気がつくと、俺は薄暗くひんやりとした部屋に閉じ込められ、拘束されていた。
「……う、ここは……?」
「気がついた圭ちゃん?ごめんねえ、おじさん詩音のスタンガン使い慣れてなくってさあ。
 ちょっと強めに設定しちゃったみたいだね。」
背中を向けたまま、いつもの部活の時のような明るい声が返ってくる。

――そうだ。俺は放課後魅音の部屋に漫画を見せにもらいに行って、
急に首筋から走った激しい痛みに気を失ったんだ…。
「魅……音、どうして……?」
「――おじさんね、夢を見たんだ。痛くて、怖くて、辛くて、哀しい夢。」
振り返ったその顔。俺の知らない、冷たい光のない瞳……。
「おじさんさ、それが夢じゃなかったって、気付いちゃったんだ。
どこか別の世界で起こった現実だって。……圭ちゃんは覚えてないかなあ。」
「魅音?何言って……」
「バット、痛かったよ。」
「え?……バット?」
「酷い言葉で罵られもしたっけなあ。おじさん悔しくて情けなくて恥ずかしくてさ、
 みっともないけど泣けてきちゃったんだよ。」
コツン……。魅音が寝かされてる俺に一歩近付く。
足音が反響しているってことは、かなり広い部屋なんだな…。
「圭ちゃんは急に変わってしまった。だけどおじさんもレナも、圭ちゃんを信じてた。
圭ちゃんに殴られて、どんなに痛くても。」
――――あ。
……ノイズのかかったような、古い映画みたいな場面が浮かぶ。
俺に殴られても抵抗ひとつせず、俺を呼ぶ魅音の身体が、ぐしゃりと歪んで――。

「思い出してくれたみたいだね。……それじゃあ始めよっか。」
「始めるって、何を……っ!」
魅音の指が制服のシャツのボタンをゆっくり外し、アンダーシャツを捲り上げた。
胸に滑るその細く柔らかな指と手のひらの感触に、びくりと身体が震えてしまう。
「ここはね、園崎家の地下祭具殿。古くから拷問のために作られた場所なんだよ。」
「地下……さいぐでん?……拷問!?」
魅音が触れたせいで一瞬熱を覚えた身体の血の気が、一気に引いてゆく。
地下室……拷問……俺はそれを知っている。覚えてる。
俺の両手足は広げた状態で固定されてるが、指先は固定されていない。
なぜかそれに少しだけ安心した。
指先をかばうように軽く握ってみる。
「あはは、大丈夫だよ圭ちゃん。おじさんは詩音じゃないんだから。
 痛めつけるだけ痛めつけて殺すのを先延ばしなんて、そんな残酷なことはしないしできないよ。」
きゅ……。暖かな手が、俺のこぶしを包み込む。
その温もりに、緊張していた身体の力が抜けた。
――魅音の瞳はまだ光を失ったままだったが。

「俺は……魅音に酷いことをしたんだな。」
「うん、他にもいっぱいあるよ。……あまり言いたくないけど。」
「怖い目に遭わせて、痛みを与えて、哀しい思いをさせたんだな。」
「うん……そうだよ。」
「俺を……殺すのか?自分がそうされたみたいに。」
そうだよな。それくらいしないと割に合わないもんな。
「…………しないよ、そんなこと。」
「…………え?」
「圭ちゃんに信じてもらえないのは辛かった。
 圭ちゃんに女の子として扱ってもらえなかったのは哀しかった。……自業自得だってわかってるけどさ。
 圭ちゃんに殴られて、レナまで殴られてる姿を見ながら意識を失ってゆくのは堪えたよ。
 ……でもね、圭ちゃんを殺したりなんてしない。目の前で圭ちゃんが殺されるのはもっと辛いから。」
目の前で、俺が殺される……?そんな世界もあったのか……。
「おじさんはもう、あんな思いをしたくない。あんな哀しい目に遭いたくない。
 圭ちゃんを失うのはもう嫌だ。何をしても、いくら頼んでも願っても同じ結果なら、それなら、いっそ……!」
「…………っ!!」
魅音の顔が近付いてくる。怖い。何をしてくるんだ?
殺さないし拷問もしない、だけど魅音がここまで思いつめてるってことは、そうとうヤバいことに違いない。
思わずぎゅっとまぶたを閉じる。…………しばしの間。
一瞬だけ唇に触れる、柔らかで暖かな感触。
「…………え?」
恐る恐る目を開ける。今のは、ひょっとして……。
「圭ちゃんには、おじさんのものになってもらうよ。拒否権はないからそのつもりでね。」

