15年戦争資料 @wiki

沖縄タイムス:『教科書検定実相は遠く』(中)密室のやりとり

最終更新:

pipopipo555jp

- view
メンバー限定 登録/ログイン
http://www.okinawatimes.co.jp/spe/syudanjiketsu/jisso_wa02.html
教科書検定実相は遠く(中)

密室のやりとり (12月28日朝刊総合1面)


静謐たてに核心覆う/透明化へ課題再び

 「また、密室のやりとりで決められた」。ある教科書編集関係者は、沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」についての教科書記述の訂正申請をめぐる文部科学省の対応を、こう表現した。

 十一月初旬に各教科書会社が文科省に提出した、最初の訂正申請では「日本軍に手榴弾を手渡されて自決を強要された人びと(『集団自決』)や…」との記述や、「軍から命令が出たとの知らせがあり、いよいよ手榴弾による自決が始まりました。操作ミスが原因で…」という体験者の著書から引用した記述が申請されていた。

 しかし、文科省は今月二十六日に訂正申請への対応を発表し、これらの記述を認めなかったことを明らかにした。一カ月半で何があったのか。

 別の教科書会社関係者は、十一月中旬に最初の訂正申請の記述について、記述の根拠とした資料の提出を求められた。その後、文科省から「教科用図書検定調査審議会の中間意見」として「ノー」を突きつけられたと話す。

 「この記述については『分かりやすくて良い』という意見もあったが、『高校生が誤解する』との意見もあった」。文科省側の窓口となった教科書調査官は、同審議会の意見を教科書会社幹部に伝えるだけ。「記述は審議会に承認されるか」との問いには「私はただの伝言係。答えられない」との立場を通した。

 これまでの教科書検定の通例では、「一部でも反対意見が付けば『駄目』」だった。教科書会社は執筆者と相談し、記述を微妙に変えては文科省に提出する。調査官は審議会の意見として「この記述にも難色が示された」と伝える。

 このような伝言ゲームが、多い社では四、五回繰り返され「表現の幅が狭められ、『強制』から薄い表現への書き換えを強いられた」という。

 渡海紀三朗文科相は、教科書検定制度の透明化が必要との認識を示し、文科省も非公開にしていた教科書審議会日本史小委員の氏名や、取り寄せた参考意見の内容、意見を依頼した相手の氏名などを公表した。

 だが、「密室でのやりとり」は二十七日に教科書執筆者が記者会見し、初めて明らかにされた。「静謐な(静かな)環境の確保」を名目に核心部分は覆い隠されたままで、教科書印刷のタイムリミットとなる年末ぎりぎりに結果を公表する。

 教科書会社の訂正申請は、「透明化」を含めた文科省の教科書検定の進め方の問題点もあらためて浮き彫りにした(社会部・吉田啓)
目安箱バナー