「あぅあぅあぅあぅうううぅぅ~~~~梨ぃ~~花ぁ~~~、もお、やめへ……くらはいなのれすううぅぅっ! ひっく」
「うっさいわねええぇっ! ぜぇんぶぅ……あにゃたが……わるいんだからねぇっ!? まったくもう……死ぬかと思ったわよっ!!」
そう、ことの始まりは私が祭具殿を漁っていたら、ちょっと面白げな文献を見付けたことにある。
だって「一口飲ませたら相手はもう自分しか見えない」みたいなことが書いてあったのよ? どう考えても惚れ薬でしょ? 試してみたくなるのが人の性ってもんじゃない。
そんなわけで、羽入に内緒で作ってみることにしたのだ。
材料集めにはなかなか苦労したけど、幸いお金の掛かるようなものはそう無かった。


ここで少し時間は遡る――。
その日の夕方。
私は古出神社裏の、雛見沢を一望出来る場所へと圭一を呼び出した。何故なら、そこは私にとってお気に入りの場所でもあり、あまり人目につかないところでもあるからだ。
どうせなら、告白は少しでもロマンチックな方がいいでしょ?
百年生きた魔女とはいえ、それくらいの乙女心はまだ私にも残っている。
「どうしたんだ梨花ちゃん? 急に呼び出して、しかも出来るだけ早くって……」
はぁはぁと息を切らして、圭一がやってくる。……うんうん、いい感じいい感じ☆
そりゃそうよね。圭一の家からここまでは自転車でもそれなりに距離はあるし、あの石段を走って登るのも大変だもの。
「圭一、汗だくなのです。はい、これはジュースなのです」
そう言って私は「惚れ薬」を入れた小瓶を圭一に渡した。
「随分と用意がいいんだな? 梨花ちゃん」
「ここに来る頃には圭一が疲れていることぐらい、お見通しなのですよ。にぱー☆」
「そうなのか? まあ、何にしても助かったぜ。じゃあ、遠慮なく頂くよ」
…………よし、飲んだ。
そのとき、私は勝利を確信した。
「それで梨花ちゃん? 大切な話って何だ?」
「みー、それなのですが……。圭一には何か変わったことがありませんか?」
「変わったこと? ……って、あれ?」
よーしよーし、効いてきた効いてきた。調合も完璧ね。
私はぐっと拳を握りしめた。
「なんだこれ? 梨花ちゃんを見てると……こう……」
「みー? ボクがどうかしたのですか?」
圭一が全身を赤くして、私に近付いてくる。
「圭一?」
「…………梨花ちゃん。ごめんっ!!」
突然、がばっと圭一は私を抱き締めた。
私はあまりの展開の速さに眼を白黒させたけど……嫌なはずがない。私は喜んで圭一の胸に顔を埋めた。
「梨花ちゃん。……俺、梨花ちゃんのことを……」
「……みー?」
圭一の心臓が早鐘のようにどきどきしてる。
もちろん、私もだ。
私の頭の上で、圭一の吐く息が荒い。
「圭一?」
私は顔を上げ、圭一の目を見詰めて……。
………………………………って、あれ?
私の額に冷や汗が流れた。
ちょっとおおおおおぉぉぉぉっ!? 圭一の目がイっちゃってるんだけどおおおぉぉっ!? ひょっとして、さっきからの荒い息って……そっちの意味でのハァハァ?
「梨花ちゃん……」
「……な、何? 圭一?」
「俺、俺……もう我慢出来ないっ!」
「みぃいいいいいぃぃぃぃぃっ!?」
ちょっ……ちょっと圭一っ!? どこ触ってるのよ? お尻を撫で回さないでっ! ああっ!? ひょっとしてお腹に当たってるこの固いのって圭一のオットセイ☆? ひぃいいいいっ! そんなの擦り付けないでえええぇぇっ!?
「みぃっ!?」
や……やだ。耳……耳を舐めないで。ってえぇええぇっ!? なんか私の服、脱がし始めてるしっ! 嘘っ? パンツの中にまで手を入れてきたっ!?
…………えーと、ひょっとしてこれ…………かなり、ピンチ??
に……逃げられそうにないし……。
ひょっとしてこのまま、本当にこの場所で私、圭一と……?
恐る恐る、上目遣いで圭一の目をもう一度見てみる。
「け……圭一? その……ボク……」
「何だい梨花ちゃん? 大丈夫だぜ、安心してくれ……優しくするから……」
うわぁ~~。めちゃくちゃイイ笑顔っ!? しかも歯が光ったっ!?
「あ、あははははははははははははははは……」
乾いた笑い声が私の口から漏れた。
も…………ダメだわ…………。

ふぉんぐしゃっ!!

