亀田×(ムース・タルト・シュー)×魅音。

亀田がエンジェルモート制服の魅音にケーキを乗せて食します。
エロ行為は少なめですが、作者の判断では要年齢制限。
終盤ラブラブ展開なので、他カップリング派の方は回避してください。





結局のところ、魅音は詩音に甘かった。

風邪を引いているというのに、少年野球チームのマネージャーをしに行くといって
きかない詩音の代わりに、魅音はベンチで記録付けをやっている。
なぜか隣には亀田がいた。
「んー、6-7でうちの勝ちっすね。」
「いやー、6-6で引き分けでしょ?」
本当は6-5で雛見沢ファイターズの勝ちだと言いたかった魅音だが、現在の試合の
流れからは引き分けが濃厚だった。
「いくらなんでも、タイタンズの逆転勝利はないでしょ。」
大抵のことなら、魅音は人並み以上に器用にこなせる。
日頃たいして野球に興味のない彼女ではあったが、試合の流れはほぼ掴めているつもりだった。

亀田が、どこか優越感を含んだ笑みを浮かべる。
「魅音さん、今日は臨時でしょう? メンバーの実力が掴み切れてない。」
「はぁ? それを言うならあんただって、毎回タイタンズを見に来てる訳じゃないでしょ。」
「まあ、俺はシロートじゃありませんから。」
かちんときた。
「…へぇ、言ってくれるじゃない。」
不敵な笑みに、亀田は鼻先で笑って返す。
「言ってくれてるのは、魅音さんの方じゃ? 左腕の亀田を舐めてもらっちゃ困ります。」
「ふーん? …賭ける? 引き分けだったら、高校で一日、語尾に『だにゃー』を付けること。」
ぷちぷちとニキビの浮いた体格の良い男子高校生が、語尾に『だにゃー』。
えもいわれぬ破壊力のある絵面だった。
「いいっすよ?」
亀田はあっさりと了承する。

「じゃあ、俺の読みが当たってたら…モート服でケーキ皿になってください。」
「…はいっ!?」
魅音は声をひっくり返らせて、亀田の方を向いた。
「…くっ、ははは。」
亀田はおかしそうに笑い始めた。
「いやー、Kの言う通りっすね?」
にやにやと笑いながら魅音を見下ろす。
「強気に見えて、その実、メンバーで一番逆境に弱い。って。」
魅音の顔がどんどん赤くなる。
(か、からかわれた…?)
正に『こんな奴に…くやしいっ!』という心境だ。
「何の話? おじさん、別に、動揺とかしてないけど?」
頬から赤みが抜けていないことに気付かず、余裕のある口ぶりを装っている。
そんな魅音の態度に亀田の笑いが納まるはずはなく、彼は腹を抱えて肩を震わせた。
「…いーよ、お皿でしょ? ケーキでもプリンでも盛りつけてやろうじゃないの。」
意地になった小学生のような口調に、亀田が少々笑いを引っ込める。
「いや、いいっすよ? そうだなー、俺が勝ったら、魅音さんも語尾に…。」
「ケーキ皿で結構!」
代案を出そうとした亀田を、魅音がやけっぱちに拒絶した。

試合は魅音の読み通りに進んだ。
終盤にさしかかった段階で、スコアボードは6-5。
「あ、一応聞いとくけど、このまま終わったら、罰ゲームはお流れでいいよね?」
「っすね。まあ、こっちが勝ちますけど。」
「にゃーにゃー言わせるの、すっごく楽しみー。」
「皿になってもらうのは、流石に気が引けるんすけどねー。」
次が最後の一球。
打席に立ったタイタンズ選手は真剣な顔でピッチャーを睨んでいる。
(ホームランはない。ヒットがそれて、キャッチ、ランナーが一人滑り込み)
カン!
魅音の眼前で、彼女が予想した通りの光景が展開された。
ファイターズ選手が、その身体能力を活かした早さで走り込み、球を捕らえ…。
(嘘!)
投げようとして取り落とした。
慌てて拾い上げ送球したが、タイタンズの選手がホームを踏むのには間に合わない。
「あの5番の投げ込み練習が足りてないのに…気付いてなかったんすね。」
落とすとまでは予想しなかったけど、と亀田が呟く。
「ファイターズは、技術より身体能力で乗り切ってますからね。選手の癖を掴んだら、あとは…。」
「日曜は?」
「…はい?」
「次の日曜、私の家でいい? ケーキはあんたが用意して。」
魅音はまっすぐに前を見つめたまま、亀田を見ようともしなかった。
耳まで真っ赤で、そんなに恥ずかしいのなら断ればいいのに、と彼は思った。

