入江×沙都子。

入江黒幕設定(皆・祭とはいろいろ矛盾します。特に経済状態)の陵辱物。
軟禁状態でメイド服を着せてエロります。

途中で入江に気弱スイッチが入って、エロなし純愛+バッドエンドにシフト。
あなたには後半を拒絶する権利があります。





目を覚ますと、沙都子は知らない場所にいた。
フローリングに木製の家具、淡い色をした壁紙の…外国の映画に出てくる子供部屋の
ような可愛らしい部屋だった。
およそ視界に入るもの全てに見覚えがなく、唯一自分の物だと分かるのは身につけている
チェックのパジャマだけだ。
「…梨花?」
隣で眠っていたはずの親友の名前を呼ぶが、当然のように返事はない。
沙都子はそろそろとベッドから下り、ドアを開けてみた。
(ここ、どこですの?)
廊下にも見覚えがない。

彼女はひとまず部屋に戻り、少しでも情報を収集するために室内を物色した。
とりあえず、机の引き出しは空。
吊りダンス――というよりクローゼットという雰囲気だった――の中には…。

ふんわりとした黒のワンピース、白いフリルエプロン、ヘッドドレス。
多少のデザインの違いはあったが、用意されていた服は全てこの単語で説明できるもだ。
どれを組み合わせても、メイド姿にしかならない。

沙都子はため息をついた。
「…監督、ですわね?」
メイドと言えば入江。入江と言えばメイド。
雛見沢において二つの単語は完全にイコールで結ばれている。前原屋敷のご長男の名前を
知らない人間はいても、入江先生がメイド好きという事を知らない人間は多分いない。
そのくらいに入江はメイドで、メイドは入江だった。

沙都子の心から不安が消えた。
これだけメイド服が詰め込まれているということは、この部屋はまず間違いなく入江が
関与しているものだ。
沙都子を専属メイドに、などと冗談をいうことはあるが、彼女の目に映る彼は
とても真面目で誠実な人だった。
(…罰ゲームでもないのに、こんなもの着ませんわよ?)
まだ6月の終わりとはいえ、猛暑の予感が濃厚な今日この頃。
屋内を歩くのなら、パジャマで十分だった。

二階にもいくつか部屋はあったが、沙都子はまっすぐ階段を下りた。
下で誰かが水を使っている音がしたのだ。
「監督?」
「ああ、おはようございます。」
独立型の調理場で、入江が朝食を作っている。
「ここは、どこですの?」
「私の別荘ですよ。」
洋館、というやつだった。広くて、高価そうな家具が置いてあって、ここで生活して
いないのだとしたらずいぶんもったいない話だ。
「…雛見沢の家より、こちらで暮らした方がいいんじゃありませんの?」
「一応、市内なんですが、通勤するには遠いんです。全く、無駄に維持費ばかりかかって。」
入江が苦笑する。
金持ちの考える事は分からない、と沙都子は思う。
「お金がかかるなら、売ってしまえばよろしいんじゃありませんの?」
「思い出があるから、それもできなくて。子供の頃から、よく両親に連れられて来ていたんです。」
入江が二人分の朝食の乗ったトレイを差し出した。
トーストにベーコンエッグ、生野菜のサラダと紅茶。
「ダイニングに持って行ってくれますか。」
「ええ。」
どちらかといえば朝は白いご飯が良かったと思ったが、他人の家でメニューに文句を
言えるほど沙都子は無邪気ではない。
「ところで、どうして私はここにいるんですの?」
「そうですね、食事をしながらゆっくり説明しますよ。」
入江がエプロンを外す。
(…なんだか葛西さんみたい)
印象の原因は、彼が着ている真っ黒なスーツだった。
焦げ茶やグレーの上から白衣を羽織っているのは見たことがあったけれど、黒は初めてだ。
(執事?)
メイド萌えとやらが高じて、自己改造にも着手したのだろうか?
沙都子はのんびりとそんな事を考えていた。

