「じゃ、じゃあ始めようか……みんな」

「はぅ……しょ、しょうがないよね……」

「みぃ……」

「屈辱ですわ……こんな茶番……」

 

放課後の教室。 外ではうるさいほどにひぐらしが鳴いている夕刻、彼女達四人は教室に居残っていた。

窓から差し込んでくる夕日に部屋がオレンジ色に染まる中……。

少女達は自分の机とイスを持ち寄り、ある『ゲーム』をしようとしていた。 そしてそれはもちろん、放課後恒例の『部活』としてであった。

もはや日課となっているこの行事に、魅音、レナ、梨花、沙都子の四人は、今日もさぞ楽しい時間を過ごすのだろう……。

と思いきや、なぜか彼女達の表情はみな一様に暗かった。

 

「魅ぃちゃん……あの……そのトランプ、よかったらレナが配ろうか?」

 

魅音の机の上には、これからするある『ゲーム』に必要なトランプが置かれていた。

それ自体は何の変哲もない、いたって普通のトランプである。

だがこれこそがじつは、これから四人の運命を大きく決める大事な遊び道具であったのだ。

そんな重要な物とあっては、レナも持ち前の優しさを出さずにいられず……つい魅音にそんなことを申し出たのだった。

 

「いや……いいよ、レナ。 ここは部長であるおじさんが、しっかりと配るから……さ」

 

レナのそんな気遣いをきっぱりと断わると、魅音は目の前に置かれているトランプをいさぎよく掴んだ。

だがそんないさぎよさとは対照的に……その手はかすかに震えている。

普段のあの強気な魅音とは別人ではないかというほどに、じつに弱々しい手つきだったのである。

 

「魅音さん、かわいそうですわ……こんな時まで部長として、気丈に振舞わなければならないなんて……」

 

「魅ぃは立派な部長さんなのです……これぐらいで負けないのですよ……」

 

そうして震えながらトランプを配っていく魅音の様子を、沙都子、梨花、も机の反対側から見守っていた。

彼女達二人もその表情はどんよりと暗く、いつもの元気な子供らしいエネルギーの微塵も感じられなかった……。

 

親しい友人同士であり、最高の仲間でもある彼女達がこうして集まって『部活』をしようとしている。

だがなぜ、こんなにもこの場のテンションは低いのだろうか?

そのすべての理由は、これから彼女達がしようとしているその『ゲームの内容』にあったのだ。

 

彼女達がこれからやろうとしているゲーム。 それはずばり、『ババ抜き』である。 

魅音、レナ、沙都子、梨花の四名は、これからこの机の上でトランプの『ババ抜き』をやろうとしていたのである。

だがそうなると、もう一つの疑問が新たに湧き出してくる。

たかがババ抜きをやるのに、どうして少女達はこんなにも嫌そうにしているのか? ということである。

その答えは、このババ抜きは正確には『部活』などではなく……。

 

「……全員、配り終わったね。 じゃあ、もう揃っちゃってるペアを机の上に出していって? それが終わったら、始めるからさ……」

 

魅音があいかわらずの暗い表情でつぶやくと、三人は手元からペアのカードを抜き出していった。

 

「うう、嫌ですわこんなの。 なんでこんな暗い気持ちで、ババ抜きなんてしなきゃいけませんの……」

「ガマンして、沙都子ちゃん。 罰ゲームなんだからしかたないよ……ね?」

「みぃ……みんな、ファイト、おーなのです」

 

そう。 今レナが言ったとおり、じつは『このババ抜き自体が罰ゲーム』だったのである。

雛見沢を代表するとびっきりの美少女達が、みなこんなにも暗い表情をして恐れる『罰ゲーム』。

たんたんと手元からペアのカードが抜き出されていくさまは、一種異様ともいえる光景だったが……。 

ただ一人、これを楽しそうに眺めている人物がいた。

 

(へっへっへ……そろいも揃って泣きそうな顔しやがって……たまんねえぜ……)

 

その男は、彼女達が怯えるさまをサドッ気たっぷりの目で見つめていた。

部活メンバー唯一の男である、前原圭一その人である。

彼だけはなぜかこの『ババ抜き』に参加せず、少女達がペアを抜き出していく光景を楽しくてしかたないとばかりに見守っていたのであった。

四人の机が真ん中で寄り合い、ちょうど正方形の形になっているその机の周りを……彼は今グルグルと回るように歩き回っている。

時計回りに、魅音、レナ、反対側にまわり、沙都子、梨花。 という配置になって座っている彼女達を、圭一はまるで肉食獣が獲物を見るような目で見つめていたのである。

 

「う……な、なんか背中に嫌な視線を感じますわ……。 まるで獣に見られているような視線を……」

 

「見ちゃダメなのです、沙都子……。 目が合ったら食べられてしまうのですよ……がおー」

 

こんなにも幼い少女達にでさえわかるほどの殺気。 いや、性気ともいえるものを放ちながら、圭一はイスに座っている少女達の体をジロジロと観察していた。

これからする『罰ゲーム』を考案した男。 前原圭一は、目の前の女共の体をじっくりと品定めしていたのである。

 

(どいつもこいつも、美味そうな体しやがって……さぁ、誰が最初の獲物かなぁ?)

