大空魔術 ~ Magical Astronomy
サークル:上海アリス幻樂団
Number | Track Name | Arranger | Original Works | Length |
01 | 月面ツアーへようこそ | ZUN | 2006作曲 「大空魔術」オリジナル | [5:00] |
02 | 天空のグリニッジ | ZUN | 2006作曲 「大空魔術」オリジナル | [3:45] |
03 | 東の国の眠らない夜 | ZUN | 2005作曲 「東方文花帖」撮影曲3のテーマ | [4:09] |
04 | 車椅子の未来宇宙 | ZUN | 2006作曲 「大空魔術」オリジナル | [5:08] |
05 | Demystify Feast | ZUN | 2004作曲 「東方萃夢想」5面のテーマ | [4:33] |
06 | 衛星カフェテラス | ZUN | 2006作曲 「大空魔術」オリジナル | [4:14] |
07 | G Free | ZUN | 2006作曲 「大空魔術」オリジナル | [4:11] |
08 | 大空魔術 ~ Magical Astronomy | ZUN | 2006作曲 「大空魔術」オリジナル | [4:30] |
09 | ネクロファンタジア | ZUN | 2003作曲 「東方妖々夢」八雲紫のテーマ | [6:47] |
10 | 向こう側の月 | ZUN | 2006作曲 「大空魔術」オリジナル | [3:52] |
詳細
レビュー
- 高速曲中心、原曲完全維持系原曲音色アレンジ、オリジナル入り。従来、ZUN氏の自曲アレンジは徹頭徹尾原曲維持、しかもメロディラインをほとんどいじらないものとなっており、新しい解釈というものはほとんど見えてこない。しかも、音色を変えたものの原曲にある迫力や幻想が減殺されてしまうという例も散見される。彼の発言や、敢えてやらないのか出来ないのかなどの事情は措いて、結果として我々が聴くことのできる作品のみに焦点を絞って誤解を恐れずに言うならば、物足りないという表現では足らず、ことアレンジという点においては大胆な音使いやアレンジという分野での表現力に欠け、技術が乏しいと思っていた。しかし、このアルバムでは、アレンジ曲に従来よりは味付けが施されている。そしてそれが当たっている。
このアルバムのアレンジ曲は3つであるが、そのうち最も味付けがされているのがネクロファンタジアである。冒頭に一層不気味さを増す音色で原曲中途を切り取って入り、3分半過ぎから約30秒弱の原曲メロを取り混ぜつつもオリジナルで進行するピアノの高速パッセージは非常に彼らしい組み立てである。Demystify Feastのアレンジはそれぞれの音の輪郭が原曲よりはっきりしており、発狂ピアノが2周目に入ってもはや限界を超えるところが否応なく盛り上がりを加速する。東の国の眠らない夜アレンジは、上で述べたネクロファンタジアと同じようなピアノ進行が2分35秒あたりから少しだけ見られるが、総じて原曲メロのなぞりが多い。
総合的に見れば「原曲を少し弄った」程度であり、私個人のアレンジについてのレビュー基準からすれば、もっともっとアレンジャーの意図と挑戦を見せて欲しいという思いを抱かざるを得ない。物足りない感は払拭されない。「作曲者自身のアレンジ」という観点から期待して買うと、やはり残念に思うのではないだろうか。しかし、アレンジ技術が全くないわけではないことは判明したので、今後は、せっかくオリジナルではなくアレンジという形式でCDに入れるならば、オリジナルの素晴らしい出来と比してトラック数補充とすら邪推してしまうような原曲そのままのアレンジを入れるのではなく、より大胆に、贅沢を言うならば作曲者しかできないような解釈を加えてくれることを期待している。それは余人にはできない、確実に作曲者の特権であるのだから。
なお、オリジナルについて少し付言するならば、「天空のグリニッジ」という出色の作品1曲のためだけに購入しても悔いはないだろうと個人的には思う。冒頭三連符2連続の入りを最初に聴いた時はリズムに乗り損ねて驚いたが、執拗に執拗に繰り返されるたった4小節のメロがここまで染み込むとは思ってもいなかった。このような作りは従来の作品には見受けられなかった。対してG Freeは典型的な彼のスタイルであり、どこかで聴いたことのあるような印象も受けつつ、安心して高速ピアノに乗っていける。これで委託価格735円はどう考えてもお得である。いわゆるZUN節が好きで、アレンジにそれほどの期待をしていないならば、買わない理由が見つからない。次のオリジナル作品が非常に楽しみである。 -- 電波? (2008-08-14 13:35:24)