「夏は水面の乱反射!」

頭にシュノーケル、足に水かきとフル装備状態の圭一が、ポーズをキメながら叫ぶ。

「たまに思い出が始まったりもするいい季節!」

ビシシィッ! と背後に稲妻が出そうな程に勢いをつけてポーズをキメるのは、園崎魅音であった。その燃え具合たるや、そのまま「とうっ」とジャンプしてバッタ人間に変身しそうな程である。
と、二人はそこでポーズを解くと、感じ入ったようにうむうむと頷いた。

「地球が傾いてて本ッ当によかった……」



事の初めは夏休みも佳境に入った八月の半ば、部長園崎魅音の鶴の一声で、部活メンバー総出で海へと繰り出したのだった。……魅音本人は、煩わしい受験勉強を一時忘れたかったという思惑もあったのだが、それは魅音の胸の中で封印中である。
とまれ、その海は雛見沢からは電車をいくつか乗り継いで行く程遠くにあるため、旅の疲れにまみれていてもおかしくはないのだが、部活メンバーのバイタリティの前にはそんなものなどは無縁のもののようだ。

「よぉーし! みんな水着には着替えた? 準備体操はOK?」

一人ルパン水着着用の(背中が隠れるものがこれしかなかったらしい)魅音が、背後にいる着替えて整列した部活メンバーに告げる。

「と言うか、圭ちゃんとお姉が変なネタやってる間にみんな準備できてるんですよ?」

苦笑気味に告げる緑のビキニの詩音に、出鼻を挫かれたように、うっ、とのけぞる魅音。


閑話休題。


気を取り直すように咳払いすると、

「それじゃみんな、泳ぐよーっ!」

号令一下、わーっと思い思いの場所に駆けていく部活メンバー。

「はぅぅ~~っ!! カニさんもヤドカリさんも、みぃんなレナがお持ち帰りするんだよぅ!」

と、黄色い声を上げながら傍目にも凄まじい勢いで砂を掘るレナ。ちなみに水着は橙のパレオである。

「んー、いい風ですねえ。あ、葛西。日焼け止め塗ってもらえます?」

と、持参のパラソル&敷物を展開しながら、詩音。

一方、沙都子(白いワンピース)と圭一(茶色の海パン)は――。

「圭一さん、自由形200メートルで勝負ですわ! 私の勝ちなら沙都子のトラップ講座in海水浴を余すことなく受けてもらいますのよー!」
「面白え。手加減はしないぜ、沙都子。ちなみに俺が勝ったらK特製のカボチャ弁当をプレゼントフォーユーだ」
「な、なんで圭一さんそんなの用意してますのーっ!?」
「ふっふっふ、俺はお前のにーにーだからな。こんな事もあろうかと料理スキルを習得したのだ。バッチリ詩音のお墨付きももらってるぜ」
「くっ……ま、まあいいですわ。勝負はあそこに浮かんでるブイまで。いいですの!?」
「おっしゃ!」
「では、よーいどん!」

ふう、と荷物を置いて、悟史(Tシャツにホットパンツ+麦わら帽子)は、うおお、と凱の声を上げながら海へ突撃していく二人を遠目に眺めて苦笑した。
1年以上も眠り続けていた自分。
目覚めた当初は、その間に沙都子を置き去りにしてしまった事を悔やんだりもしたが、あそこまで生き生きとしている沙都子を見ると、そんなものは杞憂であったようだ。
そこは、やはり沙都子の傍らに自分の代わりとして居続けてくれた圭一の存在が大きいのだろう。

……でも、交際宣言までするのはどうかと思うけどなぁ……
主に年齢差とか。
むぅ、と唸って再び苦笑した悟史は、ふと脳裏に引っ掛かった疑問に首を傾げた。

(あれ? でも沙都子って確か……)

何だろう。何か重要なことを忘れてる気がするんだけど。
むぅ、と腕を組む悟史だったが、その答えはあっさりと示された。
うおおおという凱の声が聞こえてきそうな勢いで海に飛び込んでいった、沙都子と圭一の姿が突然波間に消える。
え、と驚く間もなく二人の姿は再び海面へと浮かび上がった。両手を振り回し、悲鳴をあげながらではあったが。

