「よし……ここらでいいな。 へへへ……」

人気のまったく無い、学校の校舎裏……。 日陰になり日光のまったく当たらないそこはとてもうす暗く、梅雨時のジメジメした空気をより一層重く感じさせていた。
その普段なら誰も近寄らないような場所で、その男、前原圭一は嫌な含み笑いをしていた。
彼はこれからここで自分が起こす出来事を思い浮かべると、くっくっくと堪らなさそうな笑みを浮かべる。
そしてそんな不気味な圭一のそばには、ある二人の少女が不安そうな顔で彼に付き添っていた。

「いったいなんなんですの、圭一さん。 わ、わたくし達をこんなところに連れてきて……」

「みぃ……なんだか今日の圭一、少し怖いのです。 何を考えてるのですか……?」

その二人の少女……沙都子と梨花の問いに圭一は何も答えない。 ただあいかわらずの含み笑いをするだけである。 それが余計に二人の不安感を一層煽っていく……。


授業終わりの放課後。 とある事情で、沙都子と梨花の二人は圭一にこの校舎裏に連れて来られていた。 この怪しげな場所に……。
元は営林所を間借りしている学校なだけあり、ここの敷地内には工事用具などが置いてある倉庫が多くたたずんでいる。
二人が連れてこられたこの校舎裏もそのご多分に漏れず、外からはほとんど誰の目も届くことが無くなるほどの死角地帯になっていた。
まだ太陽が空に浮かんでいるこんな昼間でも、おそらくまだ校庭や教室に残っている生徒にも、ここに人がいるなどと知られることはないだろう……。

誰にも見られる心配がなく、そして余計な邪魔が入る心配も無い場所……。 その響きはどう考えても健全と呼べるものではない。
圭一はこれから自分がしようとしているゲームに最も適した状況に、おもわず口元をにやけさせた。

「くっくっく……さーて梨花ちゃん、沙都子。 これからここで何をするかわかるか?」

邪悪な微笑みを浮かべながら、圭一が二人に質問する。 だが沙都子と梨花はわかるわけがないと、フルフルとその可愛らしい顔を振るのみだ。

「わ、わかるわけありませんわ。 一体何を考えてますの、圭一さん……」

「ボク、怖いのです……ボク達これから何をされちゃうのですか……?」

お互いがお互いを庇うように、身を寄せ合いながらフルフルと震えていく沙都子と梨花……。 まるでこれからこの男にイタズラでもされてしまうといった感じの怯えっぷりだ。
そんなに怖いのならば逃げ出せばいいのに……といったところだろうが、二人にはそれが出来ないとある事情があった。
もはや恐怖の対象とすらいえる圭一を目の前にしながら、沙都子と梨花は自分達がこの境遇に陥っている原因を思いだしていった……。


今日も一日の授業が終わり、自分達をはじめとするメンバー五人で毎度おなじみの部活を行った。
お題はトランプだったか、それとも犯人当てゲームだったか……。 今の沙都子と梨花にとってはもはやそんなことはどうでもいい。 
とにかく、自分達はその部活での「敗者」になってしまった。 運が悪かったのかそれとも実力によるものなのか、見事に同着ビリナンバー1を二人で手に入れてしまったのである。

だがそれだけならまだ望みはあった。 罰ゲームはもちろん嫌だが、一位の人間によってはまだガマンできるものもあるからだ。
せめて魅音かレナが一位を取ってくれたなら……。 そんな甘い考えが二人の頭の中をよぎっていた。 事実二人のビリがほぼ決まる直前は、まだどちらかがトップになるかのようにも思えたのだ。

だが、現実は非情だった。
沙都子と梨花がビリだと決まった途端、あの男が驚異的なスピードでトップに躍り出たのである。
それが今自分たちの目の前にいるこの男……。 前原圭一だった。
圭一はそれまではわりと普通のゲーム運びだったくせに、沙都子と梨花のビリを見届けるとイカサマじゃないかと思えるほどの試合運びで見事トップを勝ち取ったのである。

