「ねーねっ! 何してますの?」
沙都子が突然、飛びついてきた。
私は、慌てず騒がずノートを閉じる。
「ねーねー、漫画描けますの? すごいですわ!」
解ってる。
沙都子は私を褒めに、ここに来たんじゃない。

私と沙都子は、私がこっちに泊まっている時限定で、
昔の北条家に住み着いている。
時々は掃除しておかないと、悟史くんが帰ったときにびっくりするからだ。
「ねぇ……ねーねー、今日は……その……」
「なぁに? 沙都子?」
褒めに来たのではない沙都子が望むことは一つだけ。
それを知っていても、私は意地悪をしてその言葉を言ってあげない。

「マッサージ、今日もするんですわよね?」
「ん、もうそんな時間ですか」
時計が九時を指した時は、マッサージの開始の時間だ。
今日はもう、九時半。
沙都子が痺れを切らして、こっちに来たのだ。
「でもねぇ、沙都子? ねーねーがお仕事をしているときは、
沙都子の部屋で一人でマッサージしときなさいって言ってるでしょ?」
「一人でするのは……さみしいんですの」
沙都子があからさまに悲しそうな顔をする。
昔、私に見せてくれる表情は限られていたのに、
今の沙都子は全ての表情を見せてくれるのだ。

「わかりました、沙都子。じゃ、服を脱いでください」
「わかりましたわ! お待ちくださいませ!」
沙都子が、慌てて服を脱ぎ始める。
単純でかわいい子だ。
沙都子の、うらやましいぐらいのピンクと肌色の部分が露になる。
あと数年もしたら、全男子が羨望のまなざしで見るようになるんだろう。
今の沙都子の胸は、私が沙都子の時ぐらいの胸より大きかった。

「あの……ねーねっ、脱ぎましたわ」
「うん、よし。じゃ、私も脱ぎます」
私はわざと、そろそろと服を脱いでいく。
沙都子が、それをじれったく感じたのか、
手伝いますと言って一緒になって服を脱がしにかかってくれた。
それが逆に遠回りになるということを、
沙都子はいつ気がつくだろうか。

「ね、ねーねっ、してくださいまし、してくださいましっ!」
沙都子のぴったりと閉じた桜色の部分は、
雨が降った後より酷いことになっていた。
「だーめ、沙都子。まず上から順番ですよ」
「はやくはやくぅ」
本当にうれしそうな顔をする沙都子を見て、
私の顔もほころんでいく。
「あ、んぅ……にゅ、にゅう……」
「ふふ、沙都子、にゅうってなんです?」
まずは首筋から。
軽く揉んでやる。
「な、なんでもありませんわ」
私が手を触れている間、
沙都子は自分の体を触れてはいけないことになっている。
それが、「マッサージ」のルールだった。

「さ、最近胸が苦しいんですの、
胸のあたりを重点的にお願いしてもよろしい?」
「どう苦しいんですか?」
「あの、その……張って、苦しいんですの」
「だから、どう苦しいんですか?」
えーと、えーと……
そう言いながら、必死に言葉を搾り出そうとする沙都子がいとおしい。
国語のお勉強だ。
この前、沙都子が必死に国語辞典を読んでいたのは、
こういう時のためだったんだと思って、
さらに胸がきゅんとなった。

「ち、乳首ですの……乳首が、ツンってなって、それで、
えーっと、その……苦しいんですの、ねぇねっ! ねーねっ!」
沙都子が泣きそうな顔をする。
全部の顔を見せて欲しい。
だから私は、これだけ考えてペース配分をしているのだ。
沙都子の嘘偽りの一切無い瞳が、
私の目をのぞく。
「ん、いいですよ、沙都子。合格です」
私は、沙都子の豊満になりつつある胸に吸い付いた。
空いた方の胸の突起は、指でつまんでやる。
「ねぇ、あふぅ、ねっ! 指は、ゆびはぁああっ、だ、ダメですの、
苦しいんですのっ! ねーねぇ……あううぅ、ぐすっ……
うわぁあああん、ねぇね、ねぇねっ!」
沙都子が、私の太ももに自分の股をこすりつけてくる。
そろそろ股の方にも、指が入るだろうか?
いいや、まだまだ。
沙都子は大事に大事に、扱わなければいけない。

「沙都子、こっちにお尻を向けて?」
「やたっ、ねぇね、大好き!」
沙都子がこちらにお尻を向けて、
太ももをこすり合わせながら揺らせた。
その姿が、たまらなく愛らしかった。

私は、ベッドの傍らに置いてあるローションを少し指にぬり、
それで沙都子の後ろの穴に軽く触れる。
「ひゃぅっ!」
沙都子の体が跳ねた。
沙都子はいつも、自分で腸内洗浄をしている。
私に、これをしてもらうために。
ちょっとぐらい、ごほうびあげてもいいかなと、
私の中のSの気が告げる。
私は舌を尖らせ、沙都子の穴に突き入れた。
「い、いつもと違いますのっ! 怖い、ねぇねっ! 怖いよぉっ!」
沙都子は自分のお尻をぎゅっと握った。
赤くなって跡がつきそうなほどに……
「んっ、沙都子、ちょっとおとなしくして」
私はどうしても暴れてしまう沙都子を止めるため、
両手で腰に触れた。
その瞬間だった。
「んはっああっ! あ、あ、ああ、あ、ぁ、ぁ、ぁ……ぁ……ァァァ……ァ」
沙都子は大きく体をえびぞりにし、
くたっと脱力させた。
髪飾りもはずれ、沙都子の髪が前に流れる。
恍惚とした表情の沙都子は、
何も喋らずただ息をしていた。

「沙都子、皆にはナイショですよ? それに、男の人にこんな姿、見せちゃいけませんよ?」
「うん、ねぇ……ねぇ……」

沙都子は、信じられないほどに性の知識に乏しかった。
私は沙都子に性の知識を教え込む必要性を感じた。
許せないことに、強姦というのは、
こういう何も知らない子供を狙って起こる時もあるのだ。
もし沙都子がそんな目にあったら、
私はその相手を必ず見つけ出し、
死ぬより辛い目に会わせる必要がある。
だから、それを未然に防ぐための教育が、そもそものはじまりだった。
最初マッサージとして教えたそれは、
沙都子に不快感を覚えてもらうのが目的だった。
人に裸を見せるというのは、恥ずかしい行為なんですよと、
ちゃんと教えてあげないといけないし、
性器はきちんと洗っておかないと、
病気になってしまう。

それに、沙都子は下着の付け方を知らなかった。
母親が居ないからだ。
そうやって、諸々のことを覚えさせているうちに、
沙都子がMであること、私がSであることを、
私は知ってしまった。
不快感はそのまま、沙都子の快感になってしまったのだ。

「本当はダメなんですけど……ま、沙都子が喜ぶなら、
いいかな……」
私は、沙都子の寝顔にキスをして、
前原のおじさんに渡す原稿の続きを描くことにした。

「あ、この漫画の主人公、悟史君に似てる……
こっちの妹役も……沙都子だし、最低だな、私」
そういいつつも、にやにやと原稿を書いてる私に、
どうか神様、罰をください。

見えない何かに怯える夜 ―完―

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最終更新:2007年03月27日 22:25