「「た、たすけてー」」
「ちょっ!? どうしたんだ、沙都子っ! 圭一!?」

慌てて海に向かって駆ける悟史と詩音。

「「溺れるぅぅ!」」

ずっこける二人。
悟史はそのままヘッドスライディングしていったが、詩音は顔から砂に突っ込みかけたところをギリギリ持ちこたえた。

「お、泳げないくせに飛び込むなー!」  

尤もであった。

「けほっ、けほっ。そ、そういえば私、泳げないんでしたわ」
「げほっ、げほっ。そういや俺、泳げないんだった」

砂浜にぺちゃりと大の字で横たわる二人。
つーか、飛び込む前に気づけ、二人とも。

「ど、どこまでバカなんですか。あんたらは」

こめかみを揉みながら、怒り半分呆れ半分で呟く詩音。ちなみに、悟史は全身砂まみれでぜいぜいと息をついていた。

「にーにー、ありがとうですわ。死ぬかと思いましたわ……」
「うう、悟史は俺たちの命の恩人だぜ」
「……誉められてもあんまり嬉しくないことってあるんだね」

幸いにして、二人が溺れた場所は砂浜から十歩と離れておらず、悟史が浮き輪を投げることによって事なきを得たのだった。
そんな所で溺れる二人もどうかしているが。

そんなわけで、圭一と沙都子は膝程度の水位の潮溜まりでぱちゃぱちゃやるに留まっていた。

「そういえば、圭一さんって泳げなかったんですの?」
「ああ、まったくダメなんだよな。ビート板でバタ足やってても何故か身体が沈むし」

そうなんですの、と沙都子は頷きかけて、

「って、それならやる前にしっかり言ってくださいまし!」
「いやー、沙都子の勝負に気が行ってて、すっかり忘れてたぜ。ははは」
「忘れるなあー!」

へらへらと笑う圭一に、むきーと沙都子が怒鳴る。そもそも自分が持ちかけた勝負だということは彼女も忘れてるわけなのだが。


一方その頃。


「あぅ~……」
「みぃ~……」

ゴムボートを波間にぷかぷか浮かべて、そこでお昼寝できたらどんなにか気持いいだろうか、という羽入の提案に乗った羽入(白いビキニ)と梨花(黒いワンピース)。
そんな二人は今、ゴムボートの上でうつらうつらと微睡んでいた。ちなみに、梨花は寝酒にとワインを持参したがったのだが、そこは羽入がやめてくれと泣きながら土下座して頼むので渋々それはとりやめた。


閑話休題。


「……あら?」

何気なくぱちゃぱちゃと水のかけ合いをしたり、水底のカニを探してみたりしていた二人だったが、ふと、沙都子が手を止めた。

「どうしたんだ? 沙都子」
「いえ……今何か聞こえませんでした?」

言われて、圭一は目を閉じて耳を澄ませてみた。しかし、聞こえてくるのはただ波のせせらぎだけである。

「……何も聞こえんぞ」
「うーん、なんだかあっちの方向から聞こえた気がしたのですけど……」

言って、人気のない岩場を指差す沙都子に、ふむ、と圭一は腕を組んだ。
沙都子の五感の良さは圭一も承知している。優れたトラップ技術には、見て聞いて触って状況を正しく認識する力が不可欠のものであるからだ。

「……うし。じゃあ行ってみっか」



泳げる範囲ではやや手狭でも、人が入れる範囲となると、浜辺はだいぶ広くなる。
沙都子の案内で、岩場の方まで歩きながら、圭一はそんなことを考えていた。
後ろの方では、レナが

「はぅ~っ、おっきくてかぁいい貝さんみつけたんだよーっ!」

などと歓声を上げている。魅音はと言えば、最近とったダイバーセットを試したくてしょうがないらしく、ダイバースーツにいそいそと着替えて、ボートで沖に出ていた。
梨花や羽入、悟史や詩音の姿が見えないが、おそらくはどこかで遊んでいるのだろう。
と、そんな益体もないことをつらつらと考えているうちに先導して歩く沙都子が立ち止まった。