結果……少なくとも今この時間だけは、梨花と沙都子の人権は全て圭一に委ねられた。 この薄暗い校舎裏でどんなことをされても、どんなことをさせられても少女達には拒否する権利は無いのである……。

「へへへ……さぁ、いったい何をしちまおうかなぁ? 沙都子と梨花ちゃんは、これから俺にどんなことされちまうんだろうなぁ~? んっふっふ……」

「ス、スケベな顔ですわ……。 わたくし達、この男に何をされてしまいますの……」

「今の圭一は悪いネコさんなのです。 これは絶対ロクでもないこと考えてるお顔なのですよ、沙都子……」

どこぞの刑事がするような笑い方をする圭一に、沙都子と梨花は一層不安を募らせていった。
すると圭一はニヤリっと口元を曲げ、悪意とも取れるような邪悪な顔をして彼女達に口を開いた。

「二人とも、一応確認しとくぜ? 俺たち部活メンバーのルール……敗者は勝者の言うことをなんでも聞く、だったよなぁ?」

「……そのとおりですわ」

「……はいなのです」

圭一の念入りな「再確認」に、二人は憂鬱な顔で答えた。
部活の罰ゲームは、絶対。 どんな嫌なことであってもかならず実行しなければならない。
それだけは圭一がこの雛見沢にくる前から部活を行っていた二人には、痛いほどよくわかっていることだ。
絶対服従を意味するこんな「確認」までして、一体この男は幼い自分達に何をするつもりなのだろう……。
まさかこんなにも幼い自分達に、この男は卑猥なことをしようとしている?
それを一瞬でも考えると、二人の体に寒気がするほどの悪寒が襲ってくる。
そんな中、沙都子は勇気を振り絞ってその言葉を……言った。

「あの……け、圭一さん。 せめて梨花は……梨花だけは勘弁してあげて下さいませんか……?」

自分だって本当は怖いだろうに、沙都子はそう健気に言った。
どうせ二人とも手篭めにされるのなら、せめて親友である梨花だけはなんとか助けて欲しいと勇敢にも圭一に願い出ていったのだ。

そしてこれは圭一にとっても予想外のことだった。
てっきり二人して自分に怯えるだけの羊になるかと思いきや、まだ他人をかばう余裕があったのかと、圭一は沙都子の言葉を少しだけ聞いてやろうという気になっていった。

「ほぉ……梨花ちゃんだけは、だって? それはどういうことだぁ、沙都子」

「……はい。 圭一さんがわたくし達に何をしようとしてらっしゃるかわかりませんけど、どうか梨花だけは見逃してあげて下さいまし。 いやらしいことをしたいのなら、どうかわたくしだけで……」

そう圭一にすがるようにしながら言うと、沙都子は健気にも小さな頭をペコペコと下げていく……。

本来ならこれは敗者である「二人の罰ゲーム」である。 沙都子のこのお願いは、さきほど確認された罰ゲームは絶対というルールを破ってくれといっているものだ。
それはメンバーならば絶対にしてはいけないことであるし、圭一もこんなメリットのない提案をわざわざのむ必要はない。
だが沙都子はそんなこともわかっていて、それでもなお親友の為に目の前の圭一に頭を下げていくのだ。

「おねがいします、圭一さん。 どうか梨花は、梨花だけは助けてあげて下さいまし……」

「ほっほ~。 梨花ちゃんだけは、ねぇ? んーどうするか……」

「はい……おねがいしますわ……」

スケベなこと考えてます丸出しの圭一にも、あくまで丁寧に頭を下げていく沙都子。
彼女にとっては梨花は一番の大親友。 もしかしたら友情以上の感情も持ち合わせているのかもしれないが、それは今は関係ない。
とにかくこのスケベ男の毒牙から梨花を逃れさせようと、可愛らしい金髪の頭をペコペコと降ろしていった……。
そんな必死に自分をかばっていく沙都子の姿に、当の梨花も黙っていられるわけがない。

