「…っは、ふ… 圭一くん、大丈夫…?キツくない…?」
「……う、あ、……キ、キツくないぜ、レナ…」


はぁはぁと荒い息づかい、互いにぴっとりとくっついた身体。
…俺は今、レナと2人でクローゼットの中にいた。
なぜクローゼットかって?そいつは野暮な質問だぜ。
正しくは、「閉じ込められている」……と言った方が正しいのかもしれない。
なんでこんな事になったのか。
それは、数分前の出来事―――――



+++++



「はぅ、かぁいいよー!おっもちかえりぃ~☆」
「…おいおいレナ、はしゃぎすぎるなよ。転ぶぞ。」

その日は、いつものように皆で遊んだ帰り道だった。
沙都子と別れ梨花ちゃんと別れ、そして今さっき魅音と別れ。
レナと別れようとした時、レナが家とは逆方向に行こうとしたので聞いてみた。
レナ曰く、「すっごくかぁいいもの」をこの前見つけたらしく、宝探しに行くとのこと。
でも、もうすぐ日が暮れて危ない。だから俺もついていくことにしたのだ。


「かぁ~い~いもっのっはぁ~、 ぜぇ~んぶレナが!おっ持ち帰り~♪」
がちゃがちゃと音を立て、恐らく自分で作ったであろう歌を歌いながらゴミ山を漁るレナ。
それを見て俺はふっと笑みを浮かべた。…ほんと、変な奴だよなぁレナって。
変だけど、優しくて、甲斐がいしくて、女の子らしくて……そんなところも可愛く思える。
って、何を考えてるんだ俺は。
自分で言ってて(思ってて?)恥ずかしくなったので、頭をぶんぶんと振り回した。

「あっ!見て見て圭一くん、これすっごくかぁいいよ~☆」
「ん?どれどれ?」

レナに話しかけられ、ひょいと覗きこむ。
そこにあったのは使い込まれた古いクローゼットだった。
白いペンキ塗りで、クマのシールが貼ってある。ところどころ落書まである。
俺にしてみたら全然可愛くもなんとも無かったが、レナにとってはそれが物凄く「かぁいい」ものらしい。

「レナ、小さい頃、こういう狭い所に入るの好きだったの。
……ふふ、なつかしい!」
そう言って、クローゼットの中に入るレナ。
…子供っぽいその仕草にまた笑みを零す。
確かに俺も好きだった。机の下とか、押入れの中とか…
子供って、やたら狭い場所が好きだったよな。
どれどれ、っと俺も中を覗き込んでみる。
―――と、その時だった。


「おわっ!?」
「はうっ!?」

俺は何かに足が引っかかり、思わずクローゼットの中に倒れこんでしまった。
…ゴミ山は足場が悪い。たぶん、空き缶か何かにでもつまづいたのだろう。
クローゼットは、安定された平らな地面に置かれているわけではない。
いくつものゴミが重なった不安定な場所にあるわけだから、当然のごとくその衝撃にぐらぐらと揺れた。
そして、そのまま… 俺とレナを入れたまま、ばたんと倒れ…ゴミ山の斜面を滑り出した!!

「ごっ! がはっ! ぐおっ!」
「ひゃっ! はうっ! きゃふっ!」

がんっ、げんっ、ごんっ、ががっ、がごん!
クローゼットは縦に横に揺れ、盛大に音を立てながら確実にゴミ山を滑り落ちていく。
そのたびに頭を打ちつけ、俺とレナは悲鳴ともつかない奇声をあげた。
そして、ようやく滑り終わったのだろう―――最後にどしん!という大きな衝撃が来たあと、し…んと静寂が戻った。

「…いッ、つつつ…! レナ…、  ぶ、無事か…?」
「はう、いたたた…。 レナは無事だよ。 圭一君は、だいじょ…ひゃっ!?」

ばちり、と目が合う。…近い。顔が近い。正に目と鼻の先。
驚いて慌てて飛びのこうとしたが、したたかに後頭部をぶつけてしまった。
狭いがゆえに、離れることが出来ない。
俺はレナを押し倒すような形になっていた。クローゼットが倒れたせいだ。
こう、レナの顔の横の辺りに両手をついて…レナの膝が…あう、俺のオットセイ☆に微妙に当たる…。
あまりの恥ずかしさに目線を反らした。
きっとレナも真っ赤だ。
…でも、仕方ない。動けない。ごめん、と一言漏らした。

