「悟史くんが目を覚ましましたっ!」
監督の、そんな嬉しそうな報告を聞いてから約一週間が経った日。その日も、私は悟史くんの病室へ看病に来ていた。
「悪いね、詩音。毎日わざわざ来て貰って」
ベッドに寝ている悟史くんが言う。
「良いんです! 病人は余計な事を言わない!」
私はベッドの傍らの椅子に座り、リンゴの皮を剥いていた。
「でも、詩音も学校とかあるんだろ? そっちの方は大丈夫なのかい?」
「大丈夫です! 病人は余計な心配をしない!」
学校は、このところずっと休んでいる。しかし、今の私にとって、悟史くんの看病以外に重要な事など、この世界にありはしない。
朝自分の家で起きて、診療所へ看病に行き、そしてまた自分の家へ戻って休む。単調な生活だが、私はそれが出来る事をこれまでずっと待っていた。だから、今の生活に何の不満も持っていない。むしろ、幸福を感じているくらいだ。
「不良だなぁ、詩音は」
「ん~? 私が不良なら、何年も学校を無断欠席していた悟史くんはどうなるんです? さしずめ、番長ですかぁ?」
「む、むぅ」
彼は、困ったようにお決まりの台詞を呟いた。この可愛らしい彼に、番長なんて肩書きは似合わなすぎるな、と自分で言って思った。
「さ、リンゴが剥けましたよ。悟史くん、口を開けてください」
一欠片のリンゴをフォークに刺し、私はそれを悟史くんの前に差し出す。
「い、いいよ。それくらい、自分で食べられるから」
そう言って、彼はフォークを自分で掴もうとする。私はそれを避けるように持っているフォークを動かす。そして、二人で揉み合う形になった。
「強情ですね悟史くんは。昨日もそう言って夕食全部自分で食べちゃったじゃないですか」
「あ、当たり前だろ。手が使えない訳じゃないんだから」
「悟史くんの都合なんて関係ないです。私が悟史くんに食べさせてあげたいんですから」
「な、なんだよそれ」
このようなやり取りもまた、私にとって嬉しい事だった。いや、悟史くんと会話できている事、悟史くんとふれ合っている事自体が今の私にとって嬉しい事なのだ。
一週間前までは、そんなことすら出来なかった。私には、ただ悟史くんを見ている事しかできなかった。その悲しい過去が、今この瞬間の幸福を更に大きく私に感じさせるのだ。
「さぁ、そろそろ観念してください、悟史くん」
そう言って私は片手で悟史くんの両手を押さえつける。
「くっくっく。これでもう、無駄な抵抗は出来まい!」
「む、むぅ!」
尚も抵抗する悟史くんの口に向け、私はゆっくりとフォークを近づけた。
「あっ」
私と悟史くんは同時に声を上げる。悟史くんの抵抗が予想以上に大きかったため、フォークをベッドの上に落としてしまったのだ。フォークは、私が座っている場所の反対側へ転がる。
「あちゃ~。ごめんね、悟史くん。今取りますから」
そう言って、私は椅子から立ち上がり、フォークを取りに体を伸ばした。と、その時私の足に何かが引っかかった。そして、それによりバランスを崩し、私は悟史くんに向かって思いっきり倒れかかってしまった。
「ご、ごめん。大丈夫、悟史くん?」
「へ、平気だよ」
悟史くんはそう言ったが、何処か様子がおかしかった。目を明後日の方向へ向け、顔を少し紅潮させている。
「どうしました、悟史くん?」
私が聞くが、悟史くんは何も言おうとしない。ただ、何かに対して慌てた様子だった。
不思議に思い、私は周囲に目を回す。すると、その原因はすぐに見つかった。
胸だ。私の胸が、悟史くんの膝に当たり、つぶれているのだ。だから、悟史くんは恥ずかしそうに顔を赤らめているのだろう。
私は、悟史くんが急に愛おしくなった。彼が、私を女の子として見てくれている事が改めてわかり、嬉しかったからかもしれない。もしくは、女性の胸が触れたくらいで大慌てになる彼の可愛らしい様子に、私の中の何処かが引っか
