにかくもう魅音が詩音のフリはできないってことだ。だから教えてくれよ。なんでこんなことしたんだ?」
「……怖くて」
「怖い?」
「圭ちゃんが、詩音ばっかり見てるから。詩音に圭ちゃん取られるのが怖くて……」
「詩音には悟史が…」
「だって!悟史はいつ目覚めるか分からないんだよ?!明日かもしれないけど、十年後かもしれないし、
もっともっとかかるかもしれない。それまで詩音が心変わりしないなんてなんで言えるの?
け、圭ちゃんのこと好きにならないなんて、なんで言えるの!?」
「万が一悟史が目覚めなくても、詩音が俺を好きになるとは限らないだろーが」
「分かるよ!だって私たちは同じだもん!違うけど、同じなんだもん!私が圭ちゃんを好きなんだから、
詩音だって悟史の次は絶対圭ちゃんを好きになる。圭ちゃんだって、」
「待て待て待て待て今サラリとなんか言ったぞ!」
「ほえ…?」
「……オホン!えーっと…魅音が、誰を好きだって?」
「けぇちゃん…」
「…………」
「…………」
「…………」
「けーちゃん、なんか、」
「いや、みなまで言うな。すみません言わないでください……」
一度大人しくなった圭ちゃんのアレが、スカート越しにぐいぐい押しつけられている。
「せっかく理性で抑えつけたのにお前がかぁいいこと言うからだぞ魅音!」
「え?え?え?」
かぁいい?え、かぁいいって…
「だって、おじさんだよ?詩音じゃないんだよ?」
「何言ってんだ。魅音は十分可愛いだろ」
「ほぇ?!」
「……なぁ魅音。さっきのってまだ有効か?」
「さ、さっきのって?」
「コレが欲しいってヤツ」
ぐい、と圭ちゃんの大きくなったのが脚に押しつけられる。
また、ぬるぬるしてる。そんなに押しつけられたらスカートがシミになっちゃう。
「魅音……」
「うん……圭ちゃんの、欲しい…な……」



