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沖縄集団自決冤罪訴訟と教科書検定との関係を初めて知る方に

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沖縄集団自決冤罪訴訟と
教科書検定との関係を初めて知る方に

南木隆治
(沖縄集団自決冤罪訴訟を支援する会会長・自由主義史観研究会会員)


先の大戦末期、沖縄では激しい戦いがありました。沖縄戦における米軍の最初の目標は、沖縄本島の西55キロメートルに位置する慶良間諸島の確保でした。沖縄本島総攻撃に備え、艦隊投錨の最適地だったからです。

慶良間列島には座間味島、渡嘉敷島、阿嘉島などがあります。日本軍は米軍の沖縄侵攻に備えて、昭和19年9月より、これらの島々に海上特攻基地を建設し訓練に励んでいました。 正式には海上挺進隊と言い、小さなボートで敵艦隊に体当たり攻撃して自爆する海の特別攻撃隊のことです。しかし、結局、米軍の激しい艦砲射撃等で基地は破壊され、出撃の機会が無くなった後は、海上挺進隊はそれぞれ駐屯する島の守備隊となりました。  

梅澤少佐の守備する座間味島と、赤松大尉の守備する渡嘉敷島で米軍の 攻撃を受けた昭和20年3月25日から28日にかけて、多数の村民が集団自決による凄惨な最後を遂げられました。それは家族どうしで殺し合う等の大変痛ましい出来事でした。

戦後、その自決は日本軍の将校、つまり梅澤少佐や、赤松大尉の命令により強制されたものであったと言われるようになりました。日本軍の非情さ、残酷さが喧伝され、それは軍隊というものに対する反感、軍事一般に対する多くの青少年や、国民の拒否感を育て、反日、反戦教育の格好の材料とされるようになりました。 

軍の命令によって自決を強いられたと言う記述は、正確な検証のないまま一人歩きし、新聞・週刊誌等にとどまらず、今日では映画や教科書にまで採用されるようになりました。梅澤少佐と、赤松大尉は、残虐非道な命令の主であり、村民を犠牲にして自らは生き延びた卑劣漢だという全くいわれのない非難を浴びてきました。そのためにご本人やご家族がこうむった精神的打撃は計り知れないものがあります。

では、本当にこのふたりの将校による軍命令はあったのでしょうか。沖縄に先立つサイパン島陥落時も住民の自決が起きていますが、軍の命令はありませんでした。

沖縄戦関係のおびただしい数の書物に書かれているこの話は、元をたどると一冊の書物にたどり着きます。昭和25年に沖縄タイムス社から発刊された『沖縄戦記 鉄の暴風』です。また、極めて多くの学生等に読まれ、現在も決定的な影響力を持っている本が、岩波書店から出されている、ノーベル賞受賞作家 大江健三郎著『沖縄ノート』です。

『沖縄ノート』は現在も出版され続けています。大江健三郎氏は一度の現地取材もなく、『鉄の暴風』の記述をそのまま事実として、守備隊長の人格を全否定する論説をその著書の中でしつこく展開しました。

しかし、昭和48年に、この大江健三郎氏の記述に疑問を持った作家 曽野綾子氏が現地で綿密な取材をされ、『ある神話の背景』が出版されました。そして渡嘉敷島のケースについて、赤松大尉が命令したという従来の「定説」は完全な虚構であることが明らかになりました。それ以来、「沖縄集団自決軍命令説」は次第にその虚構性が明らかになってきました。そして赤松大尉と梅澤少佐が、犠牲になった方々の補償(遺族年金)を有利にするため、あえて汚名を甘受してこられたことも風聞を広める勢力を増長させる要因となってきたことも分かってきました。


このままでは次世代の子供たちに真実が伝えられないことを憂え、また、梅澤裕氏ご本人(90才)がこのままでは死ねないと言うお気持ちになられ、赤松大尉の弟、赤松秀一氏と共に平成17年8月 大阪地裁に株式会社岩波書店と、大江健三郎氏を名誉毀損で告訴し、裁判が始まりました。

口頭弁論はすでに9回を重ね、本年7月27日、9月10日(沖縄出張尋問:沖縄地裁)、11月9日の証人尋問を残すだけとなっています。11月9日(金)は大阪地裁で大江健三郎氏が証人尋問を受ける予定です。

ところでこの間、文部科学省は3月30日、来春から使用される高校教科書の検定結果を発表し、沖縄戦で起きた住民の集団自決について、軍の命令によるものだったとする記述すべてに初めて検定意見を付けました。集団自決をめぐって検定意見が付いたのは日本史の10種類のうち7種類の教科書で、「日本軍に集団自決を強制された人もいた」が「集団自決に追い込まれた人々もいた」などと修正して合格しました。

これについて、最近の研究成果が分かっている教科書の執筆者からの異議申し立てはまったくありませんでしたが、日本軍を悪の象徴とする「戦後神話」を維持したい守旧勢力の反発はすさまじく、沖縄では県議会までが「沖縄世論」に押されて文科省検定に反対の決議をあげるという、憂慮すべき事態となっています。
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