「圭一~。ご飯できたのですよ~」
 テレビの電源を切って圭一がテーブルにやってきた。
 大げさにお腹の空いた素振りを見せながら、立ち上る匂いに緩んだ顔を見せている。
「もう腹ぺこぺこだぜー……。羽入にしてはえらい時間かかったんじゃねぇか?」
「気合入れましたですからっ」
 夜に備えて、とは言わずに出ない力こぶを圭一に見せる。そうか、と笑って圭一は席についた。
 ここまでは計画通り。圭一は料理はからっきしだしボクの腕も知っている。だから料理中は自由に動けた。
 ポケットに忍ばせた媚薬も難なく混ぜることができた。
 やや緊張したけれど見つかったら見つかったで、調味料なのですよと言えば圭一は納得しそうな気もする。
(ちょっと量を間違えたのですが……あぅあぅ☆)
「それじゃ、いただきますっ」
「あぅあぅ。いただきますなのですよー」
 件の薬はお味噌汁の中。文献によると(忘れたのでわざわざ調べた)、効果はすぐに表れるらしい。
 お味噌汁は最初に手をつける一品なので、圭一が媚薬に己を支配される時までもう幾ばくもない。
 ボクはテーブル上の一挙一動に目を凝らす。
(あぅあぅ、どきどきしてきたのです。もう少しでボクは圭一に襲われてしまうのですね☆)
 いよいよとなると動悸が早まり、自分の身体が気になり始める。シャワーも浴びたし、下着も一番かわいいものを選んだ。
 圭一のことだから可笑しな要求があることも考えて、足元のバッグにはいくつかの過激な衣装も入っている。
(準備万端、いつでもかかって来いなのですッ!)
「んんっ! こりゃうめぇぞっ!」
「あぅ? あ、あれ?」
 圭一が真っ先に手を出したのは大皿に盛った炒め物だった。余程空腹だったのか、ボクの分など気にせずがつがつ食べている。
 お味噌汁が、そりゃないよ~って言いたげに湯気を立ち上らせている。
「ん? 羽入、食べないのか?」
「あ、た、食べるのです。……ちょ、ちょっと圭一の食べっぷりに少し感心していたのですよ」
「ああ、腹減ってたからな。相変わらず、羽入の料理美味いしな」
 褒めてくれるのは嬉しい。でも、でも、お味噌汁~。
(圭一は日本人の心が分かっていないのです。最初はいつもお味噌汁でなければならないのですよ)
 全く、とふてくされてお椀を手に持つ。
 ここで食べないのも変だ。少々の狂いがあったとはいえ、そのうち必ず媚薬は圭一の口に入る。
 慌てることなく、自分も今のうちに栄養を補給しておいた方がいい。
(あれ? ボクのお味噌汁、こんな味だったでしょうか?)
「――ッ」
「どうした?」
 急に立ち上がったボクを、圭一がきょとんとして見ている。
「トイレか? 食事中はだめだぞ、ははっ」
 冗談に構っていられなかった。身体が不自然に疼き始めていたボクは、まさかと思う。
「あ、あぅっ……」
 あっという間に蜜が染み出してくる。間違いない。ボクが媚薬入りの味噌汁を飲んでしまったのだ。
(で、でもなんで……?)
 ボクが飲んだ分だけ量の減ったお椀を見つめる。圭一のも見る。その間にも、疼きと呼吸が激しくなる。
 圭一が入れ替えた? いや、そんなことはない。座る場所を間違えた? いや、それもない。
 お椀を取り違えた、というのも考えられない。圭一の分はお鍋から掬ってすぐに配膳したのだから。






(……? ……あっ!)
 お鍋を凝視する。
(そ、そうなのですっ。ボクは、ボクは、お椀じゃなくてお鍋に媚薬を入れてしまったのですよーっ!)
 自分の愚かさに涙が出、そのまま崩れ落ちる。打ちひしがれたわけではなく、腰を支えきれなかったのだ。
(あぅぅ……ボクのドジっ……マヌケっ……なのです……ぅ) 
「お、おい! 大丈夫か羽入!?」
「あ、あぅ…あぅ……圭一ぃ」
 圭一がテーブルを迂回してボクに駆け寄ってくる。
 肩に手が置かれ、火照る身体を支えられる。何でもない、と笑い返したが、全くごまかせなかった。
 正直、圭一に触られただけで、感じていた。服越しなのに。そして、直に触れられるのを求める。
(あぅあぅ……圭一にえっちな子だと思われるのです……。でも、もう、我慢できないのですっ……)
 圭一の手をあそこに導いていく。全てを掴めそうに逞しい手がボクの掌収まる。
 はじめは心配そうな表情に怪訝さを交ぜただけだったが、やがて自分がどこに触っているのかを理解して圭一の顔が真っ赤になる。
「は、羽入!?」
「あぅ……」
(い、一度イってしまえば、少しはマシになるかもしれないのです……。その後に、ごまかしはいくらでもきく、はずなのです……)
「――んんっ! あぁっ――!」
 下着越しに、勃起した陰核を圭一に摘ませた。それだけでボクの身体は内から狂ったように燃え上がった。
 かすかな余韻の後、こんなものでは足りないことに気づく。
「あ、あぁ……、圭一、圭一ぃっ!」
「んんんっ!?」
 圭一を押し倒し、唇を奪った。同時に服を脱いでいく。もう止まらなかった。


(中略)


「よ、ようやく収まったのです……」
「は、羽入……」
 数えきれないほどイッたボクだったけれど、圭一の射精自体は数回だった。
 身体があまりに感じやすくなっていたし、収まりのきかない性欲は自分の快楽を満たすための行為しか選ばなかった。
(あぅ……一体どう事情を説明すれば……?)
 ボクの下で真っ裸になっている圭一の顔に非難の色が浮かんでいる。
 起き上がろうとしたので、ボクは慌てて退いた。
「さて……どういうことか説明してもらおうか」
「あ、あぅ……ごめんなさいなのです」
「ったく。すっかり飯も冷えちまったじゃねぇか。味噌汁も」
 圭一が、ずずっとボクの作ったお味噌汁を啜る。
 それを見て、イきすぎで虚ろとしたボクの頭に閃光が走った。
「あ、あぅっ! そのお味噌汁はだめなのですぅっ!」
「ん? なんで? ――ぐぅっ!?」
「あぁ、圭一ぃ……」
「は、羽入……」
 ボクを見る目がどす黒いものになっていく。見ると、下半身のイチモツが極大にまで達していた。
 凶暴にも見えるそれがボクの方に向かってくる。未だ腰抜け状態のボクは圭一の欲望から逃れられなかった。
 押し倒される。
(け、計画通りなのですかっ? この状況は!?)
「んむっ!」
(で、でもこれはこれで……めでたしめでたし?)




 ループ\(^o^)/

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最終更新:2010年03月05日 22:30