「………………はぁ」

 

空に綺麗な満月が見える真夜中。

時刻はこんなにも遅くなっているというのに、私は今たった一人で街頭もない暗い夜道を歩いていた。

いくらのどかで平和な雛見沢といっても、こんな真夜中に女の子一人で出歩くなどとても物騒だ。

こんなにも可愛い私を狙い、そこらの茂みからどこぞの変質者が襲いかかってくるかもしれない……。

だがそんなこともお構いなしに、私はどうしてもこの夜道を一人で歩かなければいけない理由に、おもわずため息をついていた。

すると隣でそれを聞いていた彼女が、スっと口を開く。

 

「どうしても行くのですか?……梨花」

 

「………………」

 

舌ったらずな感じに喋る彼女の問いに、夜道をトコトコと歩いている私は何も答えなかった。

今この道を歩いているのは一人だけなのに、あたかもそこには彼女との『対話』が成立しているようだった。

私は今この手に、小さなバックを持っている。

こんな幼い体でも持てるようにと控えめなそれには、ハブラシやパジャマといったいわゆる『お泊りセット』が入っていた。

それももちろん自分の分だけで、もう一人の彼女にはそもそもそんなもの必要ないのだ。

そしてもう一つ。 買い物用のビニール袋に包まれて、野菜などが入った『夕食セット』も一緒に抱えていた。

 

「そんな荷物まで持って……やめておいた方がいいのです。 行ったら、地獄なのですよ?」

 

「ふん。 神様であるあんたが地獄なんていうと、なんだかほんとにそんな気がしてくるわね。……嫌がらせ?」

 

「あ、あぅあぅあぅあぅ……」

 

そんなつもりはなかった、と責められた彼女はそのままあぅあぅと鳴きだした。

まるでふざけているような鳴き方だが、これは彼女の口癖のようなもので、普段からよく口にする言葉なのである。

初めの頃は少しうるさく感じたが、さすがに百年近い付き合いにもなるとそれも慣れてくる。

今ではこれを一日一回は聞かなければ、その日が物足りなく感じるほどだった。

 

「あぅあぅ、梨花はマゾなのです。 どうしてあんな男の家になんか……」

 

「……ま、あんたはいいわよね。 ただ私を眺めながら、いつもどおりあぅあぅ鳴いているだけでいいんだもの。……今夜も」

 

「だ、だから! さっきから『行かない方がいい』と止めているではないですかぁっ! あぅあぅあぅ~」

 

そうしてふたたび泣き出すと、彼女……羽入はなんとか私の腕を引っ張ろうと、チョイチョイとその手を伸ばしてくる。

だが実体のない彼女にそんなことができるはずもなく、それはスカスカと私の腕をかすめるだけだった。

 

なぜこのあぅあぅとなく羽入は、こんなにも私の行動を止めようとしているのか。

まがりなりにも雛見沢で神と崇められている彼女は、これから私が向かおうとしている『ある場所』に一抹の不安を抱えていたのである。

沙都子と住んでいる家を出てから、その場所までの道のりを歩いている間……羽入はずっと私を説得しているのである。

 

「絶対、行かない方がいいのです。 あの男は危険すぎるのですよ? 梨花の体が、た、食べられてしまうかもしれないのですよ?」

 

「しょうがないでしょう? だってこれは罰ゲームなんだから……行かなかったらそれこそ、ねぇ?」

 

私は羽入に自分もほんとは嫌なんだ、と言うようにチラっと目線を送った。

羽入も普段から私にくっ付いて生活しているため、『部活』というものがどれだけ厳しいものか……。

そしてそれにおける罰ゲームが、どんなに非情なものかよく知っている。

だが彼女はそれをも踏まえたうえで、なお私に彼の家へ行くのをやめろと警告しているのだ。

普段から魅音やレナにセクハラし放題の、あの男……前原圭一。

魅音のあのふくよかな胸に、あくまで偶然だと言っておもいきり鷲づかみしたり……。

レナの安産型の大きなお尻に、虫がついてるなどと言ってサワサワと撫でまわしたり……。

そんな最低でスケベな行為が日常茶飯事の彼の家に、これから私は部活の罰ゲームとして『お泊り』しに行くのだ。

 

「あぅあぅ、梨花が。 僕の大好きな梨花が圭一にぃ……うあぁぁぁぁ嫌なのですっ!」

 

「何もう、『汚されちゃった』みたいな感じに言ってんのよ。 まだ彼の家に着いてもいないでしょうが」

 

「そうですけど……。 着いたらもう、逃げられないのですよ?」

 

そうして羽入はふたたび泣き出し、すでに私が犯されてしまったかのように悲しんだ。

さきほどから夜道を進むたびにこうして羽入が泣き出すため、私はいつまでたっても心の決心をつけることができなかった。

もっとも逆にいえば、こうして泣き出す彼女のおかげでなんとか冷静でいられているともいえるが……。

どちらにしろ、圭一の家に一人で向かうということへの一抹の不安は消せなかった。

 

「ま、私はもう半分あきらめてるわ。 古手梨花は今夜彼の手によって穢され、それを境に『鬼隠し』にあっちゃう……かもね?」

 

「!?……あ、あぅあぅあぅあぅあぅ~っ!!!」

 

おもわず言った捨て鉢な言葉に、羽入は腕や足を子供のようにバタつかせて暴れた。

そんな悲しいことを言うな、とばかりに私の体にすがりつき、首をイヤイヤと必死に振ってわんわんと泣き出すのである。

それを見て、今のはちょっとイジワルが混じってたかな? と、自分のサドな部分におもわずニヤリとしてしまう。

 

「そ、そんなのいやなのですー! 梨花が『鬼隠し』なんて絶対ダメです! オヤシロ様として断固それは承諾しないのですーーっ!?!?」

 

「あーわかったわかった。 ていうかもういい加減泣き止んでよ、歩くだけで疲れちゃうわ……」

 

「あぅぅ、梨花が変なことばかり言うからなのですよぉ……」

 

さっきからわざと弱音ばかり吐く私に、羽入はもう知らないとプイッと首を背けた。

神様のくせにこんな性格をしている羽入は、普段からこうして魔女な私にからかわれる(イジメ?)ことが多い。

だがそれはもちろん仲が悪いというわけでなく、むしろ喧嘩するほど仲が良いの見本のような関係であった。

そしてそんな間柄を、私も羽入もとても心地よいと感じている……。

生まれた時から一緒にいる私達はお互いを可愛い妹のように思っていたり、または頼りない姉でもあるように慕っているのである。

 

