前のお話



梨花ちゃんからお風呂のお誘いがあった。
……これだけを見ると俺の妄想に思えなくもない単語の連立だ。そう、これが我がおつむの見せた阿呆な夢想であるならば、一度目を深く閉じ、呼吸した次の瞬間にはからからに乾いた現実が眼前に広がっているはずだった。
果たしてどうだろうか。
「お湯……もう張ってあると思うから……」
と俺の胸の中でしとやかに言う梨花ちゃんがいた。
俺は確信する。これは夢ではないのだと。性交で達した余韻に浸る梨花ちゃん。そして上気した頬を震わせながら発せられた言葉。
俺は感涙するのであった。
「よし、じゃあいこうか」
梨花ちゃんの気が変わらぬうちにと風呂場へ促す俺。きらりと白い歯を見せて微笑んだつもりだが、萎えた息子を素のままぶらさげた今の格好にはかなり相応しくなかった。というか情けないことこの上ない。少し鬱になり冷静さを取り戻した。
そして梨花ちゃんの様子がおかしいことに気づく。
「梨花ちゃん?」
俗に言う女座りをしていて、倒れそうな上半身を畳に両手をつくことで支えている。俯いたままだったので、俺は遠慮なくワンピースの隙間から覗く谷間と美脚を眺められていた。
ふ、と梨花ちゃんが顔を上げる。 申し訳なさそうに、また恥ずかしそうに笑って、
「あ、あはは…腰が抜けちゃって立てないわ……」
と言ってきた。
「…………」
絶句する俺。潤んだ瞳から投げかけられる、ある種自然科学などで表現しきれないような引力でも兼ね備えているのではと愚考せずにはいられない視線が、俺の顔の辺りを彷徨っていた。梨花ちゃんはその間にも自分で立とうと、脚をもじもじと動かしていたのだが、
「あ……」
再び倒れそうになる。そうなれば当然俺が梨花ちゃんの身体を支えるのも当然の行為であって。今度は背と膝裏にそれぞれ腕を通し、抱きかかえた。
「ありがと……圭一」
「軽いなー梨花ちゃん」
そのまま風呂場に直行。と言っても狭い梨花ちゃんの家ではそれも数歩なのだが。
脱衣所まで来て、もう大丈夫だと梨花ちゃんが言うのでそっと下ろす。まだ膝に上手く力が入らないようで、かすかに震えていたがよろめくほどではなかった。
そんな梨花ちゃんを見て俺はある光景を思い出していた。
冬の雪中。追いかけてくる梨花ちゃん。振り返りざまはじめて想いを告げられたこと。
「……いち? 圭一?」
はっとして気づく。梨花ちゃんの顔がすぐ近くにあった。
「え…あ、な、何だ?」
「だから、先に入っててって言ったのよ」
「あ、おう、わかった」
中に入ると確かに湯が沸いていた。いつ沸かしたのだろうと疑問が浮かんだ。エッチの前の行動を顧みて、そういえば梨花ちゃんがお風呂を入れた直後に押し
倒したんだっけと納得する。しかし、割と長い時間体を重ねあわせていたような気がするんだが……そんなに経っていなかったんだな。
梨花ちゃんの家のお風呂は銀色の浴槽だ。お湯の色が透明そのものであり、これは隠せないなーと思わずにんまりしてしまう。床はタイル貼りだ。
小さな椅子が端に二つちょこんと置いてある。シャンプーとリンスが蛇口のすぐ真下、浴槽の縁に乗っていた。
かけ湯を三回してから俺は浴槽に浸かった。
「はぁ~……」
溢れるお湯が波音のように聞こえて安らぐ。ふむ。たとえば俺が岬に立っていたとして同じような溜息が出せるだろうか。いやいや、出ないだろうな。
時にこの狭さがいいんだ。立ち上る湯気が閉じ込められ、視界をどこか幻想的にして頭がぼーっとなる。それはお湯の熱さに包まれてますます促進され、
俺は今きっととても阿呆な面をしていることだろう。
「梨花ちゃーん……、気持ちいいぞー」
エコーがかった声。ちょっと言ってみたかった。
「そう、よかったわ」

曇りガラスの向こうで梨花ちゃんが動く。ぼやける輪郭が身体の丸みをより強調しているように見える。
