※ページ名を変更しました。 前名:無題(魅音×詩音)

魅音×詩音で、ほぼ一通りやっちゃってます。

監禁+衰弱+ぬるめの陵辱。
祭囃し編以降の設定で、発症してます。





373 名前: ◆o2UNZnwfxA [sage] 投稿日: 2006/12/29(金) 19:11:40 ID:oY8/5KQE
 お姉が狂った。

 より正確に言えば、雛見沢症候群を発症した。
「はぁ…。」
 それが分かったところで、園崎の地下牢に閉じ込められている現在、
私に勝ち目はないも同然だった。

 牢の格子はびくともしないし、まさかお姉が鍵を掛け忘れるようなミスはしないだろう。
おまけに手首には枷がはめられていて、そこから伸びた太い鎖は牢の外の壁の巻き取り機に
繋がっている。
 最初は、単に牢に閉じ込められただけだった。
 食事を持ってきたお姉の隙を突いて脱出しようとしたせいで、報復措置のように手枷と鎖の
オプションが追加された。園崎家の地下には拷問や拘束に使うための道具が、それこそ
商売を始められるほど豊富に揃っているのだ。
 手枷の件については、私も自分の読みの甘さを反省している。渡米して受けた訓練の中に
素手で戦う際の対処方も含まれてはいたが、メインは射撃と狙撃補助だったのだ。
鬼を継いで以来、道場で正規の修業を積んでいたお姉相手に、武器なしで勝てる
はずがなかった。

 今になって思い返せば、お姉はここしばらく よそよそしい雰囲気を漂わせていた。
ただ、それは私が双子の姉妹だから気付けた程度で、予兆と呼ぶにはあまりにも
ささやかなものだ。
 だから、マンションの部屋にも入れたし、出された料理にも箸をつけた。
…多分、カクテルに薬を入れられていたんだと思う。グラスに口をつけて、少し変な味がした気がして、
そしたらお姉が『美味しくない?』って聞いたから、私は『美味しいですよ』って答えて
飲み干したんだった。甘くて炭酸が効いていたから舌が麻痺してしまって、二口目からは
味の異常さに気付けなかったけど。

 口の中に、あのときの薬の味がよみがえってくるような気がした。
 …だけど私はお姉の事は恨まない。悪いのはお姉ではなく病気なのだから。
お姉に罪があると思うということは、悟史くんにも罪があると考えるのと同義だ。
病気が起こした出来事を本人のせいにしたら、私は二度と悟史くんには会いに行けない。

374 名前: ◆o2UNZnwfxA [sage] 投稿日: 2006/12/29(金) 19:12:14 ID:oY8/5KQE
 階段を下りてくる足音がした。
 ぱたん、ぱた、ぱた、ぱたん、ぱた、ぱた。
 スキップするような、少し癖のあるリズム。
「はろろ~ん。今日の夕飯はハンバーグですよ。」
「…そのしゃべりかた、やめてください。」
 私の口調を真似て、私のブレザーを着て、足音まで再現してお姉が牢に入ってくる。
「あはは、ごめんごめん。でも、とっさに魅音が出ないように気をつけてないとね。」
 園崎魅音は病床にあり園崎詩音が世話を焼いている、それがお姉の用意したシナリオだった。
 私が消えれば葛西が探しに来てくれると期待していたのだが、時々マンションの方にも
泊まって偽装工作をしているらしい。
 地下牢に放り込んでおいて、病気療養中とは…少なくとも鬼婆はお姉に協力しているということだ。
それはいい。いや、よくはないが、魅音の要請があれば詩音の監禁を許可するだろうと推測はできる。
「…お姉って、皆に嫌われてるんですか?」
「え? なにそれ。」
「こんなに長く休んでるのに、お見舞いに来ようとか、そういう話は出ないんですね。」
 圭ちゃんたちが申し出ても、当然お姉は見舞いは断るだろう。
だけど学校の皆が疑問に思ってくれれば、お姉が発症していると気付いてもらえるかもしれない。
「魅音はちゃんと心配されてるよ、失礼だなー。」
 失礼だと言ってはいるが、あまり気にした様子もなく笑っている。
「ただね、今の魅音には詩音以外は全部敵に見えちゃうから。会っても辛いだけだし
魅音の病気にもよくない。」
 ………そういう設定になっているのか。それならば、皆が遠慮するのも頷ける。
 魅音と親しい者は症候群の存在を知っている、だから「詩音」の納得して引き下がる。
病気の存在を知らない者は、多少不審に思ったとしても魅音が園崎家にいる以上は
踏み込んで来たりはしない。私にとっては不利な条件が重なってしまっている。
「食べないの? 冷めるよ?」
「…食欲がありません。」
「そう、じゃあ先に打っとこうか。」
 お姉がポケットから銀色のケースを取り出した。
 中から出てきたのは、小さな注射器だった。鋭い先端に照明の光が反射している。