 

魅音のこんもりと盛りあがっているバストを。 レナのどっしりとボリュームのあるヒップを。

沙都子のピッチリとタイツに包まれている脚を。 梨花のサラサラと流れている黒髪を……。

舐めるようにいやらしく眺めながら、圭一はそれらがすでに『自分の物』であるかのように舌なめずりをした。

そうして彼は一通り、彼女達の体を視姦すると……ある少女の背後でピタリと立ち止まったのである。

 

「えっと……みんなもう、ペアは出し終わったみたいだよ?……み、魅ぃちゃん?」

 

「……あ、ああ、ごめんレナ。 じゃ、じゃあ、始めようか?」

 

いつまでたっても場を取り仕切る魅音が何も言わなかったため、しょうがなくレナが全員のペア切りを確認したようである。

そう。 圭一が立ち止まったというのは、他でもない、魅音の背後なのであった。

彼女は自分の背後に圭一が立ったことを確認したため、それで一瞬言葉を失ってしまったのである。

ならばなぜ、圭一が背後に立っただけで魅音はそんなにも動揺したのか?

ここで最後に、この『罰ゲーム』の究極ともいえる『あるルール』を紹介しておかなければならない。

 

この『罰ゲーム』。 『ババ抜き』では、当然ジョーカーがたった一枚だけ含まれている。

そしてそれを持っている人物こそ、その時点で最も敗者に近い存在であるといえるわけだが……そこでくるのが、前原圭一の発案したあるオリジナルルールである。

ジョーカーを持っている人物は敗者に近しい。 という以外に、あるもう一つのとてつもないデメリットを抱えながらゲームをするはめになるのだ。 

それはずばり。

『ジョーカーを持っているあいだ、その人物は前原圭一に何をされても決して拒んではいけない』

という、ルールであった。

もちろん、彼の性的な要求にもすべて答えなければいけないのだ。 決して拒まずに。

そもそも老獪なひぐらしファンである諸君らならすぐに気づいたであろうが、こういう時に部活メンバーがやるゲームは実際には『ババ抜き』ではなく、『ジジ抜き』である。

なのになぜ今回、前原圭一がこのゲームを選んだのか。

それは『ジョーカーというわかりやすい目印』があったからなのである。

ジョーカーを持っている女は、俺の獲物、ということである。

 

そしてこのルールを当てはめていくと、魅音がなぜ圭一の存在に恐れをなしたかも透けてくるだろう。

そう。 彼女の手に握られているトランプの中には、はっきりとJOKERの五文字が記されたカードが含まれていたのであった……。

 

「はぅ……魅ぃちゃんがんばって……」

 

「魅音さん……ご愁傷様ですわ……」

 

「み~……かわいそかわいそなのです」

 

「………………うっ……」

 

三人に慰めの言葉をかけられ、魅音はおもわず弱音を吐きそうになった。

このゲームのおもしろいところは、誰がジョーカーを持っているのかが一目瞭然なところである。

圭一が背後にいる=ババ持ちなので、その人物はこうして他の三人から慰めと同情の言葉をもらうのである。

それは、彼のセクハラ行為に負けないで……という、女同士の涙ぐましい友情でもあった。

 

「だいじょうぶだよ魅ぃちゃん、すぐにレナが取ってあげるからね……? それまでがんばって耐えて?」

 

「…………レナ……」

 

レナの天使のような囁きに、魅音はすぐにでもすがりたい心境だった。 だが、それを素直にうんと受け止めるのは少しだけためらわれる理由があった。

その理由もまたこのゲームの恐ろしいところなのだが、今はまず誰が誰のカードを引くかを確認しておくとしよう。

さきほどの机の配置の通りであるが、魅音→レナ→沙都子→梨花。 そして一周し、魅音が梨花のを引く、という順番である。

つまりいま魅音がジョーカーを持っているため、次にそれが渡る可能性があるのはとりあえずレナだけというわけだ。

かくして、前原圭一考案による罰ゲーム。 『セクハラババ抜き』が始まったのであった。

 

(さーて……まずは魅音、か……)

 

まず圭一はイスに座っている魅音に重なるように、ピッタリと彼女の背中に寄り添った。

するとちょうど彼女の髪が真下にくるようになり、そこから流れてくるシャンプーの香りがなんともいえず圭一を興奮させた。

そのまま視線を下に向けていくと、あきらかに前にこんもりと盛り上がっている大きなバストが目に入っていった。

 

(あいかわらず、たまんねぇデカ乳してやがるぜ……こいつは……)

 

そんな卑下たことを思いながら、圭一は自分の両手を魅音のわきに降ろしていった。

そのたまらない胸を触るため、わきの下から手を入れようとしたのだが……いかんせん、魅音は手にトランプを持っているためそこがピッチリと閉じていた。

 

『おい魅音、わきを少し開けろよ。 そのでかいおっぱいが触れねえだろ?』

 

「う…………で、でかいって……」

 

圭一の嫌味な言葉に傷つきながら、魅音はしかたなくわきの下を開いていった。

するとそこからシュルリと手が入り込み、ついに彼女の豊満な乳房が彼の手のひらの餌食となった。

 

『おおう……やっぱすげえでけえなぁ。 俺の手におさまりきらないぜぇ? なあ?』

 

「う……け、圭ちゃん……そ、そんなこと言わないでよ……」

 

魅音が嫌がるのも無視しながら、圭一はそのまま服の上からサワサワと彼女の乳房を撫で回していった。

まだ揉んだりはせずに、あくまでも柔らかそうなその膨らみを手のひらで堪能するように撫でていったのである。

 

『すげえ……たまんねえぜ……。 なあ魅音、おまえはなんでこんなにデカイおっぱいしてんだ? 誰か男に揉まれてるのか~?』

 

「!? ち、ちがう……だ、誰かに触らせてなんかないよ……」

 

大好きな、圭ちゃんだけだよ……とその後に続けたい気持ちを、魅音は必死に抑えた。

こんなにも卑猥なことを言われているというのに、彼女はまだ圭一への想いはしっかりと持っていたのである。

彼が胸を触りたいなら触らせてあげてもいい。

だがこんな罰ゲームの一つとしてではなく、ちゃんと恋人どうしとして触って欲しかったな……と、魅音は乙女チックに思っていた。

 