「この辺だったと思うのですけど……」
「ふむ、この辺か……」

辺りをきょろきょろと見回して、圭一は――

げ、と顔を強張らせた。

「どうしたんですの?」
「あ……い、いやなんでもない。ま、まぁ何もなかったわけだしさっさと戻るか」

な? とこちらに顔を向ける圭一に不審なものを感じて、沙都子は眉根にしわを寄せる。

「……圭一さん、なにか隠してませんこと?」
「い、いいいいやまさかあ。そんなことあるわけねえだろ」

大人はみんな嘘つきだ、と沙都子は心に刻んだ。

「じゃあ、なんでそっちの方を私に見えないように遮ってるんですの?」
「あ、馬鹿! そっち見るな!」

言って、圭一の脇に首を巡らせて、

びし、と沙都子は石化した。

圭一の向こうの岩場の陰で、にーにー&ねーねーこと悟史と詩音が、溶け合っていたというかおしべとめしべというか、まあぶっちゃけて言えば、まぐわい合っていた。

「さ、とし、くん、ふぇぁ、あぅ、熱、い……」
「し、詩音、詩音っ」

お互いに愛しそうに名を呼び合いながら、何度も何度も下半身を押し付けあう。
休む間も、息継ぎの間さえ惜しむかのように互いを求めあう。
貫きながらも、手で、舌で、身体を撫でる。



つーかご丁寧にも下側をこっちに向けているおかげでいろいろと丸見えである。

思わずまじまじと衝撃現場を見つめた沙都子は、ふと視線を横に移す。視線の先には、顔を真っ赤にした、おそらくは自分と同じ表情をしているのであろう圭一の顔があった。
その黒く濡れた瞳の中が垣間見えた気がして、沙都子はぼそりとつぶやく。

「……うわきもの……」
「なっ!?」

思わず硬直する圭一。

「い、いいいや沙都子、そうじゃなくてだな! えーと……」

照れ隠しに頭をかき、必死に返す言葉を探すその様はまさしく年頃の少年そのものである。さすがに駆け引きもヘッタクレもなしに全開キャーでナマ本番を見せ付けられると、さしもの口先も振るわないようだ。
しかし、沙都子はそんなところなど見ていない。つ、と圭一から視線を逸らし、雲ひとつない晴天を見上げると、

「ああ、あの夜は『お前だけのにーにーになってやる!』とか言って下さってたのに……」
「違うって! あん時のは嘘じゃねえ……って、沙都子も見てたじゃねえか!」
「そんなところを勃てながら言っても、説得力ありませんわよ」

なおもあたふたと言い訳する圭一を、ぴしゃりと沙都子が黙らせる。
口の中でもごもご言いながらも、押し黙る圭一の前で満足したように頷くと、沙都子はしゃがみこんだ。

「お、おい、沙都子?」
「私というものがありながら、詩音さんなんかで勃つなんて……本当にしょうがないひと」

ですから、

「私が抜いて差し上げても、文句なんかございませんわよね……?」

妙に慣れた手つきで圭一の海パンを下げると、沙都子は出てきた男性器を優しく手で撫でて、握った。指に返ってくる弾力と硬さが絶妙に入り混じった感触が愛おしく感じる。

「ん……」

か細く声を漏らしながら口を開けると、沙都子は顔を圭一の肉棒に近づけた。舌とペニスが肉薄するにつれ、だんだんと強くなってくる沙都子の吐息に、思わず圭一は声を漏らした。