食事を始めて、入江の最初の言葉に、沙都子のフォークからトマトが滑り落ちた。
「え?」
「沙都子ちゃんには死ぬまでここでメイドをしていただきます。」
ちぎったトーストを口に運びながら、入江が同じ言葉を繰り返す。
言葉通りの意味で受け止めることは、脳が拒否した。
沙都子は口にフォークを運ぼうとした体勢のまま、身動きがとれなくなる。
「私のことはご主人様と呼んでください。あとはひとまず、家事をお任せします。」
入江は、最初に宣言した前提での今後について話している。
沙都子はゆっくりとフォークを下ろした。
(監督は、何を言っているんですの?)
冗談ですよ、といつものように笑って欲しかった。
あの人懐っこい、そう、梨花がにぱー☆と笑うのに似た、あの笑顔が見たかった。
けれど入江は、軽く微笑を浮かべたまま、沙都子が聞きたくない話を続ける。
「ここから逃げることは考えないでください。沙都子ちゃんは致命的な病気を発症しています。
薬と注射なしでは、3日と保ちません。」
(夢? …そう、私きっと、まだ眠っているんですわ)
この異常な状況が現実であるというよりも、それはよほど可能性が高かった。
目を閉じる。
開いたらそこは梨花と暮らしている小さな家で、ちょっと特別で幸せな今日が始まるのだ。
目を開く。
入江そっくりの男が、黒いスーツで朝食をとっていた。
「…監督?」
目の前の、入江だかなんだかよくわからないものに声をかける。
彼は、少し不快そうに眉を寄せた。
「ご主人様、です。3回間違えたらお仕置きですからね。」
シャットアウトするような物言いに、沙都子は一瞬躊躇した。
「…あの、でも…私がいなくなったら、梨花が探しますわ。」
「大丈夫ですよ。」
彼は満面の笑みを浮かべた。
沙都子もつられて笑顔になる。入江のその笑顔がどんなにありがたいものだったのかを、
彼女は切実に理解した。
「梨花ちゃんは死にました。雛見沢はガス災害で村ごと全滅です。」
息が詰まった。
「…おもしろく、ありませんわ。」
「そうですか? なかなかできる経験ではありませんよ。」
入江はにぱっと笑って、食事を再開した。
「監督!」
「ご主人様。今ので2回目ですよ。」
「…私、帰ります。」
「沙都子ちゃんの帰る場所は、ここです。だいたい、雛見沢に行ってどうするんです。」
わがままをいう子供をたしなめるように、彼は小さくため息をついた。
「大好きなお友達の死体を集めて、お持ち帰りですか?」
死体。
直接的な単語に、沙都子の精神が揺さぶられた。
「黙れっ! 梨花は死んだりなんてしてませんわ! 雛見沢だって…。」
がたん、と音を立てて入江が立ち上がった。
普段とは違う黒いスーツが、彼に暗い迫力を与えている。
「ご主人様に対する口の利き方がなっていませんね。」
沙都子は椅子の上で身じろぎした。
今まで一度も入江に対して感じたことのない恐怖心がわき起こる。
「いいでしょう。立場の違いを教えて差し上げるのも、主人の仕事です。」
入江の手が沙都子の肩を掴んだ。次の瞬間には、沙都子は床に引き落とされていた。
椅子が倒れて派手な音を立てた。
「ひっ。」
床にぶつけた場所が痛いとか、そんな事を考える余裕はない。
今まで入江からは、こんな乱暴な扱いを受けたことはなかった。

