月の光も差さぬ森の奥。古手梨花は木に吊り下げられていた。
「みー、一体何をするのです。降ろして欲しいのです!」
 なみだ目で訴える。両手は縛られている。黒い網目に束ねられた糸だ。
いや、それは糸ではない。髪だ。長いおさげの髪。うねうねと動いている。
「あらあらそれはこちらの方の台詞ではないかしら泥棒猫さん♪」
 お温和な笑みを浮かべている。見るものをほんわかとさせる。安らぎと
慈愛。癒しのイメージ。だけど違う。縛られた長いおさげの髪で梨花を
吊り上げる。優しい顔の奥に鬼が見える。
 赤坂雪絵。そう、赤坂衛の妻である。

 雛見沢の夏。赤坂一家がまた遊びに来た。娘の美雪もここが気に入ったみたいだ。
衛も普段の激務をのんびりとした田舎で過ごす事で疲れを癒そうとしていた。
 始めは近くの民宿に泊まろうと考えていた。けど、梨花から、
「それならうちに泊まるといいのです。みんな大歓迎なのです」
 と、言ってきた。普段住んでる倉庫ではない。本家を解放して、
赤坂一家を歓迎したのだ。
 あの、熱い一日。綿流し祭が始まる前に行なわれた攻防は今でも忘れられない。
梨花は運命の連鎖から解き放たれたのだ。その一端をになったのは赤坂衛だ。
園崎家で捕らえられ連れて行かれようとしたときに、颯爽と表れた衝撃と感動
は今でも忘れられない。思い出すと胸が熱くなる。その後、行なわれた綿流し祭で、
妻の雪絵の前でからかったのは冗談交じりの部分もあるが一抹の寂しさも含めている

自分の奥に赤坂衛に対する想いは確かにある。けれど、それは幸せな家庭をぶち壊して
までのし上がろうとする物ではない。純粋な感謝と憧れ交じりの発露なのだ。
他意はない。幾度となく赤坂衛も大切な妻を無くしてきた。ならば、掴み取った幸せを
大切にして欲しい。そう願うだけだ。

──なのに。

「この仕打ちは酷いのです」
 梨花の言葉にも雪絵は笑みを崩そうとしない。ただ、優しく見ている。
「──この雛見沢にも鬼の伝説があると聞きました」
 ゆっくりと雪絵は言った。
「村人には鬼の血が流れてるそうね」
 どういうイトがあるのだろう。分からない。
「梨花ちゃん。あなたはその古き血筋を伝える一家だとか」
 笑みの形が三日月になる。ぞっとする。
「ふふっ、あなたも同じなのよね。──だから、惹かれたのかしら?
 衛に」
 梨花の目が見開く。幸恵の言ったいる事はつまり──
「私もよ。私の一族も鬼の血に連なるの。つまり混血。聞いた事ない? 
遠野の事を?」
 ふふふっ、と笑みを浮かべる。梨花は分からない。聞いたこともない。だが、
この地にオヤシロさまが降臨している。ならば、他の地に同じような不可思議
な存在があったとしてもおかしくはない。理解は出来る。
「だから、何で、こんなことをするんです?」
 分からないのはその理由だ。梨花は赤坂一家にどーこーする気はない。
たまに衛をからかうかもしれないがそれだけだ。
「鬼というのね、思いが強いの。だから鬼なの。あなたは確かに今は
そう思っている。私たちを歓迎してくれている。だけど、成長したら
どうかしら? 大人になって、大きくなったら抑えられない。
そういうものなの」
 だからね、今から教えてあげる。衛が誰のものかを。
 梨花の頭の中に何かが響いた。同時に変化する。梨花を縛る髪の一部が
ほどけてほつれる。そのまま、梨花の体の一部に覆いかぶさる。
「──ああ、いや」
 梨花は今、大きめのパジャマを着込んでいる。だぶだぶでシンプルな紫色だ。
そのパジャマの中に髪が進入してくる。こそばゆい感覚が襲う。
肌に髪が走る。サラリさわりと撫でる。くつぐったい。びくりと跳ねる。
「さて、どうしようかしら」
 あごに手を当てて、雪絵は考え込む。今日の夕飯のメニューはなんにしようかしら?
と、同じ思考だ。
「痛いのはさすがにかわいそうよね」
 ちょっと、眉をひそめる。
「だから、快感に溺れさせましょう。優しく味わってあげますから安心してね」
 にっこりと微笑む。同時に髪は動く。
 髪の先端で撫でる。耳たぶを、ほおを、鼻を、唇を首筋を、乳首を、わき腹を、
へそを、太ももを、ふくらはぎを撫でる。同時に。
「あはっ、ははっ」
 こみ上げてきたのは笑い。こそばゆいから。ちょろちょろと撫でる。つんつんと
突付く。それだけだ。あくまで繊細に、あくまで優しく撫でていく。
「梨花ちゃんの性感はどこかしらね」
 わき腹だけを撫でた。びくっとした。へそを撫でた。勢いよく腹がひかれた。
太ももを撫でた。「……あっ」少し声が洩れた。頬を撫でた。顔がそむけられた。
耳たぶを撫でた。顔が赤く染まり、唇をかみ締めて耐えていた。首筋を撫でた。
さらに唇をかみ締める。雪絵の笑みが深くなる。乳首を撫でる。薄い胸板全体を撫でる。
毛筆のように。
「あっ、はぁ、あぁ」
 嬌声がこみ上げる。嫌悪も拒否感もない。ただ、反応してしまう。硬くて柔らかい
髪の毛先に反応してしまう。
「ふーん」
 雪絵はそれだけを言うと腕をくんで梨花を見つめる。パジャマの中でもぞもぞと
髪は蠢く。特に胸の辺り。髪の先端で乳首をつつき、胸を撫で、尖る乳首を髪で
縛って締め上げる

