もしかして、これを知られるのを恥ずかしがっていたのか?考えて、圭一は顔が熱くなるのを自覚していた。
感じてくれているのが嬉しくて掬い取っては塗りたくり、くすぐり。圭一の指が少しずつ魅音の緊張をほぐしてゆく。
「はぁ……、ぁぅ……ん…………っ」
少しずつ溢れる液体の源泉を辿るように、狭いそこをかき分けて。
魅音が痛みを感じないように、許容範囲まで入れては抜き、指を濡らしては押し込みを何度も繰り返した。
指を根元まで差し入れると、魅音は腰を震わせて大きく息を吐いた。
「はぁ……っぁ、ぁあ……」
その表情に、痛みの色はなく。様子を見ながらゆっくりと出し入れを始めた。
胸を責める事も忘れ、次第にスムーズになる指の動きに、圭一は陶酔してゆく。
ちゅ、くちゅ、ちゅ。
きゅうっと指を締め付けてくる感触が、もうとっくに興奮しきっている圭一のモノに更に力を与える。
はぁ、はぁ、はぁ。
この先への期待に、息が荒い。
「ぁ、ふ、ふぁ……っ」
魅音が恥ずかしそうに、控えめに鳴く声に、自然と手の速度が上がる。
あ、なんかこの光景見た事があるような。こういうの、なんて言ったっけ……。
こんな状況で脳裏を掠めた感覚を反芻しながら、圭一は息を弾ませて、指を蠢かせる。
その度に、魅音もまた肩を震わせて熱い息を零した。
「圭ちゃん……」
俺の下で。熱の篭った声が、俺を呼ぶ。
……はぁ、はぁ、はぁ。
その声を聞くだけで、俺の荒い息が尚更荒くなる。
「もう、……もう無理ぃ……っ」
……くらっ。
魅音の口から漏れる滅多に聞けない甘い声に、懇願する声に。
思わず意識が遠のきそうになる。
それをぐっと堪えて。
「魅音……っ」
バンっ。
俺はいい加減我慢も限界で、魅音の顔の横に乱暴に手を付いた。
一筋の汗が額から顎へと伝い、落ちる。
「ふぇ……。……けい、ちゃぁん……」
ゆっくりと、魅音の潤んだ目が、俺を見上げる。
俺は赤い顔のまま、魅音へと顔を近付けて……軽く、口付ける。
そのまま唇を吸うと、魅音の中が、お返しとばかりに俺の指を締め付けて来た。
いつの間にか先程までの、一度通った道筋を追うようなおかしな感覚は消えていた。
にゅる、ぬ、ぬる、ちゅぷ。
指を少し速めて抜き差しさせると、淫らな水音が、俺の鼓膜と理性を打つ。
そのまま舌を差し入れて口も責めた。
「ん、んん、ん……っ」
魅音のくぐもった声に興奮して、俺は待ちきれずにたぎったモノを取り出して。自分の手で、慰め始める。
それはもう、とっくに先走りで濡れていて魅音に入りたくて震えている。
普段やっているように手でしごくと、不覚にも腰が震えた。
……ヤバい、いつもよりも全然いい。
予測以上の快感が、背筋を走る。いつもと違うのは、想像ではなく目の前で乱れている魅音の姿。
その声、熱、柔らかさ、甘い香り。何より、その表情。
その存在を感じるだけで、それだけで、こんなに感じてしまう。中にも入れてないのに先を感じるが、もう手は止められない。
圭一は頭の中で自分のモノと指を重ね合わせ、夢中で指で魅音の中をかき回した。