375 名前: ◆o2UNZnwfxA [sage] 投稿日: 2006/12/29(金) 19:13:19 ID:oY8/5KQE
「詩音、*****が***って、分かってくれないかな。」
 注射器を手にしたお姉が、いつものように自分の妄想を私にも認めさせようとした。
妄想に付き合って見せれば、あるいは私は解放されるのかもしれない。
だが、私には上辺を取り繕うことさえできなかった。それは私の根幹に関わる問題で、
一度頷いてしまえば二度と元の場所に戻れなくなってしまうような気がする。
 沈黙を拒絶を見なして、お姉が私の腕をとった。
 血管を捜して、親指が私の肘の内側をぐりぐりと探る。
「ほら、力抜いて。」
 皮膚に消毒用アルコールの冷たい感触。そして、ずくっと針先が押し込まれた。
 中身は雛見沢症候群の治療薬だ。
 悟史くんや沙都子が使っているのと同じ、症候群の症状を抑えるための薬だった。

 やっかいな話なのだが、お姉は私が発症していると信じ込んでいた。
 お互いに相手が発症していると主張しあって、会話は平行線だ。

 私の腕から注射針が抜かれた。
 そしてお姉はケースから次の注射器を取り出し、私に見せるように、お姉自身の腕に
注射した。
 発症しているのはお姉の方だと説得を続けた結果、わがままな子供をあしらうように
自分にも注射するから私にも注射を受けるように、と条件を出された。

 …薬の性能が良くなっていたことが裏目に出た。
 昔の治療薬は健常者に投与すると深刻な副作用を招いたらしいのだが、現在のそれには
ほとんど副作用がなく、悪くても軽い眩暈や吐き気を感じる程度のものだ。
 発症していても、そうでなくても、投与されたことによって劇的な作用を見せることがない。
お姉と私のどちらが発症しているのかを、薬は証明してくれない。

 副作用がほとんどないとはいえ、必要のない薬を注射されるのは嫌なものだ。
けれど、ひきかえにお姉が注射を受けてくれるなら、妥協しようと思う。
 薬は期待したほどの成果は上げてくれなかったが、お姉の症状がこれ以上悪くなるのを
防いでくれていると考えれば、納得できなくもない。
 …それに、お姉は、お姉自身の注射こそ不要なものだと認識しているはずだ。
私が発症していると信じ込んで、その治療のために、自己の体に不要な薬を注射している。
前提が間違っていても、そこに私に対する悪意はなかった。ならば私も、お姉のために
不要な注射を受けるべきだと思った。
 牢にも手枷にも、お姉の悪意は存在しない。発症した私を保護しようという、愛情から
用意されたものだった。
 だから私は耐えていられるのだと思う。

376 名前: ◆o2UNZnwfxA [sage] 投稿日: 2006/12/29(金) 19:13:55 ID:oY8/5KQE
「どうしたら、私の言葉を信じてくれるんだろう。」
 注射器を片付けながら、お姉が疲労と苛立ちの滲んだ声で呟いた。
「…何をやっても無理ですよ。」
 お姉が認めさせたがっている内容に、真実は無い。嘘だと分かっている話は、
どうやったって信じることはできない。
「ねえ、*史**は**だんだよ? もう、**********?」
 お姉の妄言が私の精神を削る。
 監禁されていることよりも、日に三度の注射よりも、お姉の言葉がずっと痛い。
 その言葉には私を傷つけようという意思はなく、だから余計に深い傷をつけた。

