「にーにー、にーにー、にーにー……」
ああ、また沙都子が泣いている。
また叔母のヒステリックな声が家に響いている。
僕は宿題の手を止め、ノートに鉛筆を挟んで……。
椅子から立ち上がって。
立ち上がろうとして……。
手が震える。口の中が急速に乾いていく。体が重い。体が、叔母のところに行くのを拒否しているかのように動こうとしてくれない。
いや、そんなわけはない。そんなのは錯覚にすぎない。
体が動かないなんて、そんなことはない。
ただ、本当に動かなければいいななんて……そんなことを……。
それ以上は、思っちゃいけない。
結局のところ、そんな迷いはほんの数秒もなかったと思う。
僕は立ち上がり、部屋の出口へと向かった。
でも、最近はその躊躇する数秒が、とても辛い。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
「ああ~、っとにほんったらこつうるっさかねぇ。んなこと言えったら誰が言うたっとん」がしゃん
叔母が食器棚を叩き、中の食器が台所に鳴り響く。
その音にびくりと沙都子が体を震わせ、より大きな声で泣き叫ぶ。
「にーにーっ。にーにーっ。にーにーっ。にーにーっ」
僕がゆっくりとその場に近づくと、ぐしゃぐしゃの顔で沙都子は僕の胸の中にしがみついてきた。
僕の胸の中で響く嗚咽。
涙と鼻水でたちまち僕の服は濡れて、服に染み込んで……汚れる。
僕の胸が濡れる感触。
僕は沙都子の頭に手をやる。
耳障りな泣き声。
沙都子の頭を撫でてやりながら、その実この髪を掴み投げ飛ばしたいと思う。床に叩き付けたい衝動を抑え込む。
「ああ~ん。悟史かぁ」
叔母が僕のところに近寄ってくる。
僕は顔を上げた。
怒りに狂った、理性の無い歪んだ顔。いつものことだが、その喚く内容にも中身はない。ただ、些末なことが気に障った。ただそれだけ。
それからはもう、叔母が結局何を怒っていたのかも分からないまま、僕は三時間、叔母の怒りにさらされ続けた。

