今日は綿流しの祭り。
奉納演舞が行われている間、神様である僕は社の中にいないといけない。
もう少し梨花やその仲間達と一緒にいたいけれど仕方がない。
僕はみんなの中には入っていないけれど、それでも彼らと一緒にいるのは楽しい。
正直言って一人で社の中にいるのはほんの少し寂しいのだけれども、それも仕方のないこと。
おや……? 祭具殿の前に人影が見えるのですよ?
そのまま僕はその影に近づく。……その人影は富竹と鷹野だった。
富竹がかちゃかちゃと錠前をいじっている。
「……まったく。鷹野さんも好きだね」
「うふふふ。……なんていっても、これは私のライフワークですからね」
あぅあぅ。祭具殿の中を見ようというのですか? 罰当たりな奴らなのです。
でも、僕は別に彼らを罰するつもりはない。見たければ別に見ても構わないと思う。
それにきっと、独りぼっちでいるよりは幾分かましだと思うのです。
かちゃっ
軽快な音を立てて南京錠の留め金が外れる。
「開いたよ。……じゃあ鷹野さん。僕はここで見張っているから、君は中を見てればいい」
「くすくす。あら? ジロウさんは一緒に来てくれないの?」
「……知ってるだろ? 僕はこういうのは苦手なんだ。それに、鷹野さんの邪魔もしたくないしね」
富竹は曖昧に笑った。
「邪魔なんて事ないわよ? 少なくとも、一人でこんな暗いところにいるよりはずっとましよ」
「ちょっ……ちょっと、鷹野さん……」
鷹野は富竹の腕を掴み、強引に祭具殿の中へと引きずり込んでいった。
暗闇の中で独りぼっちよりはましという鷹野の言葉に共感を覚え、僕は少しだけ苦笑した。
彼らの後に続いて、僕も社の中に入っていった。
ランタンの灯りの中、ぱしゃぱしゃとフラッシュをたいて、楽しげに鷹野が写真を撮っている。
その傍らに富竹は立っていて……社の中にある拷問道具や解剖道具に恐々としながらも……楽しげな鷹野を見て笑っていた。
「うふふふふふふ☆ なるほどね。……こんなものが日本にもあったなんて驚きだわ。そしてきっとその意味は……ああ、ひょっとしてこういうこと? じゃあ、人食い鬼伝説の元は……。すごいわ……今までは仮説にすぎなかったけど。これなら……」
見ているものはおどろおどろしいけれど、まるで子供の様に夢中ではしゃぐ鷹野。それは普段の鷹野が見せない鷹野で……僕から見ても、何故か微笑ましいような気がした。
「ほらほら、ジロウさん……これ見て? これどうやって使うか知ってる?」
鷹野が床に落ちていたペンチのような道具を拾い、それを自慢の宝物のように富竹に見せる。
「いや……出来れば聞きたくないかなぁ……。あはは……今夜夢に出てきそうだ」
「んもぅ……ジロウさんの恐がり。……くすくす☆」
心底楽しそうに、鷹野が口に手を当てて笑う。
と、……ふっと鷹野は一瞬、寂しげに微笑んだ。
「……ありがとう。ジロウさん。無理言ってこんな事に付き合わせてしまって……」
「いや、僕の方こそ久しぶりに鷹野さんの笑顔が見られて嬉しいよ」
快活に笑う富竹。
「ねぇ……。ジロウさん?」
鷹野はそれだけを言って、富竹へと近づいていく。
「……?」
そして、富竹の前で一瞬立ち止まり――。
「んっ」
鷹野は富竹の頬に両手を添え、キスをした。
富竹は不意をつかれて驚いたようではあったけれど……すぐに目を閉じて、彼女を優しく抱き寄せた。
鷹野が唇を離す。
「ねぇジロウさん……。ここで、抱いて下さらない?」
「ええっ?」
富竹は今度こそ驚きを隠せなかった。
……それは僕も同じだった。彼女は祭具殿を何だと思っているのですか。あぅあぅあぅあぅ。
あまりにも突然な展開に、僕も富竹も思わず赤面してしまう。
「ちょっ……ちょっと待ってよ鷹野さん。……こんなところでかい?」