 何がお姉のトリガーを引いたのだろう?
 失恋が原因になった可能性は高いと思う。ああ、クリアだった思考がどんどん鈍っていく。
お姉の言葉をそのまま受け入れてしまいそうになる。
 私は両腕で頭を抱えた。そんなことをしても、お姉の妄言から自分を守ることはできないのに。
「やめてください…やめて。」
 心の中の悟史くんに縋りつく。陽だまりのような笑顔に、優しい手の感触に…。
「悟史くん…。」
 口に出してしまった途端、お姉が激昂した。
「だから! 悟史は帰って来ないって言ってるでしょ!」
 心臓が痛い。
「悟史は*んだの、もうどうにもならないんだよ。」
 お姉が私の肩を掴んだ。
「…詩音、こっちを見てよ。悟史くんのことばっかり見てちゃだめなの。」
 私は頭を振って拒絶を示す。
 やはり原因は、失恋に違いない。お姉に圭ちゃんがいないのだから、私に悟史くんが
いるのが辛くなくなったのだと思う。だから、悟史くんが*んだと思い込んだ。
 でも、悪いのはお姉ではなかった。悪いのは病気。病気のせい。病気が。

 床の上で丸くなって反応を殺していると、流石にお姉も諦めてくれた。
「…詩音。そのご飯、詩音のために一生懸命作ってるんだよ。あんまり残さないでね。」
 そしてお姉は、足音に私の癖をつけて階段を上がっていった。
 顔を上げ、夕飯の乗ったお盆に目を向ける。
 ハンバーグ…好きだけど、とにかく食欲がなかった。

377 名前: ◆o2UNZnwfxA [sage] 投稿日: 2006/12/29(金) 19:14:39 ID:oY8/5KQE

 努力はしたが、完食できなかった。
 朝食を持ってきたお姉は、半分以上残された夕食を見て顔を曇らせた。
「…ごはん? 注射?」
 私は黙って腕を差し出した。痛いほうから済ませたい。
 お姉は手早く注射を済ませると、私の手首から肘、二の腕のあたりまでを軽く撫でた。
「痩せたね。」
 お姉が太ったんじゃないですか、と軽口を返したかったが状況を考慮して自制する。
実際、服が緩くなっているのも事実だ。
「これ片付けてくるから、ごはん食べててね。」
「はい。」
 地下牢を出て行くお姉を見送って、ふと違和感を覚える。
 まるですぐに帰ってくるような口ぶりだった。
 地下に閉じ込められてから日時の感覚が鈍くなりつつあるが、確か、今日は学校が
あるはずだ。

 お姉は私の私服を着て戻ってきた。朝食が運ばれてきたタイミングから考えると、
もうそろそろ登校時間のはず。
「お姉、学校は?」
「今日は祝日。」
 頭の中のカレンダーを探る。
 監禁された日から考えて、祝日ということは…。

 1ヶ月以上ここにいたという事実に気付き、私は愕然とした。
 日時の感覚がおかしくなっているという自覚はあったが、2週間を少し過ぎたくらいだと思っていた。

 お姉が地下牢の床にお湯のバケツを置いた。ふわふわのタオルも持っている。
「…あれ、朝からお風呂のサービスですか? 祝日特典?」
「まあね。」
 お姉は一度牢の外に出ると、私の手枷から繋がっている鎖を機械で巻き取った。
「え?」
 注射に抵抗していた頃は、そうやって格子の外まで腕を引きずり出されて固定されていた
ものだが、最近は大人しくしているので緩みっぱなしにしてくれていた。
「あの、お姉? 何かありましたか?」
 異常事態だと本能が告げている。いや、そもそも監禁されている段階で事態は異常なのだが。
それを上回る何かが起きようとしている。