「僕はこんなにも梨花を心配しているのに、もう知らないのです! 梨花なんて犯されてしまえなのですっ! ふん、なのですっ!」

 

「はいはい。 ほら、そんなこと言ってるあいだに……見えてきたわよ」

 

あいかわらずふてくされる羽入を鼻であしらうと、私は前方に見えてきた大きな屋敷に目をやった。

おそらく村で一、二を争うほどの立派な家。 俗にいう、前原屋敷である。

月明かりに照らされ、どこか仰々しくも見えるその建物に……おもわず羽入が口を開く。

 

「あぅあぅ、悪魔の根城なのです……」

 

「……なかなかうまいこと言うわね」

 

さすが何百年も生きただけのことはある、と私はおもわず感心してしまった。

今回のこの罰ゲームも圭一が決めたことであるし、その彼が住んでいる家となると……なるほど、たしかにその例えはそのとうりだなと思ったのである。

そうして私はしばらくテクテクと道を歩いていくと、その屋敷が一望できる前まで辿りついた。

 

「あいかわらず大きな家ね……」

 

近くで見ると本当にその大きさがよくわかる。

父親のアトリエがあるからだと彼は言っていたが、それを差し引いても家の規模は相当なものであった。

この家が建築されているときから、どこぞのお金持ちが来るのかと村中の噂になっていたほどだ。

やはり圭一の家がそれなりの資産を持っているのは間違いないのだろう。

家の周りの庭やその他を含めて、土地だけでもいくらほどになるのだろうとつい計算してしまった。

 

「う~ん。 あのスケベをたらしこめば、この大きな家も私のものになるのよね? 羽入」

 

「!? な、な、ななななな、何を言ってるのですか梨花っ! あんな男と結婚するなんて僕は絶対に認めないのですよっ!」

 

「……冗談よ、冗談。 そんな本気で怒らないでよ、っていうか結婚とか言わないでくれない? 恥ずかしいから」

 

「認めないのです! あ、あんな最低でドスケベな圭一と梨花が、ふ、夫婦になるなんて……僕は絶対認めないのですよぉぉぉぉっ!!!」

 

「………………」

 

この子、わざと言ってるの……?

私はもうこれで何度目かというほどのため息をつきながら、その家の玄関にまで歩いていった。

後ろで離婚だ慰謝料だととんでもないところまで話を進めている羽入を無視し、自分の身長の二倍ほどはあろうかという立派な扉に辿りついた。

 

「……ご両親、いないって言ってたわよね」

 

「梨花、こ、これが最後のチャンスなのですよ? 今ならまだ……」

 

チャンスとはもちろん、逃げるチャンスという意味である。

このチャイムを押してしまったらもう後戻りはできない。一度中に入ってしまったら、圭一は絶対に私を家に帰さないだろう。

おまけに彼の両親は仕事の都合で東京に行っているらしく、少なくとも今夜はもうこの家に帰ってこない。

つまりこの広いお屋敷に、私とあのスケベな圭一、二人だけになるのである。

 

「ま、いざとなったらあんたが何とかしてね? 一応神様なんだから」

 

「!? ま、まかせるのです! おもいっきりドタンバタンして、圭一の家の家具を壊しまくってやるのですよっ!」

 

「………………」

 

それもどうだろう、と思いながら、私は目の前にあるチャイムをピンポーンと押した。

するとすぐに、家の中から待ってましたとばかりのドタバタとした足音が近づいてきた。

 

「!?あぁ……い、いいですか梨花!すぐに逃げられる体勢をとっておくのです! い、いきなり押し倒されるかもしれないのですよぉっ!」

 

凄みのある足音にただならぬ気配を感じたらしく、羽入は私の体をかばうようにしながら叫んだ。

さすがの圭一でもそれはないだろう……と思ったが、こんな玄関先で犯すのも興奮するぜぇぇぇぇと叫ぶ彼が想像できたのも事実である。

中から飛び出てくるかもしれない獣に警戒しながら、私は昼間、部活で圭一に言われた『命令』を思い出していった。

 

「えーっと、たしか……」

 

ずいぶんと長い文章だったのを、ゆっくりと思い出していく。

普段使わない言葉が含まれていたため自信がないが、多少のオリジナルを加えても彼は許してくれるだろう。

うーんうーんと呻きながら、私は目の前でガチャリとカギが外されていく音を聞いていった。

 

「ん……こほん」

 

声色を変えるため、小さく咳をする。

そして目の前で勢いよくその扉が開かれると、グアっと大きな風が吹いて私の体を突き抜けていった。

 

『梨花ちゃん! 梨花ちゃん梨花ちゃん梨花ちゃん!!!俺の梨花ちゃんはっ!!!』

 

家の中から、私の名前を叫ぶスケベ男が現れた。

いきなり自分の名前を五回も叫ばれ、おもわず顔を赤くしてしまう。

 

「こ、こんばんはなのです。 圭一♪」

 

『ああっ、梨花ちゃん来てくれたんだなっ! くぅぅぅぅっ!』

 

羽入の言うようにいきなり押し倒したりはしてこなかったが、圭一は玄関に立っている私を見るとそれに感動したようにうめいた。

その様子は少しだけ不気味だったが、とりあえず私はさきほど思い出していたことを口に出そうと思った。

まずはキャミソールの下すそをクイっと指で持ち上げ、足を左右にクロスし……メイドさんが挨拶するように、ちょこんと首をかたむける。

 

「ほ、本日はお招き頂き、どうもありがとうございますなのです♪

だ、大好きな圭一のために、今夜はたくさんご奉仕させて頂きますので……

どうかこの巫女であるボクのお体を、た、たっぷりと可愛がってくださいませ……なのです♪」

 

とびっきりの笑顔を向けながら、私は圭一に完全服従の言葉をささやいた。

もちろんこの内容も、昼間罰ゲームを決めるときにこう言えと彼に命令されたものである。

私は自分がとても恥ずかしい格好、言葉を言っていることにとめどない羞恥を感じながら……それをグっとガマンした。

 

「あ、あの……。 圭一?」

 

『梨花ちゃん、か、かわいすぎるよぉっ! 俺の梨花ちゃぁんっ!』

 

「…………きゃっ!」

 

恥ずかしいから早く家の中に入れてくれと思っていた矢先、突然圭一が私の胸に顔を埋めてきた。

薄いキャミソールの上からガバっと抱きつかれ、まったく凹凸のないこの胸にグリグリと顔面を押し付けられたのである。

 

