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「政治的妥協」の愚を繰り返すな

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【正論】藤岡信勝 「政治的妥協」の愚を繰り返すな
06/21 06:31
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■「沖縄集団自決」と教科書検定

≪創作された「軍命令」≫

 戦争末期の昭和20年3月、米軍が沖縄の慶良間列島に攻め込んできたとき、座間味島と渡嘉敷島では数百人の追いつめられた住民が家族どうしで殺し合うなどして集団自決する痛ましい出来事があった。ところが、戦後、それは日本軍の将校の命令により強制されたものであるとされるようになった。

 しかし、「沖縄集団自決軍命令説」は次第にその虚構性が明らかになってきた。梅沢裕少佐を隊長とする部隊が配置された座間味島では、村の重役の指示に従って「住民は隊長命令で自決した」と嘘の証言をしていた女子青年団長が良心の呵責に耐えかね、事実は梅沢隊長のもとに自決用の弾薬をもらいに行ったが追い返されていたと告白した。

 嘘の証言をさせられたのは、遺族が援護法によって年金を受け取るためには軍の命令があったことにする必要があるからだった。実際に集団自決の命令を下したのは、村の助役だった。

 軍命令説の虚構はここ数年でさらに決定的になった。渡嘉敷島の隊長・赤松嘉次大尉は、住民の自決を知って「何と早まったことをしてくれたんだ」と嘆き悔やんだ。ここでも命令したのは村長だった。しかし、赤松氏は戦後、後任の村長に懇願されて、自決命令を出したとするニセの証明書を厚生省に提出していたことが、平成17年5月、自由主義史観研究会の現地調査でわかった。(詳細は18年8月27日付産経新聞参照)

≪「軍の強制」に検定意見≫

 去る3月30日、来年4月から使われる高校用教科書の検定結果が公表されたが、日本史教科書の検定で、沖縄戦の集団自決について「日本軍に強いられた」という趣旨を書いた7点の教科書について、「命令したかどうかは明らかと言えない。誤解の恐れがある」とする検定意見が初めてついた。遅きに失したとはいえ、近年の動向を踏まえた極めて妥当な検定だった。

 座間味・渡嘉敷に配置された日本軍は海上挺身隊という名の「海の特攻隊」で、彼らの任務は米艦に突撃して死ぬことだった。隊長は事実として住民に自決命令を出さなかったというだけではなく、そもそも住民にそのような命令を下す権限を持たなかった。制度上・組織上、「軍命令」などあり得ないのである。

 住民を指揮する権限を持っていたのは村長・助役などの行政側だった。軍を悪者にして精神の平衡を得ようとするのは戦後的な錯誤と欺瞞である。沖縄の良心にこのことを訴えたい。

≪「沖縄条項」制定の企み≫

 沖縄では検定撤回を求める激しい運動が起こっている。文科省はどんなに沖縄の反対運動が広がっても、検定を撤回することはないだろう。そんなことをすれば、検定制度の根幹が吹き飛んでしまうからである。

 しかし、それとは別の迂回した方法で「政治的妥協」が計られる危険性は十分にある。実は、悪しき前例がある。中韓の内政干渉に屈して「近隣諸国条項」が制定された昭和57(1982)年、高校日本史で「沖縄県民が日本軍の手で殺害された」という記述が検定によって削除されるということがあった。これに対し沖縄の地元紙2紙が2カ月にわたるキャンペーンを展開。県議会が意見書を採択し、国会質問に小川文相が「次の検定の機会に県民の方々のお気持ちに十分配慮して検定を行う」と答弁した。

 そして、昭和58年度の前倒し検定では、「日本軍により、戦闘のさまたげになるとして集団自決を強要されたり、スパイ容疑などの理由で殺害されたりした県民も少なくなかった」という記述が合格し、その後の沖縄戦記述の原型となったのである。

 今進行している事態はそれと全く同じである。地元紙2紙が扇情的な記事を連日大々的に掲載し「県民感情」をあおっている。すでに6月中旬までに、沖縄の41市町村議会のうち半数を超える議会が検定撤回の意見書を採択した。

 問題は参議院選挙を控えた政府・自民党が、来年3月までにこっそり教科書会社に自主訂正を申告させて検定以前の記述を復活させるという密約をしかねないことだ。そうなれば、「沖縄」だけを検定の埒外に置く「沖縄条項」とでもいうべきものが事実上制定されることになる。日本人は沖縄の悲劇を心に刻むべきだ。しかし、今、検定撤回の動きを扇動している勢力の狙いは、「県民感情」を利用して歴史をゆがめ、反軍・反国家・反体制運動を展開することなのだ。政治家主導による目先の妥協で国益を損ねた「近隣諸国条項」の二の舞いを絶対に繰り返してはならない。

 (ふじおか のぶかつ=拓殖大学教授)
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