全裸を間近に見たはずなのにこのドキドキ感は一体なんだろうな。
「それじゃ、私も入るわね」
心臓が一つ跳ねた。
何の躊躇いもなく扉が開き、頭にタオルを巻いた梨花ちゃんが入ってきた。
「うーん、二人だと狭いかしら?」
どこを隠すまでもなくすっぽんぽんだった。堂々としすぎではなかろうかと思うほど。
少し距離を置いて、割りと冷静に眺めた梨花ちゃんの裸は性交時とはまた違った魅力をもって感じられる。
理性を失ったときには俺の性欲を掻き立てる妖艶さだけが目に付いたのだった。いや、全てが妖艶に見えたといったほうが正しい。
しかし今は、梨花ちゃんのスタイルが俺だけの芸術品のように映る。
だが。芸術というものは多数の人に認められることによって品となりうるのであり、今ここで俺、
前原圭一だけのと言うのは少しおかしい気がする。だが、その疑問に答えられるだけの言葉を俺は知っている。
それを、「愛」と……人は呼ぶのだ……。俺にとってのみ芸術たりえなければならない梨花ちゃんの裸……。
「ふ……」
「あんまりじろじろ見ないでよ」
「がぱむっ!?」
梨花ちゃんを見つめたまま意味の分からない思考に耽っていた結果、洗面器を顔に被せられた。視覚を封じられた俺は
妄想へと走るしかなかった。といっても、単に梨花ちゃんの裸体が映像として頭から離れなかっただけだが。
柔らかな曲線でもって、腰のくびれ、太もも、ふくらはぎの女らしさが強調されていた。撫でさすれば俺自身の
手の荒さが際立ちそうな肌のきめ細かさ。そう、何の汚れもない玉露だけが梨花ちゃんの体を伝うのに相応しい。
胸部の膨らみは、おそらく未だ発展途上の梨花ちゃんの身体で一番母性を醸し出している部分。年齢と外見を考えた場合、かすかに残るあどけなさが母なる大地(裸体のこと)とのギャップを生み出して、俺は悶々とさせられる。
現実的なことを言うと、カップはCだ。本人はもう少し欲しいなんて言っていたが、それでも十分だった。
形は綺麗だし、触り心地も申し分ない。何より感度がいいのが俺には一番嬉しい。
ちなみに先端の突起と身体の中心部分は湯気で隠れていた。最近の仕様だな。
妄想中、ばしゃ、ばしゃと何回かお湯をかける音がしていた。梨花ちゃんがお湯の熱さを確かめるような溜息を吐いて、
「圭一、ちょっと詰めて」
浴槽に身を入れてきた。俺は被っていた洗面器を放り投げ、成り行きに目を凝らした。二人分の容積が、
盛大に湯船からお湯を追い出していた。眼の前には滅多に見ることができないであろう梨花ちゃんのうなじ。
視野を広げると首の所々にキスマークがあるのが分かった。髪をかき分けて首筋を何度も攻めていたのを思い出す。
「ふふふ」
目尻を下げて、満足そうに微笑みながら半身で俺の方に迫ってくる。思わず後ずさろうとしたのだが、
いかんせんここは風呂の中だった。
「たまには、こういうのもいいわね。離れようとしても叶わないし、お湯の中独特の身の軽
さとその逆の動きづらさが……ふふ……体を寄せるのは自然なことでしょ?」
「…………」
俺はどきどきして反応の仕方が分からずにいた。頭にタオルを巻いた梨花ちゃんは新鮮だった。普段からトレードマークの 長い黒髪。それも梨花ちゃんを見る上で魅力の一つなのだが、今は顔だけがはっきりと目の前にあって、なおいっそうの可愛さを感じずにはいられない。
「ん」
そう考えているうち、無意識にキスをしていた。下唇、上唇と順番に触れ、軽く吸う。顔を離すと、梨花ちゃんには珍しく、情熱的な視線を投げかけてくるので俺は恥ずかしくなった。だから、梨花ちゃんを前に向かせて後ろから両腕を回した。
耳元に口を寄せる格好になる。まだキスが足りないのか、振り向きざまに可愛い舌をぺろりと出してくる梨花ちゃん。
さらに、濡れて火照った手を俺の後頭部に回し髪を撫でる。そうして感じる頭皮へ早く指輪の固い感触を加えられたら、と改めて思った。