ジー……ッ。
ファスナーを下ろされ、素裸に剥かれた俺は、情けないことに反応しちまった。
「う……っ、」
たどたどしいが、それでも自分とは違う柔らかな手に、硬度が増してくる。
「もういいよね………いくよ圭ちゃん。」
制服のまま、下着を脱いだだけの魅音が俺にまたがってくる。
これから起こることを期待してしまう自分が情けない……。
ず……ぐぐ……っ!
ろくに準備もしていない、濡れてもいないそこに、強引に俺を押し込んできた。
「……く、ふぅう……っ!うぁあ……っ、」
辛そうな魅音の声が痛々しい。俺の先走りなんて焼け石に水程度だろう。
俺だってきつくて痛みを感じるくらいだ。魅音の方はもっと酷いだろう……。
俺の上で痛みに耐えながらも動く魅音。
そのたびに重なった部分から鉄の匂い。
ずっと前に、どこかで、確かに、何度も嗅いだこの匂い……。
血の、匂い。

「やだよ、ホントはやだよ……また圭ちゃんがいなくなるのは……。
 裏切られるのも、痛いのも、怖いのも、哀しいのも、失うのも、もう、もう……っ、」
俺の上で、血の匂いを振りまきながら、汗を散らして、髪を乱して、魅音が泣いている。
涙を流さずに、声だけで泣いている。
「なんでもするよ、圭ちゃんがずっといてくれるのなら、おじさんにできることならなんだって……。
 だから圭ちゃん、いなくならないで……ずっとずうっと、そばに……うぅうぅう……っ!」

なんだよ、それならちゃんと言ってくれよ。
こんな痛い思いしなくたって、言ってくれればわかったのに。
――でも、それじゃダメなのかもしれないな。
今まで魅音が味わってきた辛い思いへの不安と恐怖は、言葉だけじゃ拭えない。
強引にでも繋がってしまえば、裏切りなんてないんだと思い込んで、こんなことを……。
抱きしめてやりたかった。頭を撫でてやりたかった。でも両手足は拘束されている。
「魅音……魅音、大丈夫だ。俺はいなくならないから……ずっとそばにいるから……」
「うぅうぅうぅぅう……圭ちゃん、圭ちゃあぁあん……っ!」
魅音には、俺の言葉は聞こえていないようだった。
身体で繋がっても、それは俺の意思を無視した強引な行為だから、
これではダメなんだと魅音もわかってしまったんだ。
きっとまた同じようなことになってしまうと、そのことに気付いて、それでこんな……。
どうしたらいい……?
思い出せ、俺が魅音に何をしたか。どんな酷いことをしてしまったか、その全部を。
どんなに辛くても、あとでどんなに悔やんでもいい。思い出せ――!!

『……れるの?……ナに?!……りがと……』
『…音に……げようかと……ったけど………違うよな』

『……の時、……んたが……った…形を……躊躇なく…に……していたなら……』
『…………が元凶なの。』

渡さなかった、人形。渡せなかった、人形。
魅音が望むのは、証。
それなら――――!

「うぅ……圭ちゃ、圭ちゃんん……うっ、くぅっ……」
「魅音!魅音、人形だ!人形を買ってやる!」
「圭ちゃ……ふえ……?」
「今の俺はまだ知らないが、人形が欲しいんだろ?もらい物を譲るなんてことはしない、
 小遣いは少ないが、バイトしてでも買ってやる!俺自身で、魅音のためにな!」
「圭……ちゃん……」
「だから、俺を信じろ!拘束を解け!こんな繋がりなんかじゃダメだ!
 俺は一方的じゃなく、魅音とちゃんと繋がりたい!!魅音、魅音っ!!」
ありったけの思いを込めて、魅音に届くように、俺は叫ぶ。
頼む。届いてくれ。いつもの魅音に戻ってくれ……!
「魅音、魅音……魅音んんんんんんんっっ!!」
「けー……ちゃん……っ!」
ぽたり。腹部に落ちる水滴。――魅音の涙だ。
輝きを取り戻した、魅音の瞳から流れる、涙……!
「魅音……!」
「ごめんなさい……圭ちゃん、ごめんなさい……!今すぐ、外すから……っ」
カシャン……!拘束台の横についていたらしいスイッチで、俺の両手足は解放された。
「痛かったよね……ごめんなさい……それに、無理やりこんなことまでして、わたし……っ。」
――よし、ちゃんと手は動くな。
「ごめんなさい、ごめんなさ……ひゃうっ!?」
ぎゅうっ。
繋がったまま泣きながら謝る魅音を抱きしめる。
「謝るなよ。……もういいんだ。」
「圭ちゃん……っ、」
暖かい……いつもの魅音だ。頭を撫でてやると、肩の震えも治まってきたようだ。
「魅音、俺はできればこのまま続けたいんだが、こんな場所じゃ嫌だろ?
 魅音の部屋に行ってもいいか……?」
「嫌じゃ、ないの……?私とで、本当に……?」
「ああ。せっかくの初体験なんだから、いい思い出になる場所でしたいだろ?……ここじゃ身体も痛いしな。」
「うん……!」
そっと魅音から俺を引き抜き、ハンカチで血を拭い、魅音に肩を貸しながら地下室を出た。
――大丈夫。俺はもう魅音に辛い思いはさせない。
こんな部屋ももう使われることもない。
そんな未来を作ってやるからな。