真夜中になり、叔母ももう寝た。
沙都子も……もう寝た。
布団に入ると、沙都子はものの数十秒もたたないうちに寝息を立て始めた。
その姿を見ながら、僕は。
心が、空っぽになっていくのを感じた。
これがあと何年続くのだろう。
なんで僕は北条家だというだけで、こんな目に遭うのだろう。
園崎は……。
いや、魅音は敵じゃない。けど味方でもない。
何とかして欲しいけど、魅音には何も出来ない。魅音にだって立場がある。
梨花ちゃんも何も出来ない。彼女もただの子供だ。
レナは、オヤシロ様の祟りのことは相談に乗ってくれたけど、でもそれだけだ。
みんな僕たちのことを心配してくれるのは分かるしそれは有り難いけど、でもだからといってそれがいったい何の救いになるっていうんだ。
ああ、せめてこんな時涙を流せれば少しは楽になるのかな。
でも、僕にはもうそんなの分からない。
沙都子の寝顔。
せめて、沙都子がもう少し。
僕はいつまで沙都子の面倒を。
いっそのこと、沙都子が大けがでもしてくれないだろうか。
そうすれば、監督のところに入院して、僕は。
もう、自分が何を考えているのかもよく分からない。
沙都子を大事にしないといけない思う。
沙都子を****してしまいたいと思う。
そんな思いがごちゃごちゃになりながら、僕は沙都子の布団をめくった。
沙都子のその白い首筋に手を伸ばす。
首に指が触れて、僕はゆっくりと、猫をあやすように撫でる。
我知らずするすると、徐々に指先は首の下の方に移動して……。
沙都子のパジャマのボタンに行き着く。
暗がりの中でゆったりと上下する沙都子の胸、そして育ち始めたばかりの淡い双丘。
びくりと、一瞬僕は躊躇したけど、それは本当に一瞬でしかなくて……。
僕は無言のまま、ボタンを外し始めた。
プツリ プツリとボタンを外すたび、沙都子の肌が露わになってくる。
僕は沙都子のヘソのあたりまでボタンを外して、パジャマの中に手を入れた。
沙都子を撫でながら手のひらを胸へを移動させ、ゆっくりと沙都子のパジャマをはだけさせていく。
そして、ふにっとした感触と中央の固い芯の感触が両手の中にきたところで、 僕は完全に沙都子のパジャマをまくった。
「んんっ」
沙都子の声が漏れる。
僕は一瞬、びくりと体を震わせた。
だけど、どうやら沙都子は起きたわけではないようだった。
いや、もう沙都子が起きようと起きまいと構うものか。
暗くて、冷たくて、空っぽで、そんな僕の心の中から、何かがもう沙都子を****してしまえと言っていて。僕は裸になった沙都子の上半身を眺めた。
魅音やレナほどには膨らんでいないけど、確かに育ちつつある沙都子の女としての部分。僕はゆっくりと、沙都子の右胸に唇を近づけていった。
その乳首に吸い付く。
舌で転がし、つつき、軽く吸う。
右手は、沙都子の左胸に置く。
ふにふにと揉みしだき、人差し指でしたと同様に乳首を転がす。
「ん……んんっ」
沙都子の息が荒くなる。
僕はそんなことには構わず、愛撫を続けた。
「にーにー?」
寝ぼけた声が聞こえたのは、僕が愛撫を初めて数十秒後のことだった。
ひっ
短く息をのむ音。
「にーにー。いったい何をしているんでござ――」
僕は空いていた左手で沙都子の口を塞いだ。
む~む~と、息を吐きながら、必死に僕の顔と右手を胸からどかそうと、沙都子はもがいた。
僕は、そんな沙都子には構わず、一旦沙都子の胸から顔を離し、ゆっくりと沙都子により体を重ねる感じで上乗りになっていった。
もごもごと蠢く僕の左手の中。その感触が心地いい。
完全に沙都子に覆い被さる形になったところで、僕は沙都子の顔から左手を離した。
「んぐぅっ」
間髪入れず、今度は沙都子の唇に吸い付く。
柔らかい唇を貪り、吸い、舌で舐め回してから無理矢理割って口腔へと舌と侵入させる。クチクチとした音が頭蓋に響く。
「ん~っ。んん~っ」
沙都子の叫びを口で塞ぎながら、僕は沙都子の唇を思う存分味わった。