「さ、沙都子、そんなのダメなのですよ。 これは二人の罰ゲームなのですから、ボクちゃんとも罰を受けるのですよ……」

「梨花は黙っていてくださいまし……。 こんなことに付き合うの、わたくしだけでいいんですわ。 わたくし一人だけで……」

「で、でも……でもでも、そう言うならボクだって。 ボクだって沙都子のこと……」

沙都子がこんなにも自分を想ってくれているように、自分だってあなたを負けないくらいに想ってる。 梨花はおもわずそう続けようとした。


だが、梨花は考えた。 長年生きている自分だからこそ、沙都子とはちがうやり方でこの状況を脱せないものかと……考えた。
こんなスケベ男に愛する沙都子を取られるわけにはいかない。 なんとか方法がないものかと少し考えて……しばらくするとすぐにその答えは見つかった。
大丈夫、普段からよくやっていること。 私はこの変態男からあなたを守ってあげるわ……。
心の中でそう唱えると、梨花はあのにぱ~♪とした笑顔を作りながら圭一に大胆な行動にうってでていった。

「……け、圭一~♪ だ、大好きなのですよ~♪ にぱ~♪」

この状況でいきなりこれはちょっとわざとらしすぎるかなとも思ったが、梨花はそんな甘いセリフを吐きながら目の前の圭一に向かって駆け出していった。
できるだけ可愛さをアピールできるよう両手を広げると、梨花は目の前にいた圭一にガバっと抱きついていったのである。

「おおっと……ど、どうした梨花ちゃん? いきなり抱きついてきたりして……」

「圭一~けいいちぃ~♪ ボク、圭一のこと大好きなのですよ~♪ 」

「ん……へへへ、どうしたんだ急に? 梨花ちゃんらしくねぇなぁ……」

梨花の予想だにしない行動に、圭一は当然驚きの声をあげる……が、わりと冷静に抱きついてきた梨花の頭をナデナデしていった。
てっきり慌てふためくと思っていたのに……圭一の意外な平静っぷりに、梨花はおもわず心の中でチッと舌打ちをした。
だがここで演技を止めるわけにはいかない。 この男をなんとか誘惑しなくては沙都子を救えないのだからと、梨花は更に猫撫で声で圭一に甘えていく。 

「あの……あのですね、圭一? ボク、お願いがあるのです……。 大好きな圭一にぃ、お~ね~が~い~なのです~♪」

「ほー……お願いねぇ。 なんだ梨花ちゃん、言ってみろよ?」

しめた、と梨花は思った。 やっぱりこの男単純スケベだ、とも思った。
できるだけウルウルとしたひとみを作りながら、梨花は上目遣いで圭一の顔を見つめていく……。

「その……エ、エッチなことがしたいならボクに……ボクだけにシて下さいなのです♪ 沙都子にはしないで……ボク、嫉妬しちゃうのですよ? みぃ……♪」

「おいおい梨花ちゃん、俺がいつそんなことするって言った? まだ罰ゲームの内容は言ってないぜ?」

「みぃ、隠したってわかるのですよ……。 圭一はボクにシてみたくはないのですか? すごくエッチなこと……」

「………………………」

顔をほんのりと赤くしながらの、幼女の甘い囁き……。 それに圭一が反応しないはずがなかった。
本来なら彼には別の目的があったのだが、この梨花の誘惑にはおもわずゴクリと生唾を飲み込まずにはいられない。
いっそこのままこの要求を受け入れてしまおうか……などと考えていると、それをポカンとしながら見ていた沙都子も負けじと口を挟んでくる。

「な、何しているんですの梨花! わ、わたくしがすると言ってるでしょう!」

自分が梨花を守るはずだったのに、いつのまにか自分の方がかばわれてしまっている。
沙都子はその場をダっと駆け出すと、梨花と同じように圭一の体に抱きついていった。
ちょうど彼のお腹のあたりにしがみつき、梨花よりも勝っている部分を餌にして「お願い」していく。