魅音は分かってない。
自分をおじさんとか言いながら、女の子扱いされないと傷ついた顔するのがどんなに可愛いか。
魅音は分かってない。
がさつに振る舞う反面、たまに頭を撫でられるとはにかむ姿がどんなに魅力的か。
何度抱きしめたいと思ったか、キスしたい、胸をもみしだきたい、挿れたい、射精したいと妄想を膨らませていたか。
「ふ…あ…んむ……っ」
柔らかい舌が、一生懸命俺の唇をちろちろと舐める。
「けいちゃ…ん、はぁ、あ、好き……!好きだよぉ……」
「魅音……っ」
キスを続けたままシャツを脱ぎ捨てて、魅音を抱いた。
魅音の乳首がこすれてかたくなっていた。
唇から舌を首筋に這わせ、胸の谷間を舐める。
「ん……あぁ…っ」
手に余る乳房は揉むごとに従順に形を変え、俺の支配欲を満たしてくれる。
背中を指でなぞり、舌で乳輪をたどるごとに、魅音はビクンビクンと跳ねた。
「あっあんっけいちゃん!けいちゃんん!!」
その反応が面白くて、乳輪をなぞってはヘソへ、ヘソをしばらく舐めてはもう片方の乳輪をなぞる。
「圭ちゃん…やだ……いじめないでよぉ……」
こらえきれないという顔で、魅音がイヤイヤと顔を横に振る。
「いじめる?なんで?……そっかぁ、魅音は胸は感じないのかぁ」
「そう、じゃ、なくて…っ。分かってる、くせに!」
「何がだぁ?言わないと分からないなぁ」
「先っぽも、して……ぇ、乳首…ぺろぺろしてぇぇ!」
「素直な魅音は超かぁいいぜ。よく言えました、っと」
「ああぁあぁぁん!!けいちゃん…ひどいよ……つねるなんて…」
「出血大サービスだ。口は一つしかないからなぁー。左おっぱいだけ舐めたら右おっぱいがかわいそーだろうが」
「んぁっ!また…はぁ…あぁ……あぁん…」
「魅音は乳首引っ張られると感じるのかーヘンタイだなぁ」
「あんっ……はぁ…はぁ……けいちゃん、もう、ダメ……立ってられないよ……」
脚をもぞもぞさせ、魅音は座り込んだ。
「そっか。気が付かなくてごめんな」
「え、あ、」
「おっぱいだけじゃ物足りないよな?」
魅音の脚の付け根をやわやわと撫でると、しっとりと濡れたコリコリしたものにたどりついた。
「ひゃっ、あ、あああっ!だ、だめだめだめっ!そんなふうにこすっちゃらめぇ!」
「なんで?痛いか?」
「ちらうの、か、かんじすぎちゃってぇ、そこ、らめなのぉぉぉ!」
下着はもはや魅音の愛液でぐっしょりだ。スカートも脱がせた方がいいんだろうがめくり上がったスカートに
びしょぬれの下着が扇情的でこのまま犯したい気分にさせる。
スカートを腹までめくり、魅音を寝かせると、俺は結局ショーツを横に引っ張ってずらしクリトリスを強めに舐めた。
「あ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
びくんびくんと魅音の腰が跳ね、ぶわっと大量の愛液がしとどに腿を濡らした。
「あ……、あ………っ」
イカせられた、のだろうか。魅音はまだびくびくと震えている。
これだけ濡れたならもう大丈夫なのか?いやでも女ってのは濡れるだけじゃダメだとか本に書いてあったな。
ナカもいじった方がいいとかなんとか。
くちゅ
「はぁ、ん!」
ショーツを脱がし、まずは指一本で様子を見る。
「あ……だめ……イッたばかりだから、いま、感じすぎちゃう、……んんっ!らめ…らめだったら……!
あ、あああぁ、や……っナカでそんなにうごいちゃ…あ、オク、おくかんじちゃう……っ!
あ、らめ、また、イッちゃ、う……っや、わたし……ばっか、イくの…ヤ…ぁあ、ああああ、激しいのだ、だめぇ!
あ、ああああああああぁぁぁ!!」
ピンクの割れ目がヒクヒクしてる。
やばい。股間がガッチガチではやく挿れたいぶちまけたい魅音をじかに感じたい。
待て。魅音は初めてなんだ。優しく優しく…ぶちまけたい。どっちだ。
逡巡していると、魅音がそっと俺のイチモツに触れた。
「けいちゃん……けいちゃんの、ほしい……はやくぅ……っ」
だから俺の理性をどこまで食いちぎれば気が(ry
ズブッ!
「あ、は、ああああああああああ!」
快楽の全くない声だった。魅音は膣を締め、痛みを必死で堪えた。
「ごめ、でもちょい緩めてくれないと俺もキツイ……」
透明な密にまじって破瓜の赤が痛々しくシーツを染める。
「ごめ…なさ……よごし、ちゃった……」
「バーカ。そんなの、初めてを俺にくれたってだけで百億のおつりが来らぁ」
「そんなにたいそうなものじゃ…ないよ……」
「痛いか?抜こうか?」
確かに魅音のナカはきつくて、ぎゅうぎゅう締め上げられてるこっちも少しは痛いのだが、膜を破られ出血までしてる魅音の痛みは想像もできない。
「だいじょうぶ……それより、うれしいの方が勝ってるもん……。圭ちゃんと、ひとつになれたんだなって……私の初めてと、圭ちゃんの初めてが、ひとつになれたなんて、すごくしあわせだよぉ……」
「だからそういうこと言うなよ……ジェントルマンな俺が死ぬ」
「えへへ。動いていいよ?私のナカで感じてる圭ちゃん、見たいし……」
「いいもんじゃねーぞ」
「いいから。ね……?」
ゆっくり、魅音に負担がかからないように…と思いつつ、魅音のナカは信じられないくらい気持ちがよくて、
もっと感じたいと本能が叫ぶ。
「あ、あ、あ、あん、あん、ああ、ん……!」
魅音の声にもだんだんと痛みの色は消えて、快楽が混じってきた。
「ああ……、…はぁん……けいちゃ、けいちゃん、もっと、もっとオク、突いて……!
気持ちいい、けいちゃんのが気持ちいいのぉぉ!」
「魅音、魅音……っ!」
「あ、あのね、けいちゃ、ナカに、ナカに欲しい……ふぁ……あ、けいちゃんの、せーえき、欲しいよぉぉ」
「……っ、イくぞ、魅音、ナカに射精すぞ!」
「ふぁ……あ、けいちゃ……またおっきくなったよぉ……先っぽが…オクで……ごりごりするの……!
あ、あああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!あ……ナカ……びゅくびゅくいって……あ……おくに……射精てる……
あ……はぁ……あぁ……ひもちい……ぃ!」
俺たちは、しばらくつながったまま何度もキスをした。
魅音は何度も私でいいの?本当に?と訊いてきた。
こいつのことだからしばらくは同じ質問を繰り返すんだろうな。
まぁ何度も好きだ好きだ言うのは恥ずかしいが苦じゃないからいいとして。
問題は詩音だ詩音。
「でもさ。圭ちゃんが、その、私を、すすす好き、ってことは、信じるとして。なんで詩音のことあんなに熱っぽく見てたの」
「う゛ぇ……あー…………どーしても言わなくちゃダメですか」
聞くまでは自分のこと好きだなんて信じない、って目で返された。
「……一日、冷却時間をくれ………頼むから…………」
魅音はとりあえず待つと言ってくれたが、憂鬱だ。でも放っておいて詩音の方からバラされるよりはいいのかもしれない。
詩音の言動を見張ってるのもいい加減疲れてきたし。
覚悟を決めよう……。



「あれぇ~お姉まだ帰ってないんですかぁ?」
以前に比べすっかり丸くなった鬼婆の住処は、詩音にとって近寄りがたいものではなくなってきた。
分をわきまえていることを信じてもらえたのかもうどうでもよくなったのか、本家にフラッと寄っては泊まっていくのも特にとがめられなくなった。
詩音は麦茶をそそいだグラスを持って、縁側で高く昇った月を見上げた。
「お姉、まさか暴走してるんじゃないでしょうね……」
このところ圭一が詩音ばっかり見ているのを誤解して、自分に変装して何かやらかす前に話をつけに来たというのに、もしや遅かったか。
先日、詩音は気まぐれに圭一の家に寄った。圭一は自室にいるから自由に上がって上がってと圭一の父親に勧められるがままに二階に上がり、びっくりさせてやろうと足音を忍ばせバーンと突然部屋に入ったら。
圭ちゃんが鬼の様な形相で股間のオットセイ☆を扱きながら『み、魅音んっ……!』って誰かさんの名前を叫びながら発射するところに遭遇するなんて。
そりゃ気まずくもなりますよね。
それからずーっとお姉にチクらないように見張られてるし。
そーゆーところが誤解を生んで周囲にメイワクかけることが分からないんですかねぇ。
『絶対言うな誰にも言うな特に魅音には言うな』
『はーい☆』
まぁあれはあれですよ。
はーい☆言っちゃいまーす☆のはーい☆にしちゃえばいいですし。
お姉のことだから、圭ちゃんにオカズにされたなんて知ったらむしろ真っ赤になって嬉しがりそうなのに。
「早くお姉帰ってこないかなー☆」
グラスの氷がカランと鳴った。

fin

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最終更新:2008年07月12日 15:42