…………そして、次第に沙都子の抵抗も弱々しいものになってきた。
もうその力が残っていないのか、それとも観念したのか。
まあそのどちらだろうと、そんなことは僕にとってはどうでもいいのだけれど。
胸と口だけじゃ物足りない。
当然、さっきから僕の下半身は固くいきり立っていて……。
僕は沙都子の唇から離れた。
「にーにー?」
不安げな沙都子の声。
しかしそれは、今の僕にとっては嗜虐心をそそる効果しかないわけで。
僕は立ち上がった。
「沙都子」
「はい。……なんですの?」
僕は黙ってズボンを下ろし、男性器を取り出した。
「舐めてくれないかな?」
「そんなこと……わたくし。にーにー」
懇願の眼差し。
だけど僕は目を細めて。
「沙都子」
優しく呼びかけた。
「はい…………分かりましたわ」
僕の眼差しに短い悲鳴を上げた気もするが、沙都子は大人しく言うことをきいてくれた。
くちゅ ぴちゃ ぴちゃ くちゅ
沙都子は膝をついた形で、僕のものを舐めている。
僕のものをくわえ込むことは出来ないが、ちろちろと舐める沙都子の舌、そして小さな唇が亀頭にぷにぷにと当たる感触が心地いい。
「はぷっ んふぅ んっ ふふぅ」
苦しげに喘ぎながら、それでも僕のものに懸命に奉仕する沙都子。
実のところ、手を使うこともなく単調に亀頭を舐め続けるだけ、しかも何度も歯を当てる沙都子のフェラは稚拙で、無理もないことだとは思うが、正直言ってイクには物足りない。
それこそ、無理矢理に沙都子の口の中に押し込み、何度も突き入れて犯したい衝動に駆られる。
だが、それはそれで、じわじわと性欲を高ぶらせてくれるという意味では、都合がいい。
「沙都子。もういいよ」
そう僕が言うと沙都子は、奉仕を止め、これで終わりなのかと期待するような目を向ける。しかし当然、僕にそんな気は無い。
無感情に言い放つ。
「次は、下を脱ぐんだ」
沙都子はくしゃくしゃの表情で、黙って頷いた。
立ち上がって、パジャマのズボンに手をかけて……そこで沙都子の腕が止まる。
「にーにー。あの、見ないで下さいまし」
小さく震えた声。
「ダメだよ。ちゃんと脱ぐところも見せるんだ」
「はい…………分かりましたわ」
沙都子は目をつむって、ゆっくりとズボンを下ろす。
あと残っているのは、半脱ぎになった上着と、パンツのみ。
「沙都子」
「はい」
「…………何しているんだよ。パンツも脱ぐんだよ」
「そんな。……それだけは……」
「出来ないって言うのかい?」
沙都子の返答は無い。
僕のものをしゃぶっておきながら、今更何を言うんだか。
「じゃあ、仕方ないね」
僕は沙都子の前に座った。
「にーにー?」
そして、一気に沙都子のパンツを掴み、引きずり下ろす。
ヒッ と沙都子の小さな悲鳴が聞こえた。
見上げると、沙都子は自分の股間を両手で隠していた。
「沙都子。隠しちゃダメだよ」
僕は優しく沙都子の両手を掴み、股間から手を離させた。
沙都子は、何も抵抗しなかった。
そしてもう、沙都子のスジを隠すものは何もない。
沙都子は小刻みにふるえていた。
僕は未だ毛も生え始めていない沙都子のスジを中指でなぞった。
ぴったりと合わさった沙都子のスジは柔らかく、それでいてその中はまだ堅い蕾だった。
「あっ はあっ あうぅ うううぅ」
丹念にスジをなぞり、そして親指でスジの上部をこねるたびに、沙都子の口から押し殺した息が漏れる。
そして、幾度と無く刺激を与え、沙都子の息に甘いものが混じり始めた頃、スジから露が滲み始めていた。
「沙都子。……感じているのか?」
「知りません。そんなの分かりませんですわ」
何かに怯えるように、イヤイヤと沙都子は首を振った。
顔を両手で覆い隠す。
どうやらこの様子では本当に何も分からないようだ。
僕は、沙都子のスジに顔を近づけた。
今度は指ではなく、舌でスジを愛撫する。
「ひううっっ」
量こそ少ないものの、とろとろとした液体がスジから溢れている。
舌で拭っても拭っても、沙都子のスジが乾くことはない。
「にーにーっ。にーにーっ。にーにーっ。にーにーっ」
沙都子は堪えきれなくなったのか、僕の頭に手を置いて前屈みになっていた。
それに構わず、僕は舌をスジの中へと挿入した。
「ああっ はあああっ あうっ あああうっ うっ うっ」
沙都子の腰が逃げようとするが、僕はそれを許さない。
がっちりと沙都子の腰に手を回し、そのまま何度か舌を出し入れして――
そこで、顔を沙都子の股間から離した。
はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ
沙都子はくったりと肩で息をしていた。
その姿が妙に艶めかしい。
僕が沙都子の腰を引くと、すとんと沙都子はその場にへたり込んだ。
僕は沙都子の両脇に手を差し込み、躰を持ち上げ、僕の膝の上に沙都子を置いた。
沙都子の熱い息が僕の胸に当たっている。
僕は無言のまま、沙都子のスジに僕のものをあてがった。
「に、にーにーっ?」
そこで沙都子は僕が何をしようとしているのか気づいたようだけど、もう遅い。
「ぎっぐうっ うううぅ」
苦悶の声の中、僕は一気に沙都子を貫いた。
「うっ うっ」
沙都子の顔を僕の胸に押しつけながら、僕は結合部に熱いものが流れているのを感じた。
ぎちぎちと締め付ける沙都子の膣。
奥まで届いているのに、僕のすべては収まりきっていない。
僕の腕の中、胸の中で震える沙都子。
その温もりが、何よりも心地いい。

