夏の終わり3の続きです。





=====


TIPS 「あなた」

貴方の手は気持ちいい。ただ、ちょっと切ない。
まるで私を壊れ物のように扱うかのように優しすぎる。その優しさが切なすぎて私が声をあげてしまうくらいに。

貴方の唇は気持ちいい。ただ、ちょっと温かい。
親鳥が雛鳥の毛づくろいを手伝ってあげるかのように優しすぎる。その優しさが温かすぎて私の身体が火照ってしまうくらいに。

貴方の舌は私を狂わせる。ただ、私を狂わせる。
まるで媚薬を飲まされたかのように狂わせる。その狂気が愛しすぎて私の身体で貴方を包み込んでしまうくらいに。

貴方に触れられるのが好き。
全身を使って貴方に愛されているのを感じられるから。だから私はその愛を一身に纏って生きたい。

貴方に触れるのが好き。
全身を使って貴方を愛しているのを伝えられるから。だから私は貴方の傍から離れる事を望まない。

だからお願い、悲しい顔をしないで。
私が傍にいてあげるから。
貴方に愛を与え続けてあげるから。
貴方が私にしてくれたように、私も貴方にしてあげることができる。
だからお願い、笑顔を見せて。

貴方と描く未来はもっともっと明るいものだと信じているから。


=====


 100年という積年の想いを一つ一つ伝えるが如くに愛を注ごう。
 ―――出来る限り優しく。

「ん、…ぅ、んっ」

 何度か私から仕掛けたキスはどれもが強引だったから、今はここぞとばかりに丁寧に口付ける。触れるだけ、押し付けるように、擦り付けるように、啄ばむように、何度も何度も音を鳴らして口付ける。
 ちゅ、と音がなる度に沙都子の瞑った睫毛がふるふると震える。…私を感じてくれていたら嬉しい。沙都子の唇は何度触れても飽く事なく、いつまでも触れていたいと思う…反面その唇にしゃぶりつきたいという欲も生まれる。舌先をちろりと出し上唇を軽く舐める。

「ん、っぁ…」

 ビクリ、という沙都子の身体の反応を見ると多分軽い口付けだけではそろそろ物足りなくなってきている頃。…いっか、入れちゃおう。
 想うが早いか沙都子の半開きの唇に舌を潜り込ませる。温かい。背中に回された両腕が私の服をぎゅっと掴む、眉間に皺を寄せ頬を染めて私の舌に応えようとおぼつかない動きで合わせる。沙都子を気持ちよくしてあげたい…私の想いを身体で伝えたい、そしてその一つ一つに一生懸命応えようとしてくれる沙都子を感じる。
 自分の想いを受け入れてもらえる事がこんなに幸せな事なんだと…沙都子を通じてそれを知れることが何よりも嬉しい…。

「ふ、梨…花ぁ―…ぅん…む、…っちゅ」
「はぁ…っ、ん、沙、都子…」

 ―ちゅ、くちゅ、ぴちゃり。
 想い合う二人の熱い塊が触れ合う度に艶やかな水音が跳ねる。まだキスだけだというのに息が乱れ、お互いの額にはじんわりと汗が滲む。
 最初こそ沙都子の感じる表情を見逃したくなくて卑怯だなと思いながらも、口付けながら目を開けていたけれど沙都子の舌の甘美な感触を味わうが如く目を瞑りその柔らかさや瑞々しさに溺れていた。

 どのくらい濃厚なキスを続けていただろうか、頭は朦朧としてきて身体はキスだけでは物足りなくなった。
 沙都子に覆い被さる形で上にいる梨花の手は自然と沙都子の耳を触れるか触れないかの優しさで包み込む。背中で服を握っている沙都子の力が強くなる。――あぁ、気持ちいいのよね、沙都子…。
 目を瞑っていたって沙都子の存在を感じれる事が嬉しい…そして切ない。今までこんなに愛情に飢えていたなんて。そう頭で思うだけで心がきゅっと締め付けられるようになる。沙都子、沙都子…沙都子沙都子…っ!
 耳を触れていた手は徐々に下へ向かい、耳、首、鎖骨、肩、二の腕、と沙都子というキャンバスに緩やかに線を描きながら、そして二つの柔らかな膨らみへと辿り着く。
 本当はいつまでも味わっていたいけど、怖がらせてしまっては元も子もないから名残惜しい口付けを中断させる。