378 名前: ◆o2UNZnwfxA [sage] 投稿日: 2006/12/29(金) 19:15:33 ID:oY8/5KQE
 お姉は黙って牢の中に戻ってきた。
 その手が、当たり前のように私のシャツのボタンにかかる。
「ちょ、お姉?」
 片手は牢の外まで引っ張り出されていたので、唯一自由になる方の手でお姉の手を掴む。
「なに?」
 それはこっちのセリフだ、と思う。
「なに、って、お姉こそなんなんですか?」
「拭いてあげる。」
「いりません。」
「でも、そのままじゃ、やりにくいでしょ?」
「はい、やりにくいですけど。」
 会話になっているのに、意思の疎通ができない。
「っていうか、これ緩めてくださいよ。」
 私はじゃらじゃらと鎖を揺らした。
「終わったら緩めてあげる。」
「いや、だからどうして今、鎖をこんなに短く…。」
 お姉が無造作に手首を返すと、しっかり掴んでいたはずの私の手は簡単に外れてしまった。
そのまま手首を掴み返され、鉄格子に向かって押し付けられる。
 後ろから覆いかぶさるようにして、お姉が私のボタンを外していく。
「ちょちょちょっ、そんなに私の裸が見たいんですか!」
「見たい。」
 …は?
 予想外の返答に、私の思考がフリーズする。その間も、お姉の手はとまらない。
「って、そんな! 見ても別に面白くなんてないですよ! 同じ体してるんだから、鏡でも
見ててください。」
「同じ?」
 怒りを含んだ声に、体がびくっと震える。
 ボタンを外し終わった手が、シャツの隙間から進入してくる。お腹からわき腹にかけて
ゆっくりと肌の上を移動して、そのまま肋骨の辺りに上がってくる。骨の一本一本を
確認するように、指先が肋骨のくぼみをなぞる。
「服着てたら分からない、と思ってた?」
 ぎゅうっと背中にお姉の体が押し付けられた。胸やお腹や太ももの、そのむにむに
した感触は今の私と「同じ」ではない。
 サイズが合わなくなって下着としての機能をほとんど果たしていなかったブラの隙間から、
お姉の手が入ってくる。
「お姉っ?」
 私は悲鳴のような声を上げた。
「アンダーなんて、ちょっと体重が減ったぐらいじゃ変わらないのに、こんなに浮いてる。」
 乳房に手の平が添えられているだけなのに、それも相手はお姉なのに、顔から火が
出るかと思うほど恥ずかしい。
「嫌、おねえ。」
 必死にもがいても、押さえ込む術に長けているお姉が相手では何の効果も上げられない。
 ブラのホックが外される。普通は脱がせにくいはずのジーンズも、サイズが合って
いないせいで簡単に引きずり下ろされてしまった。
「待って。待って、お姉。私、そんなに怒らせるようなことしました?」
「してる。」
 お姉の回答は短く、取り付く島もない。
「食事残したことについて怒ってるなら謝りますから、こんなやり方はやめてください。」
 手が止まる。

379 名前: ◆o2UNZnwfxA [sage] 投稿日: 2006/12/29(金) 19:16:32 ID:oY8/5KQE
 ほっとして息を吐いた瞬間、お姉の手がまた動き始めた。
「お姉ぇ…。」
「そんな表面的なことに怒ってるんじゃない。」
 お姉を怒らせている根本的な原因といったら、悟史くんのことしか心当たりがない。
 絶望的な気持ちになる。
「だって、それ、無理ですよ?」
「無理じゃない。悟史のこと忘れて、幸せになって。」
「…悟史くんのこと忘れたら、私、幸せになんてなれない。」
 足払いをかけられた。
 鎖に片手を引っ張られた体勢で、私は地下牢の床にしりもちをつく。手枷と鉄格子が
ぶつかり合って、ひどく暴力的な音を立てた。
 かろうじて膝で止まっていたジーンズが一気に引き抜かれた。
シャツも脱がされそうになったので、肘を曲げてガードする。
「ごめん、破れるから。この服、気に入ってるの。」
 それはお姉の事情であって、私には関係ない。
 私にお姉の服を着せたのも、今、脱がせようとしているのも、お姉の都合だ。
「…分かった、買い直す。」
 お姉は勢い良く袖を引っ張った。破れてもかまわない、という瞬発的な力で、
シャツはあっさりと私の腕から抜けた。