「や、ぁ……っ!」
一層強い刺激に堪らず離れた口から、引いた唾液が互いを繋いで。それが消える前に、もう一度奪う。
「ふ、む、む、……ん~…!!」
ぢゅ、ぢゅぷ、ぐちゅ、ちゅ、ちゅ。
その音が、圭一の手を加速させる。
で、出る、出る、出る……っ!!
全感覚を圭一の一挙手一投足に支配されて、圭一の中に引き込まれて逃げる事も出来ない魅音の舌を軽く噛む。
圭一の背が震えると同時に、びくりと、魅音の身体も震えた。
びゅる、るる…っ。
俺の先から弾ける様に放たれたどろりとした精液が、魅音のお腹に掛かり、その無垢な雪原のような白い肌を汚してゆく。
ぞく、ぞくん。
「は、はぁ、はぁ、み、魅音……っ」
その淫らな姿に興奮して、圭一は自分の中の滾りを最後の1滴まで搾り出すように擦り上げる。
圭一の声にうっすらと瞼を上げたと同時に、残滓が自分に向かって放たれるのが、魅音の目に映った。肌を打つ、熱い飛沫。
どくん。
「………ぁ……ぅ……」
それに、自分の奥底からの衝動が身体を貫いて、魅音はぶるりと身体を震わせた。

……だめだ、こんなんじゃ全然足りねえ……っ。
半裸のまま、陶然として荒く呼吸をする度に、魅音の大きな胸が上下に揺れ、震える。
萎える事のない分身を掴んだまま、俺はズボンのポケットを探って、コンドームを取り出した。
まだまだ先程の余韻に浸ってとろとろと溢れる魅音の入り口を見ながら。
急かす気持ちを堪えつつ、それを付ける。
「………魅音っ」
閉じた脚を大きく開かせると、魅音が驚いたように身じろぎをした。
「……ぇ、…けい…ちゃ…はぁ、はぁ……ぇえ、な、何……っ」
もう終わった物と思っていたのか、無防備になっていた魅音は俺の腕に強制的に身体を開かされ。
その恥ずかしい格好に赤くなって、慌てて俺の胸を押そうと手を伸ばすが。
ぬぬぬっ。
俺の方が早かった。先端が、魅音の中にゆっくりと沈み込む。
「ぁ、あ……ぅ、ま、待って、まだ、まだ…………っ」
最後まで言わせずに、そのまま根元まで、侵入させた。
まだまだ経験も浅くてきついそこは、入れただけで終わってしまいそうな程、気持ちいい。

うぁ、これ、いい……っ。
入れただけで、動いてもいないのに。先程の余韻が圭一を襲う。
俺が全部を魅音にぶちまけたように。俺が魅音を欲しいと思っているように。
魅音の中もまた、痙攣するように脈打って、俺の全てを余さず受け止めようとしていた。
魅音が俺を欲しいと思ってくれている。
「魅音……っ」
そう思うと、尚更愛しさが込み上げて来て、胸が熱くなった。
動きたい気持ちを堪えて、魅音の責めを味わう。
「は、はぁ……っ」
魅音は突然の圭一の質量に、胸まで貫かれたような錯覚を覚えていた。
その息苦しさに浅い呼吸を繰り返し、身体の力を抜こうとする。
逆説的だが、それが尚更、無意識の内に圭一を締め付けてしまう。
圭一は焦れる気持ちを堪えながらも、先にイッてしまうと絶対に味わえないその快感を、堪能する。
「魅音、……お前の中、すっげえいい。分かるか?ひくひくして、締め付けて来てるぜ」
かぁあああ。
圭一の言葉に魅音はもうすっかりと赤い顔で、泣きそうな表情を見せる。
「そ、そんな事な……っ」
びく。
何かを言いかけた魅音の言葉を遮って、腰をぐん、と一つ強く押し付けた。

脊椎を這い上がる快感に誘われて、そのまま強く腰を動かし始めると、魅音は苦しそうに眉根を寄せる。
「け、圭ちゃ、はぁ……ま、待って……!ホントに、本当に、苦しい、から……っ」
終わりのない快感に、魅音が息も絶え絶えに、圭一に訴える。
強い快感は、まだ不慣れな魅音には、きついようだ。
そうだ。思わず暴走したが、魅音も、俺と同じ程度の経験しかない。
俺は魅音の紅潮した頬を撫でて、目じりに浮いた涙を親指で拭う。
「悪い。……今度はゆっくり、するからな……」
軽く、鼻先にキスをして、安心させるように笑いかける。
「……っ、ん、……はぁ……っ」
胸のそこから熱い息を吐きながら、魅音は不安げな表情のまま、それでも一つこくりと、小さく頷いた。

