俺は、教室の椅子に座らされていた。
座っているのではなくて、
座らされている。
拘束するものは何も無いというのに、
まるでその椅子に縛り付けられたようだった。
レナが、わざと靴の音を響かせて俺の前から、背後のほうへと歩いていく。
俺はそれを首で追うことも出来ず、ただ両手を膝の上に置き、
うつむいていた。

「圭一くん、もう一度聞くね? 私の体操服、盗んだよね?」
後ろから、レナが言った。
「盗んでない……」
「本当?」
「本当……だよ……」
レナが、すぐに背後までやってくる。
耳元で、ごくごく静かに囁いた。

「嘘だ」
背中に、ぞくりと戦慄が走る。
「圭一くん、女の子の体操服なんてどうするのかな? かな?」
レナが、俺の背中に覆いかぶさるように、
俺の首に腕を回してきた。
その腕は、力なく俺の胸あたりにぶらさがっている。

「もう一度聞くよ? 圭一くん? お・ん・な・の・こ・の・た・い・そ・う・ふ・くなんて、どうするのかな?」
「だから、盗んで無いって……」
「じゃあ、何でレナの体操服だけじゃなくて、沙都子ちゃんのや梨花ちゃんのも無いのかな?」
「し、知らないよ……」
はっきりと、胸を張っていえない。
信じてた、いや、信じてる。
信じているのは、認めたくないから。
俺は朦朧とした意識の中、みんなの体操服の臭いをかいでいた。
そう、俺の意識がはっきりしたときには、すでに体操服がそこにあって、
俺は犯罪めいたことをしていたのだ。

「あれれ? 何か思い出したのかな?」
レナの息が、喋るたびに耳にかかる。
「なんで……前かがみになったのかな? 前原圭一ッ!」
レナが、急に椅子の足を蹴った。
ずずっ、と俺の体ごと、椅子が少し動く。
俺は、恐怖に震えた。

「もう一度聞くよ?」
レナは、俺のカッターシャツのボタンを
レナは、俺のカッターシャツのボタンを一つ一つ、上からはずしていった。
「レ、レナ?」
最後のボタンをはずしたときに、やっと俺は喋ることを許される。
いや、本当なら、いつでも喋ってよかったのだ。
「なぁに? 圭一くん?」
「な、何やって……」
「圭一くんこそ、何やってるの? 腰が引けてるよ?」
バレた……
俺の股間は、何かを期待するように起立を開始していた。

「あ、う……それは……その……」
「いいよ、圭一くん」
「え?」
レナは、くるりと俺の前に姿を現した。
まるで、俺を馬鹿にするように、だ。
「これでしなよ」
レナは、自分のスカートをたくし上げ、
するすると赤いブルマを脱ぎだした。
そして、それを俺の膝の上に置く。

「脱ぎたて。これでしたら?」
「な、何を?」
「さぁ、わかんないな」
レナは、わざとらしくそっぽを向き、
教室の反対側へと歩き出した。
俺の膝の上には、俺の手に少しかかるように、ブルマがある。
その下着にも似た熱い布地からは、レナの体温が感じられた。
ずっと履いていたようだ。
「今日ね、体育があったでしょ? あれからずっと履いてたんだよ? だよ?」
レナは、教室を歩き回りながら、俺を挑発する。
俺の意思とは無関係に、ノドがなった。
「ね? 圭一くん? どう?」
「ど……どうって?」
レナが、そのまま無言で俺のほうにゆっくりと歩いてくる。
ぱつ、ぱつ、ぱつと、上履きの靴音を立てながら。

「するの? しないの? 前原圭一?」
レナの指が、俺の唇に軽く触れた。
「ほお擦りしたっていいよ。 においを嗅いだっていい。
それを使って……棒にからめてもいいよ」
「な、何だよ……棒……って」
俺は、何を意味するのか知っていてレナに聞いた。
きっとレナは、俺の早とちりを狙っているのだ。
クールになれ、前原圭一。
ここをどうにかして乗り切るんだ。
体操服は元の場所に戻しただろ?
レナだって……本当にその瞬間を見たって確証は無いんだ。

「しらじらしいよ、圭一くん。こんなに大きな家が建ってるのに。
蚊帳の外に居るつもり?」
レナが俺の一点を見つめる。
俺の、ボーイスカウトがせっせと建てたテントを。
「ほら、仲間なんでしょ? 手本を見せてあげたら?
魅ぃちゃんはダメなんだって。意気地が無いから」

レナが、突然ロッカーを蹴った。
中から、ひっ、と声が聞こえる。
それを確認すると、レナはロッカーを開けた。
「み、魅音?」
「ひっく、っく、け、圭ちゃ……ごめっ、ひっく……」
魅音は、俺の体操服のズボンを握りしめていた。
腕が自分の胸元に来るように、甘くしばられていた。
足首の辺りも同様だった。
「魅ぃちゃんはね……圭一くんの体操服のズボン、
最初は届けようって思ったんだろうね?
実際はどこに届けたの?
魅ぃちゃん?」
「……っく、お、おじさんの、かばん、の……中です……ひっく」
魅音は顔をくしゃくしゃにしていたが、
涙をぬぐおうと思っても、手が自由になっていない。
あれぐらいの縄抜けなら、魅音ならなんとかしそうだが、
恐怖で満足に体が動かないのだろう。