 …私はまったくひどい有様だった。
 下はショーツと靴下だけで、上はシャツとブラが手枷の辺りまでずり上げられて
くしゃくしゃになっている。まるで強姦されかけた女の子だ。
 それ以上にひどかったのは、お姉の目にさらされている自分の体だった。
筋肉と脂肪が落ちたせいで、鎖骨や肋骨が気持ち悪いくらいくっきりと浮いている。
腕や足も、肉が落ちすぎたせいで間接部分が変に大きく見えた。

 お姉がお湯に浸したタオルで私の体を拭き始めた。
 私の体の肉付きを検分するように、ゆっくりとタオルが肌を撫でていく。
 タオルが触れている箇所は暖かいけれど、通り過ぎた箇所は気化熱で冷たくなって、
私は少し身震いした。
 心底、自分が無様だと思う。
 武術的な力量差はしかたないとしても、体力が落ちていくのを放置していたのは
まずかった。こんな体ではお姉の隙をつけたとしても、逃げる途中でばててしまうだろう。
 私の逃走には、もちろん自分の自由がかかっていた。だが、それだけではない。
入江診療所まで行って、お姉の発症を知らせなければならないというのに…。

 せめて顔を背けて、お姉と目を合わせないようにする。
 上半身を拭き終えたお姉の手がショーツにかかった。
「冗談、ですよね?」
 確認を取るような言葉で牽制する。
「なにが?」
 回答はそっけない。
 突き放すようなしゃべり方に、私はやっと、そこにいるのが魅音ではないのだと気付いた。
 彼女は園崎家の次期頭首だ。

 ならば彼女は、始めたことにためらいなど見せないだろう。
 ためらうことは隙を見せているのと同じことだ。
 園崎の頭首は、他人に隙を見せたりなどしない。

380 名前: ◆o2UNZnwfxA [sage] 投稿日: 2006/12/29(金) 19:17:22 ID:oY8/5KQE
 全てを頭首の前にさらして、私は清めを受けた。
 ショーツも靴下も取り去られ、手枷のところに半端に残った衣服が、却って異質に思えてくる。
 彼女の手が私の頬に触れ、顔を上向かせた。
「詩音、悟史に抱かれた?」
 奥手なお姉からは想像もつかない質問だった。
 とっさのことで上手く切り返せない。顔に血が上っていくのが分かった。
「…そう。じゃあ、駄目になったら諦めつくかな。」
 表情から回答を読み取って、彼女は私に口付けた。

 唇に、頬に、鎖骨に、触れてくる唇は柔らかく暖かだった。
 反射的に抗おうとした手は彼女の指に絡め取られて、そっと床に押し付けられる。
互いの指が深く絡み合って、まるで最初からそんな風に生まれてきたようにぴったりしていた。
 彼女のもう一方の手が私の胸をまさぐる。手の平の中で乳首が固くなる。
 …これって、感じてるってやつですか?
 いや、これは単なる物理刺激への反応で、相手がお姉なのに感じるわけなんて…。
「んっ。」
 変な声が出た。彼女が私の胸を口に含んだからだ。
 赤ちゃんがおっぱいを吸うように、単調にちゅうちゅうと口を動かしている。
多分、あまり上手くはないのだろう。…比較できる経験がないから分からないけど。
 稚拙な刺激に、私の体は簡単に反応してしまう。
 はしたなく勃ち上がった乳首を唾液でべたべたにしたまま、彼女の舌が這い上がってきた。
 胸の上を通り、鎖骨のくぼみをなぞり、首筋を舐め上げる。
「は…うん。」
 鋭利な刃物で皮膚の上を撫でられているような恐怖心と、親猫に毛並みを整えてもらって
いるような安堵感とが入り混じって、私は自分で自分の体のことが分からなくなりそうだ。
「んうっ。」
 耳たぶを甘噛みされた。
 密着した手の平に、どちらのものとも分からない汗を感じる。それがどちらのものか
考察することは無意味だった。私達は同じ材料でできている。
 私の呼吸の乱れは隠しようもなく、そんな私の反応に彼女が欲情していることも疑いようがなかった。
 どこまでが詩音で、どこからが魅音なのか曖昧になっていく感覚。