「ぺ、ぺったんこな梨花なんてどうせよくありませんわよ? わたくしの身体の方が、レディーとして上等なんですから……♪」

そう言って沙都子は、ムニュムニュ♪っと自分の微乳を圭一の下腹部に押し当てていった。
もちろんこの言葉も梨花を守るためのものであって本心ではない。 だが今はなんとしても圭一を自分に欲情させ、「自分だけ」に興味を引かせることが必要なのだ。
そう考えた沙都子は、唯一梨花に勝っている点。 年の割にはやんわりと膨らんでいる乳房で圭一を誘惑していったのである。 大きさで勝っていることは、普段お風呂に一緒に入っているので分かっている。

ムニュ、ムニュ、ムニュニュニュ♪

「ほら、ほら、圭一さんどうですの? わたくしも少しは育ってるんですのよ、ほら、ほら、ほらぁ♪ 梨花よりいいでしょう? 膨らみかけのおっぱい、圭一さんの大好物ですわよ……♪」

「お、おおう、こ、これは……沙都子、おまえ……」

プニュップニュッと押し付けられてくる感触に、圭一ははからずも欲情してしまった。
そのおっぱいを押し付けられて気持ち良さそうな顔をする圭一に、隣にいた梨花も嫉妬したとかしないとか……。
沙都子に負けじと自分のナイチチをペタンペタンと、圭一の下腹部に押し当てていった。

「圭一、けいいちぃ、ボクの方がいいですよね? 圭一はつるぺったんな女の子が好きだって、この前も言ってたのです♪ ボクちゃんと覚えてるのですよ? にぱ~♪」

「あ、ああ、俺は梨花ちゃんみたいなのも好きだぜ……って、おお、こ、これは……」

沙都子とはまたちがった感触が、圭一の頭をとろけさせていった。
柔らかさはまったく感じないが、制服越しにコリコリとした二つの突起がこすり付けられるのにおもわず勃起しそうになった。

左側には梨花、そして右側には沙都子……。
二人の幼女が揃って自分を誘惑してくるという有り得ない状況に、圭一はおもわずこのまま二人とも押し倒したくなる衝動に駆られた。
この年で男である自分に胸を押し付け、したたかにも自分を選べと誘ってくるなどと……なんてけしからんのだと。
いっそこのまま計画を変更し、二人とも俺が頂いてしまおうか……などといった甘い誘惑が頭の中をよぎっていく……。

だが圭一はなんとかその誘惑を断ち切ると、クールな頭で当初の目的を推し進めていこうと考えた。
今も自分の身体にプニュプニュ、コリコリとたまらない感触を押し付けている二人の幼女の頭にポンっと手を置いていく。

「安心しろ二人とも……。 そんなことしなくても、俺は君達の体に指一本触れるつもりは……ない!」

「「…………ふぇ?」」

圭一の予想だにしない言葉に、沙都子と梨花がキョトンとした顔をする。
困惑する彼女達を安心させてやるように、圭一はそのまま頭をナデナデしてやった。

「はっはっは♪ 俺が仲間であるおまえらにそんなことするわけねぇじゃないか~♪」

そうしてナデナデしてやると、圭一は二人に安心感を植えつけるようにわざとらしい明るさを作っていった。
そのなんとも信用できない作り笑顔に、沙都子と梨花は嫌な予感を感じないはずが無かった。

「圭一は悪いネコさんじゃない……わけないのですね」

「ええ……もちろんちがいますわ、この疑わしい笑顔は。 もっとも言っていることは嘘ではないようですけど……」

圭一が自分たちの身体に触れない、という言葉自体は信用していいのかもしれない……。
だがこのスケベ男がそれ以外の卑猥なこと……。 ろくでもないことを考えているのはそのいやらしい顔を見れば明白だった。
そもそも何もする気が無いのなら、こんな人気の無い校舎裏に自分達を連れて来る必要はないのである。
スケベ王ともいえるこの前原圭一が、罰ゲームというおいしいチャンスを逃すわけがない……。 それを沙都子と梨花はこの年にしてすでに経験で知っていた。
そして二人の想像どおり圭一はクルっとその場で背後を振り返ると、すぐそばの倉庫の影あたりに声をかけていったのだ。

「お~いお前ら、そろそろ出てきていいぜ~?」





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最終更新:2010年03月05日 22:35