部活外の事とはいえ、一度決めた罰ゲームを覆すのは魅音の呻吟が許さない。
(た、たかがお皿じゃない。有田焼にできることが、私にできないっていうの!?)
女体盛り、という単語が頭をかすめた。
ぼふっと頭から煙が出た…ような気がした。
(だ、だ、だ、大丈夫。さいわい婆っちゃは出かけてるし、目撃される危険は…)
広い家に二人きり、という言葉が頭をかすめた。
(い、いや、いくらなんでも興宮の人間が園崎家で狼藉は…)
…念のため、詩音を呼ぼうか? 考えたところでチャイムが鳴った。
タイムアップ。
(…確かに、私って逆境では頭の働かなくなるタイプなのかも)
抵抗感を振り払うように、魅音は勢いよく玄関に向かった。

「…。」
ケーキの箱を手に、亀田は呆然としていた。
「い、いらっしゃい…。」
エンジェルモートの制服に身を包み、頬を染めてうつむいている魅音に…。
「って、そんな格好で出てくるもんじゃないっす!」
挙動不審にあたりを見回し、逃げ込むように魅音の背を押した。
「な、なんでもう着替えてるんすか?」
「え? だ、だって、来てから待たせるのも悪いかなって。」
「そんなところに気を回さないで欲しいっす!」
この服装を指定したのは亀田なのに、と釈然としないものを感じながら、
魅音は彼を客間に案内した。

エンジェルモートの制服は、きわどいデザインの割には肌の露出は少ない。
胸元から肩、背中上部、スカートとニーソックスの隙間、あとは手首から先ぐらいだ。

うつぶせにして背中に乗せるか、いっそ両手で受けてもらってお茶を濁すか。
亀田が考えていると、魅音がウエットペーパーで胸元を拭き始めた。
プラスチックの容器には大きく『除菌』と書いてある。
思考が停止する、という感覚を亀田は生まれて初めて理解した気がした。
胸元を拭き終わった魅音は、卓に上体を横たえた。
「ど、どうぞ。」
…胸元を皿にしろ、という意思表示だろう。
(いやいやいやいやいやなんで普通にそこなんすか!?)
亀田は雛見沢分校の罰ゲームの熾烈さを甘くみていた。
スクール水着で下校。犬耳首輪付きで商店街までお買い物。そういったことが
ごくごく標準的に行われている中で『皿になれ』と言われて、手を差し出して
終わらせよう、などと考えるはずがなかった。
「…あの、早くすませて欲しいんだけど。」
魅音が両目をぎゅっと閉じて、恥ずかしそうに訴える。
「え? あ、はい…。」

どうしてこんなことになってしまったのだろう?
亀田は、なんだか自分の方が羞恥系の罰ゲームを受けている気分だった。
「…あの、タルトとムースとシューがあるんですが、どれに?」
「そ、そんなの自分で決めてよ!」
緊張からか、魅音は叫ぶように言った。
そして、小さくうめいてから、ささやくように続ける。
「…でも、柔らかいのにしてくれると、嬉しい。」
亀田はケーキ箱の中を凝視し、チョコレートのムースケーキを選択した。

小さな丸形にふわふわのスポンジケーキを敷き、こっくりとした茶色のムースを
流しこんで固めたケーキだ。薄いハート型のチョコレートが飾ってある。
それは、言ってみれば、魔性のゴスロリ少女。
触れれば壊れてしまいそうな繊細さで、その実、男を虜にして放さない濃厚さを持っている。

亀田はケーキからフィルムとホイルをはがし、魅音の胸元に置いた。
「んっ!」
魅音は小さく震え、うっすらと目を開けて置かれた物を確認した。
呼吸に上下する胸の動きに合わせて、ムースケーキがふるふると揺れる。