かったからかもしれない。
私は、悟史くんの目の前まで顔を近づけた。悟史くんが、驚いたような表情をする。
「詩音……?」
「ごめんなさい悟史くん。私もう……」
言って、私はベッドの上の彼に体全体を預けるように倒れかかる。そして彼の口元へ向かって、私の唇を徐々に近づけていった。
「ん……」
二つの唇がふれ合う。最初、悟史くんは驚いたように全身を強ばらせた。しかし時間が流れるにつれ、力が抜けてゆく。そして、最後には私の背中に手を回し、優しく抱いてくれた。
それはつまり、悟史くんが私を受け入れてくれたという事。それを理解し、私の心の中は幸せで満たされ、彼と唇で繋がっているこの一秒一秒を、私は深く噛みしめた。
しばらく経って、私たちの唇が一旦離れる。私も悟史くんも、顔を真っ赤にしていた。私の心臓がドキドキと鳴る。そして、悟史くんの心臓の鼓動も、抱き合っている私の体に激しく伝わってきた。
「私……悟史くんが好きです」
胸に詰まったこの思いを、私はそっと彼に向かって言った。
悟史くんはにっこりと笑う。
「僕も……君の事が好きだよ、詩音」
そう言って、いつかのように私の頭を優しく撫でてくれた。
――思いが伝わった。ずっとずっと伝えたくて、ずっとずっとその瞬間を待っていたこの思いが、悟史くんに伝わった。
私の中に幸せが巡る。もう、絶対に悟史くんを手放さない。もう、絶対にあんな悲しい思いはしない。そう思いながら、私はその幸せを全身で感じていた。
いつの間にか、瞳から涙がこぼれた。でも、私はそれを拭おうとはしなかった。だって、これは幸福の涙だから。あの時流した悲しい涙とは違う、永遠に流す日は無いと思っていた涙だから。だから、それを拭うと目の前の幸せが壊れてしまうように感じて、私はただポロポロと大粒の涙をこぼし、悟史くんの胸を濡らした。
悟史くんが心配そうにこちらを見つめる。だけど、少ししてすぐにそれは優しい笑顔に変わった。そして、再び私の頭を、そっとあやすように撫でてくれた。伝わったのだ。この涙が、悲しみにあふれた涙でない事を。拭う必要の無
い涙である事を。
しばらくして、涙が止まる。そして、再び私は悟史くんが愛おしくなった。
もっと、悟史くんとふれ合いたい。もっと、悟史くんを感じたい――。そんな思いが、涙の代わりに私の中でいっぱいになった。
「ん……」
自然と私たちは再び唇を重ねていた。でも今度はさっきと少し違う。ちょっと大人な、深い口づけ。
「くちゅ……ん」
ベッドの上でお互いに強く体を抱きしめながら、獰猛な獣のように私たちは互いの唇を求めた。私と彼の口の間では二人の唾液が混ざり合い、そして小さく水音をたてる。私たちは、その音を欲しているかのように、執拗に互いの舌と唇を舐め合った。私は、その中で確かに悟史くんの味を感じたような気がした。
どれくらい時間が経ったのだろう。いつしか、私たちは塗れた唇を離し、恍惚とした表情で見つめ合っていた。長い長いキスだったからだろうか、私たちの呼吸は少し荒い。
と、その時、私の内股に何か硬いモノが当たった。何だろうと目を落とすと、ソレは悟史くんの股間部にあった。
「……悟史くん。雰囲気ぶちこわし過ぎですよ」
「ご、ごめん……」
本当に悪い事をしたかのように悟史くんは謝罪した。しかし、私は悪い気分ではなかった。悟史くんが、私の体で快感を得てくれた事が嬉しかったのだ。
そして同時に、もっと悟史くんに快感を与えてあげたいという感情が、私の中に芽生えてきた。
「悟史くんって、もうどれだけオナニーしてないんですか?」
私の直球的な質問に、悟史くんは狼狽える。
「……え? ……ぇと、ここに来てから、ずっとかな……」
耳を澄まさなければ聞き漏らしそうな声で、悟史くんは言った。
「へぇ、そうなんですか」