「ええ。そうよ」
「ダメだよ……人が来たら……。それに、実を言うとさっきから誰かに見られている気がして……」
「大丈夫よ。奉納演舞が終わるまでは誰もここには来ないわ。それに、見られているなんて気のせいよ」
「でも。……ほら、僕はゴムを持っていないし……」
「……構わないわ。そんなのいらないもの」
そう言って鷹野は富竹の胸に顔を埋める。
「お願いよ……ジロウさん。貴方が欲しいの」
「…………鷹野さん………………」
富竹はしばらく呆然と鷹野の肩に手を置いていたが……やがて意を決して、彼女を抱き寄せた。
「本当にいいんだね? 鷹野さん」
「ええ……、ジロウさん」
鷹野は頷いた。
んんっ くちゅっ くちゅっ
そこにあるのはランタンの光だけ。薄暗がりの中で、彼らはキスをした。
あ……あぅあぅあぅあぅ。彼らは本当にここで始める気なのですか? あぅあぅ。
二人とも目を閉じて……濃厚に舌を絡め合い、唾液を交わす。
「んんっ くふっ ううぅ」
時々漏れる鷹野の声が艶めかしい。
僕は間近で見ながら、息を呑んでいた。
キスを交わしながら、鷹野の右手が富竹の体をなぞって……大きく膨らんだ股間へと移動していく。
富竹もまた、右手で鷹野の豊満な乳房を揉みしだいていた。
二人が唇を離す。
「ふふふっ。ジロウさんのここ……最初は嫌だって言っておきながら、もうこんなに大きくなってるわよ?」
「いや、それは……鷹野さんがあまりにも魅力的だからだよ。……仕方ないじゃないか」
「んふふ。……じゃあ、そういうことにしておいてあげる」
妖艶に微笑んで、鷹野は上着をまくり上げた。
あぅあぅ……前々から思ってはいましたけど、やっぱり鷹野の胸は大きいのですよ。生で見るとまた迫力が違うのです。
僕は富竹と一緒に、鷹野の胸に目を奪われていた。
鷹野はその豊満な乳房に上着を乗せたまま、自分の背中に手を回し、ブラのホックを外した。
ぷちり と音がして、淡いピンク色をしたレースのブラジャーが下に落ちる。
ゆさっ ゆさっ と鷹野の乳房は揺れた。
そして、その場で立て膝を付いて、ベルトを外す。
ジッ……ジジジッ
ゆっくりと焦らしながら富竹のジッパーを下ろしていく。
富竹の息が……荒く祭具伝に響く。
鷹野はキャベツの葉を剥くように富竹のズボンを脱がし、そして下着を下ろした。
びんっ とそそり立つ富竹の男性器が露出する。
あ……あぅあぅ☆ 富竹も意外と立派なものを持っているのですよ☆ 圭一のがオットセイ☆なら、富竹のはトド☆なのです。
「んふふっ」
鷹野はその胸で富竹のものを挟み込む。
富竹の亀頭が、その双丘の隙間から顔を出していた。
「ああっ……鷹野さん……」
鷹野が富竹の亀頭をくわえ、富竹は喘いだ。
むにむにと胸で富竹のトド☆を刺激しながら、首を揺すって亀頭に舌を絡めていく。
富竹の尻にきゅっとえくぼが出来る。
「……ふふっ。ジロウさんって本当にこれが好きね? 私の胸の中でますます固くなってきたわよ」
「ああ……最高だよ。鷹野さん」
恍惚の表情を浮かべる富竹。
「んふふふふふふ」
再び富竹のものを口に含み、愛おしげにパイズリを再開する鷹野。
ちゅくっ
ふと、僕は股に力が入るのを感じた。
こっそりと袴に右手を入れて確認してみる。……そこは湿っていた。
あ……あぅあぅ。困ったのです。僕も見ているだけじゃ堪らなくなってきたのです。
い……いいですよね? 少しだけなら……。梨花も近くにいませんし、彼らに僕の姿は見えないのですから。
そのまま右手で股間を擦り、左手を巫女装束の中に入れて右の乳房を揉みしだく。
どうやら自分で気付かないうちに火がついていたのか……僕の体は敏感に刺激を伝えてきた。
はぁはぁ と、彼らの声に混じって僕の吐息も祭具伝に響いていく。