「沙都子…痛かったら言ってね?」
「…ええ…でも大丈夫ですから安心してくださいましね」
「…沙都子?」
「梨花に触れられるだけで幸せなんですから、少し痛くても構いませんのよ」

 そう言って笑う沙都子の顔は穏やかだった。
 ありがとう、と呟くとこの年の発育にしては大分進んでいる沙都子の胸へと両手を進める。吸い付いてくるような肌が心地よい…心なしか健康的な肌色に朱が混ざっているのは私を感じているからだと自惚れていいのだろうか。
 こんな時にまでまだ嫌われないかと怯えてしまう自分が情けない。でもそれだけ沙都子が自分の中でどれだけ大切な存在かというのを改めて感じられる気がした。

「あ…っ、…ん」
「…どう?」
「んん…、ええ…とても、いい気持ち、ですのよ。まだ少し…くすぐったいですけど…ふぁ」
「そう…それなら良かった…」

 一つ安堵の息を吐くと両手をふにふにと動かしながら沙都子の首筋に唇を、舌を這わせる。
 汗に混じって沙都子の匂いがする…頭がクラクラする。この匂いに狂いそう…、もう狂ってるか―だって私の息がこんなにも荒い。
 沙都子はというと、私の手の動きに、舌の動きに全て反応を示している。私の頬にかかる吐息が熱い。

「…やぁ…っ、梨花ぁ―…は、ぁ……っ」
「はぁ…っ沙都子…」
「身体が…ぁっ、あ…熱い…ですわ………!」
「ん…もっと、もっと熱くなっていいのよ沙都子」

 ――まだ発達途中のはずなのに感度はいい様子。これは育て甲斐がありそうね…。
 私が圭一と初めて性行為をした時はもっと味気なかったわね、なかなか濡れなかったし…ここまで気持ち良さそうな顔もした記憶がない。
 そして、ここまで幸せそうな顔をしたことなんて全くない。

 唇と舌が沙都子を所有の証と示すように肌に吸い付く。朱を帯びてる沙都子の肌に開くは紅い華。水着の跡がまだ残っている幼さとは不釣合いの華。私からの刺激で汗ばむ肌にはまるで私と同い年とは思えないような色香が増す。
 その紅い華に負けじと胸の先端に存在している、これもまた吸い付きたくなるような色合いの乳首。先端は反り立ち、指とは違う刺激を求めているのか私を誘っているかのようにも思えた。
 ならば、とその願い叶えてみせよう―沙都子を味わうたびに口から溢れる唾液を刺激を待つ乳首に触れさせる。

「ひゃっ、ぁぁあぁあぁっ…!!」
「ちゅ…ぷ、…気持ち…いい……?」
「や、ああああ…っ、な、んですの…コレ…ッ!? …っ、ふぁあん…っっ」
「沙都子…可愛い…好きよ」
「は、っ…ぅぁ…、ぁ…わた、く…しも…ぁ…す、き…です…あぁっ」

 ―沙都子の身体が私の舌と同調するようにビクンビクンと跳ねる。どうやら胸、気持ちいいみたいね…なるほど。…インプット。

 右の胸を左手で、左の胸を口と舌、そして空いた右手は跳ねた際に出来る背中と床の間に忍び込ませる。
 抱きしめながらも背中には指でラインを引く。背中を緩やかに指先で撫でるとまるで胸を強調するように背中が突っ張る。
 沙都子の両脚を開かせるために間に身体を割り込ませ舌を胸より下へと移動させる。確か左の胸を強く揉んで上げると声が一段と艶っぽくなったからそこの攻めは背中に回した右手を移動させ、痛くない程度に少し強く押し上げるように揉んであげる。