「梨花ちゃん……」
「ん……何?」
呼んだだけなので普通に返されて少し困った。ああ、そうだ。
「梨花ちゃんって処女だったんだよな」
「当たり前じゃない」
「うん、にしては血出てなかったし痛がってなかったなーと思って。……あ、あのときは気
にする余裕がなくて、今更だけどごめんな」
欲望のままに腰を振ってしまっていた。梨花ちゃんが処女だっていうことは自明の理だったはずなのに……。
「処女だからって血が出るわけじゃないらしいわよ。そもそも膜はセックス時に必ず破れる
ものでもないし。血は、膣が傷ついて出る場合もあるみたいよ」
「そうなのか」
「痛みは、なかったといえば嘘になるけど……」
そこで少し顔を赤らめて、
「あのときは飛んでたから。すごく気持ちよくなっちゃって……って何言わせるのよっ。私
が感じてたのなんて圭一が一番よく知ってるはずでしょっ」
と言いつつ顔にお湯をかけてきた。
「んー? いやーできれば梨花ちゃんに過去実況してもらいたいなー」
にやにやしながら俺は言う。
「そ、そんなのできるわけないでしょ」
「二回目は淫語の連発で凄かったじゃねぇか。あ、思い出したらまた興奮してきた」
二度の射精で元気をなくしていた息子が、むくりと勃ち始める。
「え? ひゃあ!」
先端がお尻の辺りに触れて梨花ちゃんがびくりと震える。感じたというよりくすぐったさの方が勝ったような反応だった。
柔肌がくにくにと亀頭を刺激する。気持ちよくて、つい梨花ちゃんに押し付けるようにしてしまう。これも男の本能哉。
「け、圭一っ……あ、当たってるからっ……」
体を捻り、腕の中から逃げようとする。湧き上がる湯気が、困ったような嬉しいような引きつった笑みの上に馴染んで、いつもより赤みを帯びているように見える。
「これ……お尻に擦りつけるだけでイキそうだな……」
「え? だ、駄目よ、お風呂の中でなんて、絶対駄目!」
「わーかってるって。ほい」
そう返して体を離した。途端、びきびきに反り立っていた息子が頭を垂れていく。
「い、いいの? しなくて?」
「ん? ああ。そうそう勃つたびに射精してたら体力がすぐに底をついちまうからな」
朝なんて毎日のように屹立しているし。
「そう……」
「んん? あれ? もしかして梨花ちゃんしてほしかったか?」
歯切れの悪い返事の理由を俺なりに推測した質問だった。というかこれしか思いつかない俺はそうであってほしいと
願っているに違いなかった。梨花ちゃんに比べれば圧倒的寡数のSの気が小人のごとくきゃーきゃー騒ぎ出す。
「なっ、そんなことあるわけないでしょ!」
「じゃあ、股の間に差し込まれたその左手は何なのかな~?」
ぴしっ……。
梨花ちゃんが固まった。沈黙。
外で蛙が呑気にげこげこ言っているのが聞こえた。
額から冷や汗が流れ出る。空気も固まったような気がしたからだ。
「圭一……?」
「はははい!」
水面に波紋が広がっていく。それは異常なほど早鐘を打つ鼓動が原因であり、まさに俺の動揺そのものを体現した
波跡だった。透き通るように白い梨花ちゃんの背中にたどり着くと、ふっと消えるか進路を変えるかしてその体(てい)を失う。
背を向けているはずなのに、体のあらゆる箇所を捕捉されている感覚。これで電気でも消えたならまるっきりホラーだ……。
油が跳ねたような音が数回して、天井を仰ぐと電気が明滅を始めていた。
ってマジかよっ!
「け、い、い、ち?」
「ひぃっ!?」
ふっと光が落ち、外の闇と同化する風呂場。暗順応するにはまだ時間が足りず、視点をどこに定めればいいか混乱する。
その間にも目の前でゆらりと動く影があった。間断なく響く水滴の落ちる音と、それを打ち消すかのごとくタイルを激しく叩く水音がした。
蛇口をひねったのか……?