「んふ……ちゅ」

それに沙都子はくすりと笑うと、そのまま先端を口に含み、ちろちろと舐め回した。
ねっとりとした温かい口内に包まれる。沙都子の小さな唇が自分のものを頬張っているその光景、加えてれろれろと舌で弄られ、圭一の頭の中にだんだんと靄がかかっていく。
アイスキャンディーのように舐め回した後、沙都子は口から圭一のものをちゅぽんと引き抜いた。そのまま舌を出すと、裏の筋に舌を這わせて刺激する。
あむ、と睾丸を口に含まれてちゅうちゅうと吸われた辺りで、たまらずに圭一は悲鳴を上げた。

「さ、沙都子っ。ヤバい、出る、出る」

言葉と共にぴくぴくと痙攣するペニスを感じ取ると、沙都子は再び、しかし今度は勢いよく自分の口内に圭一のものを滑り込ませた。
先端がずるりと口蓋を通り抜け、喉の奥にこつんと当たる。極まる寸前だった圭一がその攻撃に耐えられようはずもなく、一気に爆発する。

「ぐっ……出すぞ、沙都子っ!」
「んんんー!」

勢いよく喉にぶちまける感触に、反射的に圭一は男根を引き抜こうとした。しかし、圭一の尻に絡みついた沙都子の指が、退こうとするのを妨げる。
休みなしにびゅくびゅくと打ち出されるのを喉の奥で感じる。数秒後にそれがだんだんと弱まって、やっと沙都子は圭一を口から引き抜いた。
そのまま口に残った精液をごくりと飲み干そうとし――しかし飲み干せずにんべっと白濁液を吐き出して、沙都子は口を開いた。

「うう、やっぱりこれを飲むのは無理なのですわー」

ぺっぺっと不味そうに口に残る精液を吐き出す沙都子に、呆れたように圭一がつぶやく。

「いや、だから無理に飲もうとせんでもいいんだが」
「……でも、男の人ってこういうのは飲んでくれる方が好きなんでしょう?」
「そりゃもう」

思わず素で答えてしまい、やべ、と圭一は口の端を引きつらせる。
がっくりと肩を落とし、加えて体操座りで落ち込む沙都子に、慌てて圭一はフォローに入った。

「い、いやでも沙都子のフェラはすんごい気持ちよかったぞ!」
「……ほんとですの?」
「ああ、沙都子に比べれば詩音なんて目じゃねえぜ!」

たぶん。

「それならいいのですけど……」

言って、もじもじと身体を揺らす沙都子。その様子に圭一は訝しげに眉を寄せると、

「ど、どうしたんだ? 沙都子」
「あの、その、な、なんだか私まで、ヘンな気分になってきましたから……」

びぎり。
自分の自制心に亀裂が入る音を聞きながら、圭一は。
いそいそと沙都子が水着の股部分をずらすのを、他人事のように見ていた。

「ですから……」

荒く息をつきながら手を伸ばし、圭一のものを掴む。たったそれだけで、圭一の男根は力を取り戻していった。

「――圭一さんのを、くださいませんこと?」



とりあえず、波打ち際では具合が悪いからと、圭一は沙都子を抱えて日陰まで移動する。普段は焼けた鉄板のような砂浜も、日陰に入ると石のようにひんやりと冷たい。
圭一は、沙都子を抱えたまま座りこんで、仰向けに寝そべった体勢に移行する。すると自然と、騎乗位のような形となった。

「……沙都子」
「なんですの?」
「お前って、生えてないんだなあ」
「ま、前にも一度見ているじゃありませんの!」
「いや、あの時は暗くてよく見えなかったし」

言って、目を弓にして笑う圭一を見下ろし、まったくもう、と沙都子は息をついた。

「んじゃ、沙都子。自分で入れてみな」
「け、圭一さんが入れればいいじゃありませんのっ」
「いやまあ、確かにとっとと入れたいのは山々なんだが」

一息。

「沙都子に、入れてほしいからな」

にっこりと微笑む圭一に、思わずどきりとする。ぷいと沙都子は圭一の顔から視線を逸らし――何とはなしに、自分の股下を覗き込んだ。
自分の股の直前から、圭一の男根がにょっきりと顔を出している。びくびくと脈動する圭一のもので自分の陰核が刺激され、甘い痺れをもたらしていた。