「ぃや…っ! …んんっ…はァ…」
「ここ…気持ちいいわよね、沙都子」
「ああぁッ、や…ぃあ……ぅンっ」
「そう…気持ちいいのよね…フフ」

 啼くしか出来ない沙都子の声で反応を見る。やっぱり私の思った通りのように左胸は弱いらしい…ちなみに右の胸は舐めてあげると喜ぶ。
 ―私の手で乱れる沙都子の啼く声を聞くだけで身体が火照る。多分見なくても私のは溢れてるだろう…絶対。沙都子に触れるだけでこんなにも身体が疼くんだから沙都子に触れられたら多分すぐトンでしまいそうだわ。
 小さな可愛いおへそへくにっと舌を入れ込んで見るとまた身体が跳ねる。まるで全身性感帯のよう。…と、気づくと両脚に入り込んだ私の身体の両脇から圧迫感を感じる。ぷにぷにとした肌触りは沙都子の太もも。見ると腰は断続的にビクビクと飛び跳ねている、――あぁ、わかった欲しいのね。…でもまだあげない。だって可愛いんだもん。

 ヘソを通り越し、舌は更に下へと進む。ちゅ、ちゅと音を立てて口付けながら進み腕も一緒に下腹部へと続く。
 こう沙都子に触れていて思うこと、やっぱり沙都子の肌はどこを触っても気持ちがいいと思う。前に触れられた時だって身体が疼いた。惚れてる相手だから、なのかもしれない…。
 目を前に向ければ未だかつて一度も見た事がない沙都子の知られざる秘所…、身体の下にある脱いだ服にまで滴ってる液体。甘い匂い。

 ――ああ…そうか、沙都子が私の手でこんなに乱れてくれるのは…こんなにも沙都子が幸せそうな顔をしているのは私を好きだから。…だから私は沙都子の声に匂いに温かさにあてられて狂っているのは、そういう事なのか。温かいものなのね…愛情ってのは。

 そう理解したら突然涙が零れた。

「…ん…ぁ…………り、か?」
「…ぇ? あ、ごめんなさい冷たかった?」
「ど、どうしましたの?何か、…私してしまいました?」
「ううん、違うの気にしないで…ありがとう」

 はあはあと息を切らせながら身体を起こし違和感に気づき声をかける。こんな時にだって私を気遣ってくれる事、そんな小さな事にも沙都子なりの優しさと愛を感じてまた泣けてしまう。

「梨花? …そんなに悲しい顔をしないでくださいましな…私まで悲しくなってしまいますわ」
「え、悲しい顔…なんてしてる?」
「ええ…、とても。何かありましたの?」
「大した事ないわ…沙都子が好き過ぎて涙が出てきただけよ」
「そ、それは嬉しいですけど…でも」
「沙都子は優しいのです」

 心配そうに眉間に皺を寄せる愛しき人を安心させるため下腹部付近にある腕を少し移動させて頬を触れてみる。
 ――冷たい……

「…沙都子?」
「なんですの?」
「…あなた、もしかして…泣いてる?」
「…ふふっ、梨花が泣いてるからですわ」
「嘘」

 根拠なんかないんだけど、ここにも沙都子なりの優しさと愛を感じた。だからきっとこれは本当の答えではない。

「――……あながち嘘でもないんですけれど、ね」
「……」

 薄暗い部屋の中でじっと沙都子の表情を読み取ろうと目を反らさず顔を覗く。少し俯いた顔が正面を向いて、観念した表情を表す。

「理由を説明する事は別に忍びないんですけど…梨花、聞いても泣いたり笑ったりしないでくださいましね」
「分かったわ…出来るだけ努力する」

 聞く内容によっての問題だから確約は出来ないわよね…と自分で言った言葉を頭で反復して納得していると、ふぅという吐息と共に少し諦めた顔の沙都子が言う。

「梨花が優しすぎるからいけないんですわ」

「え?」
「梨花に触れられる度に胸が切なくて何故か涙が溢れてきましたのよ。梨花に触れられるのは好き。…気持ちいいですし、ね。でもそれだけじゃなくて、触れられる度に胸が熱くなるんです。何なんでございましょうねこれは…でもちっとも辛いわけでも悲しいわけでもないんですのよ。例えるなら嬉しい、とかそういう感情に近いものなんでしょうけれど…上手く説明できなくて申し訳ないですわね…って梨花?」
「……っ……」
「聞いてましたか?私のお話―って、あらあら泣いてしまわれましたのね。梨花は泣き虫さんですこと」
「うるさいわね…仕方ないでしょ」
「そうですわね、私も泣いてますから仕方ないですわね」

