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「集団自決は軍命令」 大江健三郎さん証言 大阪地裁著書訴訟

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「集団自決は軍命令」 大江健三郎さん証言 大阪地裁著書訴訟

2007年11月10日 朝刊

 太平洋戦争末期の沖縄戦で、軍指揮官が「集団自決」を命じたとする本の記述をめぐる訴訟で、「沖縄ノート」の著者で被告の作家大江健三郎さん(72)が9日、大阪地裁(深見敏正裁判長)の口頭弁論に出廷。慶良間諸島の座間味、渡嘉敷両島での集団自決について「軍の命令だったと考えている」と証言した。

 ノーベル賞作家が自らの著作に関して法廷で証言するのは極めて異例で、歴史教科書の記述をめぐる問題とも絡み、内容が注目されていた。裁判は次回口頭弁論の12月21日に結審、来春にも判決の見通し。

◆元隊長は「出してない」
 大江さんに先立ち、座間味島の守備隊長で陸軍少佐だった原告梅沢裕さん(90)が「命令は絶対に出していない。『死んではいけない』と厳しく止めたし、気の毒だとは思うが責任はありません」と証言した。

 大江さんは、この日提出した陳述書で「集団自決は戦争下の国、日本軍、現地の軍までを貫くタテの構造の力で島民に強制された。命令書があるかないかというレベルのものではない」との考えを示した。

 沖縄ノートでは、上地一史氏の「沖縄戦史」を引用する形で「集団自決は軍の命令に発するとされる」と記述。大江さんは経緯について「文献を読み、資料を見せてもらい、執筆者らに話を聞いて軍隊の命令だという結論に至った。その後の証言などに触れ、わたしの確信は強くなっている。訂正の必要は認めない」と述べた。

 また、守備隊長の命令は「あったとは書いていない」とし、「隊長個人の性格、資質で行われたものではなく軍隊が行ったものと考え、個人名は出していない。その方が問題が明らかになると考えた」と説明した。

 問題になっているのは、沖縄ノートや家永三郎氏の「太平洋戦争」など岩波書店刊の3冊(うち1冊は絶版)。1945年3月に両島で起きた集団自決は守備隊の命令があったとの記述をめぐり、梅沢さんらが「誤った記述で非道な人物と認識される」として2005年8月、岩波書店と大江さんに出版差し止めと慰謝料などを求め提訴した。

 文部科学省がことし3月に公表した歴史教科書の検定意見は、軍による自決強制の記述の修正を求めており、この訴訟が係争中であることが理由の一つとされていた。
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