つまり、それだけの精子が悟史くんのここには溜まっているのか。まぁ、それも当然だろう。寝たきりで自慰行為をしていたなら、さすがに驚く。
「じゃあ、今日は私が出させてあげますっ☆」
「えっ!? で、でもこんな所で……」
「安心してください。今日は休日だから、この診療所には私と悟史くん以外誰もいません。監督も、悟史くんの事は全面的に私を信頼してくれていますしっ」
「でも、だからって……」
この期に及んで尚も渋る悟史くんに対して、私は実力行使を行った。
「うっ……!」
「言っておきますけど、悟史くんの本心はバレバレですよ? さっきキスしたとき、やけに強く私の体を抱きしめてきましたよねぇ?」
言いながら、私は彼の股間部をゆっくり、しかし激しくパジャマの上から手の平でなで回した。それに反応して、悟史くんのアレがビクビクと痙攣するのが、直に手に伝わってくる。撫でるだけでこんなにも反応するとは、やはり相当溜まっているらしい。
「出したいんですよねぇ?」
上目遣いで、悟史くんの目を見つめた。彼は苦悶の表情を見せている。だが、その更に奥にある、快感への悦びの表情を、私は見逃さなかった。
もう抵抗するのは無駄と思ったのか、悟史くんは目を背けながら小さく頷く。それを境に、私は手の動きを止め、彼のズボンとパンツを脱がしにかかった。
そうして、私の前に彼の陰部が露出される。少し小さめながらも硬く反り返っているソレは、皮に包まれた先端から粘り気のある液体が流れており、更に全体からむせ返るような男の子の臭いを出していた。さきほどの刺激がまだ残っているのか、時折ビクビクとその身を跳ね上がらせる。
「凄いですね、これ……」
実際に見るのは初めてというのもあるが、ソレの凄まじい様子に、私は少し驚いた。
「……は、はは」
悟史くんは苦笑いをする。恐らく、悟史くんもこういった形で他人に見られるのは初めてなのだろう。どう反応すれば良いのかといった感じだ。私も、これをどう処理すればいいのかわからないでいた。
「悟史くん、どうして欲しいですか?」
わからないので、聞いてみた。
「さ、さぁ……」
そして、沈黙が訪れる。どうしよう。このままでは埒があかない。
「ん~……、えぃっ☆」
なんとなく、指で先端を弾いてみた。
「痛っ! い、痛いよ詩音……!」
悟史くんが苦しそうに言う。どうやら、本気で痛いらしい。
「ご、ごめんなさい」
予想以上に痛そうだったので、私は慌てて謝った。そこまで敏感なのかコレは。どうも、扱いづらいなぁ……。さっき撫でたときは気持ち良さそうだったのに。
「じゃあ、これはどうですか?」
そう言って、私は悟史くんのソレを右手で包み込むように握った。硬い感触が手のひらに伝わった。
「あ、あぁ、うん、今度は大丈夫……」
悟史くんは、少し顔を赤らめながら言う。
しかし、まだ快感はほとんど得ていないようだ。このまま握っていても、射精に至る事は難しいだろう。……確か、こういう時は上下に動かせばいいはずだ。
私はいつか興味本位で見たビデオを頭の中で再生させながら、その通りに手を動かした。先端の辺りを包む皮が、上下にスライドする。
「うっ……」
悟史くんがうめき声を上げる。しかし、嫌がっている様子はない。多分、これで正解なのだろう。
「き、気持ちいいですか悟史くん?」
恐る恐る私は訊いた。
「……はぁ、……っ……ぁ、う、うん」
悟史くんは顔を真っ赤にし、更にかなり呼吸が乱れている。苦悶と悦びに満ちたその表情からは、これがかなり気持ちいいのだという事が、考えないでも伝わってくる。
その反応が面白かったので、私は上下する手に更なる力を加えた。グチャグチャと悟史くんのソレの先端から溢れる汁が音を鳴らし始めた。その汁の量に比例するかのように、悟史くんの呼吸が更に乱れてゆく。
「はぁっ……ぁあ、……ぅっ、……し、詩音……で、出ちゃう……」