亀田は眼前の光景に、電撃に打たれたような衝撃を受けていた。
「少女 on the 少女…。」
感嘆の声が口をつく。
理解した。
自分は野球のエースになるために生まれてきたのではなかった。
少女に少女を乗せるために生まれてきたのだ。

時間よ止まれ、お前は美しい。

亀田の恍惚の時間は、他ならぬ少女の声によって破られた。
「…あの、食べないの?」
「た、食べ、食べても?」
「…なんで疑問系? 早く、食べちゃってよぉ…。」
懇願するような声音に、亀田の脳髄を衝撃が駆け抜ける。
早く少女を食べてしまえと、少女が急かしている。
某フリーカメラマン並に清らかな体を保有している彼にとっては、もはや禁断の領域だった。
「…い、いただきます。」
スプーンを取り、魅音の肌を傷つけないように注意しながらゴスロリ少女に差し入れる。
すくい取った物を、そっと口に運んだ。
亀田の口中でゴスロリ少女が溶けた。深い苦みと、それを補ってあまりある、重みを
感じさせるまでの甘さ。息苦しいほどのカカオの芳香が亀田を蹂躙する。
『…ねえ、あたしって美味しいでしょ?』
否定の言葉が返る可能性を微塵も考えていない、傲慢なまでの自信。
彼女の味は、それを許すだけの力を持っていた。

彼女に誘われるまま、亀田は大胆にスプーンを進めた。
「ん…。」
バランスの崩れたケーキが、ぺちゃり、と胸の上に倒れ込む。
「ひゃん!」
冷たく濡れたムースの感触に、魅音が悲鳴を上げた。
魅音の上に倒れたゴスロリ少女は、体温にとろけて肌の上を流れ始めた。
「ふぁ…やぁ。」
流れる感触に、魅音はくすぐったそうに身をよじる。
倒錯的な光景に、亀田は感動すら覚えた。
魅音を汚していくゴスロリ少女、それを今から汚す自分。
(俺、生まれてきて良かったっす!!!)
欲望に身を任せて、亀田はチョコレートムースケーキを完食した。

ほう、と安堵のため息をついた魅音の胸元に、亀田が口を付けた。
「え? ええええええ!?」
ぴちゃぴちゃと無心に、彼の舌がチョコレートムースの流れた跡をたどっていく。
「…あ、あのさ、お皿を舐めるのは行儀悪いんじゃないかなって、んん、ん…。」
先ほどのムースとは違う、熱くぬめる感触。
男の顔が間近にあり肌を舐められる、という初めての状況に、魅音はパニック寸前だ。
「大丈夫、誰も見てないっす。…お代わりしても?」
「…い、いよ。」
部長として、ここは立派に皿を勤め上げようと思った。
(平常心、へーじょーしん!)
心の中で繰り返す。
(私は有田焼! 備前焼! 美濃焼!)

亀田はバナナクリームタルトを取り出した。
大きな丸いタルト型で焼いた台に生のスライスバナナとクリームを詰め、六等分に
切り分けた形状をしている。
それは、言ってみれば、カナダの片田舎の牧場で育った純朴な少女。
バナナの断面の点々はさながら少女が気にしているソバカスのようで、控えめな
ホイップクリームの縁取りは、お下げに結んだ白リボンのようだ。

丸いタルトを放射状に六等分すると、その先端角度は60度である。
60度。
それは、計算し尽くされた角度といってもいい。
「ん…。」
タルトの先端角は、魅音の胸の谷間にぴったりと納まった。
(…It's、パーフェクト!)
はじめからそこに存在していたかのように、魅音とタルトは見事に調和していた。

角度60度の奇跡。
亀田は震える手で、スプーンを掴んだ。
バターの香るクッキー生地。バナナの甘さはどこか気弱なところがあり、融和すべき
クリームもまた、初雪のように儚い口溶けだった。
バナナの香りとクリームのミルク香が、少女のあどけなさを際立たせる。
『…あの、わたしで満足できますか?』
そうであればいい、と願うような、どこまでも自信のない態度。
自分の持つ魅力に気付いてすらいない、そんな彼女が愛おしい。

