玄関を開けると、外に漂っていたのよりもさらに濃いシチューの匂いが漂ってきた。
なんとなく匂いで、これはウチから漂っているものなんだなと感じてはいたが、
本当にシチューだと知ると、なんだか心が通じたみたいでうれしかった。

「ただいまー、礼奈」
「お帰り、あなた」
礼奈がシチューをかき混ぜながら返事をした。

圭奈を出産してから一ヶ月。
辛い体を動かして、毎日毎日かいがいしく家事をしてくれたことを、
感謝したい。
俺の稼ぎが少ないことに、一言も文句を言わず、
礼奈は頑張ってくれている。

……のに。
俺は、汚れたやつなんだろうか。
礼奈の背中を見るたびに……欲情してしまう。
今まで後ろから、なんてしたことは無い。
礼奈が怖がるからだ。
いつも正面から向き合って、お互いを確かめ合うようにしていた。

「なぁ、礼奈……いや、レナ」
「ひゃ、な、何? あなた?」
「なんだ、その……昔みたいに、圭一くんって呼んでみてくれないか?」
俺は、背中から礼奈……いや、レナに抱きついて、
エプロンの肩紐を片方だけはずした。
「や、やめて、あな……ぃち君」
「何だって?」
俺はやっぱり汚れている。
こういうレナを見て、
意地悪したくなってしまう。
もう片方の肩紐をはずし、エプロンは最後の砦、腰紐だけを残し、
前がぺろんとめくれる形になってしまった。

「恥ずかしいよ……ぃち君だなんて……」
「なんでだよ? 俺はレナって、ちゃんと言えるぜ?」
レナの胸に、手を滑り込ませた。
昔、ちょうど手に収まるほどの大きさで、
とろけるように柔らかかったそれは、
今では固く大きくなっていた。

中に詰まっているものが違う。
今のレナは、一児の母なのだ。

「あっ……圭一くん! シチューが焦げちゃう!」
「やっと、呼んでくれたな」
じたばたともがくレナの口をふさぐように、キスを要求する。
無理やりなキスじゃない。
なんせ、後ろからなのだから、
レナが後ろを向かない限りできない。

レナの口の中に舌を突きいれ、
レナもそれに応えてくれた。
そして、レナのたった一つの憂慮すべき点である、
作りかけのシチューの火を消して……
そのまま俺たちは崩れ落ちた。

「レナ、レナ、いいだろ? 俺、ずっと、ずっと……」
「ごめん……私のせいだよね?」
レナが妊娠してから、ずっとレナを抱きしめていなかった。
「私が……その……手とかでしてあげたら……」
「俺……レナのいいつけ通り、一人でもしなかったんだぜ?
信じられるか? 十ヶ月も!」
「え、あはは、やだなぁ、アレ、冗談だったのに、きゃっ」

もう、胸なんかいじくるのはじれったい。
上のセーターやエプロンは脱がさず、
スカートの下のショーツだけ脱がし、
俺は、自分のいきり立ったものを取り出し、
レナの入り口へとあてがった。
「やっ……圭一くん……そんな濃いの入れたら、
また妊娠しちゃう……」
そんな台詞は、俺を加速させるだけだった。
「レナをもう一回妊娠させたい!」

思いっきりレナを抱きしめる。
それと同時に、俺のペニスがレナに侵入した。
「あふっ……け、いちく……出てる……」
情けないことに、入れた瞬間すさまじい快感と共に、
精液を放出してしまった。
一人の子供を生んだとは思えないそこは、
久しぶりの俺にはきつすぎた。

「このまま……もう一回!」
「あっ、だ、ダメだよ、圭一くん! シチューが、出来ないよ」
「俺はシチューも食べたいが、レナをそれ以上に食べたいんだよ」
そういって、セーターを半分だけ脱がし、
ブラも半分ずらしただけで、レナの胸にしゃぶりつく。
「やぁああっ、出ちゃうよ、圭一くん……あっ」
レナの乳首にしゃぶりついていると、
ほんのり甘い液体が口の中に広がった。

「け、圭一くん赤ちゃんみたい……よしよし」
そう言って、頭をなでなでするレナ。
それを聞いて、ちょっとムッときた俺は、
レナの中に力強く挿入した。
そのまま、レナに裏返ってもらう。
四つんばいの姿勢だ。

俺はレナに覆いかぶさり、
そのまま胸をもんだ。
「あぅ……胸ばっかり、いじめないで……」
「もっともっといじめてやる!」
膝をついてレナの尻を掴み、
そのまま動いた。

俺も初めての感覚に酔いしれる。
こんな姿勢のレナを、後ろから眺めるなんて初めてだ。
レナは四つんばいをやめ、
腕を崩している。
まるで、獣の交尾だった。

「レ、レナの好きな、猫さんみたいだな」
「に、にゃー、あはは、っ!」
俺の腰の動きが、勝手に加速する。
もう、意識は遠いどこかへ飛んでいた。

「あぅっ、激しいよ、圭一くん!」
服を着たまましているというのも手伝ってか、
俺の昂ぶりはすぐに上限まで達した。
だというのに、俺はまだ腰を振っていた。
「あぅ、出てる、け、いちくっ!」
レナが急に、くたっとなる。
「はっ、はっ……け……くん……はぁ……」
「レナ……」
二人とも安アパートの木造床のキッチンで、
板をぎしぎしと言わせながら、絡まりあった。

「ぁなた……のせいでシチュー冷めちゃったじゃない」
「う、ごめん、れ……な」
「うん? 誰に言ったの?」
なぜか、お互いが最初に、あなたやら礼奈やら言い始めた時みたいな、
微妙な恥ずかしさが漂う。
「れ、レナ」
「レナ? 誰かな? 誰かな? うふふ」
「あ、それ久しぶりに聞いた」
俺は、笑って誤魔化した。

「あなた、子供が生まれたら、もっと頑張ってくださいね。はい、シチュー」
「おう、そんときゃ、俺が社長だ」
「あはは、そんなところは変わってないね……」
「礼奈もな……」

そっと、レナが差し出したシチューを持つ手に、
自分の手を添える。
「いつか、家族四人でシチューを食おう。
そうすりゃ、食費も安上がりだ」
「ええ、もちろん」

レナ特製の貧乏シチューは、材料費わずか五百円ながら、
国家予算を出したって買えないレナの愛という食材のおかげで、
今日も俺の胃袋に好評だった。

幸せのシチュー ―完―
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最終更新:2023年06月13日 19:54