しばらくして、悟史くんが必死の形相で何かを訴えてきた。
「へ、何です?」
私はそれがよく聞き取れず、悟史くんに聞き返す。が、悟史くんからの返事は、乱れた呼吸と喘ぐような声が混じったもの以外、何も無かった。私は不思議に思いつつも、右手を更に強く動かす。
「……うっ!!」
そんな声が聞こえ、悟史くんの体が大きく揺り動いたと思った瞬間、私の持っているソレがビクビクと痙攣し、そして先端から何かが吹き出した。
「ひゃっ!」
私は思わず悲鳴を上げる。吹き出した何かは、凄まじい勢いで辺りに散らばり、ベッドの上のシーツ、そして私の顔や服に降りかかった。
「こ、これが、精子ですか……?」
頬についたその液体を指で拭いながら、私は呆然と呟いた。指に、ヌルヌルとした感触が伝わる。それは白い色をしていて、指で弄んでいると、糸が引くほどの粘着性を持つ液体だった。
辺りを見回す。シーツや布団は悟史くんの出した精子に濡れ、グチャグチャになっていた。よく洗濯しないと、もう使えそうにない。私自身も、顔だけでなく髪にも大量にかかっており、また、服は胸の辺りを中心に濡れ、薄い生地だったため、液体の冷たい感触が地肌にまで伝わってきた。
そして、悟史くんの問題のソレは、射精を終えて満足したのか、先端から少しの液体を流しつつ、勃起していたさっきとは見違えるほど小さく萎み、腿の辺りに倒れ込んでいた。
「悟史くん、出し過ぎですよ……」
少なくとも、私が以前に見たビデオの男優より、二、三倍は出している。
「ご、ごめん、つい……」
心底申し訳なさそうに悟史くんが言った。かなり疲れた表情をしている。男性にとって、射精とは結構エネルギーを使う行為らしい。
周囲には、精子独特の生臭い空気が漂っていた。さっき悟史くんのアレから出ていたのと似たような濃い匂い。これが、男の子の匂いというもの何だろう。
トクン、と心臓が高鳴った。その臭いの発生源が自分の体にべったり付着している事を意識すると、体の奥底から燃えるような何かが込み上げてくるのを感じる。これは、いったい何なんだろう……?
「もぅ、服がべちゃべちゃじゃないですか」
そう言いながら、私は着ている服を脱いだ。精子で濡れてしまったからというのは勿論だが、脱がなければ体が火照って仕方が無いという理由もあった。
あの燃えるような何かが、私の体を熱くさせるのだ。それはまるで、あの何かに服を脱がされたような気分だった。
上半身に纏っている物はブラだけとなった。しかし、さきほどの暴発はよほど凄まじかったようで、悟史くんの精子はブラにも染みこんでおり、更に少し露出している私の乳房の谷間も濡らしていた。だというのに、まだ体は熱い。
本当に、何なんだろう……。
ふと、悟史くんの視線を感じた。不思議に思い、こちらから目を合わせようとすると、彼は目を明後日の方向へ動かす。
「どうしたんです、悟史くん?」
「い、いや……」
彼は気まずそうに何かを誤魔化した。しかし、彼のある部分の変化から、彼が何を見ていたのか見当は付いた。
「悟史くん、私の胸、気になりますか?」
悟史くんは顔を真っ赤にして、何も答えない。私にはその様子が滑稽で仕方がなかった。なぜなら、彼は必死に自分の本音を隠そうとしているが、彼の股間部は元気そうに堂々と勃起しているのだから。
「くすくす。悟史くん、おっぱい好きなんですね」
私は笑いを堪える事が出来なかった。
もう、隠すのは無理と観念したのか、悟史くんは頭から湯気が出そうな程顔を赤くしつつ、ゆっくりと頷く。そんな彼の様子を見て、私は自分の体が更に熱くなるのを感じた。
「じゃあ、良いことしてあげます」
そう言って、私はブラを取り去った。これでもう、私の上半身を隠す物は何もない。二つの乳房が――自分でも大きさと形に自身を持っている――、悟史くんの前にさらけ出された。