 ぼんやりと涙する私の手を小さくて温かな手が包む。

 「だからね、梨花」

 そう話しかける沙都子の声は柔らかくて、それだけでもとまりかけた涙が溢れそうになる。

 「もっと私に触れて欲しいんですのよ、もっと梨花を感じたいから」

 ―外を見ればもう一番星が見えるくらいの時間なのに、遠くからひぐらしの鳴く声が聞こえた気がした。


―――――


「私を、感じたい…」
「ええ。…最初に言ったではありませんか、忘れてしまったんですの?」

 ちょっとムッとした顔で問い詰められる。今目の前にいる沙都子があられもない姿でいる事すら夢なんじゃないのかと思えるくらい幸せな事がありすぎて、頭とか胸がいっぱいでパンクしちゃいそう。だから言い訳じゃないんだけどちょっと前の発言なんて思い返すのもなんというか…自分の恥ずかしい発言を思い出すのと同時で出来れば思い出したくないんだけどそういえばそうだった、…ような気がする。

「…ほら、分かりますでしょう?」
「え?」

 部屋が暗かったおかげで悶々としている私に気づかなかったのかそっと、沙都子の柔らかい小さな手が重ねられる。夏の暑さのせいか、はたまた目の前の幸せに戸惑っているのか手にはじんわりと汗が滲んでいて、ちょっと気持ち悪いけれど、その手を掴まれそのまま沙都子の胸へと導かれる。

「ほら、分かりますでしょう?」
「なっ! ななななな何が!?」
「―ドキドキ、してます…でしょう…」
「…え、ぁ…」
「…感じませんか?」
「…ううん分かる、…そうね、すごくドキドキしてるわ」

 言葉の通り、沙都子の心臓はドクドクと早鐘を打っている。
 ――というか私の胸がさっき触っていたとは言え、こう素面の状態で沙都子の胸に触れているという事実で沙都子のよりも破裂しそうな勢いで早鐘を打っているというのは秘密。

「梨花? 突然どうかしたんですの?」
「え、え? 何が…!?」
「どこか調子でも悪いんですの? …それとも私の裸改めて見たら貧相なものだな、って思ってるなんて事はありませんわよねえ?」
「ま、まさかそんな! 寧ろ私の身体の方が貧相で羨ましいくらい!! ただ…いきなりそんな事言われるなんて、びっくりしちゃって」
「ちょっと前の梨花はもう少し自分のする事に自信を持っていたような気がしましたけど…、鷹野さん達の一件があってから何かに怯えるように生活しているんですのね」
「え…」
「梨花はもっと巍然とした態度でいてもらわないと、私もなんだか調子が狂ってしまいますわ」
「だ、だって…」

 見たことのある世界であれば誰だって巍然とした態度で物を言ったり、行動したりできると思う…けど今の今である世界は今まで望んでいても見られなかった世界で、ましてや相手が沙都子ならある意味爆弾を抱えているようなものであって…生きるか死ぬかの瀬戸際で…えっと、そのとにかく私は他の誰に対してもここまで怯えた事がないからそりゃ、沙都子が不思議に思う気持ちも分かる。
 でも沙都子が私の思いもしない事ばかりを私に与えてくれるから戸惑っちゃう自分だって…仕方ないと思うんだけどな。

「もう…、おかしな梨花ですこと。梨花から来ないんでしたら私から」
「それってどういう――」

 突然沙都子の両手が私の頬を包む。指先が耳にまで届きさわさわと動くものだから自然と首をすくませる。肩が上がったためか両頬に添えた手は更に耳元へ押し上げられる。
 ――あ、私の耳に沙都子の指が入った。自分の指ではない異質な感覚にすら身体が火照るような刺激になり、ゾクゾクという背中から来る快感と外界からの音が途切れてなんだか不思議な感覚へと追い込まれる。
 こんな暗闇の中で見つめられても輝きは失われずキラキラとしている瞳。月の光が窓から差し込み、それが瞳に反射してキラキラと綺麗。それが幻想的で目を反らす事が出来ない…私を捉えるこの眼から逃れる事が出来ない。私の全てが沙都子から離れる事を望んでいない、どんな些細な変化も見逃さないように。だから私も沙都子の緋色の瞳を見つめる。その輝きが睫毛に覆われると私の唇に柔らかい感触…優しい口付け。