「魅ぃちゃん……そんなに圭一くんのこと……」

 

胸を揉まれながらも健気に耐える魅音を、隣にいたレナが悲しそうな目で見ていた。

圭一が魅音にセクハラをするのはわかっていたことだが、彼女がこんなにも気丈に耐えるとはレナも予想していなかったのだ。

そしてだからこそ、レナはこれ以上圭一のセクハラ行為を許せないと思い、魅音の持っているトランプへ自らの手を伸ばしていった。

ここで自分がジョーカーを取れば、すぐに魅音は解放される。 その想いを胸に秘めて……。

 

「魅ぃちゃん……ほら、どれ? どれがジョーカーなの? レナに教えて……?」

 

「レ、レナ……でも、でもそれじゃあ……」

 

あいかわらず圭一に胸を撫で回されながらの魅音は、おもわずレナに助けを求めるような目を向けた。

それにレナの方も答えようとカードを引こうとするが……なぜか魅音は、どれがジョーカーなのか合図を出さないのである。

 

「み、魅ぃちゃん、どれ? どれがそうなの? は、早く教えてよ……?」

 

レナの問いに、魅音はただ首をふるふると振るのみであった。

助けたいのに。 早く大好きな魅ぃちゃんを助けてあげたいのに、レナはそのカードをいつまでも引けなかったのであった。

 

「ど、どうして……? どうしてなの魅ぃちゃん! ね、ねぇ! ねぇってば!」

 

納得できないと叫ぶレナに、圭一はおもわずニヤリとした。

これこそがこの罰ゲーム。 『セクハラババ抜き』の恐ろしいところであった。

たしかに魅音は今レナに手元のどれがジョーカーであるかを教えれば、この悪夢から逃れることが出来る。

それを特に圭一は禁じていないし、あとは魅音がこれがそうだと合図すればいいだけである。

だが、それができないのだ。 

もしそれをすれば、今度は親友であるレナがセクハラの対象となってしまうからだ。

 

「いいから……レナはこのまま、おじさんのカードを好きに選んで……」

 

「な、何言ってるの魅ぃちゃん! だ、だってそれじゃあ……それじゃあ魅ぃちゃんがっ!」

 

こんなにも自分を想ってくれる、自分を助けようとしてくれるレナを、『生贄』に捧げるような真似……魅音ができるわけがなかった。

それは部長として、メンバーを罰ゲームから守ってやろうという想いからか。 あるいは、最年長としての責任感もあったか らかもしれない。

ともかく、園崎魅音には竜宮レナにジョーカーを引かせることなどできなかったのであった。

 

「魅ぃちゃん……はやく……はやくレナに教えてよぉぉっっ!!!」

 

「だめ……だめだよ、レナ……そんなのだめ……」

 

二人の悲痛なやりとりに、圭一はふたたびニヤリと笑った。

普通のババ抜きなら、いかに相手に自分のジョーカーを引かせるかが肝となる。

だがこの場合、それを持っている魅音は『引いて欲しくない』。 レナはそれを『引きたい』。 と、まったく逆の心理になるのである。

全てはこの『仲間を想う気持ち』が、かならずジョーカーをその人間に長く留まらせる=長く楽しめる。 と計算した、前原圭一の恐るべき作戦なのであった。

 

『くっくっく……。 さあ、どうするレナぁ~? このままじゃお前の大好きな魅ぃちゃんが、おっぱい揉みくちゃにされちまうぜ~?』

 

「く…………ぐぅ……」

 

あまりに卑怯な圭一の作戦に、レナはただ唇を噛みしめるしかなかった。

ここでいつものオヤシロモードで怒れば、その矛先は間違いなく魅音の体に向かってしまうだろう。

何よりもこれは『罰ゲーム』なのだから、彼女達は黙ってこれに従うしかないのである。

そうなるとレナにできることは一つだけであった。 ルール上問題なく、かつ魅音を助けることのできる、唯一の方法……。

 

「……引いてやるっ!」

 

自らの決意を口にしながら、レナは魅音のトランプに手を伸ばした。

そう。 レナが自力で、魅音の手からジョーカーを選びぬけばいいのである。

 

「引いてやる……絶対引いてやる……引いてやるっ!」

 

魅音の手にしているトランプの枚数は多い。

まだゲームは始まったばかりで、おまけに魅音はあまり最初のペアが多くなかったようで、四人の中で一番といえるほどの枚数を抱えていたのである。

確率的に見れば、あきらかに分の悪い賭け……。 だがレナのカンのよさは、部活メンバーの中でピカイチである。

人の嘘を簡単に見抜き、見破るその能力があれば、それを引くことも不可能ではない……冷静になれれば。

 

「できる、できる……レナならできる……魅ぃちゃんを助けられるっ! 絶対にっっ!!!」

 

意を決して、ついにレナは一枚のカードをグっと掴んだ。

類まれなるカンの良さか、それとも魅音を助けたいという想いの強さか……彼女の掴んだカードは、見事にジョーカーだった。

レナ自身はまだそれに気づいていないが、あとはこれを上に引き抜くだけで魅音は救われるのである。

……だが、その時。 悪魔のような男、前原圭一が信じられないことをしたのだ。

 

『おお~っと! 手が滑ったぁぁ~~~っ!』

グニュウウゥゥゥ!!!