「みぃ。 け、圭一ダメなのですよ。 こんな玄関で……」

 

『あぁ、これだよこれ。 このツルペタのおっぱいにコリコリって……ハァハァ』

 

「や、やだ圭一、ちょっと……んぅ」

 

彼はそのままクンクンと私の胸のニオイを嗅ぎ、そのセクハラ行為に酔っているようだった。

わざと鼻先をグイグリと擦りつけてきて、小さな乳首の感触を薄い布ごしに堪能していったのだ。

押し倒されるよりは数倍ましだが……。

そのいきなりの行為に、私はただなすすべもなく声を出していった。

 

『梨花ちゃん梨花ちゃん! 梨花ちゃんのおっぱいだ~!』

 

「あ、あん。 そこグリグリしちゃダメなので……んっ!」

 

「あ、あわわわわわ!? り、梨花のおっぱいが! 梨花のツルツルできもちいい僕のおっぱいがぁぁぁぁっ!?」

 

「だ、だれがあんたのよ! って、あ、あんっ。 圭一ちょっとやめてなのですぅ……」

 

圭一にセクハラをされるは、羽入につっこみを入れるはで忙しくなった私は、おもわずそれにパニックになってしまった。

このままでは、こんな玄関先でレイプされる……。

私はなんとか彼の頭を掴み、それを引き剥がそうとした。

 

「け、圭一、ちょっといきなりすぎるのです。 こんないきなりなんて……あん!」

 

『だ、だって梨花ちゃんが可愛過ぎるから……お、俺もうガマンできないんだよぉっ!』

 

「そ、それはわかるのですけど。 雛見沢のアイドルであるボクが可愛いくてしかたないのは、とてもよくわかるのですけど……いきなりはダメなのですよ?」

 

「…………………梨花……」

 

何を調子に乗っているんだこの女は……。 といいたげな羽入の目を無視して、私はなんとか圭一の頭を胸から引き剥がした。

すると彼は鼻息を荒くしてもう一度飛びついてきそうな顔をしたが、私はお得意の猫撫でモードでその瞳を見つめ返す。

 

「お楽しみはまだ始まったばかりなのですよ? そんなに焦らなくても、今夜ボクの体は圭一のものなのです♪」

 

『!? り、梨花ちゃん……』

 

可愛くウインクをして、圭一のスケベ心に訴えかける。

単純な圭一なら、これでとりあえず大人しくなるだろう……。

その目論見はまんまと成功し、私はなんとか彼を落ち着かせると家の中に招き入れてもらった。

 

『いやーつい興奮しちゃってさぁ。 いきなりはまずいよなぁ?』

 

「みぃ、レディーに失礼なのですよ? ぷんぷんなのです」

 

そうして玄関先で靴を脱ぐと、圭一はそのまま私にピッタリと寄り添いながら家の中へと案内していった。

その時、やけに私の肩や背中をベタベタと触ってくるのが気になったが……それはこのさいよしとしよう。

 

「あぅあぅ、圭一単純すぎるのです。 そして梨花は悪女すぎるのです……」

 

「しょ、しょうがないでしょ? あのままじゃ、何されるかわかったもんじゃないんだから……」

 

羽入のお小言を聞きながら、そのまま私は家のリビングへと案内されていった。

そこにはいかにも高級そうなソファーや机が並び、お金持ちですという雰囲気がかもし出されていた。

ご両親がいないというのは本当のようで、ここから見えるキッチンの方にも人の気配は感じられなかった。

 

『さぁ梨花ちゃん、まずは何をする? 一緒にテレビでも見ようか? そ、それとも一緒にお風呂にでも入ろうか?』

 

「み、みぃ。 あのボク、今日は圭一にご飯を作ってあげようと思って……その……」

 

一難去ってまた一難。 早くも下心丸出しの発言をする圭一に、私は手に持っていた買い物袋を見せた。

オズオズとしながら、あくまで恥ずかしそうに……。

幼妻のような上目遣いで、彼の瞳を見つめていく。

 

「あんまり上手ではないのですけど、圭一に食べてもらいたくて……み~♪」

 

『!? り、梨花ちゃん……そんなに俺のことを? お、お、俺のためにぃぃっ!!!』

 

この幼女、俺にベタ惚れだ! とでも思ったのだろうか。 圭一はガッツポーズをしながらまるで子供のように喜んだ。

それを見て私は、ああ、やっぱり単純ね……とあらためて思い、彼にキッチンへと案内されていくのであった。

 

そうして案内されていくと、そこもまた驚くほど素敵なキッチンだった。

水周りやガスコンロはとても広く設計されていて、女の私から見てもこれなら使いやすいだろうなと人目でわかるものだった。

私が今日ここで料理することをお母様は知っていたのか、テーブルの上にはすでにいくつかの食器が並べられていて、すぐにでも夕食を広げられそうなほど綺麗に整頓されていた。

 

「あぅ、ウチとは大違いのお台所なのです……」

 

「ほんとね。 どこぞのスケベ男の家とは思えないほど、綺麗で素敵なキッチンだわ……」

 

これで圭一さえ変態じゃなければ完璧なのになぁ……と悪態をつきながら、私はバッグの中から持ってきたエプロンを取り出し体に身につけた。

さすがの圭一も料理を始めてしまえば大人しくなるだろうと考えていた私は、まずすでに置いてあったお鍋に水を入れていった。

蛇口から勢いよく流れる水があっというまに中を埋めると、次にその鍋をガスコンロの上に持って行く。

 

「よいしょっ……と。 羽入、圭一は何してる?」

 

「向こうでテレビを見ているのです。 とりあえずは平気そうなのですけど……」

 

そう言って羽入は、リビングでくつろいでいる圭一をチラチラと警戒していた。

さすがの彼もこんなときに手を出そうとは考えないのか、私がこの場にいないかのように見ているテレビに没頭していた。

料理のできない自分には手伝えることがないと思い、邪魔しないようにとああしているのだろうが……。

それはそれでちょっと寂しかった。

 

「なんか、ちょっと意外ね。 なにかちょっかい出してくると思ったのに……」

 

「いや、きっとあれは『溜めている』のです。 今夜梨花の体を思う存分いたぶろうと、やつはじっくりおのれの牙を研いでいるのですよ!」

 

「いや、テレビ見てるだけじゃない……」

 

あいかわらずずれたことを言う子だなぁと思いながら、私は立てかけてあったまな板を取り出し、その上に持ってきた材料を並べていく。

あらかじめ持ってきておいたお野菜。 じゃがいもやたまねぎ、にんじんなどをまな板の上に次々と乗せていく。

 

