「ボクは……男の子なのですよ……。圭一は、それでもいいのですか?」
頬を染め、ためらいがちに聞いてくる梨花ちゃん。
質問されるまでもない。俺の答えはとっくに決まっている。
「ああ……それでも、梨花ちゃんが好きだ」
出来るかぎりの思いを込めて、返事をする。
「うれしいのですよ……ほんとうに、ボクはうれしいのです……」
目に涙を貯めた梨花ちゃんが、それでも精一杯の笑顔で答えてくれる。
「その笑顔……ずっと俺に見せてくれないか?」
我ながら、言っていて恥ずかしい。だけど、そんな恥ずかしさが、どこか心地よかった。
「もちろんなのですよ……みぃ」
最後の一言を言うが早いか、梨花ちゃんが抱きついてくる。
「ずっと……ずっといっしょなのです」
「ああ。結婚式は、レナ達も呼ばないとな」
そう言って、ゆっくりと顔を梨花ちゃんの顔へと近付けていく。
「もう……圭一はあわてんぼさんなのですよ」
そう言いながらも、目を閉じてくれる梨花ちゃん。
梨花ちゃんの顔が極限に間で近づき、同時に唇に感じるやわらかな感触。それは一瞬だとも思えたし、すごく長い時間だったのかもしれない。
……唇を離した時に見えたのは、梨花ちゃんの笑顔。俺は、何があってもこの笑顔を守らなくてはならないんだ。ひぐらしの声が聞こえたとき、なぜか、ふとそう思った。
最終更新:2006年09月08日 15:06