どうやらお互いに怪我はしていないらしい。
ところどころに打ち身がある程度だが、大したことはない。
しばらくの沈黙のあと、レナがぷっと吹き出した。


「……っふ…ふふふ、あは、あははははっ!すごかったね今の!
ジェットコースターみたいだった! くすくすくす!」
けらけらと笑い転げるレナ。
…のんきな奴だ。
でも、そのおかげで少し緊張していた気持ちがほぐれた。
再び目線を下ろす。
…目が合った。やっぱり顔が近いが、さっきほど恥ずかしくない。

「こんなジェットコースターがあっても絶対乗りたくないぞ…いてて」
「あはははは…。レナは乗りたいかな、かな!うふふふふ!」

こんな状況にも関わらず、レナは元気だ。
…むしろ、喜んでいるようにも見える。
とにもかくにも今は脱出しなければ。…きっと自分の後ろにあるものがクローゼットの扉のはず。
本来クローゼットは中に入るものでは無い。
よって、中から開けようと思っても、取っ手も何も付いていないはずだ。
ならば手段は押すしかない。

「なあレナ。…俺の後ろの壁を押してみてくれないか?開くかもしれない。」
「うん、分かった。…ん、しょっ…」

レナが俺の後ろの扉を開けようと手を伸ばす。
届かなかったのだろう、レナはもう少し身を乗り出した。
それによってレナと俺の体はぴったりと密着する。
………う、これは、なかなか………
「圭一くん、ダメ…ん、お、押してるけど……開かない…!」
「…え?あ、ああ!
開かないのか!それは良かっ… ってえぇええ!?」

開かない、すなわち脱出不可能。
どうやら何か重い物がクローゼットの扉の所に圧し掛かっているらしい。
…レナは華奢だ。こんな白い細い腕でこの扉を開けれるはずがない。
「ちょ、ちょっと待てよ。俺も背中で押してみるから、レナももう一回押してくれ。
せーの、………うおおおおおおおおっ!!」
もう一度試す。
…ダメだ。開かない。
このままでは脱出出来ない。
まさか、このまま飢え死に…?
………という心配もしたが、それは無いだろう。
俺が行方不明になったなら、きっと両親達が気付くはず。
そしてレナも一緒に行方不明だという事に気づき―――魅音あたりがきっとダム現場にいると推理してくれるはず。
せいぜい長くても村総出で探せば1日くらいで見つかる。 うん、きっとそう信じたい。
それより俺がもっと心配なのは――――この状況だった。

「…っは、ふ… 圭一くん、大丈夫…?キツくない…?」
「……う、あ、……キ、キツくないぜ、レナ…」

キツい。非常にキツい。………俺の理性が。
だって、考えてもみろ。気になる女の子が目の前にいて、自分の体の下で、はぁはぁと息を荒げてる。
なんだか襲ってるみたいだなーとか思っちゃったりしちゃったり…ははは。
うっすらと汗がにじむ。 微かに香るいいにおいが鼻をかすめる。

…まずい。

まずいまずいまずいまずいCOOLになれ前原圭一!
何か萎える事を考えろ。そうだ大石を思い浮かべるんだ!
大石がメイド服を着て俺にご奉仕する様を思い浮かべるんだ――――!

「け、圭一君大丈夫?顔真っ青だよ、だよ?」
「…う、は、破壊力がありすぎた… なんでもない」

大分落ち着いた。大分萎えた。
うんよし大丈夫これで…とも思うが、きっとまたレナの姿を見ると復活するんだろう。
なるべくレナの方を見ないように気をつける。
と、レナがまたくすりと笑った。


「…おかしいね、レナって。
こんな状況だって分かってるけど、全然怖くない。むしろ嬉しい。
こうやって、圭一君が近くにいるの感じるとね、…なんか、安心しちゃうの。
あは、あはは!何言ってるんだろうね、レナ!
あはははは、は… け、圭一くんッ!?」


…それが理性の限界だった。
ダムが崩壊するように、ガラガラと音を立てて崩れていく。
俺はたまらずレナを抱きしめた。
なんだってコイツはこうも可愛い事を言うのかなあこの状況で…!
抱きしめたと言っても、せまいクローゼットの中だから、レナの上に倒れたと言った方が正しいだろうか。
俺とレナは、ぴったり重なり合うような形になった。

「け、けけけけ圭一くんッ!どうしたのかな、かな!?
しししししんどいとかっ!?えーとえーと、は、はう~~!」

ぷしゅう、と頭から煙を出すレナ。顔は真っ赤だ。
そんなレナの言葉も聞かず、俺はただその温もりを感じていた。
とくん、とくん…と心臓の鼓動が聞こえる。
あったかい。そして柔らかい。いいにおいがする。
ああ、俺はやっぱり、コイツのこと………
尚も騒ぐレナに向かって、俺は一言ポツリと呟いた。
「……………きだ……」
「え?」