「あぅ……梨花、あのスケベにいったい何を作ってあげるつもりなのですか?」

 

「いいかげん、ちゃんと圭一って呼んであげたら?…………肉じゃが」

 

「あぅ? 肉じゃが?」

 

私の言葉に、羽入がおかしいなといった顔をする。

なぜならそれは、普段の私のレパートリーに入っていない料理だったからだ。

 

「あぅ、どうして肉じゃがなのですか? 梨花そんなもの作れましたっけ?」

 

「……とりあえず料理の仕方だけレナに教えてもらったの。 今日の帰りにね」

 

「……今日の帰り?」

 

今日の帰りとはつまり、この罰ゲームが決まった部活の後ということだ。

私は今夜圭一の家に泊まりに行くことが決まったあと、わざわざレナにこの肉じゃがの作り方を教わったのだ。

べつに自分が作れるものを作ればいいのに、わざわざ人に教わってまでこれを作ろうと思った『理由』に……羽入がハっと気づくような素振りをする。

 

「ま、まさか梨花……あのスケベのために? この『男がもっとも喜ぶといわれている料理』を、わ、わざわざ教わってまで?」

 

「!? ば、ばか!ちぁぐわよ! あ、噛んだ。 そ、そうじゃなくて! べ、べつにそんなつもりじゃ……!」

 

顔を赤くしながら、私はおもわず羽入の言葉に手に持っていた包丁をブンブンと振り回してしまった。

それが目の前の実体の無い彼女の体をズバズバと切り刻んでいったが、そんなことではダメージを受けない羽入は更にいらぬ口を開いていく。

 

「あぅあぅあぅあぅ! 梨花、顔真っ赤なのです! め、目を覚ますのですよ! あんな変態になに本気で惚れてるのですかぁっ!」

 

「!?……ほ、惚れてなんてない! ば、ばか羽入! なに勘違いしてんのよ! そ、そんなわけないでしょ!」

 

「あぅあぅあぁぁぁぁぁっ!?ツンデレの常套句なのです! おもいっきり惚れ込んでやがるのです僕の梨花がー! 僕の清い巫女があんな男にー!」

 

「……だ、だからちがうって言ってんでしょうがぁぁぁぁっ!!!」

 

いつまでも口を閉じようとしない羽入に、ついに私は大声まで出して彼女の体をザクザクしていた。

はたから見ればその光景は、包丁を振り回しているあぶない女の子がいるだけだろう。

 

「あぅあぅっ! つ、つまり今夜は、肉じゃがで圭一をゲット大作戦だったのですか? だから僕がいくら止めても聞いてくれなかったのですか!」

 

「う……べ、別に圭一にこれを食べさせてあげたいとかじゃないわよ! た、ただ」

 

「あぅ、ただ?」

 

「ただ……は、初めて男の人に作ってあげる料理だから、それで何か特別なものがいいなぁとか思っただけよ! それだけ!」

 

「いや……それってようは、同じことだと思うのですけど?」

 

「!? う、うるさいうるさい! あんたは少し口を閉じてなさい!」

 

羽入の鋭い指摘に、私はさらに顔を真っ赤にしてまな板の上のじゃがいもを真っ二つにした。

そういえばレナにこれのレシピを聞いていたときにも、彼女は何か含みのある笑い方をしていたような気がする。

はぅ~梨花ちゃん、まるで恋する乙女モードだね♪と言わんばかりの……。

そんな自分でも有り得ないと思っている想像を押し殺そうと、私は目の前の野菜を切り刻んでいった。

 

「あぅあぅ、そんなにしたらお野菜がかわいそうなのですよぉ~梨花~?」

 

「あ~そうね。 どっかの誰かさんの体が切れなかったから、ストレスが溜まってしょうがないわ」

 

そうしてダンダンと音をさせながら、私はまな板の上のものを『調理』していった。

その間も羽入が後ろでちょろちょろとうるさかったけど、何も聞こえないふりをしてなんとか全ての野菜を切り終わったのだった。

 

「ふぅ……とりあえずこれで終わりっと。 次は……」

 

「り、梨花ぁ……」

 

「うるさいわね。 口を閉じてろって言ったで……しょ……?」

 

羽入の呼びかける声をとがめようとした、その時。 私の前のまな板にヌっと大きな影が現れた。

それはあきらかに人の形をしたもので、それだけで私は背後に誰か立ったということがわかってしまった。

 

「!?……は、羽入っ!」

「あぅ、だって梨花が黙ってろと言うから! あぅあぅあぅ~」

 

たしかに言ったが、これは例外だろう……。 そう思ったときにはすでに遅く、彼はもう私の背中にピッタリと近づいていた。

ハァハァというあの危険な吐息が、耳元に絡みつくように感じられる。

それに私は、意を決して口を開いていく。

 

「みぃ……。 圭一、まだお料理は終わってないのですよ?」

 

『ああ、そうなんだけどな。 でもなんか、梨花ちゃんがエプロンして可愛く料理しているとこを見てたら……俺』

 

そうして息を荒げながら、圭一は目の前に立っている私の髪にピタっと鼻を付けてきた。

一応……あくまでも一応、だが。 家でお風呂に入ってから来ていた私には、そこから漂うシャンプーの香りを彼に嗅がれているのだなとわかった。

 

『ん~いい匂い。 梨花ちゃんの髪すっげえいい香りだぜ……。 風呂に入ってから来たのか?』

 

「は、はいなのです。 圭一のお家にお邪魔するので、し、失礼のないようにと……」

 

いい訳がましい言葉が、逆になんか『誘っている』ようなふうに聞こえてしまう。

普通に考えれば、男の家に泊まる女があらかじめお風呂に入っているなど……それをある程度期待しての行動としか取られない。

たしかに私はまだとても女といえる年齢ではないが、このスケベな圭一にはそんな常識が通用しないのをよく知っている。

目の前の梨花ちゃんは。 俺の家に来る前に。 自分の体を綺麗にしてきている。

その都合のいい事実だけが彼の頭に入り、もはや圭一は私がオッケーサインを出しているものと思っているだろう。

 

『梨花ちゃん、俺、今日はそこまでなんて考えてなかったけど……。 こんなちっちゃな体で、お、俺のこと受け入れてくれるのか? い、いいのかよ、なぁ?』

 

「え、えーと……」

 

完全に勘違いしてしまっている圭一に、私はこの変態どうしたものかと考え込んでいた。

力ではまるでかなわないし、ましてやここで嫌がって逃げようとすれば……。

 