魅音の家は今日は誰もいないそうだ。
……まあ、そうでなきゃ勝手にあの地下室には入れないそうだから当然だが。
俺も幸い、父さんも母さんも仕事で留守だ。誰も邪魔は入らない。
俺は辛そうな魅音に代わって、指示通りに布団を敷いた。
「ありがと圭ちゃん。……いたた」
布団の上に腰を下ろし、痛みに顔をしかめる魅音。……かなり辛そうだ。
「大丈夫か魅音?……さっきはああ言ったが、別に今日でなくてもいいんだぞ?
 せめて痛みが落ち着くまで……、」
「やだ。今日が……今がいいの。今なら痛いのもきっと帳消しになる。だから……ね?」
ぎゅっと制服をつかまれ上目遣いで言われてしまうと断れない。
……もとより、中途半端だった俺の下半身もさっきからずっと疼いてる。
「じゃあ……いいんだな魅音?」
「うん。……ありがとう圭ちゃん。」
そっと仰向けに横たわらせ、頭を撫でる。さらさらの髪の感触が心地よい。
魅音もそっと瞳を閉じてその手を受け入れている。
「優しいね圭ちゃん。おじさんは大丈夫だよ。……ちょっと恥ずかしいけど、
 もうあれだけのことしちゃったんだもん。そんなに気を遣わなくても平気だから……んむっ、」
気を遣うなといいながら気を遣いまくってる魅音の言葉を塞ぎたくて、唇を重ねる。
「んんっ……ぁう……っ」
合わさる唇から漏れる小さな声に、下半身に血液が集中するのがわかる。
「ふぁっ!?あむっ……んあ……圭ちゃ……んっ」
制服の上から、胸に触れる。――でけえ……。
びくんと反応する魅音を押さえつけるかのように下を差し入れ、口中をかき回す。
「んん……あぁっ、圭ちゃん……、」
すげえ。制服の上からでも柔らかさが手に伝わってくる。
全部つかもうにも収まってくれない。……ああもどかしいっ。
プツ、プツン……。ブラウスのボタンを外し、ベストと一緒に一気に前を開いた。
「あ……け、圭ちゃんっ……。」
薄いグリーンのブラの中に窮屈そうに納まっている真っ白い胸。
思わず唇を離して見入ってしまった俺に、魅音がおずおずと声をかけてくる。
「あの、おじさんの……みっともないよね、こんな不恰好で……。ごめんなさい。」
「……へ?不恰好って、何がだよ?」
「だ、だって……こんな大きくてさ、胸が大きい女はバカに見えるって、週刊誌で……っ、」
「何言ってんだよ。こんなに綺麗なのにさ。……じかに触ってもいいよな?」
「う、うん……。あ、ちょっと待って?おじさん自分で外すから……っ」
後ろ手で器用にホックを外されたブラを胸の上にずらし、あふれ出てきたボリュームある胸にそっと顔をうずめる。
「ひゃ……け、圭ちゃん、くすぐったいよぉ……。」
戸惑いながらも、魅音は俺を包み込むように腕に抱く。
「聞こえる?……おじさん、すごくドキドキしてるでしょ。」
「ああ。聞こえる……。俺もだから大丈夫だよ。」
「うん。ありがとう……あっ!……んっ……うぅん……っ」
胸を口に含み、先端をちろちろと舐めると、なんとも甘い声を漏らした。
――ああ、なんで俺はこんなにも女の子な魅音に気付いてやれなかったんだろう。
舌で転がし、吸って、甘噛みして。
その度に漏れる甘い声。熱を帯びたように赤くなる頬。
もじもじと両足をすり合わせるように身をよじる反応が可愛くてたまらない。
「……魅音はさ、証が欲しいんだよな?」
「あっ、はぁ、……え?……う、うん、そうだよ……ふぁっ!?」
魅音の白い胸に、肩口に。きつく吸い付き跡を刻みつける。
赤く残るその跡は、2~3日は消えないだろう。
「圭ちゃん……えへへ。嬉しいよ。……ありがとう」
そっとその跡を愛しげに撫で、俺に口付けてきた。
「――ねえ、その……さ、圭ちゃん、あの……っ。」
「ああ、わかってる。俺も……だからさ。」
魅音のスカートを脱がしてやると、下着は魅音の血で赤黒く変色していた。
「あ……っ!やだ……っ」
羞恥に頬を染めながら、魅音は自ら下着を剥ぎ取った。
上は全開のベストとブラウスに、たくし上げられたブラ。
下は靴下のみ。……全裸よりいやらしいな。
「魅音、いきなり入れるとさっきみたいに辛いから……ちょっと足開いてくれな。」
「う、うん…。…ふあぁっ!?や、……あぁ……っ、」
そっと開かれた足の間に顔を入れ、拭き取りきれなかった魅音の血を、綺麗に舐め取る。
中には触れないように、その周囲を、念入りに。
魅音を覆う複雑な部分すべてに潤いを与えるように、何度も、何度も。
「あぁ……ぅ、やぁ……っ。ダメダメダメぇっ、……気持ち、いいよぉ……っ、」
魅音の声が、少しずつ大きく、艶めいたものになってゆく。
その一声ごとに魅音の潤いも俺の硬度も増してゆく。
赤く充血し顔を出した敏感な部分を、唾液を多く含んだ舌で舐め上げると、
「あはぁっ!?あっ、あっ、……んんん……っ!!」
俺の髪をつかみ大きく背をのけぞらせて、達したようだった。