「じゃあジロウさん。……今度はあなたが私にしてくれない?」
すっ と突然鷹野は行為をやめ、立ち上がった。
このままパイズリで富竹をイかせるのは、鷹野の本意ではなかった。
「ああ、分かったよ。鷹野さん」
靴と一緒にズボンを完全に脱いで……今度は富竹がその場に座り、鷹野のズボンと下着を下ろしていく。
富竹と同様に、鷹野も靴と床に落ちたズボンを脱いだ。
ランタンの光に、てらてらと鷹野の恥毛が光る。
「鷹野さん。……僕はもう……」
「挿れたいの? ……ええ、いいわよ。私もそうして欲しかったの」
焦点の定まらない目で、鷹野は言った。
富竹が立ち上がると鷹野は富竹の上着をまくり上げ、そして富竹の鍛え上げた体に胸を押し付けた。
そして富竹が鷹野の腰に手をやって彼女を支えると、鷹野は左脚を富竹の右脚に絡めて腰を浮かし……その形で富竹は鷹野の中へと挿入した。
「ん……ふうっ んんっ」
立ち上がったまま、富竹がゆっくりとピストン運動を開始すると、鷹野は富竹の背中に手をまわしてしがみついた。
富竹のものが鷹野の中を出入りするたびに、結合部からぬちゃりと粘り気のある液体が滴り落ちていく。
僕はもう、完全にその光景に目を奪われていた。
「あふん あんっ うんっ んんっ」
鷹野の嬌声に、かつての僕のそれとイメージが重なる。
僕は鷹野の嬌声に導かれるまま、中に男の人のものが入ってきたときの感覚……僕の中をえぐりそして満たした、熱くて固い肉の感触を脳内に再現する。
それは執拗に僕の奥を突き、そして肉壁を……ひだをかさで擦る。
僕もそれを貪欲に締め上げ、もっと奥へ奥へと腰を動かす。
抗うことの出来ない強い力に責められ、自分の自我が壊れていく快感。
今、鷹野が味わっている感覚がまさにそれだった。
「ジロウさん……私……もうっ」
「我慢できないのかい?」
富竹が訊くと、鷹野は目を瞑ったまま頷いた。
「じゃあ、もう少し激しくいくよ?」
そう言って富竹は鷹野のお尻に両手をやり、彼女を抱き上げた。無論、挿入したままで……。
鷹野が両脚を富竹の腰にまわし、抱っこされたまましなだれかかる。
「あふんっ」
富竹が再びピストン運動を開始する。ただし、今度は先ほどよりもスピーディに……。
ぬちゅっ ぬちゅっ ぬちゅっ ぬちゅっ
「あっ あっ ああっ あっ ああああっ」
富竹の腰の動きに合わせて鷹野の喘ぎ声が響く。
富竹もその声に興奮しているのか、ますます腰の動きを激しくしていく。
「鷹野さん。凄いよ……」
夢中で腰を振る富竹。
「あふうんっ あうううぅっ」
鷹野には富竹の言葉に応える余裕がない。
彼女は必死で富竹にしがみつき、ただ喘ぐことしか出来なかった。
僕もまた夢中で、自分で自分を貪っていた。
一旦落ち着いていた指の動きが、もう二度と止まれないスピードで僕をたかめていく。
このまま立っているのが辛いのです。
いつの間にか僕は腰を曲げていて……、小刻みに腰も動かしていた。
舌を出して喘ぎながら、富竹と鷹野の行為を見続ける。
見続けることしか出来ないのが、あまりにも辛い。幻でもいいから、もう一度彼に抱かれたいと願ってしまう。
だから、僕は止まることが出来ない……。切ないほどに、僕の膣は僕の指を締め上げることを止めようとはしない。
「ああっ。鷹野さん。鷹野さん。鷹野さん……」
「ジロウさん。ジロウさん。ジロウさん……」
二人は互いに名前を呼び合い。少しでもお互いを一つにしようと固く抱きしめ合う。
鷹野の喘ぎ声がどんどん高いものになっていく。
肉と肉が打ち合う乾いた音と、粘液が出す粘り気のある音が、より早く、そしてより強くなっていく。
「鷹野さんっ。僕……もうそろそろ……」
「イクの? ジロウさんっ? いいわっ! そのまま出して……私の中に出してっ!!」