「ん、ぅう。」
しっとりと湿ったクッキー生地と、スプーンの冷たい感触に魅音は翻弄された。
(え? なんで、私、たかがケーキに…)
タルトの乗せられている箇所に意識が集中する。
もう、タルトのことしか考えられない。
「あ…さくって、してる…。」
「この店のタルトは最高なんすよ。」
口元に付いたクリームを拭おうともせず、亀田が答えた。
彼はタルトの陵辱が終わると、クッキー生地の欠片が落ちたままの胸元に
シュークリームを乗せた。
柔らかな感触に、魅音が切なげなため息をつく。

シュークリームは、言ってみれば…。

亀田は、そこに少女の姿を見いだすことができなかった。
シュークリームは少女ではない…これは、神の食べ物だ。
天恵のごとく、彼は理解した。
…あるいはどこからか、毒電波が飛んできたのかもしれない。

完成されたフォルム、内包するクリームの重さを感じさせない軽やかなシュー皮の質感。
振りかけられた粉砂糖の白は、神聖さの象徴だ。
店頭では何の変哲もなかったシュークリームが、雛見沢に来る事によって聖別された。

亀田の喉がごくりと鳴った。
これはもはや神域だった。
神域を、侵す。

恐怖と興奮に、亀田は震えた。
魅音が潤んだ目で彼を見上げる。
彼女は何も言わなかった。けれど亀田には、彼女の望んでいることが分かった。
その手にしたスプーンで、脆いシュー皮を突き破れと。
限界まで張り詰めているカスタードを、胸元にぶちまけろと。
ほとんど命令するような切実さで懇願していた。
応えるように、亀田のスプーンが閃く。
「ああっ!」

切り裂かれたシュー皮から、一呼吸遅れてカスタードがあふれ出た。
「ひゃ、あ、つめたぁ…。」
流れる速度はムースの比ではない。
とろとろと肌を覆われる感覚に魅音が喘ぐ。
スプーンでカスタードをすくっていては、到底間に合わない早さだ。
二口目で、亀田はスプーンを捨てた。
胸の上に覆いかぶさり、シュークリームに口をつける。
カスタードをすするじゅるじゅるという音に、魅音は顔を赤くした。
「は、あう…、やあ。」
シュークリーム越しの口の動きに、びくりと反応してしまう。
中身をすすり終えると、亀田はシュー皮をくわえた。
シュー皮が引っ張られて、カスタード越しに肌の上を擦る。
「あ! ふぅ、ん…。」

シュー皮を完食すると、亀田は魅音の肌の上のカスタードを舐め始めた。
魅音は手を口に押し当てて、声を殺そうとしている。
「ん…んん。」
亀田はカスタードの広がった範囲にくまなく舌を這わせた。
胸の上のから鎖骨のくぼみ、首のあたりまで…。
魅音の肌はどこもきめ細かく柔らかで、マシュマロに似た舌触りだった。
「…ふう、ごちそうさまっした。」
「ふえ? …あ、おそまつさまでした。」
カスタードを舐め終わった亀田は体を起こし、魅音の手を取って卓から下ろさせた。

しばしの沈黙の後、高揚から冷めた二人の顔が赤く染まった。
「お、おそまつさまってのも変だったね私が作ったわけでもないのに…。」
魅音は糖分の残る胸元をウエットペーパーで拭きながら、早口で言った。
「い、いや、結構なお手前で。」
亀田も訳の分からない感想を口走る。
「あ、ゴミは…。」
「捨てとくから、そのへんに置いといて。」
「はい。じゃ、じゃあケーキも食べたんで、これで…。」
「あ、あの!」
魅音の声が、帰ろうとした亀田を引き留めた。
「はい?」
彼女は向こうを向いたままだったが、耳の色から未だ赤面していることは疑いがない。
「…あの、亀田くん、この服…好きなの?」
質問の意図が掴めず、亀田は困惑する。
こんな気恥ずかしい状況下で、好きだと即答するのも気が引けた。
「…嫌いでは、ないっすね。」
「じゃ、じゃあ。…これ着ていったら、また、お皿にしてくれる?」
絞り出すような魅音の言葉に、亀田はノックアウトされた。

<終>

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2007年03月30日 06:15