放課後。
昨日とおなじく、部活メンバーはまたおなじみの部活で盛り上がっていた。

「ふはははは~っ! 今日こそは手加減しないぜぇ~! 詩音、レナぁ!!!」

そして圭一は、もうすっかりいつもの彼に戻っていた。 
詩音とレナにあれだけ自らの醜い部分を見られ、罵倒され、犯されたというのに……。
もうすっかり普段の調子を取り戻していたのである。
少なくとも『表面上』は、誰の目から見てもいつもの前原圭一であった。

「ほっほ~。 昨日あれだけこてんぱんにされたってのに、またずいぶんと大口叩けたもんですねぇ~圭ちゃん?」

「くっくっく……。俺をなめるなよぉ詩音?
一度味わった屈辱は、何倍にもして返してやるぜぇーっ!」

「くすくす♪ 今日の圭一くん、一段と燃えてるね?」

「あったり前だ! あんな恥ずかしい目にあわされて黙ってられるかって!
覚悟しときな! 今日はお前ら二人を狙い撃ちだぜぇぇぇぇぇっ!!!」

圭一がいつもの調子に見えると、詩音とレナも特に昨日のことは関係ないといったふうにすましていた。
あの出来事はあくまでも『罰ゲーム』であり、それ以上でもそれ以下でもない。
自分達の関係を大きく変えるほどの出来事ではなかったという感じだった。
少なくとも、魅音、沙都子、梨花の目には、三人はいつもどうりの様子に見えた。

「はいは~い。 昨日の罰ゲームで何があったか知らないけどねー、圭ちゃん……。
あんま気張ると、今日もボロボロに負けちゃうよ~ん?」

「お~ほっほ♪ またまた詩音さんとレナさんに、恥ずかしい目に合わせられますわよ~♪」

「二日続けて、圭一が罰ゲームなのです。 かわいそかわいそなのです……」

昨日あの場にいなかった彼女達にとって、もちろんその『罰ゲーム』とやらがどんなものだったのか知るよしもない。
せいぜい詩音とレナが、圭一にちょっと恥ずかしいことをした、というくらいにしか思ってないだろうし、思えないだろう。 あんなもの想像できるはずもない。

だが、それでいいと思った。
当事者の三人が黙ってしまえば、現実に起こったことにすらならないのだ。
言ってしまえば、ただの幻想や夢であったともいえる。

彼女が彼に語りかけるまでは、そういうふうにすることもできた。

「圭一くん、圭一くん……♪」

さあこれから部活を始めよう、といったその時、圭一の隣に座っていたレナが何やら楽しそうに口を開いた。
そしてそのまま、圭一の耳元でゴニョゴニョと耳打ちをする。
それは耳打ちなのだから、当然彼以外の人間には聞こえないほどの小さなささやきだった。

「………………たら、また…………てあげる。 良い子に………………だよ?」

レナが魔法のようにその言葉をささやくと、その『家畜』は一瞬、糸の切れたような人形のようにピタッと動きを止めた。
そしてレナがスっと耳元から離れると、すぐそれを誤魔化すように威勢の良い声を張り上げていく。
それは普通の人間なら気づかないほどの小さな違和感だったが、部長の彼女だけは気がつけた。

「ちょっとそこぉ! レナと圭ちゃん! あんた達、なにヒソヒソ話なんてしてんの! 
この部長である魅音様の前で、ヘタなイカサマなんて許さないんだからねーっ!」

さすがといったところか。
部活中である今、類まれなるカンの良さを発揮した魅音はレナと圭一が何らかの『交渉』をしたのを目ざとく見つけていた。
だが惜しむらくは、彼女の想像力が正解にまでは結びつかなかったことであろうか。
当のレナはもちろんそれに動揺することもなく、魅音に親友であるという仮面をつけたまま答える。

「くすくす……ちがうよぉ、魅ぃちゃん♪
圭一くんと二人で、まず魅ぃちゃんから潰しちゃおっか? って話してただけだよぉ♪」

「へ…………あ、な~んだ、そう。 ほっほ~、チームプレイときたわけだ~?
でも悪いけど、二人がかりでもおじさんはちょっと倒せないよぉ~? くくくくくく……」

色々な意味でレナに騙されていることも知らず、そうして魅音は普段どうりのいやらしい笑みを浮かべていった。
もっとも根が純情である彼女に、レナがどんな耳打ちをしたのかなど想像できるはずもないが……。
一方、姉のそんな様子を妹である詩音はいかにも彼女らしいなぁなどと想いを巡らせていた。

「お姉ぇはしぶといですからね~♪
ほんと、レナさんと組んだくらいじゃかなわないですよ~圭ちゃん♪」

圭一の隣。 レナと反対側のそこに座っている詩音は姉にそう言いながら、ずっと彼のそこを愛撫していた。
メンバーの前にはそれぞれ机があるため、イスの下で何が行われているのかなどは覗き込みでもしなければわからない。
それをいいことに、詩音は圭一のそれをズボンからすっかり露出させ、まるで鉄のように固くなったものを上下にシゴいていた。
これから部活を始めようと、メンバー全員がイスに座ったその時から……ずっとである。
そして詩音もまたレナのように、隣にいる二人目のペットに耳打ちをした。

「もう………………じゃないですか。 このまま………………あげますね?」

詩音は特に隠しながらというわけではなかったが、今度は魅音も何も言わなかった。
梨花と沙都子も特に何も言わなかった。
なぜなら、もう部活が始まるから。
彼女達にとってとても神聖であり、常に本気で取り組むべきであるこの部活。
仲間との大切な絆を確かめ合う、この儀式が……彼女らに穢されていることにも気づかずに。

「うおおおおおおおそんじゃあ行くぜェエエエェ!!
俺様の口先の魔術を食らいたい奴から前へ出ろよォオオオオ、
うをおおおおおおおおおおオオオォオオオォオッ!!!」

…………結局、その日のビリはまたもや前原圭一だった。
そしてトップは昨日と同じく、竜宮レナ、次点に園崎詩音だった。
事情を知らない部活メンバーは、口々にこの日の部活の様子をこう語ったという。
ゲーム前の圭一の雰囲気には異様なほどの強さを感じたのに、いざ始まってみれば、彼の弱さは見るも無残な状態だった。
特にレナと詩音には、わざと負けるような手を渡しているようにしか見えなかったと……。  -

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最終更新:2008年01月23日 01:26