 

「!? や、やあぁぁぁぁっっ!?」

 

教室に響きわたる、魅音の悲鳴。

圭一はレナがそのカードを引く瞬間、なんと魅音の胸に指をおもいきり食い込ませたのである。

大きな膨らみを揉みこむように、グニュリグニャリと……力いっぱい。

 

「い、痛いっ! 痛いよ圭ちゃん! や、やめ、やめてよぉぉ……」

 

「……み、魅ぃちゃんっ!?」

 

レナの目の前で、大好きな魅音の乳房がいびつに歪んでいく。

女の目から見てもあきらかに痛そうに食い込む指に、レナも自分の胸をおもいきり揉まれたような痛みがした。

そしてその時、レナはトランプを手にしている指先を見ていなかったのである。

目の前で魅音が悲鳴をあげ、乳房を揉まれていくのをおもわず見てしまい……そのショックの中で、カードを抜いてしまったのである。

そしてそれを見た圭一は、ようやく魅音の胸から指を離していった。

 

『お~っとっと、ごめんなぁ魅音。 ちょっと手が滑って、うっかりおっぱい揉みしだいちまったぜぇ』

 

「う……ひ、ひどい……こんなのひどいよ、圭ちゃん……」

 

圭一の指が離れても、魅音の乳房にはズキズキとした痛みが残っていた。

そして皮肉にもその『痛み』は、隣にいるレナにも届いていたようで。 彼女は自分の手に持たれているカードを見て、絶句していた。

 

『お、引いたのかレナ。 で、どうだった? 魅音は助けられたのか~?』

 

「……………………ス」

 

『え、なんだって? うまく聞こえないぜレナぁ? なに引いたって~?』

 

「スペードのエースっ!」

 

ダンっ!と大きな音をさせて、レナはカードを持っている手を机におもいきり叩き付けた。

まるでこの手が悪いとばかりに、何度も何度も何度も、木製の硬い机に自分の手を叩きつける。

 

「ちくしょうっ! ちくしょうっっ!! 魅ぃちゃんがっっ!!! 魅ぃちゃんがぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 

さっきまで冷静だったレナが、急に何かが乗り移ったように怒り出した。

その手を叩きつける音と叫び声に、向かいにいた梨花や沙都子もビクっと体をすくませる。

 

「みぃ……レナ、怖いのです……オヤシロモードなのです……」

 

「レナさん、あ、あの、どうか落ち着いて……暴力はいけませんわ……」

 

凌辱される魅音をただ見ていることしかできなかった二人には、レナを本気で止めることはためらわれているようだ。

口では止めに入っているが、どこか申し訳なさそうにオドオドする仕草が圭一の萌えポイントにちょこっと引っかかるだけだった。

それを見て仕方なく、このゲームを仕切っている彼はその怒り狂うレナ様を抑えることにしたのだった。

 

「魅ぃちゃんを助けられなかったっ! 魅ぃちゃんのおっぱいがっ!!! 魅ぃちゃんのおっぱいがぁぁぁっ!!!」

 

『まあまあ、落ち着けよレナ。 たしかに魅音のおっぱいは俺が頂いたけど、これはおまえが招いた結果だぜ?』

 

「!?……………ぅっっっ!!!!!」

 

この卑怯者!と怒鳴りそうなのを、レナは必死でこらえた。

元々魅音があんなことをされなければ、レナは今ごろ冷静にジョーカーを選び取っていただろう。

それが圭一のせいで……。 この男のせいで、全て台無しになってしまったのである。

レナは目の前でニヤニヤと笑う圭一を、鷹のような目でギラっと睨みつけた。

 

「圭一くん……次、行っていいかな? ……かな?」

 

だがそんな睨みつけるような目をするわりには、レナの口調は意外と冷静だった。

本当はこの場で圭一を怒鳴りつけたいところだが、そんなことをしても彼は魅音の体を貪り続けるだろう。

ならばいっそ早く次の子に自分のカードを取らせ、もう一巡させて魅音のジョーカーを引く方が得策であると考えたのだ。

目の前で親友が辱められたというのに、レナの頭はCOOLな状態に戻っていたのだ。

 

「圭一くん……いいよね、次にいっちゃっても。 次は沙都子ちゃんだよね? ……ね?」

 

『ん~……俺はもっとゆっくりやりたいんだがなぁ。 せっかくの罰ゲームだろ? 少しは楽しませてくれよ……』

 

レナの冷静でいて凍るような声にも、圭一はまるで動じなかった。

自分にはこのゲームを仕切る権利があり、それにはレナですら逆らえないと確信していたからである。

そんな余裕を見せ付けるように、圭一は魅音の胸をまたもみもみと揉みはじめたのだ。

 

「うっ! や、や……け、圭ちゃん……」

 

魅音はそれに一瞬ビクっと肩をすくませたが、圭一の手つきがさきほどの乱暴なものよりも優しかったため、なんとか悲鳴をこらえた。

そして圭一は魅音の耳元にすっと口を寄せると、何とも甘い声で囁きはじめたのである。

 

『さっきはごめんな、魅音。 あんな乱暴にしちまって……今度は優しくしてやるからな……?』

 

「……圭ちゃん。 そんなこといきなり言われたって……もう、だめだよ……」

 

『いや、ほんとにごめん。 魅音だって女の子だもんな? それなのにあんなひどいことを……ほんとにわるい』

 

「!?………な、何言ってんのさ、い、いきなり……」

 

圭一の口から出た『女の子』、という言葉に魅音はおもわず反応してしまった。

さっきあれほどに乱暴だった男が、急に紳士な態度で囁きだしたことも驚きだが、その言葉は魅音にとって特別なものだったのだ。

彼女はまだどこか怯えた表情を引きずっていたが……正直、その言葉に悪い気はしなかった。

 