「おじさん? へぇ、魅ぃちゃん男なんだぁ?」
「女……です、っく……わたし、わたしです、
私のかばんのなかに圭ちゃんごめんなさい
圭ちゃんごめんなさい……ひっく、ひっく」
魅音は何度も何度も、
圭ちゃんごめんなさいという言葉を続ける。
「だってさ? 圭一くん」
レナは、本当に面白いものを見るかのように笑った。
そこには哀れみや怒りなんてものは、
一切感じなかった。
ただ、愉快だと、その笑顔は言っていた。

「変態同士交尾でもさせよっか?
どんな変態の子供が生まれるかなぁ?」
「そ、それだけは、それだけはやめてぇっ!
やめてくださいぃ!」
レナは、俺の方から離れ、魅音の方へと俺にやったのと同じように、
歩いていった。
「やめて、とか言いながら喜んでんじゃないの?
ねぇ? 来年のことを話すと鬼が笑うっていうけど、
魅ぃちゃんは笑ってくれるかなぁ?
今から十ヶ月だと、来年ってわけにもいかないけどね」
レナは、魅音の前にしゃがみ、
俺のほうへ向きなおした。

「ねぇ? 圭一くん、女の子のここ、見たことある?
見せてあげよっか?」
「やめてぇ、やめてぇ、レナ、レナ様ぁ、それだけはやめてくださぃ、
圭ちゃん見ないでぇえ、うぇえっく、助けてぇ圭ちゃん、うえええ」
すでに、魅音の下着に手をかけられているのだろう。
魅音が、じたばたともがき、おおきくかぶりを振った

「レナ……いい加減にしろよ……俺たちは、仲間だろ?」
「いい加減にするのはどっちかなぁ?」
レナの顔が、大きく歪んで見える。
「レナ、認めるよ。俺は罪を認める。
俺は、沙都子と梨花ちゃんの体操着のにおいを……嗅ごうと手に取った。
でも、俺は止めたんだ。
たしかに芽生えた。
でも、草になっちゃいない、木に育っちゃ居ない!」
「レナしーらない。圭一くんの話なんか聞いてあげないよーだ。
だって、変態の話聞いてたら気がおかしくなっちゃうもん」
レナは、俺の口先を評価していた。
だからこそ、レナは耳を閉ざそうとするのだ。
これは、俺が唯一持つことが許された武器。
唯一にして、最強だ。
「レナ、聞いてくれ、いや、聞かなくていい。
そのままでもいいんだ。
レナ、俺は、自分でも仕方が無いくらいに男だったんだよ。
今こんな状況でも、なんだ、その、勃起してる。
仕方が無いとは言わないさ。
だって、俺は仲間だなんだとか言いつつも、
そういう目で見てたんだからな」

レナは、聞いてくれていた。
耳をふさいではいない。
魅音はただ、泣きじゃくっている。
「最初の体操服は……レナだった。
レナの体操服だった。
レナのにおいがするって、なぜか思ったときには、
俺の手に体操服があった。
ふらふらと、みんなのをかいで回った。
その時に皆が入ってきて……俺は、うろたえた。
悟史のロッカーに隠した……」
「ほぅら、そこが圭一くんの狡猾なところだよ!
悟史くんのロッカーなんて、普段だれも開けないもんね?」

「そうだよ。俺は狡猾だ。
暴力を振るうときでさえ、自分が確実に勝てるときにしかできやしねぇ。
でもよ、レナ……
俺がレナのを最初に選んだのは……」
「知ってるよ、レナが好きだった、とかいうんでしょ?
あっはっは、レナもね、好きだったよ。
昔の圭一くんはね!
格好よかった!
後ろ暗いところもぜんぶぜんぶ見せてくれた!
いっつも最高の友達で、私に無いものを全部持ってて!
それが、何? 酷い裏切りだよ!
私にとって圭一くんはあこがれでした!
ほら、どう? うれしいの? うれしいの?
ねぇ? うれしいの?」
レナは、泣いていた。
「レナ、魅音、聞いてくれ。
俺は、レナも魅音も好きだ。
沙都子や梨花ちゃんも好きだ。
でも、レナは特別だったんだ。」
「けぃ……ちゃ……ん……」
「あっはっは、聞いた聞いた?
ねぇ、魅ぃちゃん、魅ぃちゃんのこと嫌いなんだってぇ?」
「でもなァッ! 今のレナは反吐が出るほど嫌いだぜッ!
なんだよ今のレナは!
俺の好きなレナは、相手思いのレナだッ!
自分がされて嫌なことは、絶対に、死んだってしない、
絶対の絶対の絶対の絶対に高潔で、
気高いレナだッ!」
「だったら何? 魅ぃちゃんに乗り換えるわけ?
私が理想の人間じゃなかったから?
あっはっは」