「ん、ぅ」

 柔らかさが気持ちよくて鼻にかかった声をつい出してしまう。
 ぴちゃ、くちゅ、ちゅぷと沙都子の唇が開く度、私の唇から離れるたびに透き通った水音がくぐもって聞こえる…。あれなんか…変な、感じが…する―――…。

 それが何なのか分かるのは沙都子の舌をもっと深く味わいたくて顔を傾けた時、かさりと耳に違和感。
 ―そうだ、沙都子の指だ。…理解。だからこんなに私の口元で鳴っている水音が外からではなく内からの音で私の中に伝わってくるのか。私の耳には沙都子と生まれる水音しか聞こえない。沙都子の舌が口内で暴れると私の頭のてっぺんまで響く、沙都子を感じる…今舌を吸われる、柔らかい熱い塊に絡み取られて吸われ舐められる。
 ――ああだめ…なんかおかしくなっちゃいそう…あ、沙都子の甘い唾液が流れ込んできた、甘い…あ、あ…。
 目を瞑っているのに頭には白くちかちかとした光、腰が浮くような感覚がクる。全身がゾクゾクする。
 ――これ…、あぁ…あ…ダメ、頭…うま、くかいてんしてくレな…イ。ゃ、だめ、ダメだめ…だ、め――ッッ!


「…ぷはっ」
「ふ、ぁ…あ?」
「どうでしたか、梨花」
「え? …んぁ?」
「ちょっと、聞いてるんですの? 梨花ァ!?」

 あと一歩のところで、ちゅぽっという小気味のよい音と共にそれは途絶えた。
 頭がぼんやりする。絶頂寸前の余韻が残っているのか思考回路が少し鈍っている。もうちょっとでトびそうだった…沙都子ちょっとテクニック凄すぎるんじゃない? …というよりも身体……辛いわね…。

「あ、あぁ…うん、すごい気持ちよかった…ありがとう沙都子」
「い…っいえ! そんなお礼を言われるほどの事でもございませんわ!梨花が喜んでくれるなら私はそれで充分嬉しいんですから!」
「…そう、ありがとう……」
「そ、それでそれで、あの…梨花? 」
「ん? 」
「…えっと、あの……その、この後はど、どうしたら…?」
「へ?」
「…お恥ずかしい話でありますが、私そういう知識があまりなくて…こ、この後どうしたらいいのか分からないんですのよ」
「ああ…そ、そうだったわね。ごめんなさい私だけ……」
「あ、別にそういうつもりで梨花に言ったのではありませんわ。まあ確かにいつもの梨花とは違う感じがして、それはそれで新鮮で楽しいんですけれど…その、やっぱり……あの、身体がまだ熱いと言いますか……ちょっとは落ち着いたんですけど、あのあの…今その梨花にキッ……キスをしてなんだかまた身体が火照ってしまったんですの。だからその…」
「ああもう分かった! 分かったわよ…だからお願い、そんな恥ずかしすぎて脳味噌がシュークリームになりそうなくらい甘いこと言わないで…う、嬉しいけど…その恥ずかしい…」
「え、あ…と、そんなつもりではないんですけれど…ちゃんと伝えないとだめだと思って言ってるんですけど、…そうですわね少し控えますわ」
「………………でも、たまには聞きたいから言ってくれてもいいわよ」