悟史くんが生唾を飲んだのが、私からもわかった。私は、その様子に笑みをこぼしながら、体を悟史くんの股間部の前、足の間に挟まれているような形に移動する。そして、ゆっくりと体を下げ、二つの乳房を悟史くんのアレの目の前まで持っていった。悟史くんは、何処か期待に満ちた表情でその様子を見つめていた。
「ぇっと、確かこうだったかな」
そう言って、私は二つの乳房を両手で持ち上げる。そして、悟史くんのアレをその中心で挟むように飲む込んだ。これも、ビデオから得た知識である。
「……う」
瞬間、悟史くんが声を上げる。射精したばかりで、まだ彼のソレはこの程度の刺激にも敏感なようだ。悶える彼の様子は、少し可愛らしかった。
「ふふふ、動かしますね?」
言って、私は悟史くんのソレを更に強く挟み込む。そして、上下に擦りつけるように動かした。私の胸の中心で、悟史くんの勃起したソレがビクビクと反応するのを感じた。
「うっ……ぁ」
悟史くんが、熱い吐息を漏らす。私は上目遣いでその様子を見ながら、手と乳房を動かした。
しかし、少し思うようにいかない。何というか、所々で引っかかってしまい、うまく悟史くんのソレを擦る事が出来ないのだ。どうやら、乳房にかかった精子と私の汗だけでは、潤滑油としてはまだ足りないらしい。
「……ん」
そこで、私は唾液をたっぷりと口の中に溜め、それを悟史くんのソレの先端部分にかけた。唾液は私の口から糸を引いて落ち、狙い通りに悟史くんの尿道口の辺りを濡らす。
「……し、詩音?」
ビクッと悟史くんの体が反応した。男性器の先端は、特に敏感だという事をどこかで聞いた事がある。大きな塊となって落ちた私の唾液は、悟史くんのソレに結構な刺激を与えたようだ。
私は、先端から竿の部分に垂れ落ちた唾液を、自分の乳房で全体に馴染むように伸ばした。ネチャっと音を立て、途端に私の乳房と悟史くんのソレの間の滑りが良くなる。これなら、もう少し強めに擦っても大丈夫そうだ。
グチャグチャと、卑猥な音が室内に響いた。私の乳房は、悟史くんの精子や先走り汁、そして吹き出た私の汗や、唾液に塗れ、艶やかな光を発した。その中で、悟史くんのソレは嬉しそうに溺れている。
――悟史くんと私の出した体液が、混ざり合っている。そう考えると、自分の中の熱い何かが、更に熱を帯びた気がした。
「はぁ……、どうですか悟史くん。ん……気持ちいいですか?」
いつの間にか、私も息を乱していた。体が、熱く上気して仕方がないのだ。
「ん……あっ……ぁあ、……はぁあ、……う、うん……、良いよ、詩音……はぁ」
そして、私以上に悟史くんは荒い息を吐き乱す。それに呼応するかのように、私の胸の中で彼のソレは、狂ったようにビクビクとはね回る。
「……ん、はぁ……じゃあ、これはどうです?」
言って、私は既に硬くなっている自分の乳首で、彼のソレの先端部分を小突いた。
「うぁあっ……!」
それがあまりに新鮮な刺激だったのか、悲鳴のような声を上げながら悟史くんは急に体を反らす。私はそれを押さえつけるように、更に両手に力を込めた。
「……あぁっ! う、……し、詩音。もうだめ、……また、出る……よ……あぁっ!」
「はぁ……、良いですよ。……思いっきり、出してください……!」
私は、上下させる乳房に限界まで力を込める。いち早く、悟史くんを射精に導きたかった。それは、もはや悟史くんへの奉仕心からではない。悟史くんの出す精子を、彼の欲望が詰まった液体を、一秒も早く私の熱を帯びた体が欲し
ていたのだ。
「ぁ……っ! 出る……っ!」
瞬間、これまでになく悟史くんのソレがビクビクと痙攣するのを感じた。そして、彼の体が私を跳ね飛ばしそうなくらい反り上がったかと思うと、ソレの先端部分から再び白い液体が、火山が噴火するときのように吹き出した。