ずず、ずずず。
ゆっくりと、ぎりぎりまで引き抜いてから。
ぬぬぬ。
再び、静かに沈めて行く。根元まで入ってしまうと、魅音の肩がびくりと跳ねる。
一回出した分、今回は少しは持ちそうだ。俺は奥まで貫いたままで、ゆっくりと身体を揺する。
「ぁ、や……っ」
魅音も、新たな感覚に身を竦ませて震えた。
俺の胸について、握り締められた手に力が篭るのが分かる。
ずずずず、ぬぬぬぷっ。
そして再びゆっくりと抜き差しする。緩やかな刺激にも関わらず、額から汗が伝う。
「ぁ、ぁあ、……っふ、ぅぅ…、……」
魅音は息とも声ともつかない熱っぽい吐息を零して、俺を受け止めようとしている。
その姿が、翻弄される細い身体がいじらしくて、震える唇に軽くキスをした。
思いっきり動けない焦れったさを紛らわそうと、手を柔らかい胸に指を這わせて。
硬く立ち上がった先端を指の腹でこしこしと、擦る。
「ぁぅ、や、それ、……っ」
魅音が微かに何かを訴えたが、構わずに掌全体で廻すように押し付け、撫でる。
「んん、ふぅ……ぁ、あぅ……」
魅音が甘い声を上げ、締め付けをきつくする。
こうしていると、普段気付かなかった魅音の反応がダイレクトに俺に返ってくる。
前から思っていたが、胸はやっぱり弱いようだ。……大きいのに、感度がいい。
緩やかに揺すりあげる度にぷるんぷるんと揺れて誘惑してくる、その魅惑的な膨らみに誘われるように、
圭一は胸に顔を埋めた。その、男にはありえない未知の世界の柔らかさを肌で感じながら、
顔を押し付けて、少し汗に濡れたその白い肌に舌を這わせる。
ずぬ、ぬぷぬぷ。
そのままゆっくりと腰を前後に動かしながら、魅音の胸にむしゃぶりついた。

「……」
魅音の手が、そっと、俺の髪を撫でる。
胸の先端を咥えたまま視線だけを上げると、荒く息を付きながら、魅音は潤んだ瞳で俺を見上げている。
「はぁ……はぁ……圭ちゃん……つ、辛い……?」
圭一が口を離すと、そこから覗く赤い舌から、すっかりと立ち上がった胸の先端へと唾液がつぅ…っと、糸を引いて、掻き消える。
その直視し難い、恥ずかしい光景に魅音はめまいを覚えた。
「?何がだ?辛いのは、お前の方だろ?」
不思議そうな顔をする圭一に、魅音は赤くなる。
「そ、そうじゃなくて……ぁ、あのね……、もう、いいから……っ」
そこまで言って、魅音は言葉を止めた。
分かってない顔をしながら首を傾げる圭一に、魅音は恥ずかしさを堪えながら、仕方なく口を開く。
「……が、我慢してるみたいだし、……その、す、好きにして……ぃぃ…ょ…」
消え入りそうな声で真っ赤になった魅音の誘う言葉に、思わず、腰が震えた。
……くそ。可愛いヤツめ!
こいつ、この状況でその言葉の持つ意味、分かってない。絶対に分かってない。断言する!
「魅音……っ!」
そんな殺し文句を前にやりたい事は沢山あったが、悔しい事に圭一自身がもちそうになかった。
ただ、強く腰を押し付ける。
ずん。
「ひゃう……っ!」
身体の芯まで響く一撃に、魅音がびくりと身体を跳ねさせる。
ずん、ずず、ずぷ、じゅぷ。
動きが速くなると、さっきまでの余裕は嘘のように消えうせて、腰の辺りを痺れるような感覚が襲う。
うわ、も、もう少し、もう後ちょっとだけ……!
唐突に終わりが見えて、圭一は堪えるように、思わず手で弄んでいた魅音の柔らかい胸を握りつぶす。
ぎゅう。
「ぃっ………!」
突然与えられた痛みに苦しげに表情が歪むが、魅音はそれを拒みはしなかった。
圭一は限界がすぐそこにあるのを感じながら、少しでも長く魅音の中を感じていたいと腰を突き上げる。
「ぁ、ぁぅ、ふぁあっ……!」
魅音の方も余裕がないらしく、その声も、自然と大きくなる。
「ぁあ、あああっ!や、あぅ、……け、圭ちゃん、圭ちゃぁあん……!!」
魅音の手が俺を求めて、きゅうっと背を抱きしめる。それが何より嬉しくて、俺にあっさりとトドメを差した。
「は……っ、ぅ、ぁ……っ!魅音……!!」
せり上がって来る射精感に追われるように、最後に思い切り突き上げて。
暴発寸前のモノで魅音の奥を擦り上げると、ぶるっと、お互いの身体が大きく震えた。