がばっ、と起き上がる。
また後頭部をぶつけた。…カッコ悪い。
そして、次ははっきりと、一言一句漏らさないように………言った。


「…好きだ。レナ。こんな状況で言うの、おかしいけどさ。
…たぶん、ずっと前から、………好きだった。」


「け、圭一く… ん、」
レナの言葉が言い終わる前に唇を塞ぐ。
返事をされる前にこんな事をするなんて、間違ってるのは知ってる。
でも、…止められなかった。
ゆっくりと唇を離す。もっとしたいという気持ちを抑え、レナを見た。

「…レナ、俺の事、…嫌か?」
「そんな事ない…、そんな事ないよ…!」
ふるふるとレナが首を振った。
俯いて、肩が微かに震えてる。

「レッ、レナもね、ずっとずっと、圭一君の事が好きだった!
大好きだったの…ッ!」
レナが俺の背中に手を回す。そして引き寄せるように抱きしめた。
かすかな嗚咽が聞こえる。…レナは泣いていた。

「ぅ、け、圭一君、好き… っ、 大好き!」
「…俺も。 レナ、好きだ。愛してる」

再び唇を重ねる。
今度は噛み付くようなキス。
ねっとりと深いキスをして、お互いの感触を充分に楽しんだ。
「ふ、んぅ… は、っ…!」
「レ、ナ… ん、  …む…」
びくり。レナの身体が震えた。…俺の手が、レナの服のスリットの中に入ったからだ。
それを制止しようとレナが俺の手を掴むが、いかんせん俺の勢いは止められない。
そこは少しだけ濡れていた。

「だ、だめ、圭一く、そこは… ひうッ!?」
「レナ、レナ… 可愛い、レナ」

いやいやをするレナに、ちゅ、ちゅ、とキスの雨を降らしていく。
尚も手は止まらない。レナの下着の中に手を入れ、そこに直に触れた。
くちゃ…、と粘着質な音が聞こえ、それにレナは顔を真っ赤にする。

「ひゃあっ!?っあ、んん…っ!圭一君…、やぁ…っ!」

無遠慮な俺の手が、レナの秘部を犯していく。
レナの声が可愛くて、色っぽくて。…もっとその声を出させようと俺は手を動かした。
最初は少しだけ濡れていたそこも、次第にとろけるように熱を帯びていく。
指を動かす度にねちゃ、ぐちゃりと卑猥な音が響いた。

「あっ、…んんん…っ…や、圭一く、…っ!
…そこ、ばっか、…やめ……っ…ああああぁぁあっ!!」

レナがびくんと軽く痙攣した。
…これが俗に言う“イく”ってやつだろうか。
レナの喘ぐ姿を見て、俺は下半身に血が集まっていくのを感じた。
…今やもう俺のオットセイ☆は大暴走。早く入れたいと言わんばかりに雄々しくその存在を主張している。

「は、はぅ…、圭一くんの…レナの膝に当たって…」

レナが瞳をとろんとさせて、俺のオットセイ☆を見つめる。
もう限界だった。

「レッ、レナぁぁあっ!」
「きゃっ……!」










「圭ちゃん?レナ?ここにいるの?」
がこっ。












音がしたのと同時に、差し込んでくる光。
聞き慣れた声が聞こえた。
……一体何が起きたんだ?
俺は首だけを動かして後ろを見た。
そこにいたのは………………………魅音。
おお、やっぱり俺たちがここにいるのを見つけてくれたのか!
「た、助かったぜ魅音!早くここから出し……」
「…………ねぇ圭ちゃん。…………何、してんの…?」


へ?と俺がすっとぼけた顔をする。
魅音が指差す方向を見た。
魅音が指しているのは…レナ。
俺の下で…、顔を赤らめて荒い息をしながら………服の乱れたあられもない格好の…レナ。
「はぅ…」なんて言ってる場合じゃないぞ、レナ。


まずい、この状況は… 明らかに… 俺がレナを…




「…村の連絡網で2人が帰ってきてないっていうから、皆で必死に探してたってーのに…
声が聞こえたと思ったらこんなとこで、………な、なな何やってんのぉおおおおっ!!??」
「う、いや待て誤解だこれは、閉じ込められて…いや誤解じゃないかもしれないけど、…う、うわぁああああああああ!!!」






どうかお願いです。
これを読んだあなた、誤解を解いてください。
それだけが俺の願いです。







「うっ、っく…… ひっく、圭ちゃんね、レナと… レナとあんな事してた、ひっく、ぅ…」
「お姉……」




新たな惨劇の予感。


=終=

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最終更新:2007年04月02日 14:43