その量は、さきほどの比ではなく、私の顔や髪や乳房、もはや全身に近い部分が彼の熱い精子によって汚された。
「はぁっ……! はぁっ……!」
悟史くんは、呼吸困難に陥ったかのように必死に酸素を求めて喘いでいた。
対称的に、彼のソレは、役目を終えたかのように静かに萎れ、動くとすればたまにビクリと痙攣して、先端からまだ残っている精子を吹き出すくらいだった。
指に付着した彼の精子を、舌で舐める。それは、全くの無意識的行動だった。自然に、私の体が彼の精液を得る事を欲したのだ。
味は、苦いような甘いような、よくわからない味だった。だけど、その奥底から確かに悟史くんの味を感じる。これは、私の好きな人の精子。私の好きな人が、快感の果てに出した体液――。
もっと欲しい。彼の体液を、もっと感じたい。こんな風に体にかけるだけじゃない。私の中に、直接入れて欲しい。そんな考えが、私の中をいつの間にか熱く支配していた。
「悟史くん、……まだいけますよね?」
私は訊いた。しかし、悟史くんは自分の呼吸を落ち着けるのに精一杯で、私が何を言っているのかも理解できていないようだった。
……だけど、それでも構わない。例え悟史くんの返事がノーだったとしても、私の体に湧き上がる欲求は、既に抑えられそうにないほど膨れあがっていたからだ。
私は精液がべったりと付着した自分のスカートを脱ぎ、更にその下に履いていた下着も脱ぎ去った。つまり、全裸となった。悟史くんは、そんな私の姿をボーッと見つめている。思考も呼吸も、まだ落ち着かないらしい。
私は、そんな悟史くんの股間部に手を伸ばす。手に取ったソレは、さっきまで私の胸で溺れていたモノと同じモノだとは思えないほど小さく、そして柔らかい。
私は立ち上がって悟史くんに跨るような格好となり、だらしなく萎んでいるソレを無理矢理自分の股間部へとあてがった。私の股間部は、既に自らの出す液体でグチャグチャに濡れていた。
「え……、詩音……?」
そこでようやく目の前の状況が理解できたらしい。悟史くんは、慌てたように声を上げる。
「……ごめん悟史くん、私もう我慢できません」
言って、私はまだ柔らかい悟史くんのソレを、自らの中へ一気に挿入した。
その瞬間、鋭い痛みが私の体を貫く。
「し、詩音……大丈夫かいっ?」
結合部から流れる鮮血を見て驚いたのだろう。悟史くんは、心配そうに言ってくれた。
「だ、大丈夫です……」
破瓜の痛み。でも、私はそれに怯まなかった。そんな傷みより、悟史くんと繋がったという悦びの方が、遙かに大きかったからだ。
私は、ゆっくりと体を上下させ、いわゆる騎乗位の形で行為を開始した。
「……う」
悟史くんが呻く。行為を開始して数秒も経たないうちに、悟史くんのソレが私の中で硬さと大きさを取り戻しているのを感じた。それにつれて、膣を通じて私に伝わる快感も大きくなってゆく。
「はぁっ……さと……し、くん……ぁっ」
「し、……しおん……はぁっ……あぁ……」
息を乱しながら、私たちはお互いの名前を呼び合った。病室内には、私たちの声と、結合部の粘着音以外、何も聞こえない。そんな卑猥な空間が、私の体を大きく燃えたぎらせる。そして今頃に、その熱い何かの正体に気付く。そう、それは悟史くんの体を求める、私の興奮の炎だった。
「んあぁっ……はぁっ……」
膣内で、悟史くんのソレが激しく擦りつけられる。そして、擦りつけられるごとに大きな快感と悦びがせり上がってくる。私はそれらの刺激を病的に欲し、体を動かすスピードと力を更に強めた。
奥底から上り詰める興奮と快感、そして悟史くんと繋がっている事への悦び。それらが私の中で混じり合い、これまで体験した事のない高揚感を発生させた。
「……ぁあ、も、もう出る……!し、詩音……、もう、出ちゃう……よ!」
息を詰まらせながら悟史くんが叫ぶ。そして、中へ出す事への遠慮だろう、彼は両手で私の体を持ち上げ、繋がりを断とうとした。しかし、私は体に力を込め、それを拒否する。