「さ、さっきはあんなに……おじさんの胸、めちゃくちゃにしたくせに……」

 

『ああ、だって罰ゲームだろ? そうしなきゃ意味ないと思ってさ……それに……』

 

魅音の反応が少し変わったのをいいことに、圭一はそのまま優しく、あくまでも優しくその乳房を揉んでいった。

親指と人差し指を突起があるだろう場所に持っていき、そこはほんの少しだけ、摘んでいく。

 

「ひゃうっ!? あ、け、圭ちゃん……そこはダ、ダメだって……」

 

『それにさ、大好きな魅音のおっぱいが触れるんだぜ? ちょっとは俺の気持ちもわかってくれよ。 な?』

 

「!? だ、だだだ、大好きってっ! な、何言ってんのさ、い、いきなりぃぃっ!」

 

圭一の愛の言葉に、魅音は耳まで真っ赤になって慌てふためいた。

今も胸を好き勝手に揉まれているというのに、乳首までコリコリと指で摘まれているというのに、彼女はもうすっかりいつもの調子で酔っていた。

その大好きという言葉が、『魅音』にかかるのか、それとも『おっぱい』の方にかかっているのかも考えずに……。

 

『な? だから許してくれよ。 魅音だって、いつも罰ゲームで俺に好き勝手やってるじゃないか……』

「………うん。 そ、そうだね。 おじさんもいつも好きにやってる……よね」

『だろ? だからいいだろ? このまま……大好きな魅音のおっぱい、揉みまくっても……』

 

ふたたび告げられた愛の言葉に、ついに魅音は……コクンと頷いてしまった。

元々圭一のことが大好きな彼女にとって、優しくしてさえくれるなら特に問題はなかったようだった。

 

『あ~すげえ柔らかい……。 めちゃくちゃきもちいいぜ、魅音。 おまえのおっぱいは最高だぜ……』

「ん、そ、そんなこと言わないでよ……は、恥ずかしいってば……」

『いいんだよ、それで。 魅音は可愛い女の子なんだから、おっぱい揉まれて恥ずかしがっていいんだ……』

「圭ちゃん……」

 

もはやガードの甘くなった魅音は、圭一の囁きの虜になっていた。

そしてそれをいいことに、圭一はその豊満な乳をブルンブルンと揺らしてみたり、上下左右にグニャグニャと揉みしだいたりとやりたい放題だったのである。

そんな女の体を食い物にするような男を……彼女が許すはずがなかった。

 

「……ねぇ圭一くん。 もうそろそろいいよね? 次、いっても」

 

『ん~? ああ、いいぜ。 じゃあ沙都子、次はお前がレナのカードを引くんだ。 ああ、きもちいい~おっぱいおっぱい……』

 

「………………っ」

 

魅音の乳房を食い物にしている圭一に、さきほどからレナは心底腹が立っていた。

口から出されている言葉だって、なんて薄っぺらいんだろう、と聞くたびに吐き気がしていた。

そもそも口先の魔術師である圭一にとって、そんな愛の言葉を言うのはたやすいことだ。

レナはいますぐ圭一に殴りかかりたい衝動を抑えながら、ようやく向かいにいる沙都子に自分のカードを差し出すのだった。

 

「ほら、沙都子ちゃん早く取って? ……どれでもいいから」

 

お互いジョーカーがないのなら、このやり取りにあまり深い意味はない。

せいぜい早く上がれるかどうかで、レナは早く魅音のカードを引きたくてウズウズしていた。

沙都子もそれをわかっているようで、彼女はレナのトランプにすぐに手を出していった。

 

「レナさん……あの、さ、さっきから魅音さん……なんていうか……」

 

「うん。 魅ぃちゃん、圭一くんに騙されてる……あんなのただおっぱいを好きに触るための口実だよ。 ほんと最低な男!」

 

圭一には聞こえないように、レナと沙都子はヒソヒソと話をしながらカードのやり取りをしているようだ。

沙都子も魅音を助けたいようで、何か打つ手はないかと必死に考えていたのだ。

 

「なんなら、わたくしのトラップで圭一さんにお灸をすえてさしあげましょうか? それなら魅音さんも……」

 

「それは絶対ダメ。 だってこれは罰ゲームだもん。 圭一くんは別にルール違反をしているわけじゃないんだし、むしろそれをやったら沙都子ちゃんが何をされるかわからない……だからダメ」

 

もし誰かがセクハラされている人物を助ける行動をした場合、『その人物』と『助けられた人物』の二人は更に別の罰ゲームが科せられることになっている。

この『助けられた人物』も、というのがミソで、このルールがあるからこそ、さきほどからレナは直接的に魅音を助けることができないのである。

もちろんこれも、スケベ男前原圭一考案による補足ルールであった。

 

「じゃ、じゃあどうすればいいんですの? きっと魅音さん、次もジョーカーをレナさんに引かせませんわよ!」

 

「だろうね……。 しかも今度は、違う意味で……ね」

 

何か含みのある言い方をすると、レナは魅音の方を見た。

あいかわらず圭一に好き勝手にされているのは変わらないが、その『されている』ことのレベルがワンランク上がっていた。

なんと魅音はその制服の前を開かれて、直接圭一に乳房を揉まれていたのである。

白い大きなブラジャーもズルンと上に剥かれ、綺麗なピンク色の乳首がコリコリと彼の指に弄ばれていた。

 

「はぁ……だ、だめだよ圭ちゃん。 こんな……み、みんな見てるよぉ……あ、あはぁぁぁ♪」

 

『いいじゃないか。 見せつけてやろうぜ、魅音。 俺達がどんなにラブラブなのか……愛し合っているのかを、さ』

 

