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第9 控訴人らの被害

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【小目次】

第9 控訴人らの被害


  本件で控訴人らが訴えている被害とその本質は以下の点にある。

1 行為自体の残酷さ


  まず挙げられるのが、幼い少女に対する欺罔と強制による動員、劣悪な環境の下での労働、その結果として労働災害等の身体的被害も発生したということである。さらに、自由が奪われ、賃金の未払い、直接、民族差別を受けるような体験もあった。これは、小学校を卒業したばかりの少女らにとってそれ自体極めて残酷な体験であった。

2 被害の深刻さ


  しかも、既に述べたように控訴人らの人格形成期における皇民化教育により本来、他民族である日本と日本人に自己を同一化したことによるアイデンティティの喪失がある。控訴人らが今日も歌う歌が子どもの頃に教えられた日本の軍歌であるというのは、戦後、植民地から独立した韓国社会において、どれほどの悲劇であることか。それに加えて、性差別による偏見と悲惨な人生の被害などいずれも極めて深刻な被害なのでのである。

3 本件裁判で控訴人は何を目指しているか?


  このような被害を受けた控訴人らが訴訟を提起した目的について語った言葉は、これほどの深刻な被害を受けた被害者として信じがたいほどの許しと将来への希望に満ちている。控訴人らが訴訟を提起した目的は、真実を明らかにし謝罪と補償を得ることで、自らのあり得たであろう人生を再獲得すること、そのことを通じて日本国家と日本人への信頼を取り戻し、真の友好を築くことにあるというのである。この控訴人らの言葉と法的な理屈に隠れて事実に向き合おうとしない国や企業の態度とは好対照をなしている。


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