(あ、改めて見るとほんとに大きいのですわね)

ごくり、と生唾を飲む。
これが自分の中に入るのかと思うと、不安と期待がない混ぜになってぞくぞくと沙都子の背筋を昇った。

「……んっ」

沙都子は腰を上げて圭一のものを掴むと、自分の膣口にそれをあてがおうとした。しかし、自分の膣口がまだ小さいのと、秘唇が大量に吐き出す愛液とで、ぬるぬると滑ってうまくいかない。
ぬるん、ぬるん、と圭一の先端が沙都子の秘唇を撫でるたびに沙都子の顔は上気する。しかしそのたびに当てがう精度はだんだんと劣化していき、結果お互いに生殺し状態が形成されることとなった。

「さ、沙都子。まだ入らねえか?」
「ん……やぁ。入らな……」

しかし、そんな状況でも終焉は訪れる。
前に後ろに、右に左とゆらゆら揺れる沙都子の腰が、二人の汗と愛液とでずるりと滑って落ちた。

「……へ?」



――ずぶり。



「――――――――ッ!!!!」
「お、おい、沙都子! 大丈夫か!?」

深々と子宮口まで貫かれてびくびくと痙攣する沙都子に、慌てて圭一は声をかけた。
沙都子はそれに答えずに、声にならない絶叫を上げながらがくがくと身体を震わす。
しばらくそれを見つめて、圭一はぼそりとつぶやく。

「あのさ、沙都子。もしかして……」

きょと、と首を傾げ、

「……イッた?」

その言葉に、きっ、と沙都子は向き直ると、

ぽかっ!

「いてっ!」
「そ、そんなわけないじゃありませんの! た、たた確かにちょっとは気持ちよかったですけどただそれだけのことであって単にちょっとびっくりしただけですわよ!」
「いてっ! いててっ! こ、こらやめろ沙都子!」

涙目になりながらも、ぽかぽかとこちらの顔を叩き続ける沙都子に理不尽なものを感じつつも、慌てて圭一は叫んだ。
……俺、なんかマズいこと言ったっけ?

「だ、だいたい圭一さんに見せようと思ってこんなエッチそうな水着を選んだのに、圭一さんてばレナさんや詩音さんにばっかり鼻の下なんか伸ばして! 私がこんなの着るのにどれだけ躊躇したと思ってるんですのーっ!」

ぽかぽかぽかぽかぽか。
なおも叩くのをやめない沙都子に、さすがにカチンときて圭一は声を低くする。

「おい、沙都子……」
「そもそも圭一さんなんてにーにーと違って優しくないし服の趣味悪いし――」
「………………」

無言のまま、圭一は沙都子の腰を掴むと、気づかれない程度にこっそりと自分の身体を引いて沙都子との間に空間を作り。
そのまま、ずんっ、と腰を叩きつけた。

「やることなすこといやらしいなにより剥けてないし……きゃぅう!?」

突如爆発した快楽に、たまらず悲鳴を上げる沙都子。

「で、何だって? 沙都子」
「い、いきなりするなんて卑怯ですわよ圭一さ、あんっ!」

再び打ちつけられる腰に、またもや嬌声を上げる沙都子。その様をにやにやと眺める圭一に、ぐぐ、と拳を震わせると、

「あ、後で覚えているがいいのですわ……」

ぼそりと恨みがましげにつぶやいて、全身から力を抜いた。
こちらにしなだれかかってくる沙都子の身体を愛おしそうに優しく撫でると、圭一は抽送を開始する。
沙都子の中は、潤っていた。狭い膣をかき分けて進むたびに、それを助けるようにとろとろと後から後から、それこそこの小さな体躯のどこにそれだけの量があるのかと思うほどに、愛液が溢れ出してぬるぬると滑る。
にちゃにちゃと淫卑な音を響かせながら、沙都子を一番奥まで貫き、蹂躙し、愛撫する。
圭一は上体を起こして座位になると、お互いに動くたびにぷるぷると震える乳房に舌を這わせた。そのまま先端を口に含んで吸いながらこりこりと歯で転がし、もう一方の乳首を指できゅっとつまむ。
とどめとばかりに、圭一が沙都子のアナルに指を挿入して、今度こそ沙都子は悲鳴をあげた。
同時に、沙都子の膣内もきゅっと締まり、圭一は己の限界が近いのを自覚する。