「そ、そんな……あ、愛し合ってるだなんて……あ、あはぁ♪ そ、そこだめだよぉぉぉそんなに弄っちゃあぁぁ♪」

 

すっかり『女』の表情をしながら、魅音はもはや圭一の手つきにあえぎ声まであげていた。

この前原圭一の始末の悪いところは、本気になれば女体を感じさせられるほどに卓越したテクニックを持っているところなのである。

さきほどレナが言った、違う意味でジョーカーを引かせてもらえない。 とはつまり、魅音が圭一にこのまま堕とされてしまう。『レナに圭一を取られたくない』と魅音が思ってしまう可能性があったからであった。

 

「あはぁ♪ はぁぁ、け、圭ちゃん……圭ちゃんきもちいい……あ、あ、ああぁぁぁぁ♪」

 

「魅音さん……あ、あれじゃあもう……」

 

「ダメだね。 魅ぃちゃんはもう……無理だよ」

 

もはやレナ達に聞かれることも忘れて、魅音は教室中に響き渡るほどの声をあげていた

それはつまり、圭一への屈服を表していた。 もう罰ゲームとかも関係なく、少なくともこのババ抜きが終わるまでは彼女はリタイヤだろう。

それを見た沙都子とレナは、圭一にとてつもない敵対心を燃やすのだった。

 

「許せませんわ……。 あの気丈な魅音さんを、あんなふうにして!」

 

「落ち着いて沙都子ちゃん。 興奮しちゃダメ。 レナはさっきそれでやられたんだから……あくまでクールに、クールになるんだよ」

 

一度圭一に追い落とされたレナは学習していた。 冷静さを失うことが、圭一の思うツボになることを。

もちろんさきほどから彼を殴り倒したい衝動はおさまってないが、レナはそれを胸の中で『青い炎』にし、冷静でかつメラメラとした燃える感情に変えていたのだ。

 

「沙都子ちゃん。 とりあえずこのままもう一度、レナの番に回して? そうすればきっとレナがなんとかするから……」  

 

「で、でも、魅音さんは引かせませんわよ? 一体どんな方法が……」

 

「だいじょうぶ。 魅ぃちゃんがダメなら、『もう一人のそのカードの中身を知ってる人』に聞けばいいんだから……」

 

「?……も、もう一人?」

 

レナの意味深な言葉の意味が、沙都子にはよくわからなかったが……。 とりあえず今とてもクールである彼女を信頼し、沙都子は目の前のトランプのカードを一枚抜き取った。

それによってペアができ自分の枚数が減ったが、沙都子はそんなこともかまわずすぐに隣の梨花に自分の手を差し出した。

 

「ほら梨花。 さっさと引いてレナさんに回すんですのよ。 モタモタするんじゃありませんの!」

 

「みぃ。 あ、あの沙都子……さっきからボク、思っていることがあるのですけど……」

 

沙都子はさっさとカードを引いて欲しかったが、梨花がなにやらモジモジとしながらその流れを止めた。

なにか言いたいことがあるようにして、沙都子、そしてレナの方にも自分の顔を向けていく。

 

「魅ぃを助けたいのはボクも同じなのです……。 でも、このゲーム自体を止めさせる方が……ボクはいいと思うのですよ」

 

「…………はぁ? そ、それはそうですけれど! そんなこと、できるはずないではございませんの!」

 

梨花の言うことはもっともではあった。 魅音をなんらかの方法で助けられても、次はレナが。 そして沙都子、梨花が圭一の毒牙にかかるかもしれないのである。

ならばいっそ、このゲーム自体を失くしたい。 と、この場の誰もが願ったであろう。

だがそれはそもそも無理なのである。 そんなことができるなら、初めに誰かがやっている。

スケベ大王前原圭一の欲望を誰も止められないからこそ、この罰ゲームが行われているのであった。

 

「そ、そんな馬鹿なこと言ってないで、早くわたくしのカードをお取りなさいませ! まったくもう!」

 

「みぃ…………」

 

呆れる顔をする沙都子の手から、しょうがなく梨花が一枚のカードを抜き取った。

それを見ながらレナは、梨花の言ったことがなんとなく気にかかり……その意見を聞いてみようと思った。

 

「どういうこと、梨花ちゃん? 何か圭一くんを止められる秘策でも……持ってるの?」

 

「そんな大げさなものではないのです……ただ……」

 

「ただ……?」

 

梨花はそれを言うのが本当は嫌だという風にモジモジしながら、その幼い口をゆっくりと開いていった。

 

「ボクが……ボクが圭一に『お願い』するのです。 もうこんなことはやめてって……こんなかわいそうな『罰ゲーム』、もうやめてあげてって……」

 

梨花がその言葉を言った途端、呆れる顔をしていた沙都子がハっと気づくような素振りを見せた。

そしてそれを聞いたレナも、冷静に彼女が言った言葉の意味を反芻していった。

 

「ボクが言えば……ボクが『お願い』すれば、もしかしたら圭一はもうこんなことやめてくれるかもしれないのです……たぶん、なのですけど……」

 

「それは……で、でもまさかあの圭一さんに……? ……梨花が……」

 

「……………梨花ちゃんが『お願い』、か……」

 

梨花の一見普通な言葉に、沙都子とレナは何か考え込むように呻いた。

どうやら彼女達にしかわからない、何か『特別な意味』がある言葉だったようだ。

 

そもそも梨花が圭一にお願いをするだけで、どうしてこの惨劇を止められる可能性があるのだろうか?