『梨花ちゃん……? そ、そうか、そういうのが好きなんだなっ!わかったぜぇぇぇっ!』

 

「い、いやー!いやなのですぅ圭一ーっ! あ、あっー!?」

 

……なんて状況になりかねない。

もはや欲情全開の圭一には、それすら私が誘っているものとして考えてしまう恐れがあるだろう。

しかたなく私はこういう時に頼りになる。 かどうかわからない神様に助けを求めることにした。

 

「は、羽入! 助けて羽入! このままじゃ私、圭一に……」

 

「犯されてしまうのですね。 でも、いいのではないですか? そんなに惚れているなら~」

 

「だ、だからちがうって言ってるでしょ! ていうか、それでもこんなキッチンでむりやりなんてやだやだーっ!」

 

私の必死な訴えに、羽入はしょうがないですねぇと呟くと、何も言わずただ私の右手を指差した。

さっきまで野菜を切っていたため、そこに握られていた……黒光りした包丁を指差したのだ。

 

「……? こ、これがなんだっていうのよ?」

 

「簡単なことなのです。 それで圭一の体のどこでもいいから、ブスリとやってしまえばいいのです! さあ早く!」

 

「!? ば、ばばば、ばかなこと言ってんじゃないわよ! い、いくらなんでもそんなことできるわけ……」

 

たしかにこのままレイプされるのは嫌だが、いくらなんでもそれはやりすぎな気がする。

圭一はこんなにもスケベでどうしようもないけれど、一応私達部活メンバーの仲間なのだ。

……別に好きだからとかそういうわけじゃない。

 

「あーそうなのでしたねー。 梨花は圭一にベタ惚れですからそんなことできませんでしたねー僕うっかりでしたー」

 

「だ、だからちがうって! しかもなんでそんなふうに言うのよ……って、きゃあっ!」

 

羽入の微妙にやる気のない言葉に戸惑っていると、ついに背後の圭一が私の体に手を伸ばしてきた。

その左手がキャミソールの上から胸を撫で、右手はスススっとスカートの中に差し入まれてくる。

 

「みぃ! け、圭一、やめてなのです……こんなこと、悪いネコさんのすることなのですよ?」

 

『わかってる。 梨花ちゃんはこんなにちっちゃい女の子だもんな? や、優しくするからな……』

 

「そ、そういうことじゃないのですぅ……ふあぁぁん!」

 

私の言うことをまるで聞かず、圭一はそのまま薄い胸をサワサワと撫でたり、スカートの中のショーツをゴソゴソとまさぐってくる。

一瞬、羽入の言うとおりこの包丁で刺してやろうかという殺意が沸いたが、そこはなんとかクールな頭でガマンする。

 

「うう……は、羽入、羽入ぅぅぅぅっ!」

 

「あーはいはい、わかりましたですよ! 僕だってこんなスケベに梨花が汚されるの見たくないですから……」

 

ようやく私の悲鳴を本気だと受け止めてくれた羽入は、今度は圭一の下半身。

私の体を触って興奮しているのか、こんもりと膨れ上がっているその股間をピっと指差した。

 

「……へ? ちょ、ちょっと羽入! 本気で助けてって言ってるでしょう!」

 

「だから本気なのですよ! だいたいこんなことになったのは梨花にも原因があるのです! 罰ゲームとはいえ、お料理を作ってあげたり! 髪からお風呂上りのいい香りを漂わせたり!」

 

「う……そ、それはそうだけど。 でもそれと、こ、この圭一の……」

 

場所が場所だけに、私は羽入の指差しているところをチラっと覗き見る。

そこはもう痛そうなほどパンパンに膨れ上がっていて、よく見るとかすかにビクビクとズボンの布を押し上げていた。

その卑猥な動きに、おもわず顔が真っ赤になっていく。

 

「この、す、すごいことになっちゃってる圭一の股間と……な、なんの関係があるのよ!」

 

「あるのですあるのですよ! いいですか梨花? 男という生き物は愛だなんだと口では言いますが結局! とどのつまりっ!」

 

そうして羽入はふたたびビシっと圭一の股間を指差す。

なんだかまだまだ大きくなっているような……そこをもう一度見る。

 

「ここのみで生きている生物なのです! この今まさに圭一のビクビクとしている……これ! これが梨花を苦しめている原因なのですぅ!あぅあぅあぅーっ!」

 

「…………………」

 

あんたどうしたの……というほどのテンションの高さに、私はドン引きだった。

たしかに何百年も生きてきた彼女が言うだけあり、背後の圭一のスケベったらしい顔を見るとそれなりに説得力もあるように思えるが……。

だからといって、これを私にどうしろというのか。

 

「わ、わかったから……で、圭一のこれをどうするのよ? け、蹴飛ばせとでもいうの?」

 

「ちがうのです、逆なのです! 圭一のこれを満足させてやればいいのですよ! そうしたら少なくとも、今の梨花は助かるのです!」

 

「な!? ちょっと、ま、満足っていったって……」

 

なんとなく言ってることはわかるが、見るだけでも恥ずかしい私にこれ以上何をしろというのか。

そうしてドギマギしていると、羽入は勇気を出して!ほらその手を!などと言って、私の行為を後押ししようとする。

一方、圭一はそれで真っ赤になる私にまたもや変な勘違いしたらしく、なんとスカートに入れた手で中のショーツをずりずりと降ろし始めたのである。

 

「ひゃ、ひゃあん! 圭一ダメなのです! ボクのおパンツ降ろしちゃイヤなのですよぉ……」

 

『大丈夫だよ梨花ちゃん。 そんなに恥ずかしがらなくても、俺はまだ生えてない方が興奮するから……な? 見せてくれるよな?』

 

「そ、そういうことじゃ……あ、ダメ、ダメなのですよぉ! あっー!」

 

そうして、私のショーツはついに下まで降ろされてしまった。

ご丁寧にも圭一は足の付け根まで綺麗にそれを脱がすと、私の可愛いプリントのされた布を顔にまで持っていった。

そしてそれの匂いを嗅ぐ様に……スースーと息を吸いだしたのである。

 

『あーいい匂い。 梨花ちゃんのパンティ、お日様の匂いがするぜぇ……はぁはぁはぁ』

 

「………………へ、変態」

 

だめだこの男……早くなんとかしないと!