「さ、沙都子っ。出すぞ、膣内に出すぞっ」
「け、圭一さんっ。あっあっあっあっ、けい、けいいち、さん、あっあっ」

沙都子の肢体が縦横無尽に跳ね、二人の感覚が頂点に達する。

「んあっ、ああああああああああああ――――ッ!!!」
「さ、沙都子、沙都――――」
「へっくし!」

…………………………。

ざ・わーるど。

突如聞こえた聞こえるはずのない声に、圭一と沙都子の周囲からすべての音が掻き消える。
否、ひとつだけあった。
びくびくと沙都子の中で無責任にぶちまけ続ける自分の分身だけが。
ぴったりとシンクロした動きで、圭一と沙都子はこれまたそっくりの無表情を横に向ける。

そこには――――岩場の陰に隠れながら、こちらをじっと見つめる悟史と、引きつりながらも愛想笑いを浮かべる詩音の姿があった。
というか、なぜ君は遠い目をしながら涙ぐんでいるんだ、悟史。

「あ、あはははは……お、おかまいなくー」

乾いた笑い声をあげながら、そそくさと後ずさろうとする詩音。
それを見ながらも圭一と沙都子は特に何をするでもなく、ぼそりとつぶやいた。

「ねえ圭一さん」
「なんですか沙都子さん」
「ヤッちゃいましょうか」
「ヤッちゃいましょう」

言って、にっこりと極上の笑みを浮かべると、ちゅぷ、と結合を解いて二人は立ち上がった。

「い、いや! 勝手に見てたのは悪いと思ってますし沙都子意外と大きいなとか圭ちゃんまだ剥けてないんですかウフフとか思いもしましたけど! 別に他意があって見ていたわけじゃないというか、そもそもあんたらだって私たちの見てたじゃないですかーっ!」

べらべらと弁解を並べ立てる詩音はどこ吹く風で、じりじりと悟史と詩音ににじり寄る裸族二名。
にっこりと笑いながらも、わきわきとした手つきで、しかも股間から精液を垂れ流すのを隠しもせずに近づいてくる男と少女というのは、とにかく全力で逃げ出したいものがあったが、しかし蛇に睨まれた蛙とでもいうのか、それを許さない異様な威圧感が二人にはあった。

そんな事を思ってるうちに、圭一は詩音の、沙都子は悟史の肩を、がっちりと掴む。

「つ・か・ま・え・た」
「ひ、ひゃあああああああーーーーーーーーーーーーっ……………………あんっ」



いつの間にか消えた他の面々に、陸に上がった魅音はうーむと腕を組んだ。どこ行っちゃったんだろう?

「あ、魅ぃちゃん!」

ざばーっと海面を掻き分けて浮上すると、レナはシュノーケルを外して馬鹿でかい巻貝を掲げた。

「見て見てー、こんなに大きい貝さんをお持ち帰りしたんだよっ」
「あー、うん」

うじゅるうじゅると殻の端から謎の触手を出してくる貝から視線を逸らして、魅音はばりばりと頭を掻いた。

「しっかしどこ行っちゃったんだろうねぇみんなは。ちょっと心配になってきたよ」
「あ、そういえば詩ぃちゃんと悟史くんがあっちの岩場に入ってくのを見たよ」
「あ、ほんと? じゃあ呼んでこようか」

言って、二人はあの岩場に足を向けた。



一方その頃。

「……空がきれいなのですね、梨花」
「そうね」
「……海もきれいなのですね」
「そうね」
「……岸が見えないくらいに」
「そうね」
「……ねえ、梨花」
「なによ」
「ここ、どこなのでしょう」
「私が知るわけないでしょ」



ぎゃふん。

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最終更新:2007年03月21日 23:43