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第1 本件は何を問うものか?

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【小目次】

第1 本件は何を問うものか?


1 本件の法的争点と判断の前提として不可欠な事実


(1)本件は、戦前、日本が、三菱重工と一体となって、

本件は、戦前、日本が、三菱重工と一体となって、植民地とした朝鮮から少女らを欺岡して日本に連れてきて、軍需工場で劣悪な環境と差別の下、自由を奪われた強制的な労働に従事させ、それにより身体や心に深い傷を負わせたにもかかわらず、当初の約束に反して貸金の支払いも受けられない状態で着の身着のままで朝鮮に帰し、戦後は、事実に関する調査、公表もしないまま、少女らを軍慰安婦との同一視被害に苦しむことを余儀なくさせた、その被害につき、苦しめられてきた被害者らが日本国政府と三菱重工を相手に損害賠償を請求している事件である。

(2)この簡単な要約からもわかるように、

この簡単な要約からもわかるように、本件の加害事実は、戦前における当時の大日本帝国と三菱重工が行なった朝鮮人の戦時労働動員と戦後の同一視被害の 放置という二つの行為により、被害者が人生を奪われるような重大な被害を受けたということであり、この加害行為について日本政府および三菱重工に法的責任が問えるかということが本件訴訟の中心争点である。

(3)この法的な責任の有無の判断の前提として、

この法的な責任の有無の判断の前提として、上記二つの加害行為について、故意・過失と違法性の有無が問題となる。そして、不法行為における違法性が加害行為の態様と被侵害利益の相関関係で決せられるという相関関係税(通説)からすれば、少なくとも違法性判断の前提として、戦前の行為については、被控訴人である当時の大日本帝国政府がいかなる計画の下に朝鮮人戦時労働動員をどのように計画し実行したのか、そのことに三菱重工を始めとする労働動員を受け入れた企業がどのような関与をしたのかが、被控訴人らのそれぞれの故意・過失および違法性要件の判断にとって必要不可欠である。控訴人らが求めている植民地支配の実態と朝鮮人戦時労働動員に関する証拠調べが本件の審理に欠かせない理由である。



2 被控訴人らの責任について


(1)もとより、本件で問われているのは、

もとより、本件で問われているのは、一つは、戦時労働動員であり、そこに被害があった場合(本件では肉体的な被害、精神的な被害の両面が存在する)、当該加害行為を行った者に対する少なくとも民事上の責任追及と被害に対する 賠償が必要となる。不法行為における公平性の回復の要請によるものである。前者は加害行為の責任追及であり、戦争に対する責任(いわゆる戦争を引き起こしたという人道に対する罪ではなく、戦争中の違法行為に対する責任である)の問題である。

(2)後者の被害者に対する賠償は、

後者の被害者に対する賠償は、国家としてあるいは企業としての法的義務の負担の問題である。この問題についての義務を負うべき主体に限って言えば、現在の日本国は、国家として同一性を保ったまま、かつての大日本帝国の正負の全ての遺産を承継することになる。したがって、戦前の行為についても大日本帝国が負うべき責任について現在の日本国がその責任を負うこととなる。また、三菱との関係でも、戦前の三菱が実態として現在の三菱と同一性があると評価できれば被控訴人三菱が戦前の行為についても責任を負うことになる。組織や団体としての被控訴人らが法的な責任を承継するのは当然のことである。

(3)同様に植民地支配によって被害があった場合に、

同様に植民地支配によって被害があった場合に、その植民地被害の加害責任を当時の大日本帝国が負うべきであれば、日本政府がその責任を承継することとなる。本件における戦前の控訴人らの被害事実は、形式的には韓国併合によって植民地とされた結果、「皇国臣民」とされ、その植民地における支配機構を通じて、その権力を背景にして、島民化教育の成果として朝鮮女子挺身隊への参加を決意させられ、その撤回を不可能にさせられたことである。さらに経済的にも参加を促す状況が存在した。その意味で、本件の朝鮮女子勤労挺身隊動員を 可能ならしめたのは、日本による当時の朝鮮植民地支配の実態と強く関連しているのである。以下、植民地化の過程、植民地支配と本件動員との関係および他の戦時労働力動 員と朝鮮女子勤労挺身隊動員との異同について論述する。




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