まさか梨花が圭一のオットセイを咥えながら、おねがいなのです……。 などと『お願い』するわけではあるまい。

それはつまり、『お願い』の方が重要なのではなく、それを『梨花がする』からこそ意味のあることなのかもしれない。

 

「どう思いますですか、レナ? ボクが言えば……もしかしたら圭一は……」

 

「……………………」

 

梨花に設問され、レナはとても深く悩んだ。

もし成功すればいいが、失敗したら、梨花の体は……。 そして罰ゲームが続いたら、魅音はもちろん、自分や沙都子もお終いだろう。

冷静な頭で深く深く考えながら、レナはついに決断を下した。

 

「…………それはダメ」

 

「!?……みぃ……ダメなのですか……」

 

「少なくとも、今はまだ、ダメ。 せめてそれは、レナの作戦が終わるまで待って……? 梨花ちゃん」

 

レナがそう判断したならと、梨花はしぶしぶコクリと首を頷けた。

どのみち今の圭一は、魅音の乳を揉んでいることによって性欲の権化と化している。

こんな状態の男に、こんなにもかぁいい梨花がお願いなんてしたらそれだけでも押し倒される危険性があるのだ。

レナはまず自分の策を講じてから、と考えた。 あくまでもクールに……。

 

「じゃ、じゃあ梨花? 早く……今度は魅音さんに、梨花のカードを引いてもらうんですのよ!」

 

沙都子の言葉にコクリとうなずくと、梨花は向かいにいる魅音に手を差し出した。

だが魅音はもう圭一の性技の虜になっていて……。

剥きだしになった乳首はもうピンピンに勃起し、口からはだらだらとよだれまで流していた。

もはや自分がババ抜きをしていることを覚えているかも怪しい、そんなただれた表情をしていたのである。

 

「はぁ、はぁ♪……ん、な、なに……梨花ちゃん……は、は、はぁ♪」

 

「ひ、引くのです魅ぃ! は、早く! ボクの持っているカードを引くのですよ!」

 

「へ?……カ、カード……あ、ああ、カードね……んぅ……♪」

 

あいかわらず圭一の指は的確に魅音の乳を責めていて、なんと気づけばもう片方の手はスカートの中でモゾモゾと動きまわっていた。

もうちょっと時間がたてば、そのまま本番を始めてしまうんじゃないかという状態で、魅音はようやくうつろな瞳で梨花のカードに手を伸ばしていった。

 

「え、えーと……ど、どれがいいかな?……んー……あ♪ け、圭ちゃんそこ……そこすっごくいい♪……も、もっとぉ♪」

 

「み……魅ぃ! 早く! 早く引くのです! みぃ、魅ぃ! 魅ぃ……」

 

初潮も迎えていない幼女の前で、自らの体をもっと気持ちよくしてと要求する淫らな魅音。

さっきまで気丈にレナをかばい、部長として責任感のある顔をしていた彼女が……すっかり堕ちてしまっている。

そのただれた様子に、梨花はとても悲しくなった。

今すぐ助けてあげたいと思ったが、梨花に出来ることはせいぜいその短い腕を出来るだけ前に伸ばし、魅音にカードを取りやすくさせることぐらいであった。

 

『ほら魅音。 梨花ちゃんがあんなにがんばってくれてるだろ? いい加減引いてやれよ……ほら』

 

「ん、圭ちゃん……圭ちゃんがそう言うなら、引く♪ んふふふふ……♪」

 

「…………魅ぃ……」

 

皮肉にも圭一に命令され、ようやく魅音は梨花の手からカードを引いた。

もはやペアがどうとかそんなことはどうでもよく、あきらかに魅音だけはこれが罰ゲームでなくなっていた。

そして魅音の手に引いたカードがおさまったのを見た途端、レナの目つきがギラリと鋭くなったのだった。

 

「ようやく来たね……レナの番が。 待ちわびたよ」

 

レナはイスをズズズっと魅音の方に向け、体ごと魅音に……いや、圭一に対峙した。

もはや魅音は魅音自身ではない。 『圭一に身も心も支配された魅音』がそこにいたからであった。

 

『よぉレナ、ひさしぶりじゃんか。 魅音を助ける良い秘策は思いついたかぁ? くっくっく』

 

「………………」

 

圭一の挑発する言葉にも、レナはまるで動じなかった。

一度ハメられている彼女にとって、彼の『口先の魔術』に動揺することがもっとも危険だとわかっていたからだ。

ましてやこれからレナがしようとしている作戦は、魅音ではなくその圭一に対して行うものなのだ。

この程度の挑発、受け流すのが当然であった。

 

『ん~どうしたレナ? 魅音のおっぱい、すっげえきもちいいんだぜぇ? 生乳がこんなプルプルしててよぉ……』

 

いやらしく笑いながら、圭一はその言葉どおり魅音の乳房を上下にブルンブルンと揺らした。

そのたびに魅音は、あっ、あっとあえぎ声をあげるが、それにもレナは動じない。

魅音には少しガマンしてもらうことになるが、むしろそうして圭一が性的なことをする方がレナにとっては都合が良かったのだ。

 

「圭一くん。 魅ぃちゃんのおっぱい、きもちいいの?」

 

『ん? ああ、最高だぜ。 もう魅音も体は俺の物だしな……くやしいか、レナぁ?』

 

わざと彼女の神経を刺激するような言い方をするが、レナはまったくもって微動だにしなかった。

この時になると圭一にも、レナが何か企んでいるのが薄々とわかっていた。

そしてとりあえず彼は口を閉じ、レナの出方を待ってみることにした。

 

「……圭一くんさ。 そんなに魅ぃちゃんのおっぱいがきもちいいなら……今、とっても興奮してる?」

 

『……ああ、してるぜ。 それがどうかしたか?』

 