パジャマのボタンが入江の手で外されていく。
疎い沙都子も、さすがに何をされようとしているのかを理解した。
「あ…いや、っ!?」
ぺちん、と。
暴力と呼ぶにはあまりにささやかな力で、けれど確かに、入江は沙都子の頬を叩いた。
「あ? あ…ごめんなさい。」
叔父からはもっと強く殴られたことがある。
こんな…跡が残るどころか、赤くさえならないような力で叩かれたところで、
沙都子が恐がるほどの出来事ではなかったはずだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…。」
それが入江だったから。
自分に危害を加えることなどあり得ないと信じていた入江だったから、沙都子は怯えた。
「そう、ちゃんとごめんなさいができるのは、良いメイドさんの第一歩ですよ。」
パジャマのボタンを全て外し、入江は無抵抗な沙都子の腕を袖から抜いた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…。」
発達途中のふくらみを揉まれる感触も、舌で嬲られる感覚も、恐怖にかられた沙都子に
とってはたいした問題ではなかった。
ただ、入江が許してくれるようにと、そればかりを考えていた。

ショーツごとパジャマのズボンが下ろされた。
産毛としか形容のできない体毛の下に、入江の指が押し入った。
くちゅっと粘液の音がする。
入江が薄く笑った。
「そんなに私が恐いですか?」
「え? あ…ごめん、なさい…。」
どんな答え方をしたら入江の機嫌を損ねないのか分からない。
叔父夫婦と暮らしていたころは、沙都子がどんな答え方をしても相手の怒りが和らいだ
ことはなかった。
「人間は、生命の危機を感じると性的な反応を示す事があるんです。」
入江の指がくすぐったい。
「簡単に言うと、命が危ないから子孫を残さなきゃ、って頑張ってしまうんです。」
くちゅくちゅと…それではこれは性的な反応なのかと、沙都子は顔を赤くする。
「う、うあ…。」
それでも、入江が怒るかもしれないという恐怖に、拒絶の言葉は声にならなかった。
「さすがにこの状況で、気持ち良くて濡れてるとは思いませんよ。」
慣らすように入り口周辺をいじっていた指が、沙都子の深くへと埋められた。
職業柄か、入江の手は凹凸が少なく繊細な印象だ。けれどそれは、成人男性にしては、
という比較の話で、自慰経験すらない沙都子には十分に厳しいものだった。
「あっ…ぐ。」
何も掴むものがなくて、沙都子は床に爪を立てた。短く切りそろえられたそれは
欠ける心配はなかったが、力が入りすぎて白くなっている指先が痛々しい。
指を抜き差しされることに、拷問めいたニュアンスしか感じていないらしく、
沙都子は目を固く閉じて耐えていた。

やがて指が抜かれると、沙都子はうっすらと目を開けた。
彼女には、叔父夫婦の元で暮らしていたころに身につけた習慣があった。
期待しないこと。
終わったと思って続いていたら、それはとても辛い。
でも、続いていると思っていて終わりだったら、少し幸運な気分になれる。
もっとひどいことになるかもしれないと覚悟して目を開けると、沙都子の前には、
予想を上回るひどい物があった。
「…!」
子供の頃にお風呂で兄のものを見たことはあった。
どことなくユーモラスな印象だったそれと、今目の前にある猛々しいものが
同じ器官とは思えない。
先ほどまで指が入っていた場所に、それが押し当てられた。
「沙都子ちゃん、クイズをしましょうか。」
「クイ…ズ?」
「私の名前はなに?」
「名前…。」
(監督、ではありませんわよね? えっと、えっと…)
恐怖に混乱する頭で必死に考える。
「い、入江、京介…。」

入江は、にぱっと笑った。
「ご主人様、ですよ? カウント3回目です。」
「あ!」
沙都子の心が絶望に塗りつぶされる。
そうだ、ヒントはあったのに。
ぐち、と入江が腰を進めた。
沙都子は歯を食いしばった。
(恐い、誰か…誰か助けて)
反射的に逃れようとする肩を、入江の手が押さえ込む。
(やだ! やだあ!)
まるで体が引き裂かれるような痛み。
(先生、にーにー、圭一さん、魅音さん、詩音さん、レナさん、梨花ぁ)
心の中で助けを求める。
瞬間、入江の言葉がよみがえってきた。
『死にました』
『雛見沢は全滅です』
(死んだのなら…助けにきては、くれませんわね…)
痛む内壁を擦られる。
沙都子は、こんな行為が男にとっての快楽だなんて信じられなかった。
視界が涙で歪む。入江がどんな表情をしているのか分からない。
ずくずくと沙都子の内側をえぐりながら…彼は笑っているのかもしれなかった。