鷹野がそう言うと、ラストスパートだと、富竹が機関銃のように腰を振って……。
「あっ あああああああああっ!!」
「んっ くうんんんんんんんんんっ!!」
「あぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅっ!!」
僕達は同時に達した。
くたっ と富竹に体を預ける鷹野。
はぁはぁと荒い息を吐きながら、達した余韻に浸る僕。
鷹野の秘部からは富竹が放出した精液がどろどろと流れ落ちている。
鷹野は薄く涙を流していた。
そしてそんな鷹野の頭を、富竹は優しく撫でていた。
そして僕は気付いたのです……彼らは、本当に心の底から互いを愛し合っていたのだと……。
もうすぐ奉納演舞が終わる時間……。
そう……彼らの時間も、もうすぐ終わる。
それを思い出すと、僕の心は少しだけ痛んだ。

私が持っていたポケットティッシュを使って、私達は自分の体についた体液を拭いた。
奉納演舞が終わる頃には私達は着替えも済ませ、祭具殿を出ていた。
綿流しを行っている沢へと向かう。
ふと、ジロウさんは立ち止まった。
「ねぇ鷹野さん……。一つ訊いてもいいかい?」
「なぁに? ジロウさん」
「どうして今日は急に……こんなことを……」
何を今さら……、と言うよりいつも今さらな人なのよね、この人って……。
私は苦笑した。
「保険よ」
彼は首を傾げた。
「ううん。……いいのよジロウさん。今は分からなくて……」
私がそう言うと、彼は分からないながらも納得してくれたようだった。
くすくす。この保険という言葉の意味が分かったとき、あなたはどんな顔をするのかしらね?
そう……これはきっと保険。私は今夜貴方を殺すの。
でも、きっと心のどこかで貴方を殺したくないって思ってる。あなたに……これから罪にまみれる私に、どこまでも付いてきて欲しいって願ってる。
正義感の強い貴方のことだから、きっと私には付いてきてくれないんでしょうけど……でもこれでも来てくれないのかしら……?
今日は私の受精しやすい日なのよ? ジロウさん。だからひょっとしたら、貴方と私の子供が出来るかもしれない。
ああ、そうね。もし本当に貴方の子供が出来たなら、貴方を殺して、やがて私が用済みになって、彼女らに命を狙われたとしても……生き抜く強さを得られると思うわ。
私は心の中で呟く。
ジロウさん……ありがとう……そして、ごめんなさい。
私の罪を流す事なんて出来ない無意味な儀式……綿流しが行われている沢までは、あともう少し……。
遠いお囃子に耳を傾けながら、私は笑みを浮かべた。

―END―

―最多の可能性―

ダン、ダン、ダン。
僕は祭具団の中で地団駄を踏んでいた。
あぅあぅ。何でまた今回も圭一と詩音がここに来るのですか?
お前達がいると富竹と鷹野が何にもしないのです。最後のときぐらい二人きりにさせてあげるのですよ。
何でこの終わった世界での、数少ない僕の楽しみを邪魔するのですか?
ダン、ダン、ダン。
僕は聞こえるはずのない地団駄を続ける。
ただ、まるでその音を聞いているかのように怯える詩音がほんの少しだけ不思議だった。
「…………ね。あなた……悟史君。………………よね?」
あぅあぅ。何を言っているのですか。いいから詩音と圭一はここから出ていくのです。
ダン、ダン、ダン。
やがて、ギイイイィィィィィッと音を立てて富竹が扉を開け、顔をのぞかせた。
あぅあぅ。時間切れなのです。結局、この世界でも鷹野と富竹のえっちはお預けだったのです……。
僕はがっくりと肩を落とした……。

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最終更新:2007年03月10日 21:47