 私の思いがけない言葉に呆気に取られる沙都子。こんな拍子抜けした顔にはポカーンという音がよく似合う。

「……梨花って、随分と我侭なんですのね」


―――――


「じゃあ…いくわよ?」
「え、ええ…お願いしますわ」

 やり方が分からないっていうんだったら仕方ない、本当のところ私の身体も大分刺激が欲しかったからあのまま沙都子にシてもらいたかったというのもあったんだけど、この際もうどうでもよかった。…いやどうでもよかったという言い方はあまりよろしくないわね、沙都子の火照った身体を先に慰めてあげる事の方が先決だと苦渋を強いられながら決断したというのが正しいかしら。まあどちらにしても私の心は満たされるわけで、他の誰でもない沙都子のためだったらこれくらいの欲望を抑え付けられる事だって私には辛くない。だって…今日の今日までずっと抑え付けられていたんだから出来ないわけがない。それに沙都子に触れられるのも当然気持ちいいけれど、逆に私が触れているのも気持ちいいし、私の手で乱れる沙都子が見れるのも嬉しかったので見本を示すという感じで私が先鋒を切る事となった。

 ―という事で、もう一度最初から仕切り直し! なんてのもお互いに何だか気恥ずかしいので、とりあえず下に組み敷く沙都子の背中が畳の上とは言え痛まないように敷き布団だけ敷いてその上に寝そべってもらうことにした。
 やっぱり裸を見られるのは恥ずかしいと言う沙都子のために明かりはここぞとばかりに輝いている満月の月明りだけ。綺麗ね。――なぁんて思って見惚れたら思い返したかのように私だけ裸なんてずるいですわよ、なんていつもの沙都子の調子に言われてしまったので渋々沙都子より大分見劣りのある身体を披露する事になってしまった。

 梨花の身体は細くて、線が綺麗でいいですわね…と布団に寝そべる沙都子が羨みと慈しみのある表情を浮かべながら私の背中へ両腕を回す。この表情は沙都子の好きな表情の中でもトップ3に入るくらいのもの、…そう悟史の事を思い出す時の顔だ。実の兄を思う沙都子の気持ちは親愛という言葉で成り立つというのに、正直私は沙都子が悟史へ持つ特別なそれに対しても嫉妬した。私も沙都子の事を笑ってられないわね、きっと私の方がこの子よりももっともっと欲深い貪欲なモノなんだと思う。

 背中に回された両腕がするりと滑らかに弧を描く。ゾクリという感覚が全身に走る。――私ってこんなに感じやすいのかと危なく意識がそっちに集中しそうになるのをどうにか止めさせ、意識を沙都子の身体へともっていく。先ほどみた感じだと秘所は大分濡れているのだが、初めては何分痛い。いや、ホント痛い。あの痛みを男性が経験すると失神するという話もあるくらいだから女性は痛みに耐えながら生きているんだな。
 精神的にも肉体的にも何らかの形でたくさん傷をつけられてきた沙都子だからこそ、初めてだから、と言って強引に事を進めるのは気が引けた。だから出来るだけそこへ向かう恐怖を取り除くため、そして私を感じさせるためにする事があった。 ……いや、さすがに女性のソコを舐めるのは初めてだから上手くいくか分からないけど、圭一にやってもらった時の事を思い出せばいいかもしれない。多分。

「…みぃ、ボクはこれが初めてだから沙都子がちゃんと気持ちよくなってくれるかどうか分からないのです」
「え? でもさっき梨花―…」
「それは知識としてあるだけの話なのです、実際誰かと試した事はないのです」
「あ、それもそうですわね…」
「それとも沙都子はボクが他の誰かと経験してもらいたかったのですか?」
「……梨花」
「冗談なのですよ、ボクは沙都子以外の女の人は興味ないのです。にぱ~☆」
「……あまり笑えない冗談ですわね…」

「――何か不思議な感じがしたら言って下さいなのです」
「不思議な感じ?」
「はい、気持ちいいのが続くと段々と自分の意思ではない何かが生まれてくる事があるのです」
「…それはどんなものなんですの?」
「みぃ☆それを言ったら沙都子はそれを意識してしまうから教えてあげません、なのですよ」
「…むぅ、よく解っていますわね」
「ボクは沙都子の事をずっと…ずっと見てきたのです、それくらいは解って当然なのです」
「…梨花」
「だから沙都子は……ボクの事だけ、を感じてくださいなのですよ」
「ええ、…梨花だけを感じさせて頂きますわ」