あっ、いゃっ、やぁっ、きゃっ、ダメ!」
 熱い息とともに梨花は反応する。拒絶する。こみ上げる快楽。流されそう
になる。だけど、耐える。それでも決壊しそうになる。
 髪は編み上げられる。唇のように。吸い付いていく。幼い梨花の乳首に。
音がした。空気を吸う音が。引っぱっていく。梨花の薄い胸板を強く。
「痛い、痛いのです」
 なみだ目で訴える。でも、聞こうとしない。その代わり優しく吸われて吐息
が洩れる。
「もう、服はいらないよね」
 雪絵がそういうと、髪は丁寧に梨花のパジャマのボタンを外す。はらりと
脱がされる。上半身が夜気にさらされる。
「でも、寒くないよね」
 髪で胸を揉みあげながら雪絵は言った。薄い胸板を髪が沢山束ねられて揉んでいく。
「小さくて揉みがいがないわね」
 自分の胸を軽く手で触りながら雪絵は言った。
「……うるさいのです。そっちだって魅音や詩音より無いのです。きっと、レナや沙都子
に追い抜かれてかわいそかわいそになるのです」
 梨花の言葉に雪絵は自分の胸を強く揉みながら、うふふふと笑う。同時に吊り下げられた
梨花がするすると地面に降りていく。けど、腕は縛られたままだ。
「面白い事を言うわね。そうね、協力してあげる。梨花ちゃんの胸が大きくなるように
たっぷりと揉んで上げるね」
 雪絵は梨花に近づくと直接胸を吸い、乳首を捻る。髪ではなく、暖かい手や熱い唇の
感触に梨花は身をよじる。
「ほんと、小さい胸ね。けど、梨花ちゃんは大きくなるのかしらね。このままでも十分可愛いけど」
 乳首をこねられ、突付かれ、舌でぺろりと舐められる。身をよじって逃げようとしても
逃げられない。ただ、もてあそばれる。
「知ってる? こういうのも気持ちいいのよ」
 雪絵は自らの服を脱いで胸をさらけ出す。小ぶりだがきれいな形をしている。
自らも興奮してるのか雪絵の乳首もそそり尖っている。
「……あっ」
 梨花は声を上げる。雪絵が近づき、自らの胸を梨花の胸に押し付ける。
柔らかい感触がする。そのままこする。二つの乳房が触れ、乳首をぶつけ合う。
「……どう? 結構いいでしょう」
 雪絵の頬は上気して赤くなる。陣わりとした熱が胸の奥に互いに生まれる。
「まどろっこしいところもあるけど、これがいいのよ。女の子の体は柔らかくて気持ちいいから」
 梨花は答えない。ただ、喘ぎ声を漏らすだけだ。
「そういえば、キスはしたことはあるのかしら」
 いうやいなや、雪絵はキスをする。そのまま梨花の口の仲を舌で嬲る。唾液を流しこみ、
舌と舌を絡める。梨花はただ、翻弄されていた。