一つに溶け合うような感覚の中、互いの視線が絡み。
どちらともなく、唇を合わせていた。


その後、結局お風呂も一緒に入って、魅音がのぼせるほど色々したが、それはこの際ご想像にお任せする。

二人して一つの布団に滑り込んで。
「………」
「………」
一緒に眠ると言うのは流石に初めてで、あれだけ色々したにも関わらず妙に照れる。
魅音も同じなのか、ただ寄り添うだけで、黙り込んでしまう。
暫くしてから、魅音の方から、沈黙を破った。
「………………圭ちゃん」
「ん、なんだ……?」
魅音が、頭を俺の胸に預けてくる。
それこそ、事の最中以外には全く甘えてくる事などない魅音にこんな事をされると、どきりとする。
女の子としての自分に自信がなくて、やたらと照れ屋で、本当に欲しい物を欲しいと言えない魅音。
その内、普段から甘えてくれるようになるんだろうか。

「……ごめん。これからは、もっと勉強、頑張る」
実は結構気にしていたのか、魅音が小さな声で囁く。それが可愛く見えて、圭一は魅音の頭を撫でた。
「おう、そうしてくれ。毎回こんなんじゃ、身が持たん……あ、いや、でもこれはこれで……」
圭一の言葉尻に、先程までの行為を思い出して魅音が真っ赤になった。
がばっと身体を起こして距離を取る。
「へ、変な事考えるなぁ、ばかぁーー!!そ、そもそも!ちょっとは圭ちゃんのせいでもあるんだからね!?」
「はぁ?な、なんでだよっ!?」
突然の魅音の責任転嫁に、圭一は驚いて声を上げる。
「だ、だって、だって……!つ、付き合い出してから圭ちゃんといると、すぐ、へ、変な事ばっかりするしっ!
勉強しようとしても、一人になったら、……ど、どうしても、色々思い出しちゃうしっ、集中なんて出来る訳ないでしょー!!」
コイツ一体、この二ヶ月程、何してたんだよ。
「……あ、あれ?……えーと」
た、確かに、さっきそんな事を思った気がする。え、あれ、俺達が付き合い始めたのも二ヶ月程前?
若干以上の心当たりに、圭一の視線が泳ぐ。
……いや、その。確かに最後までしたのは確かに最近だけど。
まあなんだ。……それだけが全てじゃないって言うか、そこまで至るための積み重ねが大事だという事で。
日々たゆまぬ努力をした、……ような気も、しなくも、なくも、なくも、ない。
「う、いや、その……」
基本的に、こいつはあまり俺のおねだりを拒否しない。
俺が望めば、困った顔をしながらも、泣きそうな顔をしながらも、うろたえながら、戸惑いながらも。
真っ赤になって、苦手なりに頑張って応えようとする。
それがまた可愛いから、ついついちょっかいを掛けてしまうのだが。
「………………」
今日だって、ついさっきだって。魅音は多少無理しても、俺の意思を受け入れようとする。
その懐の深さに、……いや、俺への想いの深さ、というのは流石に自惚れだろうか?
確かに、そういった部分に甘えていた事は否定しない。しないが―――。
色々と言い訳を考えていた圭一は、顔を赤くして、唇を尖らして上目遣いに睨んでいる魅音の。
素肌に俺のシャツという扇情的な姿に実は既にドキドキしながら、無理だろうなとは思いつつ。
「…………も、もう少し……我慢します」
その無言の訴えと可愛い仕草に、あっさりと折れた。


が。
後に、その言葉が実行されたかどうかは定かではない。

了。

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最終更新:2007年04月27日 20:06