行為が終わると、入江はシャワーを浴びに行った。
沙都子は腹部の鈍痛に耐えながら身を起こし、パジャマをかき寄せて胸に抱いた。
こんなのはきっと偽物の世界だ。
梨花が起こしにきて、沙都子は本物の世界で目を覚ます。
そして、普段より少し豪華な朝飯を食べて、学校に行く。
既に登校していた皆が、笑顔でおはようと…。
沙都子の妄想は、そこまでしか保たなかった。

想像の中で、魅音が椅子から転げ落ちた。動かない。心配そうに近付いたレナが、
そのまま覆い被さるように倒れる。
(いや、いや!)
感情は否定しても、脳内でシミュレートが続く。
圭一が、詩音が崩れ落ちる。背後で梨花が倒れる音がする。
おそるおそる振り返ると…なぜだろう? 皆と違って梨花は裸で死んでいた。
口から血を吐いて、臓物をまき散らして。
その光景の、実際に目にしたような鮮明さに、沙都子は悲鳴を上げた。
「あ、ああああ、ああ!」
パジャマを強く抱きしめる。
沙都子も梨花も気にしなかったので、パジャマはほとんど共有物になっていた。
だからパジャマからは、沙都子の匂いだけではなく、梨花の匂いもする。
「梨花、梨花、梨花ぁ!」
梨花に会いたい。
嫌なことをされて可哀想だと、頭を撫でて欲しい。

パジャマに顔を埋めて泣いていると、入江が帰ってきた。
スーツの黒が、沙都子には死神の色に見える。
「お風呂あきましたから、どうぞ。」
パジャマを抱いて、よろよろと部屋を出て行く。
「ああ、沙都子ちゃん。」
「…はい?」
「私の名前は?」
「ごしゅじんさま。」
ほとんど無意識に出た回答に、入江は満足そうな笑みを浮かべる。
「よくできました。」

温かいシャワーを浴びていると、沙都子に少し元気が戻ってきた。
赤と白の入り交じった液体が、太ももを伝って排水溝に流れていく。
(死のう)
多分、それが一番幸せな選択だ。
雛見沢が全滅してしまったのなら、沙都子にはもう帰る場所はない。
大切な人は誰もいない。
…入江だって、ここにはいなかった。
沙都子の知っている入江京介は、焦げ茶色のスーツで、馬鹿なことばかりを言うけれど
とても優しかった。あんな、黒い服を着た鬼のことなんて知らない。
沙都子は浴室内を見回した。
シャンプーとリンスのボトル、ボディブラシ、石けんと…。
(これじゃ、切れませんわよね…)
ステンレス製の石けん皿を指で触って確認する。皿の縁はくるんと丸めてあって、
楕円形だから角もない。どんなに頑張っても、手首の上に擦り傷を作るのが精々だった。
(…まあ、いいですわ)
入江は、沙都子に家事を任せると言っていた。調理をすれば刃物も使うだろう。
そもそも、積極的に自傷しなくても死ぬのは簡単だった。
隙を突いてここから逃げればいいのだ。
入江が、薬なしでは3日保たない、と言っていたではないか。
希望と呼ぶにはあまりに悲しい決意を抱いて、沙都子はメイド服に袖を通した。

ダイニングに戻ると、入江は沙都子のメイド姿を褒めた。
「とってもよくお似合いですよー。」
「…ありがとうございます。」
沙都子にとってはどうでもいいことだが、ひとまず礼を言っておく。
「冷めてしまいましたが、召し上がりますか?」
結局1口も食べてていなかったが、沙都子は首を振った。
「食欲が、ありませんの。」
「では、薬だけですね。」
本当は空腹時に飲むのは良くないんですが、と言いながら、入江が錠剤を用意していく。
渡された中に、見慣れない色の錠剤があった。
「赤ちゃんができないようにするお薬ですよ。」
赤ちゃんという幸せな単語と、先ほどの悪夢に関連があることが、沙都子には実感できなかった。
「私も沙都子ちゃんも、公的には死んでいますから。親にはなれません。」
薬に関しては、沙都子に不服はない。
そもそも、あんな悪夢の中で「赤ちゃん」なんて可愛いものが宿るとは思えなかった。
沙都子の腹に何かが芽生えるとしたら、それはきっと鬼だ。