「さて、そろそろメインデッシュね」
 雪絵はぺろりと自分の指を撫でる。視線は梨花の下半身に向けられる。長袖の
パジャマズボンを身に着けている。けど、今までの責めですっかり足に力はない。
髪でズボンは脱がされる。シンプルな白いショーツをはいている。びっりょリ濡れている。
太ももまでつたりてかっている。
「あら? あらあらあらはしたないわね」
 髪がショーツに向かう。筋にそってなで上げる。
「あぅっ」
 雪絵の指も向かう。秘裂というより筋を優しく撫でる。まずはふち。熱い感触が
ジンワリと来る。くちゅくちゅと音がする。嬲れば嬲るほど梨花の秘裂から液は
洩れでてくる。
 べったりと梨花の液にまみれた指を舐めた。
「そろそろ直接もいいわよね」
 ショーツを脱がせる。つーと液が垂れる。
「まずは髪で遊びましょう」
 秘裂の豆を髪で縛り捻る。髪の毛数本で秘裂を撫でる。幾本かを奥に入れる。
そのまま動かして嬲る。もはや、梨花はただ、声を上げる。ただ、叫ぶ。
拒絶ではない。苦痛ではない。快楽に翻弄されて声を張り上げる。雪絵も
ただ笑う。優しく妖しく。
 深夜の森で梨花の声を聞く人は誰もいなかった。


雪絵の足元で梨花は寝ている。ただ、荒い息を吐く。あれから徹底的に可愛がった。
「ふふっ、可愛いわね」
 始めは嫉妬だった。衛に熱い視線を送る小娘を少しお仕置きのつもりだった。けれど、溺れた。ドンドンとスイッチが入った。
攻めの一辺倒で少し物足りないのが残念のところか。
「また、可愛がってあげるね。……今度は冬にでも遊びにこようかしらね」
 そう言って、視線をそらしたとき、
「いいえ、今すぐ味あわせてあげるわ」
 と、声が響いた。
 何? と、思う間もなかった。首筋にちくりと痛みが走る。注射? 
認識するまもなく体から力が抜ける。
「遅かったわね」
 梨花が仁王立ちになる。その視線の先には不思議な格好の少女がいた。
角が生えている。
「あぅあぅ、隙が全く無かったのです」
 羽入だ。
「あら、そんなわけ無いでしょう」
 つかつか寄ると、梨花は羽入の股間の辺りを嬲る。
「あぅ」
 思わず洩れるのは熱い嬌声。
「ほら、こんなに濡れてる。羽入。あなた、自分を慰めていたわね」
 キツイ梨花の叱責に、
「あぅ、仕方ないのです。梨花と感覚がリンクしていて僕にも伝わって
くるのです」
 首をすぼめながら羽入は言い訳する。
「まあ、いいわ」
 梨花の視線は雪絵に向けられる。
「みー、雪絵。色々と教えてくれてとってもありがとうなのです。
これからたっぷりと御礼をしたいのです。受け取ってほしいのです」
 ニコニコと笑顔振りまきながら梨花は雪絵に近づいた。
「ほら、羽入。あなたも手伝いなさい」
 おずおずと羽入も近づいてきた。
「えっ? あのっ、そんな?」
 覆いかぶさろうとする影に雪絵は戸惑っていた。すぐに嬌声が
張り上げられる。けれど、深夜の森で聞くものは誰もいなかった


「衛さん」
 帰りの列車の中、何度も雪絵は雛見沢を振り返る。
「なんだい」
 娘の世話をしていた衛は顔を上げる。
「……また、ここに来ましょうね」
 ポツリと雪絵は言った。
「そうだな」
 衛はさわやかに答える。雪絵も雛見沢を気に入ってくれたようだ。
「ええ、また、梨花ちゃんに会いたいしね」
 頬を染めながら答えた雪絵の言葉は残念ながら衛の耳に届かなかった。

                                                おわり。

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最終更新:2007年03月23日 22:58