381 名前: ◆o2UNZnwfxA [sage] 投稿日: 2006/12/29(金) 19:18:24 ID:oY8/5KQE
 乳房を揉んでいた手が下へと向かう。
 くちゅりと淫らな音を立てて、私の体はあっさりと彼女の指を受け入れた。
自分の指さえ知らなかったそこが、今はとろんと溶けて挿入を待ち望んでいる。
「ん…んんっ。」
 ゆるゆると、もどかしいくらい慎重に内をさぐりながら指が進入してくる。
 私自身が驚くほどすんなりと指は根元まで埋まってしまった。

 ゆっくりと抜き差しされる感触が、単なる異物感とは違う感覚を呼び起こし始める。
 認めよう。
 私は彼女の愛撫に快楽を見出していた。
「んっ、ふ…ふぁ、あ?」
 酸素を求めて開いた唇に、彼女の唇が降りてきた。口中から舌を吸い出され、舐められる。
 頭がくらくらするのは、酸欠と快楽のどちらが原因なのだろう?
 体から力が抜けていくのが少し恐くて、私は繋いだ手に力を入れる。
彼女の手が応えるように握り返した。
 魅音も詩音も望まない行為の中で、二人の手だけは互いを求めるように固く握り合っている。

 一度指が引き抜かれ、2本に増えて戻された。
 さきほどまでとは比較にならないほどの圧迫感が押し入ってくる。
「くっ…ふぅ。」
 無理だという予感があった。
 だけど、それを過ぎてなお私が変わらなければ、お姉は諦めてくれるかもしれない。

 私の内側で、ふつりと何かが切れる痛みが走った。
 思わず眉を寄せる。
 …悟史くん、許してくれるかな。

 感触で気付いたのか、彼女が私の中からそろそろと指を引いた。
 瞬間、頭首の仮面がはがれたようだった。
 指を濡らす鮮血に、お姉は今にも泣き出しそうな顔をしている。
 …詰めが甘いんだから、この子は。
 自分で決意したくせに、最後の最後でお姉は頭首から魅音に戻ってしまった。

382 名前: ◆o2UNZnwfxA [sage] 投稿日: 2006/12/29(金) 19:19:09 ID:oY8/5KQE
 下腹部の鈍痛に耐えて上体を起こす。
 固く握り合っていた手を解いて、お姉の頭を抱き寄せた。
「…私は、お姉を許します。」
 お姉は小さく震えて、おずおずと私を見上げた。

 処女をなくしたくらいで悟史くんへの気持ちが断ち切られると思われたのは心外だけど。
 お姉が私のことを大事に思ってくれているのは分かっているから、私はこの子のことを許せる。
信じられる。
 お姉は悟史くんと同じで、病気に惑わされているだけだ。

 ごめんね、悟史くん。処女、あげられなくなっちゃった。
 でも、悟史くんや沙都子と同じくらい、お姉のことも大事なの。
 お姉を許したこと、許してくれると嬉しい。

 私はずっと選択を間違え続けてきた気がしている。
 そんな風に考える理由なんてないはずなのに、その自己イメージが心の奥までこびりついて
離れない。
 悟史くんが帰ってくることを信じ続けること。お姉が敵ではないと信じ続けること。
それを諦めたら、私はどこか暗い場所に落ちていってしまうような気がする。

 泣きじゃくるお姉を強く抱きしめた。
「大丈夫ですよ、お姉。」
 病気の壁の向こうに届くことを願って、私は言葉を繰り返す。
「大丈夫、きっと未来は幸せで出来てるんです。」
 悟史くんがいて、お姉がいて、沙都子がいて、みんながいて。
 泣いている誰かのいない未来が、きっと来てくれる。
「っく、で、でも、悟史はもう。」
 唇で唇を塞いで、お姉の言葉を遮る。
「し、おん?」
 私からお姉への初めてのキスだった。
 そしてまた、暖かくて柔らかいお姉の体に抱きつく。
「大丈夫です。大丈夫ですから。」
 落ち着かせたくてそう言ったのに、お姉はまたしゃくりあげてしまう。
「…あたしたち、どうしてこんなに、なっちゃったんだろうね?」
「…さあ、どうしてでしょうね。」
 泣き続けるお姉を抱いて、私にはただ未来を信じることしかできなかった。

<終>

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最終更新:2007年03月11日 21:48