「そう……圭一くん、興奮してるんだ。 ……そう」

 

そう静かに言うと、レナは座った状態のままスっと少しだけお尻を浮かし、そのスカートの中に両手を差し入れた。

そしてその中でモゾモゾと、『何かを脱ぐような仕草』をし出したのである。

 

「興奮してるんだよね、圭一くんは。 じゃあ今の圭一くんのおちんちんは……ひょっとしてビンビンなのかな? ……かな?」

 

わざと卑猥な言葉を使いながら、レナはそのままシュルシュルと自分のショーツを脱いでしまった。

ムッチリとしたふとももを通し、セーラー服のスカートの中からその白い布を脱ぎ捨ててしまったのである。

そしてそれを完全に足の先から脱ぐと、『脱いだ』ということを見せ付けるように、そのショーツを机の上に置いたのである。

 

「圭一くん、レナ脱いじゃったよ? スカートの中から……これが出てきちゃったの、見たよね?」

 

もちろん圭一は、それをすぐ目の前で見ていた。 レナがその下半身から脱いだのをたしかに確認した。

間違いなく今のレナのスカートの中は、ノーパンなのである。 その事実に圭一はおもわずゴクっと生つばを飲んだ。

 

「圭一くんさ。 魅ぃちゃんのおっぱいとかお股とか、触ってるだけで満足できるの? 勃起してビンビンのおちんちん、女の子に触ってもらいたいとか……思わないのかなぁ?」

 

レナはとても圭一と同い年と思えないほど色っぽい声を出しながら、そのままちょっとずつ自分のスカートをめくっていった。

ただでさえ短いセーラー服のスカートが、徐々に徐々にめくれあがっていく……。

しかもその中に、彼女は何も穿いていないのだ。 その結果がどうなるか、圭一はおろか、向かいにいた梨花や沙都子にもすぐに予想できた。

 

「レナさん……まさか、そ、そこまでするなんて……」

 

「みぃ、レナの色仕掛けなのです……ちょっとだけよなのです……」

 

二人の言う通り、レナは圭一を『誘惑』していた。

たしかに魅音の体を弄べるのは魅力ではあるが、基本的に彼女は『受けるだけ』である。 されるがまま、ともいえる。

そして今レナがしているのは、自分から誘う行為なのである。 まるで痴女のように彼を誘い、彼のその勃起したものを満足させてあげるとばかりに誘惑しているのであった。

 

「ほら、圭一くん。 早くレナのところにおいでよ? もうおちんちんガマンできないんでしょ……? レナが『抜いてあげる』……♪」

 

抜いてあげる、というなんとも卑猥な言葉に圭一は興奮した。

あのプライドの高いレナが、自分からスケベなことをしてあげると言っているのだ。

もう魅音の体で硬くなったペニスは、そのままズボンの中で限界までビキビキに張り詰めていった。

 

『抜いてあげるって……意味、わかって言ってんのか? レナ……』

 

「もちろんだよ。 レナのお手てでどう? 圭一くんのカタイの、手でおもいっきりシコシコしてあげようか……?」

 

そうしてレナは、空中で何か棒のようなものをシゴくような仕草をした。

それは間違いなく、その行為を知っているなによりの証拠であった。

そのレナの手の動きに、圭一は更にドクドクと興奮していった。

 

「それとも、レナのお口がいい? レナのだ液でヌトヌトしたお口で、おちんちんジュポジュポしてあげようか? 圭一くん……?」

 

そしてレナは、今度はその口をポッカリと開け、その口内に棒を入れて前後に動かすような仕草をした。

それもまさしく、男なら誰でもしてもらいたい……フェラチオをあらわす動きだった。

 

『…………………………………』

 

「くすくす♪ どうしたの、圭一くん。 黙っちゃって……レナのカラダに、もうたまらなくなっちゃったのかな? かなぁ?」

 

ここまでくると、もはや圭一の心は完全にレナに捕獲されていた。

もちろん圭一自身もこれは罠だとわかっている。 わかってはいるのだが……いかんせん、男の素直な欲求には逆らえないものなのである。

彼はもう一度ゴクリと生つばを飲み込むと、魅音の体からようやくその魔の手を離していったのであった。

 

『……レナ。 おまえの要求は……これだろ?』

 

そうして圭一は、魅音が手に持っているトランプのある一枚のカードを指差した。

そしてレナはそれをなんの躊躇もなく、あっけなく抜き取ったのだった。

 

「『ありがとう』、圭一くん。 さあ、レナのところにおいで……?」

 

ジョーカーを表す悪魔の絵をひらひらさせながら、レナは圭一のことをクイクイと指で誘った。

そうして離れていく圭一に魅音はとても寂しそうな顔をしたが……。

 

『少しだけお別れだ、魅音。 すぐに一周して、またそのデカパイを揉みに来てやるからな……』

 

「け、圭ちゃん……んん……♪」

 

そう耳元で囁かれると、魅音はブルブルと体を震わせてある種放置プレイのような快感を味わうのだった……。

 

かくしてレナは、見事に魅音を圭一の手から解放することに成功したのであった。

とはいっても『罰ゲーム』自体が終わったわけではなく、ただその対象がレナに向いたというだけの話である。

自分、ひいては沙都子、梨花、の圧倒的不利はまるでくつがえっていないことは、彼女自身もよくわかっていた。

しかも今の圭一の言葉を聞くに、誘惑されこそすれ、彼はまだ余裕のあるような態度を存分に示している。

これからただレナが圭一を堕として終わり……とはいかないのが、その場の全員が感じたのであった……。

 

 

レナ編へ続く……。                    

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2020年09月17日 16:11