しかたなく私は、さっき羽入が言っていたとおりにしようと彼の股間に目をやった。

あいかわらずそこはすごい大きくなっていたけれど、もはや羞恥心など考えている余裕はない。

私は圭一の……その男性器にピタリと手を置いていった。

 

『……うっ!? り、梨花ちゃん?』

 

「う、動いてはいけないのですよ? 圭一」

 

突然のことに、圭一はビクンと体を震わせて驚いていた。

同時に私は体への愛撫も止めさせるため、彼に動くなと声をかけていく。

はからずも羽入の言ったとおり、圭一はそれだけでピタリと体を止めて抵抗しなくなったのである。

 

「ほ、ほんとに効き目あるのね。 それともスケベな圭一だから?」

 

「男はみんなこういうものなのです! ほら梨花、そのまま手をこう……撫でるように動かすのです!」

 

「わ、わかってるわよ……」

 

正直不本意だったが、私はしょうがなく圭一の股間に置いた手をスリスリと動かしていった。

動かし方はよくわからないが、とりあえず羽入の教えてくれたとおり。

上下に優しく撫でるようにすると、圭一の口からうぅっとうめき声のようなものが漏れていった。

ズボンごしにでもわかるその大きさと硬さが、私の手のひらいっぱいに感じられていく……。

 

「羽入……。 これなんか、す、すっごく大きいんだけど? おまけにすごくカチカチで……へ、平気なの? こんなになって?」

 

「それはむしろ圭一が喜んでいる証拠なのです。 梨花の手がきもちよくて、梨花にもっとして欲しくて、そんなになっているのですよ?」

 

「え……わ、私にして欲しくてって……」

 

羽入の言葉が、圭一は梨花のことが好きだからこうなっている……というふうに聞こえた。

たしかに圭一は私にセクハラばかりしてくるけど、もしかしたらそれは、私のことが好きだからしている?

そう考えていくと、この苦しそうな股間もどうにかしてあげたいという気持ちになるから不思議だった。

 

「そ、そうよね。 圭一だって男の子なんだし……今日の罰ゲームだって、もしかしたら私と二人きりになりたかったから……」

 

「ということはないのです。 まあきっと、この手が魅音やレナや沙都子でもビンビンになったでしょうね。 男はそういうものなのです、あぅあぅあぅ」

 

「!?…………は、羽入ぅぅぅぅぅっ!」

 

乙女モードになった私を、羽入は待ってましたとばかりにぶち壊しにした。

しかもそれに合わせるように、圭一が私に対して信じられない言葉を言い出したのだ。

 

『う……梨花ちゃんってスケベな女の子だったんだな。 こんなにちっちゃいのに、男のペニスを自分から触るなんて……』

 

「!? ち、ちがうのです! ボクは羽入に……!」

 

言われてやらされたとは言えなかった。

圭一に羽入のことが知覚できるわけがないし、そんなことを言っても信じてもらえるわけがない。

しかたなく私は圭一の言うとおり、エッチな女の子のようにその股間を擦るしかないのだった。

 

『あぁ……き、きもちいいぜ梨花ちゃん。 ずいぶん慣れてるんだな?』

 

「そ、そんなことないのです。 圭一のために、よ、よくわからないけど……やってあげているのですよ?」

 

『嘘つけ、このやり方はあきらかに慣れている感じだぜ? 一、二本咥えたことありますって感じだぜぇ? くっくっく』

 

「み、みぃぃ~……」

 

私を辱めるためにわざと言っているのか、それとも本気でそう思っているのか……。

圭一はサドっ気たっぷりの目で、巧みに股間を撫でる私を罵倒する。

このやり方もそもそもは羽入に言われてやっているもので、彼のこうした言動も彼女の引き出した罠だったんではないかと思えてくる。

 

「羽入……な、なんかものすごいエッチな子だと思われちゃったじゃない! ど、どうするのよ!」

 

「あぅあぅ~大変なのです。 こうなったら、圭一のおちんちんを最後まで満足させてあげるしかないのですねぇ~」

 

「さ、最後までって……?」

 

そうすると羽入はまたもやツンツンと圭一の股間を差し、今度は直接これに触れと合図する。

ズボンの上からでも恥ずかしいのに、このまま直にそれを触れというのか……。

さすがにそこまでするのはちょっとためらわれた。

 

「む、無理よそんなの……。 は、恥ずかしいっ!」

 

「ここでやめたら、圭一はたぶん梨花にむりやり襲い掛かるのですよ? 『そんなに男のペニスが欲しいなら、今すぐブチ込んでやるぜぇ~~っ!』とか言われて終わりなのです。 あぅあぅ~、梨花の純潔もここまでなのです」

 

「う……ううぅぅぅ~っ!わ、わかったわよ! やればいいんでしょやればーっ!」

 

羽入のある種もっともな意見に、私は半ばやけになりながら圭一のズボンのチャックに手をかけた。

パンパンに張ったそれはとても降ろしにくかったけど、力いっぱい下げるとそれが中から飛び出るように露出した。

彼の下着を突き抜けて、あろうことか私の手のひらの中にそれが……出てきたのである。

 

「!? あ、あああ、け、圭一のが、手、手に! 私の手の中にぃぃっ! は、羽入ぅぅぅっ~!」

 

「落ち着くのです! さっきまで一応触っていたところではないですか! ちょっと硬いソーセージくらいに思っておくのです!」

 

「そ、そんなこと言ったって……ひっ!や、やだやだなにこれ! 私の手の中で、ピ、ピクピクしてる!」

 

直接手のひらで触れると、それはほんとに驚くほど硬く大きいものだというのが実感できた。

おまけに圭一のそれは私の手の上できもちよく……ドクッドクッと脈を打つように震えていたのである。

 

『くぅ……ま、まさか直接触ってくれるとは思わなかったぜ。 ほんとに梨花ちゃんはペニス大好きな女の子だったんだなぁ?』

 

「ち、ちがうのです! ボ、ボクはおちんちん大好きっ子なんかじゃないのです……」

 

『くっくっく、そうかなぁ? 今だってほら、俺のこれを手の中で嬉しそうに転がしてるじゃんか? ほんとはちんこシゴくの好きなんだろー、なー?』

 

「ち、ちがうちがう、圭一のイジワル……」

 

圭一はもはや自分が主導権を握っているとばかりに私を罵っていた。

実際私はこうして彼のおちんちんを手にしているし、羽入に言われたとおりやんわりとしごいていたりもする。

だがそれはあくまで、この状況を抜け出すためなのである。

けっして自分から触りたいとか……そんなことは……。

 

