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琉球新報社説:12月分から

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琉球新報社説:12月分から




12/8 検定審が指針 あいまいにしたい理由は何か



 教科用図書検定調査審議会は、高校歴史教科書の「集団自決」(強制集団死)検定問題で、訂正申請した教科書出版社に、直接的命令についての断定的記述は「生徒が誤解する」との指針を伝えた。軍強制を削除させた検定意見も撤回しない。必要性を認めたのは「集団自決」の背景詳述である。

 教科書を出版する各社は、検定意見によって記述を修正した結果、日本軍の強制や関与があいまいになったため、それを明確な記述に戻すよう求めている。県民も今回の修正に期待していたが、どうやら審議会の姿勢はほとんど変わっていない。

 指針自体は非常に抽象的で分かりづらいもののようだ。しかし、浮き上がってくるものがある。軍の強制性を薄めようとする意図である。

 審議会は複合的な要因が存在すると指摘し、「背景」を詳しく説明するよう求めた。背景とは、皇民化教育や軍民共生共死という社会構造などである。

 これらの背景を羅列することで軍のみに焦点が当たるのを避けようとしているように見える。だが、それはまったく逆だろう。むしろ軍の強制を根拠付けるものとなる。

 検定意見を撤回せず、修正に応じようという審議会の指針には無理がある。結果として、「あいまいで許容範囲が分からない」と、執筆者や教科書出版社を困惑させているのだ。

 文部科学省から「集団自決」に関する学説状況をまとめた意見書を依頼された林博史関東学院大教授は、公開した意見書で「検定意見そのものが根拠のない、間違ったものである」と批判した。さらに、検定意見を撤回した上で軍強制を明記した記述を認めるべきであると強調した。

 指針は同教授の意見をまったく参考にしていないように見える。同教授の指摘するように、まず検定意見を撤回しなければ、「集団自決」という歴史を記録するに当たり筋道が立たない。県民がなぜ怒りの声を上げたのか、文科省や審議会は理解していないのだろうか。

 このまま推移すると「集団自決」は軍の「関与」程度の記述にとどまり、その背景を詳しくしただけになりそうだ。審議会は、日本軍に関する断定的記述は「生徒が誤解する」と指摘したが、あいまいな表現はむしろ間違った理解を導きかねない。

 検定意見という前提を変えずに修正という結論を出そうとするのは無理がある。そのことは文科省や審議会がよく分かっているはずだ。

 軍強制によって「集団自決」が起きたという記述が復活しない限りこの問題は解決しない。

(12/8 9:49)


12/23 「強制」外し 密室の結論は容認できず



 無理が通れば道理が引っ込む、というが、まさにその通りの展開だ。文部科学省は何が何でも、「集団自決」(強制集団死)における旧日本軍の負の側面を消し去りたいらしい。

 高校歴史教科書の検定問題に関し、訂正申請の記述内容について文科省の教科書調査官と教科書出版社が、日本軍による「強制」の文言使用を避ける方向で調整していることが分かった。

 関係者によると、教科用図書検定調査審議会は軍の「強制」という文言そのものの使用を認めない方針という。これを受け、教科書調査官は出版社に対し「日本軍」と「強制」の文言を直接結び付けないよう求めている。

 出版社はこの方針に従う見通しで、軍の強制を表す表現が大幅に後退する可能性が高いという。これでは、検定直後の記述に戻ってしまうことになり、何のための訂正申請だったのか。

 さらに解せないのは、訂正申請の審議過程で、検定審が各社に示した「指針」で、今後の調整は文科省の教科書調査官に一任する、としていたことだ。これでは、検定審の責任放棄に等しい。何より調査官が「新しい歴史教科書をつくる会」と密接な関係にあることも、本紙報道で明らかになっている。同会が反訂正申請のキャンペーンを展開しているのは周知の事実。公平性を欠き、恣意(しい)性が疑われても仕方なかろう。

 そもそも検定審や日本史小委員会の中には沖縄戦の専門家はいない、と指摘されている。さらに今回の検定意見が出た過程においても、ほとんど論議はなかった、というのは本紙の報道で明らかになっている。では「強制はなかった」とする根拠は何なのか。

 この間、検定審に沖縄戦の専門家を加えて審議をしたのか。それは誰なのか。どういう論議を経て「強制はない」と結論付けたのか。すべて明らかにすべきだろう。

 集団自決にはさまざまな要因があり、背景を書き込め、との指針は、むしろ望ましいところだ。軍の強制性が、より明らかになるだろう。いずれにしろ、密室での結論は到底、受け入れ難い。

(12/23 10:01)

12/27 「軍強制」は明らか 検定意見は撤回すべきだ

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