「……きゅう」
不意に鈍い音が響き、圭一が倒れる。
「あぅあぅあぅあぅうううううぅぅぅぅっ!! あ……危ないところでしたっ!!」
倒れた圭一の背後に、フライパンを持った羽入が立っていた。


――と、まあこんなわけでその場は助かったんだけど……。
ああ、ちなみに薬の効果は圭一が気絶しているうちに、古出神社で解呪しておいた。ま、お約束通り圭一は自分が何したか覚えてないでしょうね。
「どこが惚れ薬よっ!? 超強力な催淫薬じゃないっ!! 何のつもりでぇあんなもにょ作ったのよっ!?」
こうして夜中、私は沙都子が寝た後にやけ酒を呑んでいるわけだ。
無論、八つ当たりだというのも自覚はしているつもりだけど。
「ひっく……梨花が……悪いのれすぅ。あれは……適度に薄めへちゅかうのれすぅ」
「カルピスじゃにゃいんだからっ!!」
「あ~~ううぅ。告白時にはすっごく薄目に使うと成功率アップ、ご無沙汰時には濃い目に使うと新婚当時のほやほやに戻れる、一本で多種多様な使い道が出来るお得な薬なのれふよう?」
「うっひゃいっ!!」
ほんっとーに危ないところだった。
もしあのままだったら、私は圭一にがっつんがっつんオットセイ☆で攻められまくって、本気で壊れてたかもしれない。いくら何でもこの体でそれは無理ってものよ?
「あぅあぅ、梨花……もうこれ以上は……かんれんひてくはひゃいなのれすぅ」
「なーに言ってふのよ? 酔う感覚が嫌とか言いにゃがら、結構気持ちよさそうじゃにゃい」
「でも……でも、本当に辛いのれふぅ」
まあ、確かに羽入の息もあがっている。舌を出してハァハァいっているのを見ると、本当に辛いのかもしれない。
目の焦点も定まっていないし……。
「はぁ……はぁ…………………あぅううぅ」
「ちょっと……羽入?」
不意に羽入がパジャマを脱ぎ始めた。どうやら酔っててよっぽど熱かったらしい。
でもいくら何でもパンツ一枚って………………ええええっ!?
「は……羽入っ!? あんた?」
あろう事か、羽入はパンツまで脱ぎ始めた。
ひょっとして…………羽入って脱ぎ上戸だったの?
それで昔何度もイタイことやってしまって、それ以来お酒が嫌になったとか……?
私は大きく溜め息を吐いて、俯いた。
これ考えるの本当に何回目だろ? つくづく、こんなのが古出家の始祖だなんて、恥ずかしくなってくるわ。
「あ……あぅ……ふぅんっ☆」
へ? ……何? この声?
慌てて羽入を見ると………ちょっとあんた何してるのっ!?
「あぅ……ああぅっ。あぅっ」
…………羽入は、素っ裸のまま、私の目の前で……自慰にふけり始めていた。
ごろりと横になって、左手で胸を揉みながら、右手で秘部をまさぐっている。
その目は恍惚の眼差しで……。
「こ……こらっ! 羽入、あんたこんなところで」
やめさせようと、私は急いで羽入の下へと駆け寄る。
せめてお風呂場とか……そういうところでしなさいよ。って、そんな問題でもなくて……。
「うふふふふ☆ 梨ぃ~~~花ぁ~~~~っ」
「ちょっと? ……羽入っ!?」
横に座った途端、私は羽入に腕を掴まれ、引き寄せられた。
そのまま裸の羽入に抱き締められる。
あ……あの? 羽入?
熱を帯びた羽入に瞳が私に近付いてきて……。
はい? ひょっとしてこの唇に当たっているこのむっちりとした感触って……。
「ん。あぅあぅ」
羽入の唇が私の唇から離れて、ようやく私は状況を理解した。
私のファーストキスが……百年守ってきたのに……よりによってこいつなの?
一瞬、頭が真っ白になって……。
全力で首を横に振り、そんな考えを打ち消す。
そうよそう……こんなのは事故よ事故、全然カウントに入らないんだからっ!!
でも、ああ……何か涙出そう。
「って……こら羽入、放しなさいっ!」
「ヤな……こった……なのですよ? うぃっく」
そう言って、羽入はくすりと笑った。
え? あれ? …………なんだろこの既視感。
するすると羽入の腕が……手が私の背中を撫でて下りていって……私の腰に……そして、パンツごと私のパジャマのズボンを脱がしてくる。
「こ……こら羽入。冗談はやめなさい」
でも羽入はやめてくれない。
私は太股までズボンを下げられてしまった。
お尻とあそこが露出する。
「ちょっ……ちょっとおっ!」
あまつさえ、羽入は太股を私の股に入れてきた。
「へっへっへー。ダメですよぅ梨花ぁ? あんまり……さあぐと沙都子が起きちゃいます。……そんれもいいのねすか?」
お……おのれ羽入。どこぞのAVそのままなことを言ってきてええぇぇっ!
羽入は嬉々として私のパジャマの上着を脱がし始めてくる。
私も私で酔っているせいか、思うように体が動かせないし……。
ああ、今度こそもうダメだわ。
「あはははははははははははははははははは」
私はまた、乾いた笑いを漏らした。
「さあ。覚悟するのてふよ梨花? だぁい丈夫れふ。ちゃ~んと、優しぃくして……ひっく……あげるのれす」
羽入が私のパジャマを脱がし、私の上半身も露わになる。
「あぅあぅ。やっぱ……りぃ。梨花の胸は……可愛いのです」
「ううう……うっさいわね」
ひゃうっ!?
羽入が私の乳首を舐めると、私の背筋にぞくりとしたものがはしった。
私のお腹の上に羽入の胸が当たって……う、結構あるわね、羽入のくせに……。
ちょっ……とおっ!? そんなところ……。
「んんんっ!」
「んふふふふふ。梨花もぅ……ここは……感じるみたいれしゅね?」
そう言って羽入は細やかな指使いで私の秘部を撫で、クリトリスを弄った。
「くぅ……うううっ」
ふ……不覚だわ。
蕩けた瞳のまま、羽入は私の脚に自分の秘部を擦り始め、ぬるぬるとした液体に私の脚はまみれた。
そんな羽入の顔は、本当に気持ちよさそうで……。
羽入の声が高くなっていく。
「あ……はぁ……あぅあうっ……うううっ」
そして羽入は身を震わせ……どうやら達したようだった。
「さあ。……もういいでしょ? 羽入? さっさともう寝るわよ」
そう、こんなのは事故よ事故。
さっさと眠って忘れてやるわ。
「あぅっ? なぁにを言って……るのれしゅか?」
…………はい?
「今夜は…………寝かしませんれすよぉ?」
あの……マジですか?
いや、この目は本気だわね。
あはははははははははははははは……。
も、どーにでもなれ。
ああ、きっと私も酔っている……。