「……ぁ、はぁっ、……はあぁ……っ、」
ぐったりと横たわり、小刻みに身を震わせる魅音。
でもその瞳は俺を見たままで、まだ荒い息でこっちに両腕を伸ばしてきて…。
「圭ちゃん……きて。」
「ああ。……辛かったら言えよ?」
ず……ぬじゅっ……っ!
「ふ……っ、あぁあ……っ!」
俺の先走りと唾液と魅音の潤いと、おそらくさっきの出血とで、さっきよりは抵抗の少ない挿入だった。
魅音の中はきつく、熱かった。俺を離すまいと締め付けてくる。
やべ、すげえ気持ちいい……っ!
「う……あ、ふぅぅ……っ、」
「だ、大丈夫か魅音?……って、痛いに決まってるよな。なるべく痛くないようにするから……うおっ!?」
ぎゅっ。俺の腰に、魅音の両足が絡みついてくる。
「み、魅音……っ!?」
「いいよ、圭ちゃん。いっぱい動いて、気持ちよくなって……?」
「いや、だってその、魅音が……うぅっ、」
ぐいっと腰を押されたせいでいっそう深く挿入されてしまい、思わず俺の腰も快感を求めて動いてしまう。
「あっ、……ふぅっ……んっ、圭ちゃん……っ。」
「悪い魅音、すげぇ気持ちいい……っ。魅音は痛いのに、ごめんな魅音……っ。」
「痛いよ……。痛いけど、嬉しいんだよ……っ。圭ちゃんが気持ちよくなってくれて、わたしも……っ、」
「魅音……っ。」
そのいじらしさに、激しい快感に、俺の動きが早くなってゆく。情けないけど、もう限界だ……!
魅音も終わりが近いことを察したのか、俺にしがみついてきた。
「ホント、だよ……さっきより全然痛くない。……もう大丈夫。わたしはもう、あんな風になったりしない。
 だから大丈夫だよ、圭ちゃん……っ。――――あっ、あはぁあああっ!!」
「うっ、くぅう……っ!」
何度も震えて、俺は魅音の中に、最後の一滴まで放出した。
離そうにも絡みつく足がそうさせてくれなかった。
「――大丈夫だよ。ちゃんと計算もしてるし、命の大切さはおじさんにはよくわかるから。
 おじさんは次期頭首だもん。圭ちゃんとずっと一緒にいたいもん。
 だから無計画なことはしないから。……いくら『証』でも、それはまだ早すぎるからね。」
俺の腕枕で頬を染めながらそう言って微笑む魅音の瞳は、いつものように澄んで輝いていた。
「あ、そうだ魅音。もしよかったらだけど、俺でも大丈夫なバイト、紹介してもらえないかな?」
「うん、お安い御用だよ。任せて圭ちゃん。……でも、本当にいいの……?」
「ああ。頑張って金を貯めて人形買ってやるぞ。魅音にだからな。」
「…………うん!」
証としての人形を渡して、ずっと魅音とみんなと一緒に過ごして。
――いつかそっちの『証』も魅音に与えられたらいい。
穏やかな寝息を立てる魅音を見ながら、そう思った。

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最終更新:2007年07月01日 17:03