五感を研ぎ澄ませる勇気もないのに訝る思考だけはまともだった。
「――っ!?」
突然ひやりとした感触が両頬を包んだ。氷のような水滴が首筋を伝い、胸にまで流れていく。お湯と溶け合う前の境目で、
その温度差による気持ち悪さが胸付近を漂った。
「圭一……。あまり調子に乗らないでね……」
「――」
 指先が顔を這う。触れるか触れないかといった感触。計算されたように産毛だけをさすられて、ぶるぶると震えた。やがて、親指の腹が睫毛を撫で始め、ようやく暗闇に慣れてきた視界を塞いでしまった。いや、閉じられる前にかすかに見えた妖しく光る瞳。
あれは長く見るものではないのかもしれない。
「はぁ……」
冷たい息が口元を弄んだ後、口内に侵入してきた。奪われたといったほうが適当なキス。
たった今凍えさせた唇を彼女自身の熱さで癒していく。俺は今、俺の体を覆う影の思うがままだった。
次第に、二人触れ合っている部分にはとろみがついていく。それは舐めとろうとしても叶うものではなく、
絡めとるだけの行為に終始してしまう。終わりのない循環。有機体に過ぎない自分には過ぎた行為だと思った。
永遠を連想して、時間感覚が限りなくゼロに近づいていった。
口が離される。
「圭一のエロ本、藍子と伊知郎の目の前に出すわよ」
「!?」
ぱっと電気が点いた。梨花ちゃんの顔と胸がかなり眩しく映った。
「な、なぜそれを!?」
「とぉ~っても痛そうで、でも楽しそうなプレイがあったけど」
邪悪に笑う梨花ちゃん。怖ぇ。
「あんなのがしたいの? 圭一?」
「いやっ、あれは、俺のじゃないんだよっ」
「ふぅーん?」
「本当だって!」
「まぁ、そういうことにしてあげるわ」
そう言って梨花ちゃんは湯船から上がった。
「というか。私がいるのにエロ本なんて持ってんじゃないわよ」
刃のように鋭い双眸を向けてくる。何で銀色に光るんだよ。
「申し訳ありません……」
「ったく。これからは欲求不満になったらすぐに私を呼びなさいよね」
「…………」
すごいことを言われた気がする。しかし梨花ちゃんは自分が言ったことの意味に気づいていないようだ。
「それより、さっきのキス興奮しなかった?」
一転してきらきらした眼で尋ねてくる。
「俺は怖かったんだが」
「私は楽しかったわ」
……この会話に普段の俺たちの関係が凝縮されていると思うんだ。
それから梨花ちゃんは体を洗い始めた。スポンジを泡立て、綺麗な肌をさらに綺麗にしようとしている。
繰り返すが、髪の毛は頭のタオルに収められているので、首から足先まではっきりと素肌が見える。
目が離せなくなるのも道理だとは思わないか兄弟。
「じっと見られていると照れるわね」
こっちに気づいた梨花ちゃんが手を止めて俺の方を窺う。
「まぁいいじゃん。減るもんじゃないし」
「圭一にはそうかしらね」
俺以外のやつには減るものなわけだ。
「そうそう。だから気にせず続けてくれ」
「気にするわよ……。じゃ、圭一が洗ってくれない?」
何ですと?
「え? いいの?」
「そう言ってるじゃない」
恥ずかしがる風もなく答える梨花ちゃん。別に照れる様子を期待していたわけではないが、あまりに
さばさばした様子に面食らってしまう。逆に遠慮したいような気にもなったが、男として情けないので、
テンション上げ上げでいこうと思った。
「……ふっ。分かった。そこまで言うなら、この前原圭一が手ずから梨花ちゃんの体を奥の奥まで綺麗にしてやるぜぇ!」
意味深な発言になってしまったが気にしない。
「普通にスポンジ使ってちょうだい」
ぽん、と渡された。
「ですよね」
上がったテンションが泡と一緒に吸収されていくような気がした。
「人に洗ってもらうってのもいいものね。あっ」
「…………」
もくもくと手を進める俺。そうそうからかわれてばかりもいられない。なぜなら梨花ちゃんの背後からあらゆる場所に
手を伸ばしても問題なしな今のこの状況……。主導権は俺にあるはずだったからだ。梨花ちゃんは人のペースを崩して
自分の方に持っていくのが上手い。どうやらエッチをするときにはその特殊能力も少し影を潜めるようだが、油断はできない。
「あっ、やん」
「…………」
時折、本番のときよりいささか軽めの喘ぎ声が漏れた。
そうして、たいして時間もかからずに一通り洗い終わった。
「よし、終わったぞ」
「……随分あっさりと終わるのね」