翌朝。
あーもう、自己嫌悪ったらないわ。
羽入の奴、発情しまくりで本気で寝かせてくれないし、しつこいし……。
私がシャワーを浴びて戻ってきても、羽入は気持ちよさげに寝息を立てていた。
まったくこいつは、さんざんっぱら人のことを弄んでおいて……。
怒りを堪えながら、羽入の体についた色々な体液をティッシュでふき取り、服を着せて布団の中へと放り込む。
ひょっとして羽入がお酒を飲むのを嫌がっていたのは、酔うと体が疼くとか……そういう理由からだったのだろうか?
もう眠れそうにないけど、私も自分の布団に潜り込む。
とりあえず、起きたら覚悟しときなさいよ? 羽入。


私はこれで酒をやめました。
しかし、代わりに特別辛いキムチの開発を始めました。
あの催淫薬はそのうちまた使うかもしれません。
以上。

―END―



TIPS:お仕置き

「何だか今日の羽入ちゃん、朝からずっと顔が赤いけど、どうしたの?」
「ああ、それにしょっちゅうもじもじしてないか? 羽入に何かあったのか? 梨花ちゃん」
「みー? ボクは知らないのですよ? おトイレでも我慢しているのではないですか?」
そういって私はあくびをし、ちらりと羽入の様子を見た。
(苦しい? 羽入)
(あぅ……あぅあぅあぅあぅ)
ま、そりゃそうよね。朝からずっとローターを仕込んでるんだもの。
(さあ……覚悟しなさいよ羽入? お仕置きはまだまだこれからなんだから)
(あぅあぅあぅあぅううううぅぅぅっ!!)
私にしか聞こえない羽入の悲鳴を聞きながら、私は一人ほくそ笑んだ。

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最終更新:2010年03月05日 22:37