「……はぁ、……ぁん……。さ、悟史くん……良いです、……中に出してください」
驚く悟史くんに私は言った。それは、悟史くんへの許可と言うより、私自身がそれを望んだ、悟史くんへの願望であった。最後の瞬間まで、悟史くんと繋がっていたかったのだ。
それで悟史くんは覚悟を決めたのか、両手を私の体から離した。そして、悟史くんのソレが私の中で一層反応したのがわかる。もうすぐ私の体に彼の精液が注がれる。そう思うと、私の体の高揚感は限界まで高ぶった。そして私の感じている性的快感もまた、あと少しで限界という状態だった。
「……悟史く、ん……はぁ、……一緒に、……イキましょう……ぁん」
「う……うん」
私の提案に、彼は息を乱しながら頷いてくれた。
――そして、私たちの体が大きく震える。
「ぁあぁあああああ……っ!」
私の体を、電撃が通ったかのように快感の波が貫いた。股間部の辺りが、激しく痙攣を起こす。同時に、私の中へ熱いモノが注がれるのを感じた。
悟史くんの出した精液が、私の中に……。体は、自然とそれを理解し、それまでの高揚感の代わりに、満足感のような物が全身を支配した。それはまるで、海の上に浮かんでいるような、静かな感情だった。

行為が終わった後、私たちはベッドの上で余韻を楽しんでいた。私は悟史くんの胸に寄り添うようにし、悟史くんはそんな私の肩を抱いてくれている。さっきまでの激しい行為など無かったかのように、この場にはゆったりとした時間が流れていた。
「……詩音」
ふいに、悟史くんが呟いた。
「なんですか?」
私は、彼の胸の中で聞き返す。
「何というか……ありがとう」
「それは、さっきの事に対してですか?」
私は、いじわるに聞く。すると、悟史くんの頬が少し赤色に染まった。当たりのようだ。普通、ああいう事に対してお礼は言わないと思うのだが、その不器用さが私には逆に悟史くんらしく思えた。
「別に、構わないです。……私も、悟史くんと一緒になれて、嬉しかったですから」
言いながら、私も顔が熱くなるのを感じた。あれだけの行為をした後だというのに、こんな些細な事で恥ずかしく感じるというのは、妙に滑稽だ。
「……それだけじゃないよ」
「え?」
私は顔を上げる。
「さっきだけじゃない。僕は色々な事で君にお礼を言わなきゃいけない」
私は、黙ってそれを聞いていた。なぜなら、悟史くんの顔がいつの間にか真面目な物へと変わっていたからだ。
「僕が眠っている間、君は沙都子の面倒を見ていてくれた。そして僕が目覚めてからも、君はこうやって看病してくれている。それに対して、改めてお礼を言いたい。――ありがとう、詩音」
そう、悟史くんは笑顔で言った。ずっと言いたかった事なのだろう、悟史くんの笑顔からは、何か晴れ晴れしさのような物が感じられた。
「……別に、感謝の言葉なんていりません」
私がそう言うと、悟史くんの表情は、不思議そうなものへと変わった。
「どうしてだい?」
「それは……、悟史くんがこうして元気になってくれたからです」
そう、今日まで私は元気な彼の姿を見るために頑張ってきた。悟史くんと笑いながら会話する事。悟史くんと一緒に楽しく過ごす事。それらの日常を取り戻すために、私はずっと一生懸命でいた。
その、悟史くんが目覚めてくれたのだ。それは、私にとって感謝の言葉を言われるよりも、遙かに嬉しい幸福。
だから、私は悟史くんの目を見つめて言った。あの時からずっとずっと言いたかった事を。あの時からずっとずっと想い続けていた事を。
「――悟史くん、目を覚ましてくれて、本当にありがとう」

<了>

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最終更新:2008年03月24日 09:24