 ちゅ、と感謝の意で軽い口付けを沙都子に落とす。
 まだ完全に咲き誇っていない沙都子の花弁を下で花開くように恭しく舌で舐める。女特有の匂いとは別に沙都子の甘い…ミルクのような落ち着かせる匂いがする。その匂いに後押しされるように丁寧に丁寧に、花弁をなぞる。

「…ん、なんだか…くすぐっ、たいですわね…ふ…ふふ」
「まだまだ、これからなのですよ」

 さっきの嬌声は身体がそれに対応していたからの事でどんな刺激も快感になっていたのだけれど、多少身体の火照りが落ち着いてしまったためか、まだ沙都子の身体では秘所への刺激も快感というより先にくすぐったいという感覚に近い。身体の発育は良くてもそういうところは多分歳を重ねないと発達しないのか分からない。…だって私と沙都子は同じ歳なんだから分かるわけもない。

「ふぁ…ぁ……」
「ん、ちゅ…どうですか? 沙都子…」
「はぅ…、ん…身体が…はぁっ、…熱くなってきまし…た…ゎ」
「いいのです…もっと、もっと熱くなるのですよ…」

 さっきまでは体温も特に変わりはなかったのだけど、段々と熱が帯びてきた。次第に沙都子の余裕もなくなり、声が段々と艶めいた女の声になっていく。
 その声がもっと聞きたくて、もっと気持ちよくさせたくて舌を押し付けるようにして舐める。…愛液の量も徐々に増えてきている、自分以外の女の人の味はこんなに魅力的なんだろうか?猫がミルクを舐めるように一滴たりとも逃さないとばかりに舐め回し、花弁に吸い付き吸い上げる。
 ―じゅぷっ…ぢゅッ、ちゅぶぶ……ッッ!

「ひゃぁ…っ!やぁ…音、あ、恥ずかし、……んぁあああっ」
「沙都子のものですよ、ボクを感じている証拠なのです…もっと、声出していいのですよ」
「や、ぁあっ、だ、…めぇ」
「もう…止められないのですよ」

 ――そう、止まる事なんて出来ない。先ほどは自分もしてもらいたいなんて思っていたけれど、今は沙都子の匂いに、声に、温かさに中てられてしまって自分を止めれない。止める気なんて毛頭ない。ただ…私は沙都子を、愛情を貪るだけ――!

「り、か…ああぁああ…ッッ!!」
「ん…沙都子…はぁッ、…どう?」
「あ、あ、…ああ!」

 もう言葉を発する余裕もなくなったのか、私の問いかけに反応が鈍くなった。返答の代わりに聞こえる嬌声が耳に心地いい。たまに寝言でむにゃむにゃ言う声ですらドキリとした事がある沙都子の声が、まさかここまで色気の含んだ声になるなんて誰が想像出来るか…きっと今この場で沙都子を啼かせている私だけしか分かるまい。
 ――他の誰にだって聞かせてやるもんか。

「沙都子、こっちはどう?ちょっと刺激が強いわよ」
「は…はひ、…ふあ、っ」

 性感高まる刺激を与え続けてくると秘所には存在を強くしてくるものが現れる。花弁の上にちょこんとある芽。
 まだ身体が温まってないと皮を被って保護しているのだけれど、血液が充満する事によってその主張は段々と膨張していきいつしか張り詰めたものとなる。その肉芽を軽く舐めてあげる。

「ああああああっ!」
「沙都子、今のはクリトリスというところよ。気持ちいいでしょう?」
「はあっ!はあ…っ、す、ご…」
「ふふっもっとしてあげるからもっと啼いて感じて。私だけに聞かせて、沙都子の声…」
「ふああああん…っ、や、はぁあっ!」

 今まで感じた事のない強い刺激に沙都子は翻弄される。目線を上に沙都子の顔を見上げてみると顔が桜色に染まり目には涙を浮かべてる。頭をいやいやと左右に振りながらも沙都子の印であるかのような八重歯を見せるくらい大きく口を開け嬌声をあげている。――やばい、それを見ているだけでも頭おかしくなりそうかも。
 肉芽を舌で上下に、左右に、はたまたぐるりと円をかくように、優しく舐める。感度がいいこの場所はあまりに強引過ぎると刺激が強すぎて痛みを伴う事がある。―というかあった。だから出来るだけ優しく、自分の中の激情を少し抑えながらも熱を加えて舐めまわす。