錠剤を飲ませると、入江は沙都子を二階に連れて行った。
「この部屋、見てみようとは思いましたか?」
鍵の束から、古めかしい形の真鍮の鍵を選び出している。
「いいえ。」
一階に入江がいると思ったから、他の部屋は触らずに下に行った。
…まさか鬼がいるなんて思わなかったけど。
「そうですか。普段は開けっ放しなんですけど、今朝は沙都子ちゃんを驚かせようと
思って、特別にかけておいたんですよ。」
驚かせる?
もう十分に驚いた、と沙都子は思う。これ以上驚くことなんてないはずだ、と。

部屋の中は、窓からの光で明るかった。
光を受けてベッドのシーツが輝いて見える。点滴の中で、ぽたり、ぽたり、と黄色い
薬液が落ちている。手足を拘束された彼の胸は、呼吸にゆっくり上下していた。
「に、にーにー!」
駆け寄ろうとした沙都子を、入江が羽交い締めにする。
「起こすと、あなたが殺されますよ?」
あり得ない警告。
それでも、この異常な世界の中では、そちらの方が正しいのかもしれない。
もがくのをやめた沙都子に、入江が説明を続ける。
「悟史くんは、沙都子ちゃんと同じ病気を発症しています。そして、より重篤です。
適切な治療がなければ保って1日。目を覚ますと、視界に入る人間を見境なく襲います。」
それが今の悟史だと、入江は言った。
上から研究は打ち切られた、と。回復は望むな、と。
解放された沙都子は、ふらふらとベッドに近付いた。

この二年で、悟史はほとんど成長していないように見えた。
肌は青白く、頬はやつれている。
悟史の胸の上にメッセージカードがあるのに気づき、沙都子はそれを手に取った。
英語はまだほとんど読めないけれど、その単語はときどき見かけることがある。
「ハッピー…。」
カードの内容が分かった瞬間、沙都子は入江の意図を理解した。
「悟史くんは、沙都子ちゃんへのプレゼントですよ。お誕生日おめでとう。」
悟史が失踪してから今日まで、彼の帰還が一番の願いだった。

めまいがする。
沙都子がここから逃げ出せば、彼女は3日で死ぬだろう。
どんなに苦しんでも3日。
そうすれば、誰にも迷惑をかけずに彼女の苦痛も孤独も葬ってしまえる。
…では、悟史は?
沙都子が逃げ出した次の日、入江は悟史を治療するだろうか?
「…ご主人様。」
やめろ、ともう一人の自分が警告している。
言えばすっきりするかもしれないけれど、それは報復に見合うだけのこと?
「はい、なんですか?」
それでも沙都子は、どうしても我慢できなかった。
「お前なんか死んでしまえ。」
入江はきょとんとして、それから喉の奥でくっくっと笑った。
「まだ教育が足りなかったようですねえ。」

眠る兄がいる部屋で、沙都子は入江にうつぶせにされた。
両肩を床に押さえられて、腰を上げさせられる。
(にーにー、にーにー…)
心の中で兄を呼ぶのは、もう、助けを求めてのことではなかった。
(今度は私がにーにーを守りますわ。沙都子は、強くなったんです)
スカートをたくし上げられ、ショーツが下ろされる。
流れきっていなかった鮮血と入江の残滓が、そこを広げた彼の指を伝う。
ベルトを外す音がして、予告もなく押し入られた。
「ぐっう…。」
(痛くない!)
自分に言い聞かせるように、沙都子は心の中で叫んだ。
(こんなの、痛くなんてない!)
ダイニングでの続きをするように、入江は沙都子を蹂躙した。
快楽と、苦痛と。違う理由で乱れた二つの呼吸音が、白い部屋の中に満ちる。
病室めいた部屋の中で、その音はどこか背徳的だった。
入江は沙都子の腰を掴み、ゆっくりと前後に揺する。
先ほどは、ひたすら早く終わってくれることを祈っていた沙都子だったが、
今はどれほど続こうと構わないと思っていた。