「は、羽入……なんだかこれ、ほ、ほんとにすごいわよ? 私の手の中でこんなビキビキになっちゃって……すごいの」

 

「それはきっと梨花の手が上手だからなのですよ。 オヤシロ様の巫女である梨花は、なんとおちんちんを扱う才能まであったということです。 まったく汚らわしいですねぇ、あぅあぅあぅ……」

 

「!? そ、そんなこと言わないでよ……あんたまで……」

 

圭一にペニス大好きな女の子と罵られ、羽入におちんちんを扱う天才だと罵られ……。

私はまるで、自分が本当にそんな女の子であるような気がしてきてしまった。

手をずっと動かしていたせいか、いつのまにか呼吸まで荒くなっていて……これじゃあまるで私も興奮しているみたいだ。

 

「ん……お、大きいのです。 圭一の……はぁ」

 

『……なぁ梨花ちゃん。 ほんとは今すぐ俺のこれが欲しいんだろう? そんなに息荒くしてよぉ』

 

「!? ち、ちがうのですっ! これはちょっと疲れただけで、そんなつもりじゃ……」

 

『嘘つけって。 俺のこのビンビンにでかくなったペニスを、この……』

 

すると圭一は突然、ガバっと大きく私のスカートをめくり上げた。

さっきショーツが脱がされていたため、そこには何も履いてない可愛いわれ目が露出してしまう。

 

「!? ひゃうんっ! け、圭一!」

 

『このちっちゃなお○んこに入れてもらいたいんだろっ! なあっ!』

 

「あ、あぅぅっ! そんなこと思ってないのですよぉ……」

 

『どうかなぁ? こりゃあ今夜一晩かけて、オヤシロ様の巫女がしっかり純潔を守っているか調べてやらないとだなぁ? くっくっく……』

 

急に声を荒げる圭一に、私はビクっと体を震わせて怯えた。

こんなの、いつもの私のペースじゃない……。

スケベで変態な圭一を、逆に私があしらうくらいが正しい形のはずだ。

なのになぜか頼っていた羽入にまで罵られ、手の中でビクビクと血管を浮き立たせるそれを見ていると……どこか自分の中の感情が抑えきれなくなっている。

 

「は、羽入? なんか圭一のこれ、ビクビクって……は、破裂しちゃいそうなんだけど、どうなるの?」

 

「あぅあぅ~、それはきっともうすぐ射精する合図なのですよ。 梨花のスケベな手つきにたまらず、圭一はドピュドピュしちゃいそうなのですねぇ?」

 

「ス、スケベって……なんであんたまでそんなこと言うのよ。 これはしかたなくやってるんだって知ってるでしょ?」

 

「ほーしかたなくだったのですか。 その割には、梨花はずいぶん興奮しているように僕には見えたのですけどぉ~?」

 

「う……あ、あんたいつからそんなに……」

 

ドSになったの……?

羽入はいつのまにか、圭一と同じような突き刺さる目つきで私を見ていた。

普段からイジメられていたことへの仕返しのように、こんな卑猥なことをする私を淫乱な巫女だと言わんばかりの目で見つめていたのである。

 

「ほらほら、そのままもっと激しく動かして圭一を射精させてあげるのですよ? 梨花もおちんちんがドピュってするところ、見たいのでしょう?」

 

「み、見たいわけないでしょ。 そんな恥ずかしいところ……ばか」

 

「あぅあぅ~そうなのですか? てっきり僕は、梨花は古手家歴代一位の淫乱だとくらい思っていたのですけど。 そうですか~、見たくないのですか~」

 

「くっ……あ、あんたこれが終わったら覚悟してなさいよ……」

 

とにかくこの手に握りしめているものを鎮めないことにはどうにもならない。

私は羽入の言うようにその手を激しく動かし、圭一のおちんちんを射精とやらに導いていった。

手首を前後に動かすたび彼のおちんちんの先から何か透明な液が噴き出し、それがピチャピチャとエプロンの前にかかっていく。

 

『くうぅ! す、すげえぜ梨花ちゃん! なんて上手な手コキだ! こりゃあやっぱり相当数をこなしてるなぁ?』

 

「いいから早く……しゃ、射精をするのです圭一。 ボクは早くお料理を続けたいのですよ……」

 

『くっくっく、それはペニスのお料理をって意味かぁ? なぁ淫乱梨花ちゃんよぉ?』

 

「!?……く、あ、あんたも後で覚えてなさい……」

 

圭一と羽入。 二人のドSに挟まれながら、私はその手にしたおちんちんを乱暴にしごいていった。

だんだんと先っぽの割れているところが開き始め、初めての私でもここから何か出てくるの?と感じ、その部分をジーっと観察した。

パックリと割れているそこはもうとめどないほど液を吐き出し、ビチャビチャと私の手や腕を容赦なく汚していった。

 

「なにか出てきそう……しゃ、射精っていうのが起こるの、羽入?」

 

「そうなのです。 白いのがい~っぱい出てくるのですよ? それを浴びた女の子は、その男の子供を身に宿すのです」

 

「へぇ、そうなの…………子供?」

 

羽入の言葉に、一瞬、私は今自分が置かれている状況を考えた。

圭一が仁王立ちし、その下半身の目の前にいる私。

いまその白いものがこのおちんちんから出たら、それは私の体にかかってしまうのでは?

さっきから出ている透明なものでさえ顔や手にかかっているというのに、更にそんなものまで体にかけられたら……私は妊娠する? 彼の子供を?

 

『く……い、いくぜ梨花ちゃん! そんなに俺の精液が欲しいなら、そのスケベな体で受けとめやがれぇぇぇぇっ!!!』

 

「!? ま、待ってなのです圭一! 今出したらボクにかかっちゃ……!」

 

ビュル! ビュルルルルッッッ!!! ドビュルルルルッッッ!!!!!

 

私が言葉を言い終える前に、圭一のペニスからミルクのような液体が発射された。

先っぽの割れ目からドピュドピュと吐き出され、とても濃い液が次々と目の前の私に降り注ぐ。

反射的にそれは浴びちゃいけないと思ったが、彼は私の体をガシっと掴んで逃がそうとしなかった。

 

「!? い、いやぁっ! かけちゃダメなのですっ! 圭一ぃぃっ!」

 

『何言ってんだ! これが欲しかったんだろう! ほらほらその可愛い顔にぶっかけてやるよぉぉぉっ!!!』

 

ドビュル! ドピュピュピュピュッー!!!

