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読売:迷走する教科書検定、「密室」制度に批判の声も

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迷走する教科書検定、「密室」制度に批判の声も



訂正申請の審議結果の報告を杉山武彦・審議会会長(左)から受け取る渡海文科相(26日午後1時30分、文部科学省で)=多田貫司撮影 来春から使用される高校日本史の教科書検定で、沖縄戦の集団自決に「日本軍の強制があった」とする記述が削除された問題は26日、「強制」を「関与」に言い換えることで決着した。今年3月に検定結果が公表されてから、なぜここまで問題が長引いたのか。有識者からは、“密室”の中で進められる現在の教科書検定制度に対し、「透明性を高めるべきだ」との指摘が出ている。

 今年10月2日、渡海文部科学相は、「軍の強制」の記述を削除させた検定結果に沖縄で反発が起きていることを受け、「訂正申請があった場合、真摯(しんし)に対応したい」と表明した。

 文科省にとって想定外の事態が起きたのは10月末。高校日本史の教科書執筆者の一人が「密室の審議に一石を投じたい」と、沖縄戦の記述の訂正を文科省に申請する前に、訂正内容の公表に踏み切ったからだ。

 教科書検定を担当する文科相の諮問機関「教科用図書検定調査審議会」は、委員の自由な意見が制約されるとして、総会や部会、それに小委員会のすべてを非公開とし、部会や小委員会は、開催日程さえ明らかにしていない。こうした“密室”の場で審議されるはずの訂正内容が、明るみに出るのは極めて異例だった。

 今年3月、「軍の強制があったかどうかは不明」として、「強制」の記述を削除させたことが明らかになった際、抗議や反発が相次いだのも、根底には、検定の審議が一切検証できないことへの不信感がある。

 教科書検定は、同審議会が中立公平で学術的な立場から、教科書を審査する制度だが、「実質的に検定意見を決めているのは文科省の職員」との指摘もある。

 今回の検定でも、大学の教官などを経験した文科省の専門職員「教科書調査官」の4人が昨年4月から約半年間かけて、審議のたたき台となる「調査意見書」を作成した。この調査意見書の中に、「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある」などという指摘が盛り込まれ、同10月からの日本史小委員会や、社会科を担当する第2部会、そして審議会の総会でも「大きな異論は出なかった」(文科省)。

 結局、同11月、この調査意見書がそのまま「検定意見書」に採用された。

 日本史小委員会は、古代から近現代までの専門家8人が委員を務めているが、沖縄戦の専門家はいなかったためとみられる。

 日本史小委員会の委員として議論に参加した波多野澄雄・筑波大副学長も、「教科書調査官は本当に詳しく調べており、根拠がない限り反論は出来なかった」と打ち明ける。

 文科省も、議事録の一部公開を検討するなど検定制度の見直しを行う方針を打ち出しているが、抜本的改革を求める声も強い。

 昨年度、高校生物の教科書執筆者として検定を経験した総合研究大学院大学の長谷川真理子教授は「検定意見は『誤り』『誤解するおそれがある』など判を押したようなものばかり。現在の検定制度は今の時代にはあり得ない不透明さで、文科省が恣意(しい)的に検定意見をつけることもできる。このままの制度なら、ない方がいい」と批判している。
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