残念そうな色を含んだ言葉に俺の目がきらーん、と光る。
にんまりと笑う今の様子を梨花ちゃんに悟られてはいけない。くっくっく……。
つー……。
「ひぃあぁあ!?」
まだ体についた泡を流していない状態で、梨花ちゃんの背筋を人差し指で撫でた。
雪景色の中にさらに白い道ができたようで、俺はおお、と感動の声をあげた。やばい、癖になりそうだ。
「あぁぁ…っあぁ」
何度も何度も上から下へ行き来する人差し指。梨花ちゃんの反応は上々だった。ふと思いついて、
愛してるとでも書こうと思ったがそれはさすがに恥ずかしいのでやめておいた。
ここで何となくの疑問が頭に浮かぶ。
「体の後ろって感じやすいのかな?」
「は?」
「後ろ、というか裏側な」
「……さぁ。自分じゃ見られないから前面よりは敏感っていうのはあるんじゃない?」
「よし! 確かめてみよう!」
「え? 確かめるって……きゃっ」
がばちょと後ろから抱きついて耳の裏に舌を這わせる。
「ひぅっ」
「耳たぶ~」
ぱくりと咥えて咀嚼。梨花ちゃんが甲高い声を上げる。外に聞こえているだろうなと考えつつも、空いた手を太ももの裏側へと持っていき、自分でもいやらしいなと思う手つきで撫で回した。
指の隙間を泡が埋めていく、それを掌に馴染ませ潤滑油のような働きを担わせる。胸ほどではないにしろ十分に柔らかい太ももだった。
「うぅ、んっ……やぁ、圭一ぃ……」
両膝を突き合わせて隠そうとする中心部分。内太ももを撫でていた俺の手は、当然その動作に何らの妨害もされなかったわけで。
梨花ちゃんも感じながらそこをいじられるのを期待しているようだった。しかし、俺はあえて焦らす。
「あ……?」
落胆した声。何でこんなに色っぽく聞こえるんだろうな。
「脇~」
右腕をどかしてそこだけ泡を落とした後、舐める。
「あ、あ、あはははー! ひっ、あはっ、や、やめてー、く、くすぐったい~っ!」
涙を浮かべて大笑いする梨花ちゃんの顔は無邪気なものだった。
ついでにわき腹もさすってやることにする。肋骨の筋にそって斜めに辿る。ついでのついででお腹にまで手を回すと、
指がおへそに引っかかったのでそこもかき回した。
「ひあっ、はっあっはははー! ひぃっーやはっ、やぁめてぇ~!」
大泣き状態になっていた。脇のくぼみを隙間なく堪能した俺は次の旨そうな箇所を探す。
……何か変態みたいだ。
「ひっ、はぁ、あ、ははぁ…今更でしょー……」
心を読まれた。梨花ちゃんはたまにこういうことがあるから困る。
「さーて次は、そうだな。脚いっとくか!」
「ひぇ? あ」
上げたままにしていた梨花ちゃんの右腕を俺の首に回す。体操座りのようにして立てられた膝の下に手を通して
持ち上げた。ぐるっと俺側に反転させて下ろす。お姫様抱っこみたいな格好になった。俺の股の間に腰を下ろし、
左脚の方に梨花ちゃんの上半身が、右脚に下半身がそれぞれある。
「け、圭一……?」
絶景だった。もう今日は、結構戸惑う梨花ちゃんを見た気がするのだが一向に飽きない。俺が見つめると
恥ずかしそうに顔を背ける。頭のタオルをとろうとしていたので、それを静止する。力が抜けていなかったから、
そのままうなじの辺りをマッサージするようにした。んぅ……、と気持ちよさそうな声を出した。
「ぅあんっ」
梨花ちゃんの膝小僧をぺろぺろと舐める。膝はくすぐったくなるものだと思っていたが、意外や意外、結構感じているようだった。
「はっ、あはっ」
上半身を反らして必死に耐えようとしている。柔らかくばかりあった梨花ちゃんの体のうちで、
硬い部分というのも俺の舌先には新鮮だった。かすかな凹凸の隙間を埋めるように丹念に舐め上げていく。
右手が手持ち無沙汰になったので、足の指の隙間を四本の指で埋める。足首がびくりと動いた。これは
くすぐったさの方が大きい反応だろう。さすがに舐めることはしない。だって人として、ひとりの男として
あまりに情けなくなりそうだったからだ。
しかし……。
梨花ちゃんが足を突き出して、舐めなさいと高飛車に命令している様が浮かんだ。
ちょっとドキドキしてしまった。不覚…。
「はぁっ…ふっ……ぅんっ…ふぁっ、はぁん……」
荒い息が空中に溶けていく。回された手に力が込められた。しかし、はっとしたように力が抜けたので、
俺はどうしたのかと梨花ちゃんを見る。
「ごめんなさい。この傷……」