この苦しみは試練。
兄を追い詰めた自分への罰だ。

沙都子の腰を掴んでいた手に、一瞬力が入る。
どろりとした物が流れ込む不快感に、沙都子は身を震わせた。

 ▼

その別荘は、山の深いところにあるようだった。
食料などの買い出しには、入江は必ず自動車で出かけてたし、ちょっとした買い物に
行っても、最低2時間は帰って来ない。

入江が買ってきた週刊誌に雛見沢ガス災害の事が書いてあった。
それは偽造品には見えなくて、沙都子はこの現実を受け入れざるを得ない。
一つ疑問だったのは、災害が起こった日時だった。
入江が災害の話をしたのは6月24日。
週刊誌に記載されている日付は6月26日。
古手梨花はときどき未来を予言することはあったけれど、こんな大それた予知なんて
やったことがなかった。
「ああ、これは予定されていた災害ですから。」
沙都子の疑問に、入江はそう答えた。
「雛見沢の病気を人間ごと撲滅する。そういう計画になっていたんです。」
予定されていた?
計画?
(じゃあ…)
「雛見沢は、人に滅ぼされたんですの?」
「ええ。」
それがどうかしましたか? そんな気安さで、入江は頷いた。
「…ご主人様は、知って、いたんですのね?」
「はい。」
外国語の医学書をめくっていた彼が、面倒そうに顔を上げる。
「知っていました、とめませんでした、むしろ協力しました。」
「そんな、見捨て…。」
彼はページにしおりを挟んで、本をテーブルに置いた。
「見捨てました。…沙都子ちゃん、さっきから主人に対して少々口が過ぎませんか?」
「え? あ、ごめ。」
言い終わらないうちに、入江が沙都子の腕を引いた。
沙都子はバランスを崩して、入江の膝に倒れ込む。
「口でどうぞ。」
「は、い…。」
ズボンの前を緩め、沙都子は教えられた通りに口に含んだ。
できるだけ奥までくわえて、入り切らなかった部分に指を絡める。
そして、飲み下さなくてはいけない物を出させるために舌を動かし始めた。

ここに来てから毎日のように強要されているが、沙都子は一向に慣れることができなかった。
口に出されれば吐き気がするほど不味いし、組み敷かれれば内側からの圧迫感が苦しい。
濡れるのだけは上手くなったが、それは自分の体を保護しようという反応でしかなく、
入江もそれは分かっているようだった。
こんな自分に相手をさせていて楽しいのか、沙都子は疑問に思う。
雛見沢の人間なら誰でも選べたのだから、成熟した女性を連れてくれば、
もっと楽しめただろうに。

入江が沙都子の頭に手を置いた。
「ん…。」
置きやすい場所にあったから、といった軽い動作だ。ただ、その感触が沙都子に
悟史や梨花から撫でられたときの記憶を思い起こさせた。
罪悪感を覚える。
こんな状況下で大好きな人の記憶を思い出すのは、いけないことだ。

口中に放出されたものを、呼吸を止めて飲み込む。
付着していた分を舐めてきれいにして、入江のズボンを元通りに直した。
(…なんの話をしていたんでしたっけ?)
嘔吐感に耐えながら記憶をたどる。
(そうでしたわ。監督は雛見沢を、見捨てた…)
「沙都子ちゃん、紅茶を入れてください。」
「…はい、ご主人様。」
再び洋書を読み始めた入江に背を向けて、沙都子は調理場へ向かった。


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最終更新:2007年03月13日 18:05