僕は、その温もりを抱きしめたまま、何度も沙都子の膣に僕のものを出し入れした。
「にーにーっ、にーにーっ」
ぬるぬるとして、それでいてきつく締め付ける沙都子の膣が、たまらなく僕のものをしごいて。僕の亀頭にひだひだが絡んで、貪欲に僕のものを飲み込もうと蠢く。
僕は沙都子の胸に顔を埋めた。
腰を動かすたびに、沙都子のコリコリと固くなった乳首が僕の唇に当たる。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
沙都子の喘ぎ声が、僕の頭上で繰り返される。
はぁ はぁ と僕の息が荒くなっていくのを感じる。
挿入する前から、僕はとっくに限界だった。
沙都子のスジを舐めているうちにイクなんてのは嫌だった。
沙都子もまた、必死に僕にしがみつく。
そして、沙都子の息もどんどん荒いものになっていって。
僕は、ついに沙都子の膣に、精液をぶちまけた。

僕達はそれから無言で、ティッシュで互いの体についた精液や唾液をぬぐい取った。
僕はズボンを穿いて、そしてその場に座り込んでいた。
動く気力は無かった。
僕は、いったい何で、何てことをしてしまったのか。
兄として、いや一人の男としても、こんなの最低だ。
申し訳なさで、沙都子に目を向けることが出来ない。
どうしてこんなことに。
どうしてって……こんなことやっておいて何を僕は言い訳を探しているんだよ。
まぶたを閉じる。
でも、泣きたいのに泣けない。
いや、泣いていいわけがない。泣きたいのは沙都子の方なんだから。
「にーにー」
僕は、ぎゅっと歯を食いしばった。
相変わらず、沙都子の顔も見ることが出来ないままで。
「…………ごめんなさい」
え?
沙都子は、今何て?
「にーにーも、こんなになるまで追い詰められていましたのね。わたくし、いつも甘えるばかりで……本当にごめんなさい」
僕は顔を上げた。
沙都子は泣いていた。
「魅音さんも、あんたさえしっかりしていればって……。その通りですわ。わたくしが、もっとしっかりしてさえいれば、に~に~はこんな……こんな……」
両手でまぶたを覆い。それでもまだ涙が溢れていた。
気が付けば僕は、僕にはそんな資格は無いのに、沙都子を抱きしめていた。
「ひっく ひっく」
沙都子の嗚咽が聞こえる。
それは耳障りなものなんかじゃなかった。
「にーにー。わたくし、強くなります。強くなりますから……」
「うっ うっ ううっ」
僕の目も熱い。
それは、涙だった。
「ごめん。本当にごめんよ。沙都子」
「にーにーっ。にーにーっ」
そして、僕らはいつまでも抱き合って、二人で泣き続けた。

僕達には救いは無いかもしれない。
でも、少なくとも僕には沙都子がいる。
僕は心から沙都子を守りたいと思う、兄としての義務なんかじゃなくて。
この想いさえあれば、僕達はまだ生きていける。
いつかきっと、本当の救いがくるまで。
僕達が二人で暮らせるその日まで。

―HAPPY END?―

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最終更新:2006年12月23日 21:45