肩辺りを優しくなぞりなっがら申し訳なさそうにあやまる。
何のことだろうと不思議に思ったが、すぐに、最初のエッチのときに梨花ちゃんの爪がえぐった跡のことかと気づいた。
「いいってこんなの。男の勲章みたいなもんだ」
「そうなの?」
「ああ、だから気にしないでいい。つばでもつけとけば治るさ」
「そう、ありがとう。……ふふ、でも自分じゃつばつけられないでしょ?」
「ん? うおっ」
上半身を起こし、俺に抱きついてくる。吸血鬼みたいに首筋を舌でなぞってきた。ぞくぞくとした感覚が
背中を駆け巡り、一瞬意識が遠のいた。というか……、胸が、胸が……。胸に当たってドキがムネムネです……。
次はどこを触ろうかと考える。これまであえて胸とアソコは避けてきたが、そろそろ解禁といくか。
調査結果。梨花ちゃんは体のどこもかしこもかなり感じるようだ。しかし、それが梨花ちゃんにとって満足いくも
のではないことが、最中の物足りなさそうな表情からも分かっていた。
結局は、あらゆる場所へのあらゆる刺激も最後にはここに行き着くのだ。
「ひゃあぅっ!」
梨花ちゃんの秘所はもう随分と濡れていた。だから何のためらいもなく膣内へと指を入れることができた。
突然侵入してきた異物にこわごわ反応する膣内だったが、間もなくして自分から求めるようにうねって吸い付いてくる。
俺がかき回せば刺激が大きくなるのも必然のことだった。
「あぁんっ! はひっ――!? ひぃ――っふうぅん、あぁっ」
もう絶頂が近いみたいだ。膣の締め付け具合がそれを教えてくれる。
今は力の限り俺にしがみついている梨花ちゃんだったが、イってしまえばきっとまた脱力するだろう。
それに備えて左腕で梨花ちゃんの背中を支える。
「はっ――っあぁあああ!」
潮が吹く。下半身がびくびくと震えていた。全身に女の子とは思えない力が入っているのが分かる。
伝わってくる。快感を逃さないようにと体を強張らせているみたいだった。
その姿はあまりにしおらしくて、愛しかった。
だから、快感を吐き出しきる前に俺は梨花ちゃんの唇を唇でふさいだ。
喘ぎ声というのは体を駆け巡る快感に耐え切れずに吐き出しているものだと思う。
だから、そこを閉じて快感が中で暴れまわるようにする。さらに、イったばかりの膣に再び刺激を与える。
「――っ!?」
梨花ちゃんの目が見開かれる。みるみるうちに充血していって、強く閉じたあと勢いよく涙が溢れ出した。俺の口内で叫んでいる。締め付けはさらによくなり、震えもよりいっそう大きいものになっていた。
俺を引き剥がそうとする梨花ちゃんだったが、俺はそれを許さずしばらく唇を合わせていた。
やがて観念したのか、抵抗することをやめた梨花ちゃんはすごく儚げで弱々しい表情になっていた。
涙の流れるスピードがゆっくりになった気がした。
そのまま少し時間が経った。
「ぷは」
「…………」
予想通りぐったりした状態の梨花ちゃんを見て、俺は満足した。薄く開かれた目が俺に非難の色
を向けていた。あまりにか弱くて俺はこれっぽっちも怯むことがなかった。にやりと笑って、梨花
ちゃんから溢れた蜜に濡れた手をかざす。
バツが悪そうに顔を背ける様子が、かなり可愛かった。

「髪を洗うのも手伝うな。長いと大変そうだもんな」
そう言って、タオルを頭からとった。シャンプーを手に取り髪の毛を優しく洗っていく。
「どうやって洗うのか分からないから、こうしてっていうのがあったら言ってくれな」
梨花ちゃんはこくりと頷いた。
そのままシャンプーを泡立てるだけの静かな時間が経過した。途中梨花ちゃんが何も言わないので(髪を固めて「アホ毛」とかやってみても無反応だった)、少し心配になった俺は、こっそりと横から顔を覗き見た。
とても気持ちよさそうにしていた。猫が顎の下を撫でられているかのような表情で、俺の手が右に力を入れれば左に、逆であれば右にと首を縮める。
当然、俺はそれを使命だと思い、梨花ちゃんの頭に猫耳を形作ったのだった。


<終>



あぅ、途中の停電は僕の仕業じゃないのです・・・。
あぅあぅ・・・、本当の本当に本当なのです。嘘は言ってないのですよ、あぅあぅあぅ~。

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最終更新:2007年11月05日 21:17