月の下……神社の社で僕は独り悶える。
どうせ幽体である僕は梨花以外の誰の目にも見えない。
どれだけ乱れようと、それを恥じる必要も無い。
けれどそれにも拘わらず屋外での行為は、かつて肉を持っていた古き昔のなごりなのか……背徳的なものを訴えてきて……更に僕の情欲を刺激する。
半裸になり、ほとんど衣服が意味を成していない……ただ布をまとわりつかせただけの状態で、獣のように僕は啼く。
「ハァハァ……梨花、そこですそこ……もっと……激しくぅううっ!」
別に梨花がそばにいるわけじゃない。
梨花は沙都子と住むプレハブ小屋の中にいる。
けれど私がこうして悶えるのは梨花のせいだ。
梨花と共有している感覚は味覚だけではない。彼女には黙っているが、本当は性感といった刺激も共有している。
実体を持たない僕にとっては味覚や嗅覚、そして触覚といった感覚は特に得難いものであり、それ故なのか……梨花から伝えられる快感はなおさら鮮烈に感じられる気がする。
僕の秘部は熱く火照り、切ないほどに花開いている。
「あぅっ……あああぁぁっ!!」
花芯をこねる感覚に、背筋が痺れる。
梨花が今、何をしているのか……次にどのような刺激が来るのか分からないというのも、僕の興奮を更に盛り上げる。
「ああっ……梨花……梨花……。そうなのですね、梨花はそこが感じるのですね」
粗く息を吐きながら、僕は腰を動かす。
梨花もまた女として自分のツボを心得ているせいか、巧みに……ある意味では男以上に僕に快楽を与えてくる。
焦らして……焦らして……焦らして、もう一息というところで休みが入って……。梨花が小さく達するたび、僕の体は弓なりに跳ね上がってしまう。
「はぁ……はぁ…………はぁうっ……あぅっ」
欲しい。
挿れてほしい。僕の奥に、熱く固くなった男のものを挿して、滅茶苦茶に突き入れて、子宮の奥まで突いて……何度も、何度も中を掻き回して、温かい精液で僕の中を満たして欲しい。
けれど、刺激の元が梨花である以上、それを望むことは出来ない。永遠に乾きを満たすことは出来ない。
とても苦しくて、切なくて……狂おしいほどに気持ちいい。
苦痛ならばまだ耐えられた。けれど、快楽には耐えられない。逆らえない。
終わりの無い拷問。
「あぅっ……あぅあぅあぅあぅううううぅぅっ!!」
ああ……これで何度、僕は身をよじらせたのだろう?
もはやそれを覚えてはいない。
ビクビクと痙攣しながら、僕は呟く。
「梨花……もう、勘弁して下さいなのです。もう……止めて欲しいのです」
けれど、それを梨花に言うことは出来ない。梨花の寂しさを埋める行為を奪うことも、辱めることも出来ない。
そして、私は嗤う。
「梨花……もっとして欲しいのです。もっと、もっと僕は感じたいのです」
けれど、それを梨花に言うことは出来ない。この快楽から逃れることも出来ない。梨花に言うことで、この快感を得る機会を失うような真似も出来ない。
ここにいるのは、誰からも忘れられているただ独りの女。
そして僕は独り涙を流す。

―END―

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最終更新:2007年05月13日 21:17