Super Ikonta Six の分解(2011.5)


いつものカメラ屋さんによったら、常連さんが置いていったカメラがあるという。
見てみるとスーパーイコンタシックスのジャンク。ちょっとお高めだったが、
私ご指名で置いていって下さったとのことでつい購入してしまった。



症状は巻き上げ軸は回るがシャッターリリースができない、レンズの曇り、
露出計の二重像が見えないなどなど。怖いもの知らずの強みで早速分解。

軍艦部を外すには左側の肩の革を剥がす必要がある。
貴重な革なのでエタノールでふやかしながらゆっくり剥がす。
剥がすと真ん中にネジが見えるのでこれを外す。



さらにアクセサリシューのネジ、枚数計の下にあるネジを外し、巻き上げノブを外すと
軍艦部(上蓋)が外れる。



巻き上げギアのうち一つが固着して回らない状態。ペンチで挟んでねじると少し動いたので、
ねじ切らないように注意して給油しながら少しずつ左右に回すとギアが回るようになった。
ギアを取り外して軸にモリブデングリスを塗ったらスムーズに回るようになった。

これで巻き上げ軸の修理完了、と思ったらやっぱりシャッターリリースができない。
さらに巻き上げ軸の分解を進めてみると…



枚数計を進めるためのギアの頭が舐めて巻き上げ軸の歯車とかみ合わなくなっていた。
このギアを上下逆さにできればいいのだが、かしめてあって歯車が外れない。

裏蓋に赤窓があるので、赤窓の数字を見ながら巻きあげて、枚数計を手で回して
一枚進めてやればシャッターリリースができ、写真が撮れないことはないのだが
どうにも使い勝手が悪そうである。

二重像が見えないのは、レンズ部についているドレイカイルプリズムが
曇っていて透過像が見えないためだった。曇っていたのはプリズムの内側だったので、
やむなく分解。



プリズムと歯車のかみ合わせが狂うとえらい面倒なことになるようなので、
プリズムと歯車の位置をマークしておく。レンズクリーナーで清掃すると
プリズムの向こう側が見えるようになった。注意深く元通りに組み立てると
二重像が復活した。曇ったレンズもレンズクリーナーで曇りがとれた。

つくづく巻き上げ軸の歯車が舐めていたのが残念である。
おそらく枚数計のギアが固着したまま誰かが無理に巻き上げたせいだろう。
気長にジャンクが出てくるのを待つか。(それはいつの日だろうな…)

追記(2011.6)

歯車が舐めたままではやっぱり置物と変わらないので、なんとか修理できないかと
ネットをさまよっていると、歯車の複製をしてくれる会社を見つけた。


舐めた歯車の写真を送ったところ、サイズ的には複製可能だが、
歯車を分解して送る必要があるとのお返事だった。

どっちみち置物確定なので、失敗を覚悟の上で歯車の分解を試みた。
歯車は軸の上下でかしめてあったので、かしめ部分をリューターで削って
歯車をなんとか外した。



歯車が外れたので試しに舐めた歯車を上下逆さまにして組んでみた。
問題の歯車は上面のみにワッシャの入るくぼみが切ってあるため、
逆さまにつけるとワッシャが取り付けられなくなる。



この状態でカメラに取り付けて部品を組み直すと、自動巻き止めが動いて
シャッターリリースができるようになった!
機械的にはこれで修理完了である。(あとは無限遠出し)

今回は賭けが当たったようなものでラッキーだった。発注はできなかったが、
背中を押してくれた田村歯車工業様には感謝したい。




-
最終更新:2011年06月03日 22:48