「レナも、そうだよな?
俺が理想の人間じゃなかったから、
俺が嫌いになった」
レナは、何も言わなかった。
「レナ、なんでそんなに生き急ぐんだよ?
俺たち、まだ二十年も生きてねぇんだぜ?
今の何倍俺たちは生きるんだ?」
「私は……もう死にたいよ。
こんなことだって、したく無かったよ」
「じゃあ、やめよう?」

レナは、首を横に振った。
「ううん、ダメだよ」
説得に失敗……した?
「あぅっ! け、けいちゃ! こっちむかなぃでぇぇぇっ! ダメ、ダメ、ダメェ!」
魅音の下着が、こちらに向かって飛んできた。
レナが、魅音の下着を剥いたのだ。
さらに、魅音をどうにかしようとして、
ロッカーをがたがたと言わせた。
「ダメぇ……だめぇ……っく……だめ、ひっく、だめぇ……」
涙混じりに、魅音はだめだめと言っている。
「ほら、圭一くんの好きなM字開脚だよ。
圭一くんのよく読む雑誌に載ってるやつだよ」
くすくすとレナが笑う。
俺は、そっちのほうを見れないでいた。
「あれぇ? 魅ぃちゃん、これ何?
この液体。何かこぼしたの?
もしかして……アレ?」
「ひっく、言わないで、言わないで……ひっく」
魅音の声から、力はすでに感じなくなっていた。
「ほら、圭一くん。交尾しないの? 交尾」
レナの歩いてくる音が聞こえる。

「オラッ! 聞いてんの? 前原圭一ッ!」
レナが、今度は椅子を後ろから思いっきり蹴飛ばした。
俺は、椅子から落ちて前に手をつく。
とっさに顔を上げようとしたが、
魅音の方を向くまいと、なんとか踏ん張った。

「ほらほら、前に進んで」
ぐりぐりと、俺の尻を踏みにじる。
その力が、次第に強くなっていった。
「おら、進め、進め」
蹴りが入る。
俺は……半分自分の意思で前に進んでいった。

「魅お……ごめっ!」
俺は、魅音の方を向いた。
すぐそばには、魅音の姿があった。
魅音自身が、目の前に居た。
その両手はロッカーの上の棚から吊り下げられ、
両足は机に縛られていた。
動かそうと思えば動くぐらいの重量なのに、
魅音はそのままだった。

魅音のぴったりと閉じた部分は、
薄く濡れていた。
毛の奥には、見たことも無い器官があった。
保健体育の教科書からは想像も出来ない、
波打つ皮のふちのようなものが。
「ほら、舐めてあげなさい?」
レナが、俺の頭をつかんで、ぐいと前に押しやった。
「んむっ!」
俺の唇が、魅音に触れる。
「ひゃぅっ!」
がくがくと、魅音は震えた。
「あっはっはっ! 魅ぃちゃん早すぎぃ!
もういっちゃったの?」
魅音は顔を上気させ、肩で息をする。
目はまっすぐを向いておらず、
虚空を見つめていた。
だめ、だめと小さい声が、口から漏れる。

「さっ、圭一くん? 魅ぃちゃんのはじめてと圭一くんのはじめて、
一緒に済ましちゃおう?」
「……うん」
俺の頭も呆けていて、すでに抗う意思など持ち合わせていなかった。
「魅音、いっていいか?」
魅音は、何も言わず……頷いた。

「ほら、ここに入れるんだよ?」
レナが、俺の露出したものにさわる。
そして、それを誘導するように、俺の腰を押した。
ぬるぬるとしたものが、先端に触れる。
「圭一くんの包茎チン*が魅ぃちゃんの洗ってないマン*に入っていくよ?
ほら、ずぶずぶずぶぅ……」
かつて無い快感に、俺の身は震えた。
先端から、中辺りまでに入ったところで、
俺は腰がひけてしまった。
「ほらっ!」
レナが、一気に押した。
ぴちっ、っと何かを突き破るような感覚がして、
魅音が震えた。
いたい、と少し聞こえた。

「おめでとー魅ぃちゃん」
レナは、いつの間にかロッカーからはさみを取り出していた。
「さぁ、圭一くん動いて?」
俺は、レナに言われなくても、体を動かしていた。
「あぅっ!」
思わず声が出てしまう。
それにあわせて、魅音も力なく何かを言った。
血管が脈打つ感覚。
「圭一くん、たった二回往復しただけでいっちゃったよ、
あははは、さぁ、抜かないで十回、頑張ろうー
途中で抜いたらちょんぎっちゃうからね」
今のレナなら、本気でやりかねない。
「魅音、ごめん……」
けいちゃんの、ばか。
そう聞こえた。

「ほらほら、もっと激しく!」
俺は、レナに犯されるように、腰を振らされた。
レナが俺の腰あたりを持ち、
魅音の方に押し付ける。
そうして、衰えない俺の生殖器は、
二度も三度も精を放った。

「あっはっは、二人ともけだものね、あっはっは」
レナははさみをちょきちょきいわせて、
泣いていた。


シザーハート ―完―

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最終更新:2010年03月05日 22:31