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毎日:教科書検定:集団自決問題 軍が「関与」 沖縄、評価と批判が交錯

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教科書検定:集団自決問題 軍が「関与」 沖縄、評価と批判が交錯


◇「一歩前進」「歪曲だ」


 「軍の強制」との表現はダメだが「関与」ならOK--。沖縄戦の集団自決を巡る高校日本史の教科書検定問題に、文部科学省が結論を出した26日、地元の沖縄県民からは「一歩前進」との評価と「歴史の歪曲(わいきょく)は変わっていない」との批判が交錯した。「検定意見を撤回させない限り、同じことが繰り返される」との警戒感も地元からは消えていない。

 「天皇陛下、ばんざーい」。1945年3月、村長の声と同時に集団自決が始まった沖縄県渡嘉敷(とかしき)島。母と妹、弟を手にかけた金城重明さん(78)=与那原(よなばる)町=は「当時は一木一葉に至るまで軍の支配下。集団自決に軍の命令はあった」と強調する。

 今回の結論について「軍命をあいまいにする歴史の歪曲。自衛隊の海外派遣を恒常化させるため、軍の負の部分を薄めるのが政府の狙い」と断じた。

 高校歴史の副読本「琉球・沖縄史」を執筆した県立宜野湾高教諭の新城(あらしろ)俊昭さん(57)は「一歩前進」。だが「検定意見を撤回させなければ、再び同じことが起こる。体験者がいなくなった将来、沖縄が声を上げられるかどうか」と懸念を示した。

 県民大会実行委の委員長、仲里利信県議会議長はこの日、東京都千代田区の衆議院第1議員会館で会見。「集団自決の記述の回復がほぼなされ、従来より踏み込んだ記述もある」と一定の評価をしつつ「『軍による強制』や『命令』の語句が修正、削除されたことには不満が残り、今後の課題」と指摘した。【三森輝久、永井大介】

◇「重大な汚点」つくる会抗議


 新しい歴史教科書をつくる会(藤岡信勝会長)は26日、今回の教科書検定結果について「文科省は政治的圧力に屈して、検定制度の根幹を揺るがすという重大な汚点を残した」と抗議声明を出した。

 つくる会は今回の問題で、文科相に教科書会社から出された訂正申請に応じないよう計4回、意見書を提出していた。

 声明は「軍の『強制』記述の復活を認めたものである」と強く批判した。

◇関西でも非難


 沖縄にルーツを持つ人が多く住む大阪など関西でも批判の声が上がった。

 県民大会に合わせ、大阪市内で抗議ビラを配った「沖縄へ基地を押しつけない市民の会」の金城馨さん=同市大正区=は「大会が国を動かしたのは確かだが、『強制』や『強要』の表現が認められなかったのは、意図的に事実をぼかしていることにほかならない」と指摘した。

 沖縄戦の体験を語り続ける大城盛俊さん(75)=兵庫県伊丹市=の母親は、スパイの嫌疑をかけられ、旧日本兵に殺害された。教科書検定が翻ったことについては「十分な修正がなされたとは思わない。日本軍の責任についてはあいまいな表現に終始しており、これくらいなら沖縄を黙らせられるだろうとの魂胆が見える」と切り捨てた。【平川哲也】

◇「教育の中立」遠い--新藤宗幸・千葉大教授(政治学)の話


 沖縄の抗議があり、政権も(安倍晋三首相から福田康夫首相に)代わって今回の見直しに至ったわけだが、その経緯は、検定が「教育の中立」からほど遠いことを示した。そもそも史実に関する記述に、文科省が微に入り細をうがった注文をつける必要はあるのか。教科書検定は不要だという思いを新たにした。

毎日新聞 2007年12月27日 大阪朝刊
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