 

しっかりと抑えつけられた体に、ビチャビチャと生温かい液体がかけられていく。

毎日家で沙都子と交代で使っている可愛いエプロンに降り注ぎ、そのままそれが下に向かって剥きだしの足にドロリと……。

その勢いのすごさに腕や首すじまでもがまんべんなく白く染められ、おもわず顔を隠そうとした手も払いのけられ、彼の子供の元が容赦なく私の顔面をグチャグチャと汚していく……。

 

「み、みぃぃ~っ!ダメなのですダメなのです! 赤ちゃんできちゃうのですよぉぉあうぅぅぅっっ~!!!」

 

『はっはっは、そうだそうだ! 俺の子供を妊娠しちまうほどたくさんぶっかけてやるぜ~っっ!』

 

ビュルルッ! ビュルッビュルッ!!! ドビュウゥゥッッ!!!

 

ビチャっとした固まり、そしてヌトリした液体が顔じゅうにパックするように塗りたくられていく。

圭一はそんなにも……私のことを妊娠させたいの?

そんなことを考えながら、私はその生温かいドロリとしたものたちを浴びていった。

そしてそのまま体じゅうの全てを汚されたと感じたとき……ようやく彼のペニスはその動きを止めた。

 

『くっくっく、どうだ梨花ちゃん? 俺の精液の味はよぉ?』

 

「あうぅ……ひどいのです圭一……。 こんなにたくさん……ボク、絶対赤ちゃんできちゃったのですよぉ……」

 

自分の体からのぼるむせ返るような匂いに、ああ、私は汚されたんだな……と感じた。

圭一の家に来た時点である程度は覚悟していたけれど、それがこんなにも悲惨なものになるとは思わなかった。

好きな人の家に来たはいいけど、まさかこんなふうにされるなんて……。

まさか妊娠させられるところまでいかされるとは思ってもみなかった。

 

「あぅあぅ~梨花かわいそうなのです。 ドロドロにされちゃったのですよぉ……」

 

「ばか……あんたがこうしろっていうからしたのに……ひ、ひどいじゃない。 まさかこの年で赤ちゃんができちゃうなんて……う、う、う」

 

妊娠させられたという悲しい現実に、私はおもわず涙を流してしまった。

よく考えたらこれは、全て私の体に九代目を宿させるための羽入の作戦だったのかもしれない。

最初にここに来るのを止めていたのだって、やめろと言われるとやりたくなる、人間の心理を逆手にとったものであるにちがいない。

現にこうして彼女の言うとおりにしたら、私は圭一に妊娠させられた。

信じていた羽入に裏切られたという事実が、ただ私の胸を切なく苦しめていった。

 

「ばか、ばか……あんたなんて嫌い! だいっ嫌いっ!……う、う、うぅぅ」

 

「あぅ~そんなこといわないでなのです……梨花」

 

いまさらそんな申し訳なさそうな顔をしたって無駄だと思った。

全ては羽入が裏切ったことから始まったのに、これが冗談でしたということにもならないかぎり……。

 

「あ、ちなみに妊娠なんてしないのですよ? その白いのは梨花のお股に入らないと意味ないのです」

 

「う、う……ぐしゅ……え?」

 

「だ・か・ら、赤ちゃんなんてできないのです。 というかそもそも梨花は初潮すらまだなのですから、子供なんてできるわけないのですよ」

 

「え……で、できないって……?」

 

「つまりあれですよ……。 梨花ばっかでぇ~、騙されて泣いてやんの~ってことなのです。 あぅあぅあぅ~♪」

 

「…………………」

 

羽入のその言葉に、だんだんと頭の中がクールになっていく。

まだ体じゅうが精液まみれだったが、今はとりあえずもっとも効率よく、かつ適切に彼女を殺す方法を思い浮かべていく。

まず私はまな板の上にあった包丁を取り、二番目に殺したい人物にゆっくりとそれを向けていった。

 

『ふぅ~気持ちよかったぜぇ、梨花ちゃん。 いやーこんなに出たのは初めてだなぁ。 もうすっごく気持ちよく……て』

 

圭一が何やら感想を言っていたが、今はとりあえずその私を汚した肉の棒にスっと包丁をあてていく。

いや、これは肉じゃなくて海綿体だったか……。

それなら切り落とした時、さぞかし血がドバドバ噴き出るのだろうとむしろ好都合だった。

 

『!? お、おいおい梨花ちゃん、冗談きついぜ~? そんなとこに当てたら、あ、あぶないよ~?』

 

「うっさいわね、そんなことわかってんのよ。 そのよく喋る口閉じないと、今すぐ切り落とすわよ?」

 

『!?…………は、はい』

 

圭一は私の口調と行動に一気に怯えたのか、あきらかに萎縮してしまっていた。

急所であるところにピタリと刃物を当てられているのだから無理もないが、所詮、彼も強者には逆らえないただのオスだったというわけだ。

今夜、私の体が純潔かどうか確かめるとか言っていたが……。

むしろ私がこの汚れた体を祓ってやろうか?と考えながら、ゆっくりと口を開いていく。

 

「ねぇ、圭一。 あんたの家に、何かキムチ的なものはある? もしくわすごく苦いものとか……。 まあなんでもいいわ、そんな感じの」

 

『キ、キムチ……ですか?』

 

私の放った言葉に、包丁を突きつけられた彼よりも一層それを恐れた女がいた。

背後からなにやらあぅあぅと慌てる声が聞こえてくるが……今はそんなことはどうでもいい。

とにかく早くこの女を罰しなければ、殺さなければという考えだけが頭の中を占めていく。

 

『え、えーとたしか。 親父が通販で買った……激辛本場キムチとやらが、れ、冷蔵庫にありますけど……?』

 

「そう。 じゃあそれをここに持ってきなさい。 冷蔵庫って、そこのでしょ?」

 

『は、はぁ。 でも梨花ちゃんなんでそんなもの……』

 

「いいから早く持ってこいって言ってんのよ! それともこの***今すぐブチ切られたいのっ!!!」

 

『!? は、はいはいはいっ!!! 不詳前原圭一すぐに梨花様にキムチを持ってくるでありますぅーっ!!!』

 

最初からそうしていればいいものを、圭一はようやく私が本気だということがわかったように冷蔵庫に走っていった。

そんな情けない彼を見ながら、私はいままでこんな男のセクハラに怯えていたのかとほとほと馬鹿らしくなった。

男の弱点はペニスだ、と後ろの女がのたまっていたが……。

なるほど、そう考えるとたしかにあそこが弱点ねと納得していくのだった……。

 

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最終更新:2020年09月17日 17:01