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西日本:教科書検定審議会

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Word Box 教科書検定審議会


 正式には教科用図書検定調査審議会。出版社が申請した教科書について、学習指導要領に沿った客観的で中立公正な記述かを学術的見地から審査する専門機関。文科相が検定審の答申を基に合否を決定する。文科省の教科書調査官が提出する調査意見書などを基に審議。修正が必要と判断した場合、文書で「検定意見」を通知し、教科書会社の修正後に再審査するのが通例。メンバーは大学教授など約120人(今年8月現在)で、教科ごとに部会を置く。自由な議論を保障するため審議は非公開とし、議事録も作成されない。


教科書検定審専門家の意見聴取要旨

(2007年12月27日掲載)

 教科書検定審議会日本史小委員会が聴取した専門家の意見の要旨は次の通り。

 ▼大城将保・沖縄県史編集委員 「敵の捕虜になる前に潔く自決せよ」という軍命令は沖縄全域に徹底されていた。地上戦となった沖縄戦の悲劇を象徴するのは「集団自決」と「住民虐殺」。事実誤認と歪曲(わいきょく)に基づく主張で、教科書から抹殺するような検定の在り方は許し難い暴挙というしかない。

 ▼我部政男・山梨学院大教授 沖縄戦末期にいわゆる「集団自決」が事実として起こった。その背景に「軍官民一体化」の論理が存在していたことは明確だ。因果関係を説明する方法として提示されているのが「軍命令」であり、「軍官民一体化」論理の範囲に入ると考える。

 ▼高良倉吉・琉球大教授 日本軍は本土上陸作戦を阻止するため沖縄での時間稼ぎが最大の課題だった。目前の住民の生死より作戦遂行を至上とした軍の論理があり、軍民雑居状態を放置した。慶良間諸島での集団自決も、軍の結果責任は明らかで、軍側の論理の関与を否定できる根拠はない。

 ▼秦郁彦・現代史家 渡嘉敷島を中心に考察するが、集団自決の軍命説は成立しない。自決の「強制」は物理的に不可能に近い。自決者は全島民の3割に及ばず多数が生き延びた。負傷者の治療に軍医らが当たったと村長が認めている。攻撃用手りゅう弾の交付と集団自決に因果関係はない。

 ▼林博史・関東学院大教授 沖縄戦での「集団自決」が、日本軍の強制と誘導で起きたことは沖縄戦研究の共通認識。捕虜になるのを許さない軍思想の教育などさまざまな方法で、軍は住民を集団自決に追い込んだ。私の著書を根拠に強制性の叙述を削除させたのは、著書内容を歪曲しており検定意見の撤回しかない。

 ▼原剛・防衛研究所戦史部客員研究員 沖縄戦では戒厳令は宣告されず、軍に住民への命令権限はなかった。関係者の証言などによると、渡嘉敷・座間味両島の集団自決は軍の強制と誘導によるものとはいえない。「鬼畜米英に辱めを受けるより死を選ぶ」という思潮が強かったことが原因。自ら死を選び自己の尊厳を守ったのだ。

 ▼外間守善・沖縄学研究所所長 日本本土の1億日本人のため沖縄島は防波堤として使われた。沖縄県民十余万人を犠牲とした、集団自決を含む責任は日本国にある。日本国、日本人に沖縄の痛みを理解してもらいたい。沖縄における軍の存在は住民にとって脅威だった。集団自決の問題にもこれらが通底している。

 ▼山室建徳・帝京大講師 軍人が死闘を繰り広げる中、日本人全体が屈服しないことを見せつけるべきだという考えが共有された状態で沖縄戦に突入したが、先祖伝来の地に住む沖縄県民の多くは「集団自決」の道をとらなかった。一部の軍が住民に自決を強要したとだけ記述するのは、事実としても適切ではない。

    ×      ×

 ■検定審議会小委員会の委員■

 教科書検定審議会日本史小委員会委員と、検定審の要請で意見書を提出した専門家は次の通り。それぞれほかに1人ずついるが、文部科学省は「本人の意向」を理由に氏名などを公表していない。

 (敬称略)

 【日本史小委員会委員】有馬学(九州大大学院教授)▽上山和雄(国学院大教授)▽波多野澄雄(筑波大副学長)▽広瀬順晧(駿河台大教授)▽二木謙一(国学院大名誉教授)▽松尾美恵子(学習院女子大教授)▽吉岡真之(国立歴史民俗博物館教授)

 【意見書を提出した専門家】大城将保(沖縄県史編集委員)▽我部政男(山梨学院大教授)▽高良倉吉(琉球大教授)▽秦郁彦(現代史家)▽林博史(関東学院大教授)▽原剛(防衛研究所戦史部客員研究員)▽外間守善(沖縄学研究所所長)▽山室建徳(帝京大講師)
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