「んぁぁぁっ!な、…これ…梨、花ぁ…!!」
「なぁに沙都子…んむ」
「は、ぁ…頭、しろ…く、ぁあっあ、あ、ああああっ!」
「沙都子が私を感じてる証拠よ、怖くないわ…」
「や、あぁ…っ、はぅっ、あ、ぅ、ん…あ…だめ…ああ」

 刺激が強く、それに耐えよう逃れようとするのか無意識に私の舌から逃げようと沙都子の腰が跳ね踊る。女の身体ってのは天邪鬼なもので、腰を振って刺激を貪ろうとするのにわざわざ自分から逃げてもっともっとと願う。本当に勝手なものだ。
 ―今の沙都子は腰はおろか両脚ですら震えて跳ねて、身体が絶頂へ向けての準備が着実に進行していた。とろとろと甘い匂いを発しながら溢れてくる泉の根源は初めてだというのに、ひくひくと収縮してその口に咥えるモノを欲しがっている。…なんて淫猥なんだろう、この娘の…いや違う、女の淫奔さは。
 その貪淫の欲を今すぐにでも解消させてあげたいが、沙都子の身体への苦痛を出来るだけ緩和させたい…という気持ちはどこへ行ったか、自分の手でもっともっと乱れた沙都子を見たい。感じさせたい。狂わせたい。啼かせたい。壊したい。沙都子に…私だけの沙都子に私というものを刻み付けたいっ!私だけの私だけのワタシダケノ―…

「ああっ!、はあ…ぅ…ん、ぁ…んああああ」
「沙都子…沙都子…」
「り、ぃ…か…ああああ、だめ、何か…く、る…ふぅっ…ああ…んぁ」
「イって…、私の舌でイキなさい」
「や、梨花…! 梨花ぁああっ!!」
「……沙都子ッ!」

 初めての絶頂へ押し上げられる沙都子。経験した事のない宙に浮くような、身体の奥から突き上げられるような、息の詰まるような感覚に晒され、不安の塊が沙都子を覆う。沙都子の間に入っている私の後頭部をかき抱き私が今ここにいるという事で安堵感を得たのか嬌声は更に艶を増し大きくなる。
 それに伴い私の舌から逃げられないように沙都子の両脚を空いてる両腕で押さえつけ、更に私の身体ももっと沙都子に近づける。もう、沙都子は私から逃げられない――

「あ、や…ぁ…いやぁ! だめ、やぁ…怖い…ぅ、梨花…ぁっ!! 梨花ぁ! はぁ…梨花!」
「大丈夫…私がいる」
「んあ、あ、あ…ぁは…、な…か……来る…ああああ、ああっ」
「…イくのよ、沙都子」

 ―じゅるっという音と共に沙都子は今までにないくらいの声をあげる。

「ああっ! ん――ああぁああぁぁああああっっ!!!!」

 ――ビクビクビクッと身体が、四肢が跳ねる。達したのだ。
 はあはあという乱れた吐息の中に余韻が残っているのかまだ少し喘ぎが混ざる。

「は、ぁ…梨花…ん…」
「気持ちよかった?可愛かったわよ沙都子」
「は、恥ずかしかった…ですわ…はぁ、ぅ」
「そう、それは大変だったわね。…でも、これで終わりなんかじゃないわよ?」
「…へ? り、か…? …ふぅ」
「私の貴方への想い…これだけじゃ足りない。もっと…もっともっと…もっと貴方の身体に私の存在を教えてあげるわ。一生忘れられないくらいに、私を感じさせてあげる。」
「…梨花…ぁ?」
「もう…止められない、止まらない。沙都子には私の全てをあげる、だから沙都子も私に全てを頂戴」


 ――私の中の、100年も眠っていた鬼が目覚めた気がした。



夏の終わり5に続きます。

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最終更新:2007年03月28日 17:15